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謝罪広告大研究!

●月刊「記録」2002年7月号掲載記事

●取材・文/本誌編集部

■潔いのは明治屋産業

 ワールドカップ騒動の陰に隠れ、あまり話題にのぼらないが、全国紙の社会面は連日謝罪広告にあふれかえっている。多い日には、縦6.5センチの広告が2段にわたって掲載される。これだけ取材広告が並べば、比較してみたくもなるのも当たり前! そこで本誌編集部が、各社の謝罪広告を徹底的にチェックした。
  『広辞苑』によれば、「謝罪」とは「罪やあやまちをわびること」だという。「わびる」なら、当然「わびる」気持ちを見やすく表現すべきであろう。とはいえ謝罪の掲載は、ほとんどが目立たない小さな文字で行われる。雑誌の訂正記事など、巻末に小さな文字で掲載されるのが常だ。
 そんな「謝罪広告」の常識に、敢然と立ち向かったのが明治屋産業だった。横幅4ミリを超える本文の文字は、他社の2倍の大きさを誇る。冒頭に掲げた「お詫び」の文字など、新聞記事の見出しかと間違わんばかりの勢いである。
 潔い! 京王新宿店で販売した「松坂牛」に「該当しない商品」が含まれていたとのことだが、この謝罪広告を見た私など、すっかり彼らを許してしまった。(もちろん京王百貨店で松坂牛を買える金ないゆえだが……)
 感激を胸にさっそく明治屋産業に電話を掛け、文字の大きさについて質問したが、予想以上に担当者の反応は悪かった。
  「(広告の表示方法については)取り立てて、何がどうということもなかったのですが……」
 ぶっきらぼうである。当たり前かも。謝罪広告の経緯を聞き出そうとする人物は、確かに怪し過ぎる。どうも「総会屋」などに間違われたフシもある。まあ、無名雑誌の企業取材ではよくあること。不問にふそう。
 この担当者によれば、新聞広告を掲載して以来、「けっこうの数の電話」が掛かってきているという。担当者の疲れた声は、電話で怒られ続けた結果かもしれない。自業自得とはいえ、少し気の毒になった。
 目立つという意味では、「ファイナルファンタジーXl」に負けていない。横書きでたっぷりとホワイトスペースを取った謝罪広告は、ともすれば宣伝のようにも見える。横幅5ミリもあるゴシック体も、明朝体だらけの新聞で目立ちまくっている。食品メーカの謝罪広告とは、えらい違いだ。
 アクセスが集中したため、サービスがきちんと提供できなかったことへのお詫びらしい。だが、この広告で思い出したのは、行列のできるラーメン屋だった。待つ人のために置かれた長イスと「お待たせして、すみません」などと書かれた看板。そこには人気店の誇りがにじみでている。
 予想以上の人気なのがわかれば、ソフトを購入してみいたい人も現れるだろう。こんな謝罪広告なら、わが社の出してみたいものだ。
 謝罪広告のなかには、こちらが同情してしまうケースもある。そう、協和香料化学の商品を使った食品メーカーだ。健康への影響はないと報道されているが、消費者が不安を感じている以上、調査は必要になる。
 とはいえ「このたびの『協和香料化学(株)』の件について、過去にさかのぼり取り扱い商品の調査をいたしてまいりました」というキッコーマンの文章は泣かせる。「過去」といっても、協和香料化学の場合、30年以上にわたって違法行為を繰り返してきたのである。結局、見つかったのは1999年12月に製造が中止されていた商品だったようだが、かなり細かな確認作業が行われたに違いない。
 同じく協和香料化学の香料を使ったために謝罪広告を掲載したメーカーには、おもちゃでお馴染みのバンダイがあった。「ハムスターがいっぱい」「ウルトラマンでキャッチ」など、オマケで人気を集めているお菓子に、問題の香料が使われていたという。オマケが人気の商品で、菓子の方ににケチが付いたとは、お気の毒さま。これじゃあ、オマケだけを単独で売りたくなるだろう。

■事故に素早く反応したエバラ食品

 悪事を隠し続けて消費者の信頼を失えば、企業へのダメージは計り知れない。これこそ雪印食品の解散が残した教訓である。実際、数あるお詫び広告のなかには、こうした時代の流れを感じされるものも含まれていた。エバラ食品工業の謝罪広告である。
 業務用の『やきとりのたれ』に記載されている原材料名に、「増粘剤(キサンタンガム)」が漏れていたという。食品添加物も食品衛生法で認可されたものであるうえ、デザイン改版前にはラベルにしっかりと記載されていたという。表示義務を怠った責任を取って謝罪広告を出し、商品を回収しているそうだ。さっそく同社のお客様相談室に電話すると、「アレルギー表示をするためにラベルを改版したときに、チェックミスが起こしてしまいました」と、説明してくれた。
  「記載漏れ」が商品回収になるとは恐るべし。自慢ではないが、小誌の「記載漏れ」は日常茶飯事。天地がひっくり返っても、エバラ食品のラベル担当には転職できない。
 ちなみに、この謝罪広告に対しても、3日間で40数件の問い合わせや苦情が寄せられたという。私にはどんな苦情を言えばよいのか思いつかないが、いやはや謝罪広告を出すのも大変である。
 回収商品の通知やお詫びに加えて、事故への対策を語っている広告もあった。全農チキンフーズが偽装した「無薬飼料飼育若鶏」を販売してしまったコープ事業連合は、「商品の点検管理をよりいっそう強化し、再度防止に万全を期する所存」だと宣言。不認可の添加物を使用した肉まんを販売したダスキンは、「二度とこのような事のないよう『法の遵守』を改めて会社に徹底する」と書いている。しかし事件への対策に関しては、松阪牛と米沢牛の使用割合を偽った日東ベストがスゴイ。
  「再発防止策として品質監査組織を強化し、且つ透明性を高める為、社外の学識経験者・弁護士・有識者等で組織する企業倫理委員会を速急に発足させます」
 きわめて具体的かつ効果のありそうな社内改革ではないか。もちろん早速電話したが、相手の反応はやはり鈍かった。「雑誌の取材」と言った途端、電話を受けた女性に緊張がはしる。彼女が慌てて電話をつないだ先では、とにかく早く電話を切らせようとする中年男性が待っていた。
「今週中には人選して、今月いっぱいには(委員会を)立ち上げる予定です。はいはい」
 新聞広告を出して5日なら人選中でも問題はあるまい。本当に社内を改革できる委員会が立ち上がるかどうかは、これからが正念場となろう。

■公表しなかった事実を謝罪するダスキン

 最後に取り上げたいのがダスキンだ。肉まんに認可されていない食品添加物を使い、その悪事がバレないように「墓場まで持っていけ」と社内幹部の口止めをしたことは、大きく報じられた。
  「日本では使用を認められていない酸化防止剤が含まれており、その原材料段階のチェックミスが原因で起こったものです。
 弊社では、ただちに適正な油脂に変更しており、現在ではこのような商品は一切販売しておりません。
 しかし、一年半前に発生した問題について、今日まで公表しなかった事につきましては危機意識の不足の結果であると深刻に受け止め、深く反省しております」
 うん? である。
 まず新聞などで報道している事実とニュアンスが違う。中国の工場で問題の植物油を使っていたことが判明した後、ダスキンはこの工場を12日間操業停止し、中国にあった56万個もの在庫は廃棄した。しかし研究機関で「不検出」の結果が出た300万個の国内在庫は、2ヶ月弱もの間販売し続けていた、と報じられているのだ。
  「公表しなかった」事実だけを謝られてもな、という感じてしまう。同じ謝罪広告なら、ズバっと全面的に謝った方が消費者からの受けも良いだろう。
 2年ほどの前の取材で、社内の風通しをよくするためにカジュアルデー(スーツを着ない日)を推進した雪印乳業の社員は、導入当初、いくつかの部署で実施されたものの数年で数人しか実施しなくなった実態を語ってくれた。今考えれば「さもありなん」である。
 どんな小さな改革であれ、会社全体に広がなければ意味がない。意識改革なく問題の風土が残れば、企業は何度でも謝罪広告を掲載することになる。
 変われるかどうかに勝負がかかっている。雪印の例を挙げるまでもなく、2度目のスキャンダルは一気に消費者の信頼を失う。不景気なだけに、大会社が潰れて大勢の労働者が失業するような事態だけは避けてほしい。(■了)

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