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サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/小泉メール 新井文書

■月刊「記録」2001年11月号掲載記事

○月×日
 た・大変だよ!! 聞いてくれるか皆の衆!
 私の本を読んだと、なーんとナント、小泉首相から掲示板にメッセージがきていたのである。
  「えっ!? ウソだろ、まっさかぁ……、何かのマチガイだろう」と「小泉純一郎」と名乗る、この人のアドレスに接続してみたら、ちゃ、ちゃーんと首相官邸のホームページに繋がったではないか。信じられなかったが、これはウソなどではない。本当なんだよ、本物なのである。
 私は久しぶりにアストラ(出版社)のホームページを見たのであった。私の本が宣伝されているわけだが、「読者から一言」という掲示板があり、先日は嶋廣二さんという、何だかお偉いお方からのメッセージが入っていたのだ。
  「かつての、省線電車、国電の時代から、現在までの一利用者として、また、国鉄に23年間勤務経験のある一庶民として、感無量で拝読しました。(後略)」。嶋さんはホームページを開設しており、そのプロフィールによると、「杉並区在住。東大卒。運輸省入省。米原機関区長、鉄道監督局保安課補佐官……」などとあり、9つ位の要職を歴任されている。車掌一筋の私には想像も出来ぬが、立場が全く異なる人が読んで下さったのであり、わざわざ感想まで寄せて頂いたことに、嬉しくて感激せずにはいられなかった。
 話を戻そう。小泉さんである。
  「こんにちは。小泉純一郎です。斎藤さんの本を読みました。痛みによく耐えた! 感動した!(2001年9月2日)」というものだ。今やすっかりお馴染みの口調そのもので、小泉総理の顔が浮かんだ。いや、浮かべるまでもなく、さっきからテレビに映っている。米の同時多発テロ事件について、総理大臣としての声明を早口で述べているではないか。
 それにしても、小泉総理がねぇ……。
 吹き荒れるリストラ、倒産、雇用不安、株価急落、失業率5パーセントといった、日本経済が危機に直面している真只中に、私の本を読んでいるとは相当の余裕があるのですね。さすがなものだと恐れ入る。
 国労の問題は国の政策により翻弄されているのである。小泉総理には、私達が納得できるしっかりとした指導力を発揮してもらいたい。そうすれば私だって、痛みに耐えたり本など出したりせずに済むのである。
 などと、その気になってここまで書いたものの、どうも半信半疑で仕方ない。もはやパソコンの専門家に尋ねるしかなかった。すると……いやあ騙されましたね。やっぱりこれは悪戯であることが判明したのだった。
 どなたか知らぬが、楽しいひと時をありがとう。感謝申し上げる次第である。バーロー!!
○月×日
 全国大会を前に、新井修一氏(国労前総務財政部長)による「全国の仲間に訴える」と題した文書が物議を醸している。
 この文書は、これまでに国労本部が頑なに口を閉ざし、誰一人として公言しなかった真実ともいうべき本音が書かれているために、あまりにも衝撃的なのである。
  「JRへの採用差別問題をめぐって」と「国労の組織の状況」という2項目からなり、「四党合意」によって、今、国労がとるべき道について本部としての並々ならぬ決意と強固な意志が貫かれ、なんともストレートに述べてある。
 しかしそれは、反対派が当初から耳にタコが出来るほど指摘していたことであった。その危惧が、まさに現実となったといえるものであり、本部を信じてきた私は裏切られたという思いと失望感でショックを隠せないでいる。
 やり場のない怒りとは、こういうことをいうのか。それにしても遅すぎた。もっと早くいってくれれば、たとえ険悪になったとしても、今以上に健全で開かれた議論が尽くされただろう。そして、本部と組合員間の理解がより一層深まったのは確実で、現状のような内部対立や修復不可能に近い事態にはなっていなかったはずである。

 まずは、新井さんの文章をそのまま引用する。
  「最高裁判所の判決が出されれば四党合意は消えてしまうし、当然政治解決も無くなってしまう。これまでの闘いが水泡に帰すことになる」「このままの状況があと10年も続けば算術上から国労組合員はゼロになる。」
 などといい、
  「国労が組織体として生き残れる道は一つしかない。それは四党合意に基づく解決案を不満があっても国労全体が一致団結して呑むことである。そして採用差別問題の解決の上に立って、JRの経営形態に応じた新たな組織体制を形成し直して再出発をすること以外にはない。そしてそれは、この10月13・14日に開催される第68回定期全国大会の場が最後の機会となる」
 と結論づけている。

 これでよく分かった。これが新井さん(本部)の考えであり、決断なのだ。「国労に残された最後の道」なのである。
 何がなんでも解決案を受け入れる。たとえ「ゼロ回答」であってもである。そして、全国単一体の国労を流れ解散して、新組織を結成する。つまり、15年に及んだ1047名問題(国鉄闘争)をこれでもう終わりにする。すなわち、他でもない、闘争団を切り捨てるということなのである。
 そうですね。このままではいつまでたっても国鉄闘争は終わらないだろう。だが、何度でもいう。闘争団を切り捨ててはならない。「国労が生き残るため」などといって仲間である闘争団を切り捨ててはならない。解雇された当事者である人たちの主体性がまったく無視されることになる。そんなことは断じて許されない。
 解決案を呑み、国鉄闘争を終わりにしたところで、国労が再生するとはならない。口惜しいが国労は無くなるのだ。そんなことは誰だって初めから分かっていたさ。自然消滅の道を辿るのである。
 しかし、たとえそうであろうと、闘争団を救えればいいという意気込みで闘ってきたのではなかったのか。そうすることにより初めて新たな展望が開け、再生への道も見えてくるのではないのか。私達現場の組合員も歯を食いしばってありとあらゆる差別に耐え抜いてきたのだ。もうここまでくると、本部は闘争団をお荷物だと考えているとしか思えない。現段階での解決は、政府・自民党やJRにとっては解決したとなるが、私達国労には問題放棄以外の何ものでもない。

 国労はまさに深刻な事態に直面したわけだが、まるで袋小路へ迷い込んでしまったかのような今の閉塞感と似た状況であった頃を思い出すことが出来る。
 99年3月、「解決のメドがついた」として臨時大会(第64回)を開催し「改革法」を承認した。この時も、大会で認めればすぐにでも交渉テーブルができるといわれ、大会発言では「解決水準が切り下げられるようなら、元に戻って闘えばいい」などといわれていたが、結局はなにもなかった。今回の「四党合意」と全く一緒である。相手側は「裁判の取り下げ」を求めたりで、次々とハードルを上げてくるだけであり、解決の方向とは逆の方向に追いやられているというのが実情なのである。
 いずれにせよ、こうした現局面に至った最大の要因は、忘れもしない98年5月28日の東京地裁による中労委命令を取り消した不当判決が端を発しているように思う。
 この機を境にして本部は闘いを強めるどころか政府やJRに依存することを一層深めていったのではないか。綿密な計画の下に敗北路線を歩む腹を固めたのだろう。
 その始まりが、同年8月の全国大会(第63回)で突如出された「補強案(5項目)」の提起であり、この時は継続討議となったものの、前述の臨大へと突き進み、その総仕上げとして、今回の「四党合意」に行き着いたとみる。

 ここで再び新井さんの文章を引用する。
「四党合意に基づいて解決を図らなければならないと主張している者も『あまりの低水準では呑むことができない』という程度の甘い認識しか持ち得ていない」
 驚きである。本部を信じ、「解決案が低水準であれば引き返せばいい」と賛成した仲間さえも痛烈に批判している。また、反対派に対しては、
「最高裁の判決が出てもまだ闘えると唱える者もいるだろうが、それは負け惜しみを通り越した無責任極まりないものであると言わざるを得ない」
 もはや呆れ果てて、反論する気も失せてしまう。
「不満があろうとなかろうと、丸呑みするしか方法がないのである」に関しては何度も強調しているが、丸呑みしないと、何だか喉にトゲが引っかかって窒息死でもしそうな気配なのである。さらに、
「この問題解決のために当初から影になって動いてくれた人のOBの協力がある。(中略)四党合意は国労が有し得る力とは別に政治家の人間関係が多分に作用しているのである。つまり四党合意の内容は、今日の国労の力量とは別の、彼我の力関係を超えたところで作りあげられたものであるという事である」
 「闘いの到達点」ではなかったのか。あれほど呪文のように聞かされて、私も真剣に考えたものだ。それが意図的に吹聴されていたとは残念でならない。また、「包括的打開案を出す」や「ラストチャンス」も全て嘘と詭弁だったとは、本部も大変な苦労をされたのですねとしか私にはいえない。

 最後に、国労は破産状態にあるということだ。「歴史的な国労の分割民営化に伴い国労は名実ともに甚大な影響を受けた。以降15年間組織人員は暫減し続け、現在2万人となっている。それでも国労が存続できているのは、良き時代に蓄積された名声を含めた財産を受け継ぎ、それを食いつないできたからである。(中略)しかし名声は時とともに薄れて行き、財産は食いつぶした時に終わりになるのである」

 感傷に浸っている時間はない。私達は間違ってはいない。一般組合員は指導部のゴタゴタに振り回されてはならない。己れを信じて信念を貫き通したい。私には何もなす術はないが、後は大会代議員の良心に期待するしかなさそうだ。

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