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サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/全国大会 菊花賞 国立駅

■月刊「記録」2001年12月号掲載記事

○月×日
 第68回全国大会が終了した。
 私は会場係として傍聴を許された。
 国鉄闘争の長期化と国労組織の高齢化は、会場を見渡すと一目瞭然であった。それは、白髪とハゲ上がった頭の圧倒的な多さが何よりも如実に物語っている。皆もう、いいおやじなのだ。
 大会は、まずは分裂や統制処分といった最悪の事態を免れてホッとしたというのが率直な感想である。問題がないわけではないが、組合民主主義が一応保たれた結果であると思っている。大会直前までは、私も随分と感情的になり、まるで子どものような屁理屈を並べ立てていたことを、ちょっぴり恥じた次第である。
 さて、会場となった社会文化会館前には、前回同様、再び機動隊が導入された。バリケードが厳重に築かれ、完全に封鎖された状態の中、入場者一人一人をチェックするという物々しさである。「そうではない」と本部は言い張るだろうが、反対派はとにかく入れない、本部支持者ならオーケーという、世間の常識からはかけ離れたものであった。
 一日目は、寺内書記長から、突如として追加方針が提案された。「『最高裁での判断を公正に行わせる』の方針を改め、(中略)四党間で合意した『JR不採用問題の打開について』を再確認し、(後略)」という内容である。「突如が好きな本部だが、書記長は何を血迷ったのか」と私は思った。原案とどこが違うというのだろう。原案では、1月の大会で決定された最高裁闘争の方針(JRの法的責任の追及)は全面削除されてあり、あくまでも四党合意に基づいた解決を謳っているものだ。混乱を招くようなことは止めてほしい。ヤジと怒号が大きくなるばかりである。
 2日目に入り、特筆すべきことは、反対派の代議員により、闘争の立て直しを盛り込んだ修正動議(闘う方針案)が提案されたことと、委員長以下すべての役員ポストに対立立候補者を立てたことである。結局は少数可決で、どれも実現するには至らなかったが、これまでの抵抗型にとどまるのではなく、具体的な方針を打ち出し、主体性をもって臨むという前向きな姿勢は大きな前進であり、やってやれないことはないのだ。
 書記長集約(発言)では、「追加方針は原案と同じものである」「解決水準を上げるために大衆行動を行う」「解決案が出たら、一定期間職場討議をして、臨大で決める」などが表明され、最も危惧されていた裁判の取り下げについては、改めて、「裁判取り下げは解決時」と言明した。
 また、運動方針については、賛成80・反対32・保留2・無効1という結果で、原案がそのまま採用された。
 以上、裁判闘争が弱められたこともそうだが、全体的にトーンダウンした感は否めない。いずれにせよ、状況は何も変わっていないのだ。ホッとしている場合ではないのである。
○月×日
 4万6210円という超万馬券が飛び出した菊花賞。もちろん見事にハズレたが、ガッカリなんてもんじゃない。
 競馬に絶対はないが、今回は自信あり!! 的中するという予感がいつになく強かったのだ。「水道橋です。出口は左側です」というように、右側などあり得ないというくらいの確信があった。実は、これまでに、このような時はほとんどハズレたことがなかったのである。というと、いつも大当たりしているかのように思われるが、そうではなくて、こうした予感が起きるのは年に1~2度あるかないかで、普段はしょっ中ハズレてばかりいるのでご心配なく。
 で、レース前日あたりから、それはもうウハウハしながら捕らぬ狸の皮算用で、儲けたお金でナニしよう!?なんて、夢を見ていたのはいうまでもないが、結果はこの通り大ハズレで、ショックのあまり茫然自失となっているのである。
 ちなみに、私が賭けた馬はゴール前の直線で猛烈に追い上げはしたが、先を走っていた2頭には全く及ばずの3着と4着だったのだ。騎手がもう少し早めに仕掛けてくれていたら……と、私ってば、「たら・れば」の世界が何と多いことか。でも、もう後の祭りで何をいっても始まらない。もうボロ負けなのである。それも一瞬にして大損なのだから、私の気持ちは誰にも分かるはずがない。
 なだらかな坂道を秋の風がカラカラと音を立てて通り過ぎていた。。心を癒してくれた金木犀の甘い香りが終わっていたのは、秋が一段と深まった証拠だろうか。庭先の柿の木に郷愁を覚え、切なくなってしまった。天気は西から下り坂で、薄曇りの雲は雨が降り出すことを告げているのだ。ずぶ濡れになっても構わないと思った。夕暮れ時のキッチンからは、休日の一家団欒のぬくもりが漏れてきた……。
 もう数え切れないほど通ったこの道。これで終わりにしようと何度思ったことか。こんな気持ちはウンザリだ。ああ、まっぴらだ。どん底に突き落とされたといっては大袈裟か。自業自得だが、俗世間の煩悩から逃れたくてしょうがなかったのかもしれない……。
 ただわけもなく街をトボトボと歩いた。早々と「年賀状印刷承ります」などと出ていた。ふらりと寄った書店には、来年のカレンダーまで売られていた。まるで、今すぐにでも今年が終わるかのように、すさんだ気持ちに追い打ちをかける。まだまだやらなければならにことが山ほどあるのだ。「そんなにせかすなよ、まだ10月じゃないか」と心の中で呟いていた。
 ふと気がつくと、お銚子の隙間から困ったような顔をした店長が見えた。きっと怒っているにちがいない。「済まなかった」。飲み屋のカウンターで寝てしまったようだ。
 覚つかない足取り、曖昧な記憶、ん?「おれは狂牛病なんかじゃねぇぞ、政府はキチンと責任とれよな」と、かなり狂っているのが自分でもよく分かった。
 当分の間おとなしくしていようと思った。それしかないだろう。そうだよな。
 あばよ、競馬場。
○月×日
 実にくだらないことだが、ちょっとした発見をした。
 以前、中央線の武蔵境から出ている西武多摩川線に多磨墓地前という駅があった。ホームに立っている白い大きな駅名表示板の「ぼち」という平仮名書きの濁点の部分がマルに悪戯されており、「たま」や「ぽち」といったかわいい仔猫や犬を連想したりして、許せないけど笑ってしまったことを思い出す。(本年3月28日、駅周辺に公共施設が沢山出来たという理由で、駅名が多磨に変更された)←telでききました
 ところが、最近見つけた中央線国立駅のはスゴイ。各駅のホームに最低2つか3つはある、天井から吊してある横長で長方形のプラスチック製の大きな表示板です。駅名が漢字、平仮名、アルファベットの3種類で、大変見やすく表示されているのだが、モンダイはアルファベットの部分。見事というか、なんとも巧妙なのだ。正規の綴りは「Kunitachi」だが、一部分が細工され、チョー赤面しそうな「とある」言葉になっている。それは真ん中の「itac」がキレイに消されてあり、「h」が「n」に変えてあるのだ。もうお分かりだろうが、ここに読み方を記すことが出来ないのが非常に残念である。
 それにしても暇なヤツがいるものだ。西武線のは背丈ほどだが、JRのは高いところにあるため、脚立でも用意しないと悪戯は出来ない。
 乗務を終えて区に戻ると、私は早速同僚達に報告をした。すると、誰一人と気付いていないばかりか、私が一番暇なヤツということになってしまったのだ。皆は私のようにキョロキョロしていないというわけである。私だってたまたま見つけただけなのに……。ええぃ、いっちゃうぞ、デカイ声で、「くん……」。やっぱりいえない、おじさんには。
○月×日
 いつものことだが、ヘトヘトに疲れて部屋でうたた寝をしていた。するとアストラから電話があり、来月号の原稿が足りないという。
 気にしてたが、日にちだけが過ぎていったのだ。「×日まで2枚半」だって。明日、明後日ともう2日しかない。どうしようかと迷ったが、既にかなり酔っていて、もはや何をやってもダメなことはよく分かっていた。仕方がないから「明日があるさ」と、イソジンでうがいをしただけで、急いで布団を敷き、爆睡するしかなかったのだ。
 今日は午後からの遅い出勤なので、時間はある。書こうと思う。手帳を捲って、この一週間何をしていたのかと振り返ってみた。
  「×日、ウォーターボーイズ」とあった。そうだよ、映画を観たのだ。男子高校生がシンクロに挑戦!?するという青春ものだ。初めは気色悪いと思ったが、テンポのいい演出でなかなかの見応えだった。目標を立て、やり遂げる。生きていく上で重要なことは、こうした達成感ではないかと、無垢な姿に感動したものだ。
  「×日、送別会」。運転士試験合格者の激励会だ。東労組の若い子なので、知られてはマズイこともありコッソリと。車掌になってまだ1~2年だが、もうお別れだ。新天地で頑張ってほしい。
  「×日、2社から原稿依頼」。SとK社から立て続けに書いてくれと来た。本心は書きたい。でも自信がない。「考えてみます」と応えたものの、後日お断りするだろう。
 あとは組合の資料を作り、何通かの手紙やメール、ファクスなどの返事を書いたりで、結局は、毎晩サケ飲んで寝るだけの日々なのであった。
 実は今、11月11日午前11時11分で、FMラジオからジョン・レノンの『イマジン』がキッチリと流れてきている。今日は世界平和記念日なのだそうだ。この時刻に全世界の集会や家庭で、「争いのない世界を」の歌声とともに、米国同時多発テロやアフガンでの犠牲者を追悼すると、朝刊に出ていたのだ。
  『アバブ・アス・オンリー・スカイ』。ただ空があるだけか。そうだよな、今日のような青空が永遠なら、どんなにいいことか。
 さて、問題は2枚半なのだ。どうしよう…。

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