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サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/追悼 初飛行 国労冬物語

■月刊「記録」2002年1月号掲載記事 

○月×日
 北海道へ行って来た。
 職場の仲間の人と秋の慰安旅行である。これまでは、JRを利用して、東北や伊豆の温泉というのが定番だったが、今回はガラリと趣を変え、「ちょっと行って来るから」とJALでひとっ飛びなのだ。
 全員夜勤明けなので、午後の便で夕方に到着。札幌に一泊して、翌日は小樽を回り、夕方には東京へ戻るという強行軍だったが、せっかく来たのだから闘争団を訪ねてみたいと思いつつ、仕事は御法度の団体行動でもあり、結局は、ジンギスカン、ラーメン、寿司などの飲み食い大贅沢三昧を楽しんできた次第である。
 札幌ではちょうど「ホワイトイルミネーション」が始まったばかりで、幻想的に照らし出された駅前通りから大通公園の街並みを見物したわけだが、雪もチラホラ、わしらとっつぁん道中の手はかじかみ、Gパンのポケットでは寒いのなんのって、「イルミネーションなんざぁ、東京じゃ1年中やっとるわい」と、アツアツの若いカップルを尻目に吠えまくるしかなかったのだ。
 それにしても私、皆に驚かれるわ、バカにされっぱなし……。というのは、飛行機が初めてなのである。子どもの頃デパートの屋上で「ブーン、ブーン」と乗っただけ。「ホントだってば」といくらいっても誰も信じてくれない。
 別に、私にとっては必要性がないからだが、今どき、ケータイは持っていない、車の免許はない、海外旅行はおろか飛行機すら乗ったこともないとなれば、年をとったら、おエライさんに「それでよく生きていられましたねぇ」と、国民栄誉賞を貰ってもおかしくないのだろう。
 で、内心ドキドキ・ワクワクしながら乗ったのはいうまでもないが、離着陸はスムーズで(なければ困るけど)、席が中央だったため景色がとんと見えずにちょっとガッカリ。「こんなものだろうな」というのが感想だ。
 いずれにせよ、いつもの中央線の東京・高尾間の所要時間で北海道まで行ってしまうのである。分かってはいるが、実際体験してみると心底感心せずにはいられなかった。「やっぱりおれって遅れているんだろうな」と世間知らずをちょっぴり恥じた。
  「無事、東京へ戻ってきたぞ」と、テーマは北海道旅行なのだが、飛行機の爆音で始まるビートルズの『バック・イン・ザ・USSR』を聴いて、また乗ってみたいと思っているのである。

 ○月×日
 ジョージ・ハリスンが末期ガンで「余命一週間」などというショッキングなニュースが飛び込んできた。
 非常に危険な状態であつということは、一月ほど前の新聞で知り、気にしてはいたのだが、まさか、こんなにも早く容態が悪化するとは思ってもいなかった。
 私はしばし、呆然として絶句してしまった。こうなったら奇跡を信じるしかない。私にできることといったら、CDを聴き、ジョージのことを思い浮かべることぐらいである。
 早速聴いた。出掛ける時は、ヘッドホンステレオにジョージのベストをセットして一日中聴いて過ごした。
 よくあることだが、お店や通りで、ビートルズの曲が不意に流れてきたりする。そんな時、ビートルズ大フリークの私なのに、「やったぁ」などと心が躍ることはまずない。何故か、いつも「やられたな」という感じで、胸がキュンと締めつけられるような思いに駆られてしまうのだ。そう、私にとってのビートルズとは、切ないものなのかもしれない……。
 それにしても、ジョージの曲はどれも慈愛に満ち溢れているように聴こえてくるのにはまいってしまった。悲しすぎるのだ。少し高温で細いという声質にもよるが、甘くて哀愁を帯びた曲がほとんどなのである。
 ビートルズの中では一番ハンサムな男、ジョージ。もの静かで、最も謙虚。リードギターという主役であっても目立つことはせず、さり気なくきっちりこなず。脇役に徹するとでもいうのか、控えめで驕りがない。私のように「ドアを閉めます(電車の)」とは決して言わない。「ドアを閉めさせていただきます」なのだ。とってもシャイでにくい奴。男の中の男というのが、私の抱いている世紀のスター、ジョージ像である。
 街では、小春日和の太陽に照らされたイチョウの葉っぱが金色に輝き、はらはらとひっきりなしに降っていた。生あるものは、いつかは枯れるものであり、終わりが必ず訪れる。分かってはいても、あまりに深刻で痛々しい。
 負けるなよ!!との私の祈りもむなしく、結局、彼は去っていった。ジョージ・ハリスン、まだ58歳だなんて若すぎる……

○月×日
 車掌分科全国連絡会という代表者会議が、大井町(品川)にある社員宿泊所で開催された。
 私は会長から、「本のお礼をしてほしい」といわれ、日勤が終わってから、夜の交流会(飲み会です)にだけ出席した。
 2年前に、本の宣伝も兼ね、ピンチヒッターで1度出席したことがあり、久し振りに懐かしい面々にお目にかかった。

  「こんばんは、不肖・齊藤です。『車掌だけが知っている・JRの秘密』、出版の時は、皆さんには大変お世話になり、本当にありがとうございました。
 あれから2年半が経ちましたが、本は、発売と同時に、爆発的な売れ残りで、その勢いは、未だに衰えておりません。
 いろいろなことがありましたが、まず、会社は、一切無視をするという態度でした。私の前ではなーんにもいわない。普通なら、呼びつけたりして、『あの本はなんなんだ』ぐらい聞きますよね。それが、徹底して無視です。
 で、私がいない所では、『齊藤が本出したの知ってる?』とか、『読んだ?』とか、いろいろ聞いてるわけです。
  『秘密』っていったって、読まなきゃわからない。おエライ人たちが『バカか、こいつは』と笑い転げて読んでいるのだろうなと、想像するだけで愉快でした。
 私は、私たち国労の現状を、少しでも広く知ってもらいたいという一心で書いたわけです。国労というと、世間では闘うというイメージがあるようですが、誰もが活動家ではなく、ほとんどが普通の人ばかりです。私も、この通りフツーです!?だから、一般組合員の視点でも、読んでもらえるように書こうと……。社会党も、国労もどんどん小さくなっていく。でも、おれ達間違っていないよね、ということを訴えたかったわけです。
 ところで、国労の仲間達ですが、残念なことに、私と話をする人がめっきり減ってしまいました。話をしても、その前に必ず『書かないでよ』がつくんです。
 親戚なんかは、『国労のことを書かなきゃ、面白くてよかったのに』といってます。また、おふくろはカンカンで、寝込んでしまいました。
 ……すみません。サケがマズクなるといけないので、この辺で終わります。 いずれにしても、国労が今の難局をどう乗り越えて、解決に向かい、いかに前進していくかです。闘争団は私たち以上に切実なんです。
 本当にありがとうございました。」

 この後は、再び注文をされたりして、楽しく飲んだのだが、「闘う闘争団」支援を鮮明にしたものだから、「賛成派というか、つまり正統派から離れちゃって、もう誰からも相手にされなくなるよ」などといわれたのであった。
 そんなのオカシイよ……、やれやれである。

 ○月×日
  『人らしく生きよう――国労冬物語』がBOX東中野でロードショー公開された。
 国労の運動に深く共鳴したという「ビデオプレス」の代表である松原明さんと佐々木有美さんが、足かけ15年にもわたり、北は北海道から南は九州まで国労を追っかけ、取材撮影した膨大なフィルムを、劇場用に100分にまとめあげた集大成だ。
 ちょうど国鉄の分割・民営化当時から、先の、国労が四党合意受け入れをめぐって大揺れとなった全国大会までの闘いの足跡という大ドキュメントであり、まさしく私たち国労の記録そのものなのである。
 映画は、1047名が不採用に至った経緯から、闘争団とその家族の過酷な闘いの日々、当局の理不尽な攻撃に抵抗する組合員の姿、全国大会の様子、集会や会議等、ありのままに描かれてあり、実にわかりやすいものとなっている。
 誰もが感動してしまうのは、なんといっても、大会で、闘争団の妻の一人(藤保美年子さん)が壇上に駆け上がり、「私たちの人生を勝手に決めないで下さい」と必死に訴えるシーンだが、これまで夫の闘いを支えてきた妻たちが「私たちはまだ頑張れる」と全面に出てくるあたりは、思わず胸が熱くなり、いても立ってもいられなくなる。
 また、闘争団の言葉も忘れられない。「10年やったんだから、あと10年はやれる。だから、安易に政府やJRに譲歩してほしくない」「基本を曲げてまで屈服するのなら、解決などしないでこのまま年をとったほうがましです」。ああ、あなたはやさしくて、もっと強い。
 会場は共感の涙で静まりかえり、上映後には拍手が沸き起こった。まさに人ごとではない。現代のリストラ社会に勇気と希望を与えたといっても過言ではない。
 それにしても、こんなにまでイジメや差別があるのに、なぜ国労をやめないのか。なぜうまく生きることを拒絶するのか。それが、松原さんと佐々木さんが描きたかった最大のポイントだったという。
 その答えは、この映画のタイトルが全てを物語っている。「人らしく生きよう」。

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