« 個人情報保護法案に断固反対する! | トップページ | 開かずの踏切を「高齢者疑似体験セット」で渡ってみた »

あの企業にホームページに、あんなこと!?

●月刊「記録」2002年4月号掲載記事

●取材・文/本誌編集部

 家庭へのパソコン普及率は、全国平均50.5%(2000年11月統計)だという。つまり2世帯に1世帯は、パソコンを持っているわけだ。これだけパソコンで普及すれば、当然、世間に与える影響も無視できない。特にさまざまな情報が提供できるインターネットには、企業も熱い視線を注いでいる。
 立派なホームページを作り、会社の方針、新商品の紹介、新入社員の採用などについて、それはそれは事細かに書き込んでいる。
 というわけで、最近話題の企業が作ったホームページを一挙公開だ!

■雪印食品は「挑戦意欲に溢れる」人材を募集

 日本経済を取り巻く環境は、とにかく厳しい。何がなんでも利益を確保したいと思うのは、正直なところ。わかります。だからといって偽装してはいけません! 
 BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)対策として実施された国内産牛肉の買い上げ事業で、オーストラリア産の牛肉のラベルを貼り替え、まんまと補助金を騙し取ったのが雪印食品だ。そのツケは大きく、消費者および株主からも総スカンを食い、ついには会社の解散にまで発展した。
 現在、「雪印食品」のホームページには、「弊社の再建断念について」と題された暗ーいページが残るのみ。しかし事件前は、ホームページだって充実していたのだ。
 2001年の会社方針では、「『おいしさ』と『安心感』にこだわります」と、高らかに謳いあげていた。この指針に下には、「遺伝子組換え農産物の不使用」という力強い文言も読める。ホームページを作成した同社社員も、同じ会社員が「遺伝子組み換え農産物」を使わず、ラベルの組み換えに心血を注いでいたことは知らなかっただろう。
 昨年3月1日に発売された新製品も紹介されていた。「黒毛和牛シリーズ」だ。「厳選された100%黒毛和牛を使用」、「肉の色調が明るく、新鮮感があり、調理栄えがする」と宣伝を書かれても……。やっぱり今は信用できないかも。
 昨年12月10日消印締め切りのキャンペーン名は、「“あったらいいな”プレゼント」。ハイブリッドカーなど豪華賞品が当たるキャンペーンだったが、まさか3ヵ月後に「(会社が)あったらいいな」という状態に陥るとは、予想外だった。
 ちなみにキャンペーンに応募するためには、「添加物を減らしておいしいのは、『しょく○○かたぎ』です」という文章の空白を埋めなければならない。ヒントとして、「『職人気質』シリーズは、添加物を減らした安心のシリーズです」とある。
 新聞報道によれば、関西ミートセンターの産地偽装工作が、歴代センター長3代の間で引き継がれていた疑いがあるとのこと。師匠から弟子へ、その系譜はまさに「職人気質」。長期間、こうした“技”で利益をあげていたらしいから、まさに「安心のシリーズ」だったのだろうが、最後は“技”に溺れて滅んだと言うべきか。
 雪印食品のホームページで最後に紹介したいのは、リクルート用のページである。
  「“挑戦意欲に溢れるフレッシュマン”を迎え入れてます」という言葉に深く納得。露見したとはいえ、国の補助事業で偽装工作をするのは、なかなかの「挑戦意欲」といえなくもない、か?
 安い牛肉・豚肉を高級銘柄に混ぜて出荷していたスターゼンも、ホームページは意気軒昂だ。
「スターゼンが消費者の皆さまから食肉業界まで広く支持されている理由」と題されたページには、食肉卸業界第2位のプライドがビシビシと伝わってくる。
 「理由その4」の「早い決断と迅速な行動ができる営業体制が自慢」の内容はスゴイ。「所長の権限は大きく不測の事態が起こった時でも迅速に判断、処理することができます」。
 さすがである。どうやら企業理念は、社員にも深く浸透していたらしい。食肉加工工場の佐賀パックセンター長は、利益を確保することを「迅速に判断し、処理」したようだ。
  「やわらかい発想と柔軟な対応で、お客様のニーズを具象化」することを進めてきた同社だけに、利益確保の仕方が少し柔軟過ぎたのかもしれない。
 指示される「理由その1」に書かれている通り、「O157や狂牛病の影響で業界に逆風が吹く中も、着実成長を続け、数多くのお客さまから信頼を得ている優良企業」の同社でも、自ら「逆風」を作り出すとは予想できなかったらしい。
 タイや中国産の鶏肉を加工し、「鹿児島産 無薬鶏」と表示してスーパーなどに卸していた全農チキンフーズは、国内の鶏肉についてホームページで詳しく解説している。
 偽装ラベルに記した鹿児島県産については、「ぴゅあ安心咲鶏」と「ぴゅあ旨味鶏」を説明している。「ぴゅあ安心咲鶏」は、「資料にハイクォリティーコーン(非遺伝子組替え・収穫後無農薬)という高栄養価なコーンを使用しビタミンEが豊富」だという。こうした銘柄鶏は、「飼育条件(出荷日数、飼育内容、餌等)を変えることによって肉質に独自の特色を持たせている鶏です。それぞれのメーカーによってさまざまなコンセプトをもって作り出された鶏肉」だそうだ。
 しかし「コンセプトをもって」鶏肉を作るのに、55日も飼育する必要すらなく、飼育条件を変えなくてもよいことを、同社自らが教えてくれた。そうラベル換えである。「簡単に利益が得られる」というコンセプトから生み出された鶏肉は、昨年11~12月になんと完売。素晴らしい“効果”ではないか!!
 ちなみに国内産の鶏肉については、一括で表示できないほど大量の情報を書き込んでいるのに、外国産の鶏肉情報については、わずか2行。
「輸入品の産地を教えてください。?」(原文ママ)
「中国、ブラジル、アメリカ、タイなどがあります。」
 国民が知らないでタイ産や中国産の鶏肉を食べていることもあるのだから、更新の際にはこちらの情報もしっかり書いてもらいたい。まさか、また外国産の鶏肉について教えてくれないわけじゃないですよね。

■表紙の文句は「ずらかる」だった佐藤工業

 バブルに踊ったツケもあり、国民の消費も控え目のまま、これでは企業の業績が上がらないのも当たり前。大手、準大手と言われている企業でさえ、会社更正法などを申請する時代となってしまった。とはいうものの時代ばかりが、経営破綻の責任ではない。社風や経営姿勢など、時代が企業を置いていったしまった理由は、どこかにある。
 事実上倒産した会社や経営の危機が何度も報じられている企業のホームページを覗いてみた。
 3月3日に更生手続開始申立を行ったのは、ゼネコンの佐藤工業。ホームページ冒頭のページには、「佐藤工業」「SKIP」「お詫び」「関係者の皆さまへ」という文字が並び、同社が建設したのであろうか「浅草新世界ビル(昭和34年)」と題名が付けられたモノクロ写真が掲載されている。
 業績が行きづまっているなか、追い打ちをかけるようで申し訳ないのだが、この表紙はどうだろう?
 まず「SKIP」がいけません。「Sato Kogyo Information Pavilion」の頭文字を取ったらしいが、英語辞書『GINIUS』によれば「SKIP」の意味には、「サボる、立ち去る、ずらかる、高飛びする」などの意味がある。この時期、ホームページの表紙一番大きな文字が「ずらかる」では、さすがに心配だ。
 「お詫び」「関係者の皆さまへ」の文字が灰色をバックに書かれているのはともかく、跡地が競馬の場外馬券売り場となった新世界ビルの写真を使うのもいかがなものか? 思い起こせば、マネーゲームに飲み込まれたバブル時代が、同社を斜陽に追い込んだのである。同社の代表的な建築物跡地にギャンブルの殿堂が建ち、ギャンブル的なマネーゲームで同社が追い込まれ。そんな暗示を、ホームページの表紙で漂わせたいわけでもなかろう。
 とにかく表紙だけで、暗い気持ちにさせれた佐藤工業であった。
 連結有利子負債は、なんと8800億円。株価の低迷が続いてきたゼネコンのフジタは、三井建設と住友建設の経営統合に一部合流することが決定した。
 ホームページに掲載されている企業スローガンも、やはり企業存続への願いが溢れている。
「“高”環境づくり」。
 このスローガン、「旧スローガン(先端技術と建設をむすぶ)を更に発展させたもので、21世紀を目前に企業としてどうあるべきかを、明確に謳いあげ」たものらしい。「技術」だけでは、不良債権は減らない。「“高”環境」じゃないと。などと考えるのはうがち過ぎか? まあ、一部合流が「“高”環境」と呼べるのかどうかは、これからわかってくることだろうが。
 同じページに掲載されている企業理念にも注目である。
「自然を 社会を 街を そして 人の心を、豊にするために フジタはたゆまず働く」
 はい、たゆまず働いてください。
 3月18日現在、38円と驚異的な株価を維持している飛島建設のホームページを読むなら、先輩社員の声が載っているリクルートページだろう。
 飛島建設の誇れる点として、社員は技術力と「新しい時代に対する対応力」を挙げた。
「古い体制、方法に固執せずに積極的に新しいモノを採用しようとする試み。事実、当現場では現場施工において、前向きに工夫・改善に取り組んでいます」
 やはり、バルブ時代に「積極的に新しいモノを採用」しまくったのが、よくなかったのかもしれない。長所はえてして短所となる。きっと建築現場では、最大の武器なのだろう。

■「次世代の柱はRE」と熊谷組

 多額の不良債権を抱えていると評判のゼネコン・熊谷組のスローガンは、「人と地球の未来を考える」だという。いや、地球の前に自社の未来を考えた方がいいのかも、と少し心配になった。
 株価はともかく、熊谷組のホームページは充実している。「Focus on 社員」のページでは、鳥飼一俊社長が早稲田大学教授・吉村作治氏と対談している。
「私どもでも次世代の大きな柱はREですね。リユース、リフォーム、リニューアルなどです」という社長の言葉は、建築業界全体、さらには熊谷組の運命と合わせて考えると、かなり感慨深いものがある。
 にこやかに語る社長の顔写真には、まるで演歌歌手のように自身のコメントが書き込まれていた。
「リサイクルさせていくという考え方は、すなわち常に新しいということ。今、我々が活かしたい古代の知恵ですね」
 再編・統合も、世界の歴史をみれば当然のことわり。「リサイクル」にはこのような意図も含むのか。
  「採用」と銘打たれたページには、「社員の素顔」と題して先輩社員のメッセージが満載だ。
 「カベはこうやって乗り越えろ」というお題には、「あえて腰を据えて一つ一つ順番に解決していけば何となるものです。これは自分が経験から学んだことですが、誰にも有効な解決法ではないでしょうか」というコメントが。
 熊谷組の社員が語っているかと思うと、このコメントは一気に重みを増すような気がしてくる。そう、「あえて腰を据えて」問題解決するのも一案かもしれない。とかくマーケットでの解決法は性急すぎる。結果でなければすぐに企業を見限るようなやり方は、やはり乱暴なのかも。そんな思いが、ホームページを通じてわき上がってきた。もちろん一瞬だったが。
 企業のホームページは、まさに情報の宝庫。できれば読者自身にも訪ねてもらいたい。編集部の人間より性格がひねくれていれば、もっと楽しめること請け合いである。 (■了)

|

« 個人情報保護法案に断固反対する! | トップページ | 開かずの踏切を「高齢者疑似体験セット」で渡ってみた »

月刊『記録』特集モノ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/389724/8837821

この記事へのトラックバック一覧です: あの企業にホームページに、あんなこと!?:

» ギフト商品戦略について [経営コンサルタントは武内コンサルティング]
昨日、お付き合い先の焼肉店様との会話ではっと気付きました。こちらのお店、数年前から精肉のギフト商品をご来店されたお客様中心に販売されています。単価は1万円にほぼ設定されています。一部12,000円のものもあります。送料・代引き手数料は無料です。1万円ポッキリで購入できるので買いやすくなっています。魅力は、なんといっても分量と価格です。百貨店や有名精肉店で売られているものよりもグラム単価するとかなりお得な設定になっています。実は、焼肉店が本業のため、精肉ギフトは1年間のお客様へ...... [続きを読む]

受信: 2007年11月13日 (火) 17時50分

« 個人情報保護法案に断固反対する! | トップページ | 開かずの踏切を「高齢者疑似体験セット」で渡ってみた »