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サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/台風 秋 団結しよう

■月刊「記録」2001年10月号掲載記事

○月×日
 大型の台風11号は東京への直撃は免れたものの、いくら水不足が解消されるとはいえ、2日間にわたり止むことのなかった雨にはいささかうんざりさせられたというのが正直な気持ちである。時速15キロという自転車並みのゆっくりとした速度だったため、同じ場所に長時間居座るというたちの悪い台風だった。
 それでも私は、「寝ている間に通り過ぎるだろう」とタカを括っていたのだが、朝起きてみると横殴りの雨でガッカリし、溜息交じりにテレビをつけてみると、まだ東海地方をうろうろしていたのだった。
 NHKでは、朝から晩までのほとんどの番組の予定を変更して、台風情報一色という熱の入れようだった。気象情報から始まり、台風の進路に合わせた各地の状況中継、鉄道、空、道路の交通機関の様子といった具合だ。
 JRは運転を見合わせるなど、本数を減らしたりと相変わらずてんてこ舞いなわけだが、私は利用者の心配や不安は重々承知しつつも、関心がどうしても会社の方に向いてしまうのだった。約30分おきに映し出される、東京駅の新幹線ホームから新宿駅南口、そしてオレンジ色のわが中央線(そう、乗務中の同僚が映ったりする)とお馴染みの光景を見ていると、民間企業JRとして、広告やCMに莫大なお金をかけなくても十分すぎるほど大宣伝になっているのではないかと、台風とは全く関係のないことを考えたりしているのだった。
 ニュースは「JRでは駅員を普段より増やして対応に当たっている」といっていた。「さて、おれはこうして家でのんびりしていていいのだろうか」などと、そわそわ落ち着かなくなり一瞬不安が過ぎるのだが、休みだから仕方がない。同僚達の四苦八苦しながら職務に専念している様子は手に取るようによく分かっているつもりだ。しかし、私には呼び出しの電話もないし、神に誓ってこれでいいのである。例えビールを飲んでも、ヘルニア体操をしようが、休みなのだから何をしてもいいのだ。テレビと窓の外の風雨を他人事のように眺めていても許されることなのである。
 台風は昼頃に伊豆半島に上陸し、その後勢力を弱めながら東京湾を通過して、午後4時頃には千葉に上陸したという。
 夕方には、それまでの雨まじりの灰色の空から青空が覗き、陽も差してきた。首都圏のダイヤもラッシュ時間帯にはほぼ通常運転に戻すということだった。とりあえずは一安心である。私もようやくテレビの前から離れることができた一日であった。
○月×日
 助役が、「斎藤さん、本出したんだって、いつよ、知らなかったよ、おれにも見せてくれないかなぁ」と、偶然かもしれないが、人のいないところを見計らうかのようにコッソリいってきた。
 今年の春に石和温泉駅(山梨県)から赴任してきたばかりだが、20年程前、うちの職場で車掌として一緒に乗務していた先輩だから知らない人ではない。
「ほんとは本屋で注文してほしいんだけど…、あ、そういえば、そこの東西書房(三鷹駅ビル)に23冊置いてある(私が数えた)から買いに行って下さいよ(そうなのだ、どうしたわけか最近になって置いてある)」といったのだが、「ま、いいか」と思い承諾した。
「そんな趣味があったんだぁ…、で、どんなこと書いたの?」と聞くので、「そうだね、あなた方がね、おれたち国労のことをあまりにもヒドクいじめるから、そんなことをしちゃぁいかんよ、みたいなことだけど、ま、あまりにも大きな問題だから、日常の出来事を綴っていけば、自分の考えも伝わるんじゃないかなぁと思って、コツコツ書き溜めたものを出版社がまとめてくれたわけ…、そう、全部あったこと、事実、今度持ってきますよ」といった。
 ある一面だけを捉えるのではなく、部下の思いを汲み取るという気持ちで読んでもらえればそれでいい。きっと、暑さも忘れて、まるで宗教のようながんじがらめに凝り固まった頭も冷えてスッキリするのではないかと思っている。
 欲を言えば、読み終わったら感想文原稿用紙10枚を私に提出すること。期限は8月末日、厳守。夏休みの宿題としてね。
○月×日
 辺りはすっかり秋の気配が漂っている。
 凌ぎやすくて身体もラクだ。なのにやる気が起こらない。普通は逆だろう。困ったものだ。張り合いがないんだ。しっかりしてもらいたい。日中はせめて30度位まで上がってほしい。がんばれ高気圧。人の気持ちは天候に左右されるものだ。
 熱燗を飲んでいる。ちょっとひんやりするからと単純この上ない。生ビールのようにジョッキで豪快にとはいかない。チビチビやっているとしんみりしてくる。注文するときも心なしか神妙だ。べつに気取っているわけではない。いい気なもんだ。
 スーパーに寄った。生きのよさそうなサンマが出ていた。氷漬けになってキラキラと輝いている。一匹180円、北海道産、刺身用とある。たっぷりの大根おろしとジュージュー塩焼きで食べた。初物は美味い。これから当分サンマの日々が続く。
 湯ぶねにもの静かにつかっている。わっせわっせとシャワーばかり浴びていた夏だった。もの思いに耽るかのようにすっかりおとなしくなってしまった。
 仕事をしてサケ飲んで、風呂に入って寝るだけの一日。芸術ともスポーツともほど遠い秋の始まりかな。
○月×日
 定期全国大会の日程が決まった。10月13・14日の2日間、東京・社文会館で開催される。
 大会の性格については、
①解決案が出て、その批准を求める。
②解決案が出る前で、このまま「四党合意」での闘争継続を示す。
③解決案が出て(も出なくても)、拒否をして、新たな闘いを提起する。
などが考えられるが、これから決定するという。
 大会まであと2ヵ月だが、現状のままでは解決案は100パーセント出ない。私はこれまで勘違いをしていたようである。
 何回かの四党協議の中で、最も重要と思われる意見(四党からの要求)は2つあった。
 1つは、「JRに法的責任なしを大会決定しながら、裁判(最高裁)を続けるのは矛盾している」。もう1つは、「国労は反対派の意見(二分している)をまとめられるのか」というもので、協議後の記者会見(3月15日)で、座長である甘利明議員(自民・元労相)は「矛盾を残したまま解決に至るということはありえない」といっていたのであった。勝手に矛盾だと決めつけられても困るが、だから解決案は出ないのである。
 国労は1つ目については、訴訟の取り下げは解決時であるとし、2つ目については、36闘争団に結集するように呼びかけ、現在努力中だとしている。
「四党合意」では、訴訟の取り下げは社民党から国労に要請するとなっている(解決手順第二項目目)。にもかかわらず政府・自民党は取り下げが解決への前提条件であるかのようにいい、大会決定後の解決手順に明記されている第一項目目の、与党からJR各社に要請云々すら行っていないのはどうしたわけなのか。
 また、国労は「四党合意」の枠内に1つにまとまるようにということだが、つまり、自民党は国労に対して「国労の団結を求めている」のである。なんだかオカシイ、ちょっとヘン。きな臭いではないか。これは怪しいと思ったほうがいい。
 政府・自民党が国労の団結を切願しているのは、何も解決案を出すことの障害としてではないと捉えなければならない。政府相手に闘い続ける勢力が少しでも小さくなるにこしたことはないからだ。
 さらに、その一方では、国労組織内に対立と不信が増大するのを期待して、国労自らが瓦解していくのを手をこまねいて待っているからに他ならない。そう考えれば、相手側には、まさに一石二鳥といえる。
「四党合意」は国労解体の総仕上げの意味を持っている。国鉄の「分割・民営化」が総評解体・国労潰しが目的であったように、それとまったく同じことが行われようとしているのだ。
 悲しいかな、国労本部はすべて知っていてやっていることなのだろう。しかし、闘争団と組合員のことを本気で思うなら、これ程行き詰まった「四党合意」による解決は見直したほうがいい。いつまでもすがりついているのは止めよう。幻想を捨て、初心に返り、どんなに苦しくても新たな運動の再構築を計るべきではないだろうか。
 大会では、「四党合意」に賛成した代議員は、「解決案が低水準であれば、『四党合意』を大会で拒否して引き返せばいい」といった、昨年来の4回にわたる大会発言をもう一度思い出してほしい。また、本部には、これまでの事実経過を誰もが納得できるように、正直に報告してもらいたい。
 いずれにせよ、この土壇場に来て、国労は再生するかの瀬戸際に立たされたといっても過言ではない。団結以外に道はないと思う。

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