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風俗案内条例施行・本当の理由 ―青少年のためってホントかよ―

●月刊「記録」2006年7月号掲載記事

●取材・文/ソープ☆吉原

 2006年6月1日、東京都風俗案内条例が施行された。店舗型のファッションヘルスやお客の待つホテルに女性を派遣するデリバリーヘルス、キャバクラなどにお客さを紹介する風俗案内所の取り締まり強化が目的の法律である。
 条例施行の当日、いつものように風俗案内所で仕事をしていると、一本の電話が鳴った。会社の上の者が「ヤフーのニュースページを見てみろ」と言った。
「1日午後、歌舞伎町、品川、渋谷にある案内所の各店舗の店長それぞれを逮捕。逮捕者は8人」とネット上のニュース記事。
 見せしめである。弱小案内所が数軒摘発されたのだ。
 僕が今こうして原稿を書けず、留置場にいてもおかしくはない。誰でもいい。そんな見せしめのパフォーマンスだった。
 それからしばらくして、突然店の自動ドアが開いた。
「少し悪いね」
 歯切れのよい口調である。
 威勢のいい客だな、と思いカウンターから店側に出ると、大きな看板を持った男と背広の男がいて、警察手帳を見せてきた。本物かどうか遠すぎてわからないが、いちいち「もう一度確認を」とはいえない雰囲気だった。 そしておばさん、おじさんがどっと店の中になだれ込んで来た。
「なんだなんだ」と驚いていると、「これです。ね、もう真っ白でしょう。パネルにはもう猥褻なポスターははれないんですよ」と得意げに警察が説明し始めた。
 おばさん、おじさんは、「ああ、これならいい」と、したり顔でうなずいている。近隣住民なのだろう。
 ふと見ると、テレビカメラがその住民に向けられていた。マイクに向って話をしている人までいる。
 まさかカメラが僕のところには来ないだろうな、といらぬ心配をしてしまった。法律を守って営業しているのだ。違法ではない。ただ、ここで何を話しても、悪人として紹介されるはめになる。それが嫌だった。
 100人を越すであろう行列は、テレビカメラと警察を先頭に「職場」のある繁華街を徘徊していた。
「あんたらがうろうろしているのが一番の地域公害だよー」と思わず心の中で叫んでしまった。インタビューを受けていたおじさんが、一番の強面だったし……。

■1カ月前にも法改正が!

 警視庁生活安全部の広報資料によれば、この条例の目的は「青少年をその健全な成長を阻害する行為から保護すること」と、「繁華街その他の地域における健全なまちづくりに資すること」らしい。しかし、そんな戯言を信じている関係者はいない。案内所を取り締まっても、風俗店そのものが点在している繁華街である。青少年の「健全な成長」など望めるはずもない。
 条例の本当の目的の1つは、一部の悪質な案内所を取り締まるためだろう。
 有名な悪徳案内所「グループM」は新宿でやりたい放題だった。風俗店でもないから許可もいらない。それにあぐらをかいての悪行三昧だった。
 例えば案内所とうたいながら、実はそこがそのまま風俗店の受付になっていたり、40分のサービス時間で客を釣りシャワーを浴びただけで「終わり」にしたり。さすがに客を欺き過ぎたのか歌舞伎町のグループMは摘発され、今はその影はない。しかし池袋ではしたたかに生きている。これでは、まじめにやっている案内所もいい迷惑である。
 しかし、この最も悪名高いグループMは今回の取り締まりでは無傷だった。警察がマークしていることも分かっているだろうから、さすがに店も条例違反にならないように努めたのだろう。
 一方でデリバリーヘルスの女性とお客がことにおよぶラブホテルは摘発されている。
 本当に悪質風俗案内所を取り締まりたいだけなのだろうか?
 じつは今年の5月1日に風適法(旧法は風営法と呼ばれていた)が改正された。狙いは風俗店舗を持たず、電話を受けて女性をホテルや自宅に派遣するデリバリーヘルスの取り締まり強化だった。その1カ月後に新しい法律が施行され、デリバリーヘルスなどの入り口となる案内所ががんじがらめに規制された。この2つの法律が意味するところを考えるなという方がおかしい。
 そもそも新条例の禁止行為が書かれた用紙を眺めていると、要するに全部ダメということになる。
 まず大きく変わったのが営業時間だ。
 以前は午前4~5時ぐらいまで営業ができたが、午前0時閉店になってしまった。もともと風適法により、案内所の紹介先である風俗店は午前0時以降の営業が禁止されていた。しかし、ほとんどの風俗店はあの手この手を使って営業を続けてきたのだ。しかしお客が最初に出向く風俗案内所が当局からにらまれて0時以降の営業ができなくなると、風俗店も終業するしかない。
 風俗で働く女性は夕方からの朝までというシフトが多い。つまり今回の法規制で営業時間が半分に減ったことになる。当然、稼ぎも減る。個人で「モグリの売春」をする娘が増えることは確実だ。現に風俗案内所でボーイをしている僕に、「ヘルスだと取り分が少ないから、良い客がいたらサービスは外でする」と、もらす娘もいるほどだ。
 もう1つの大きな規制はホステスの写真などを表示できなくなったことだ。
 僕の勤める案内所に掲げてあった30枚近くのヘルス広告パネル、10枚ほどのキャバクラのパネルポスターは全部剥がされた。白いパネルを後ろから蛍光灯が寂しく照らしているだけとなった。
 案内所は店内のパネルで広告料を取っている。それなのに警視庁が出したガイドラインに沿えば白いパネルしか置けないのである。女性の裸はもちろん、男女がマイクを持って歌っているものでもアウト。キャバクラのパネルに女性の顔写真もダメ。看板に使われる文字にいたっては「人妻」も許さないという。
 案内所の店内には一応パソコンモニターが6台置かれ、そこに契約しているクライアント風俗店の情報が入っている。ただ店員が詳しく案内をするわけにはいかなくなった。店での割り引き券となるチケットも、昔は店独自のものだったが、今では案内所が発行する統一されたチケットだけである。そのうえ案内所が出す音にまで騒音規制が加わった。
 猥褻なポスターが許されないなら、そのポスターだけを警告してほしかった。案内所のスピーカーから流れる有線放送のうるさい店があるなら、その店舗に警告してほしかった。
 それをしないのはどうしてか? つまり案内所が邪魔だったのだろう。
 いまだに売春防止法がありながらソープランドでは本番ができる。風適法があっても夜中に風俗店は開いていた。この状況を警察が知らなかったとは言わせない。じゃあ、見逃していたのはなぜか。店舗だったからだ。いつでも警察が取り締まれる営業形態だったから、店と警察は癒着し互いにうまいことやってきたわけだ。
 しかし電話番号だけで、女性の待機場所を隠したまま営業できるデリバリーヘルスは警察にとって我慢のならない代物だった。その手先となる案内所も。
 おかげで天下の歌舞伎町の案内所でさえ、午前中の入客が2名なんてことになってしまった。

■うつ病にかかった店員も

 1カ月前の風適法改正で呼び込みが禁止されたこともあり、風俗各店は案内所での顧客獲得に力を入れていた。そこに、この条例である。案内所からみればクライアントである風俗店からの期待(突き上げ)も大きいだけに、条例は案内所で働き生計を立てる者の精神を強く圧迫する。
 施行日の逮捕者は8人だったが、池袋の系列の案内所では0時を回っても明かりを消さなかったという理由で、若いスタッフが警察に連行された。
 時間が過ぎていたのは分かっていたが、客がパソコンを見ていたので無理やり帰すのもむげだと思ったという。優しさがあだになった。
 グループMの系列店は別にして、普通の案内所では学生や目標をもった人間が働いている場合が多い。クライアントや行政、地域住民からのたび重なる圧力で、うつ病になった人もでた。
 彼はうつになりながらも辞めずに、1人家族の祖母のために必死で働いている。父と母ではなく、祖母に育てられたからと。
 取り締まりのパフォーマンスしか流さない警察や一部マスコミにより、本当の話が消えている。都合よく風俗業界を支配しようとする条例の下で、潜り業者は今も蠢いている。(■了)

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