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なんでタバコがやめられないんですか?

●月刊「記録」2004年6月号掲載記事

●取材・文/本誌編集部


 喫煙者には世知辛い世の中になってきた。タバコを嫌う嫌煙家と呼ばれる人々や、非喫煙者が増え、喫煙者を端へと追いやろうと、いや、現に追いやり作戦が実行中である。
 日本たばこ産業(JT)が昨年8月に行った「喫煙者率」調査によると、男性48.3%、女性13.6%と全体で50%を超えていない。一時期言われていた女性の喫煙者率増加も、この数字を見る限りでは信憑性にかける。
 さらにJT広報は、「60歳を超えると、タバコを吸う本数が減りますね」と話していた。
 日本はこれからますます高齢化が進んでいく。何をせずとも喫煙者は減っていくのだ。
 しかしそんな状況でも政府は、2003年5月に『健康増進法』施行した。この法は、2000年に現在の厚生労働省が国民の健康作り運動として発案した「健康日本21」の中核としてつくられたものである。
 第25条に「受動喫煙の防止」というのがあり、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」と定められている。
 最近は飲食店でも全面禁煙の店や、禁煙席が増えるなど、非喫煙者に優しい環境になってきている。
 さらに東京・千代田区では「生活環境条例」というものができ、路上喫煙が禁止となった。違反すれば2000円の過料を取られる。今年3月までの違反者は約8000人にのぼったという。
 過料の支払い方は2種類あって、その場で2000円を支払う場合と後日納付する方法である。
 なぜ二通りがあるのか、同区環境土木部生活環境課に問い合わせてみたところ、「その場で払う方もいますが、持ち合わせがない方や後日支払うという人には納付書を渡しています」との回答だった。
 ちなみに現金で支払った場合、「領収書もその場で出しますし、おつりもきちんと持ち歩いています」とのことなので、5000円、1万円しか持っていなくても支払うことが可能。とても良心的である。
 それにしても単純に計算しても8000人×2000円で1600万円もの収入になる。行政としてはかなりいい財源である。
 そんなふうに、喫煙者には肩身の狭い世の中になってきが、それでもどうしてタバコを吸うのだろうか。喫煙者にアンケートをしてみた。
 まずタバコを止めようと思ったことがあるかを聞いてみたところ、21人中11人。女性よりも圧倒的に男性のが多かった。
 その理由として、「金銭面でやめようと思ったことはある」(21歳・男)「タバコ代がかさむから。しかし、社会人になったらそんな気はなくなった」(24歳・男)と、金銭面の理由。
 2003年7月からたばこ税が増税され、喫煙者のタバコの負担額が増した。一箱の値段の平均は約280円。一日一箱消費するとして、一ヶ月だと280円×30日で8400円。一日一箱だからこれだけで済むが、ヘビースモーカーになっていくとそれは倍々になる恐れがある。
 文字通り「煙となって消えていく」商品が一箱280円なのか。JTによると、税負担率が6割にものぼる、日本で最も負担率が重い商品の一つなのだそうである。消費税は5円だが、270円のタバコの場合、税は170円ほどになる。タバコを買うというよりも、自動販売機を通して国に納税しているようなものである。ちなみに、14年度のたばこ税は総額で8441億100万円。
 タバコの消費本数は、2003年は全国で2994億本。1999年の3320億本から確実に100億本(5億箱)ずつ減少していっている。1本や2本どころの騒ぎではないのだ。億単位で減少しているのである。
 たばこ税の問題だけでなく高齢化も含めたうえでの減少でもあるから一概には言えないが、確実に税収は減っていっているはずだ。
 そのことをどう思うのかと財務省の担当者に尋ねると、「毎年税制改革をしているので、その時々に応じて赤字国債で補填するか、他の税で負担することになります」
 どのみち税金なので、喫煙者が減ると非喫煙者につけは回ってくるというわけだ。
 ちなみにタバコをやめようと思ったもう1つの理由は、「ダイビングの大会に影響が出るから」(36歳・男)「太るために」(28歳・男)と身体面での理由だった。
 また、やめようと思ったことのあるなしに関わらず次のような回答もあった。
「風邪をひいて、しばらくタバコをやめた」(28歳・男)「妊娠したときはつわりでやめられた」(22歳・女)
 やめようと思ったときに取った行動や方法は、「灰皿を割った。アメをなめて代用した。タバコを挟んでいるつもりで、吸うマネをした」(23歳・男)、「ライターを捨てた」(23歳・男)「意志の力で」(28歳・男)「彼氏への愛でひたすら我慢」(21歳・女)などさまざまだ。意外と喫煙者は試行錯誤しているのである
 効果的な禁煙の方法はたくさんあり、「ニコチンパッチ」という体に貼る湿布薬のようなものがある。それで禁煙が成功した女性によると、就寝前に貼って寝たら、朝から吸わなくても大丈夫だったそうで、貼ってから2週間(かなり早い)でタバコを吸わなくてもよくなったそうだ。治療期間はだいたい1~2ヶ月程度で、総費用は2~3万円。医療機関で処方してもらえるらしい。
 禁煙に関する書籍も山のように出ており、「ノー、タバコ」に向かっているのに、なぜタバコがやめられないのか単刀直入に聞いてみた。
「タバコは生活の一部になっているため特に意識していないです」(21歳・男)「今は必要性が見当たらないから」(36歳・男)「理由がわかればやめているが、好きだから」(24歳・男)「朝の一服、昼の一服がおいしいから。赤ちゃんのおしゃぶりみたいな感じで、ないと落ち着かない」(25歳・男)「口寂しい。落ち着かない」(23歳・男)「吸ってると気分が安らぐから」(20歳・男)「気がついたら吸ってるからかな」(23歳・男)「暇な時間が増えるとつい吸ってしまう」(21歳・男)「イライラすると手が伸びる」(21歳・男)「やめる理由がないから。今やめたいとは思ってない」(28歳・男)「仕事以外での余計なストレスをためたくないから」(28歳・男)「根性がないから」(32歳・男)「体がニコチンを欲しているから」(22歳・女)「生活の一部となっているから、ないとさみしい」(22歳・女)「止める必要がない」(22歳・女)「止めようと思ったことがない」(22歳・女)「やっぱり落ち着くし、タバコうまいもん! 食事後のタバコの味覚えたら止められまへん」(21歳・女)「止める気がない」(25歳・女)。
 まとめると「やめる理由もないし、必要もない。タバコ吸うと落ち着くんだよね」ということだ。
 やめられた人には明確な理由があったからやめられたのであって、やめられない人はさしあたってやめる理由がないからやめられないのである。
 さらに、今回アンケートに協力してくれた方々は、一様にタバコが好きなのである。
 「好きだから」「ないとさみしい」「必要性がない」など、理由としてはかなり甘いが、彼らにとって“タバコに火を付けてを吸う”という行為は、トイレに行く、ご飯を食べると同じことで、日常生活の一部となっている。
 だから理由としては明確ではなく、あいまいになるのではないだろうか。直接口頭で「なんでタバコをやめられないの?」という質問を投げかけたところ、ほとんどの人が一瞬考え込んだ。
 トイレに行くことも、ご飯を食べることも、どうして? と聞かれれば答えられるが、普段は考えない。タバコも同じライン上にあるのだ。だから一瞬考え込んだのだろう。
 健康増進法が施行され、灰皿の数が減ったり、禁煙席が増えたりと、嫌煙家や非喫煙者にはとても過ごしやすい環境になってきたが、はたしてそれが問題解決の糸口になるのだろうか。
 現状を見る限りでは、タバコの存在を疎むというより、喫煙者を疎んでいる傾向のが強い。
 禁煙を促したり、過ごしにくい環境を作ることは方法の一つとしてありだが、結局のところタバコ自体が存在する限り喫煙者がいなくなることはないのではないか。 タバコがあるから喫煙者は吸うのである。お腹がすいたら食べる。それは食べるものがあるから食べるのであって、なければ我慢する。
 ここで気になるのは、やはりタバコ税の問題だ。あれだけの税収を、国や地方自治体は手放せるのだろうか。げんに喫煙者の減少は、赤字国債の発行を招いていると財務省の担当者は認めている。事実、国や地方自治体は分煙を推進こそすれ、禁煙を推し進めてはいないのではないか。
 しかも財務省担当者は、「どうしてたばこに税をかけるのか」というこちらの問いに、「タバコは嗜好性が強いものだから、価格が変わったとしても個人の消費量はかわりません」と答えているのだ。つまり単刀直入に言い換えれば、「ニコチン中毒から搾り取るのが楽だから高い税金を掛けているんですよ」ってことになる。
 健康に害があることもあきらかで、大麻よりも中毒性の高いとも言われるタバコを、税収入のために勧めているなら大きな問題だろう。
 さらにうがった見方をするなら、病人が増えれば医者が儲かり、自民党を支える医師会がほくそ笑む図式も見える。こうした構図をうまく隠すしているのが、喫煙者と非喫煙者との戦いだ。
 そろそろ非喫煙者も本当の敵に目を向けるべきだろう。(■了)

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