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サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/民営化 奇跡の生還 新聞取材

■月刊「記録」2001年7月号掲載記事

○月×日
 今国会(第151)には、JR本州3社(東日本・東海・西日本)の完全民営化法案が上程されている。
 完全民営化とは、純民間会社となること。政府保有株(JR東は50万株)を売却し、これまでの「JR会社法」という法的規制から外れるということである。
 今までは、代表取締役の選任や、毎年度の事業計画など、国土交通省の認可が必要であったが、今後は一切しなくてすむのだ。いいかえれば、政府にお伺いを立てることなく、完全に自由にふるまえるということになろうが、どっこい、そうはいかないのでした。
 法案に目を通すと、「JR本州3社を特殊会社として規制しているJR会社法の適用対象から除外する」とあるものの、「当分の間」とした上で、国土交通大臣による「指導・助言・勧告・命令」といった、新たな規制ともいえる「指針」が盛り込まれているのだ。
 完全民営化といいながら、指導監督するのはおかしいという話も出たそうだが、扇(国交)大臣によれば、「娘を嫁にやる親の気持ちで、一切関知しないでいいようになることを望みながら、しばらくは経過措置で見守っていく」(3月15日、参院国交委員会)ということなのだそうだ。
 それもそのはずかもしれない。JRは公共性が極めて高いばかりでなく、なにかと「特殊」な企業である。完全民営化により、利潤のみを追求するあまり、鉄道輸送の根幹である安全が軽視されてはならないし、赤字ローカル線の廃止や、無暗やたらの事業の拡大は、周辺に深刻な影響を及ぼす結果となるのは分かり切ったことだから、共生共存をしていく意味でも当然といえるだろう。
 国労は、法案の上程にあたり、前述のような内容も含めて、政府の強い指導を求める見解を発したが、その項目の一つに、安全輸送に重大な影響を及ぼしかねない状況として、JR東日本会社の東労組との異常な癒着関係と歪んだ人事政策にも厳しく触れている。
 既に、公安調査庁、警察庁及び国会でも度々取り上げられている周知の事実だが、東労組には「革マル派」が多数浸透しているという点だ。
 公共交通機関であり、国民の財産を引き継いだJRに極左暴力集団が浸透していることは、国民・利用者にとっても看過できることではない。反社会的な行為を繰り返す革マル派はJRには不必要であるとして、正常な労使関係の確立に向けて、完全民営化を期に強く訴えているのである。
 それにしても、JR会社は何故、このような指導を受ける前に、自らこのような関係を断ち切ることができないのか。私は、このことが10年以上も前から不思議でフシギでしょうがないと思っているのである。
○月×日
「20%はどないなってんねん、はようハッキリさせんかいな、ホンマにもう」などと、なぜか関西弁が混じったりして、悶々たる日々が続いていたのだ。
 胃カメラを飲んだのは約10日前。ドクターの説明では、「胃潰瘍・十二指腸潰瘍はなし。きっと、びらん性胃炎だろう。念のため、組織を採って検査へ回す。大丈夫、80%は良性だろうから……」ということであった。
 本日は、ようやく検査結果を聞きに行く日である。「今では、胃癌なんて切れば治る病気だから…」と、覚悟は十分出来ていた?わけはないじゃない、こんなヤワなおれがさ。
 名前を呼ばれ、診察室へ入る瞬間、緊張は頂点に達した。「何千人、いや、何万人にそうしてきたのだろうが、おれにだけはウソなど通じないからな」などと内心荒れ狂っていたのが、ドクターのやさしそうで穏やかな顔を目にした途端、まだ何もいわれていないのに、まるで観念でもしたかのような素直な気持ちに戻っていたのである。もうどうにでもなれというのか、緊張の糸がプツリと切れたのだ。
 そんな私にドクターは静かに告げた。ガーーン。「悪性のものはなし。単なる胃炎で、薬もでません」。これがショックといわずして何だろう。これまでの心配や覚悟を思うと、私、ハッキリいって気が抜けました。
「単なる…」って、そんな殺生な。おれってやっぱり単純なのか? でもよかった。本当に安心した。別に、何もやっていないし、苦しんだわけでもないのに、「おれはやったぞ、奇跡の生還だ。た・大変なことをやり遂げたのだ」と、いつになく感激したのだった。バンバンザイである。
 しかし、私は自らを深く戒めた。「サケもほどほどにしないといかんぞう」と。うむ、胃肝臓だな、やっぱり。
○月×日
「闘う国労闘争団」を支援する、「国労闘争団共闘会議」(仮称)の結成準備集会が、5月30日、日比谷公会堂で開催された。
 国労はこれを「反組織的行動」であるとして、再三再四、中止や解散を求めたり、一般組合員にも、この行動には一切参加しないようにと指示を出していたのだが、ついにこのような事態となった。
 会場には約3000人(主催者発表)が集まり、「JRの法的責任を追及し、最後まで闘う闘争団と苦楽を共にする」と団結を誓い合い、「志や思いを同じくする全国の労働者、市民と手をつなぎ、新しい運動の輪を広げ強めていく」とする決議を採択した。共闘会議は9月をめどに正式発足するということだった。
 それにしても、こうした事態は決して好ましいものではない。それは「闘う国労闘争団」自身も思っているはずである。私は、参加者達の熱気とは裏腹に、この先国労はどうなるのだろうという複雑な思いばかりが募り、虚しい気持ちでいっぱいなのだった。
 しかしながら、こうした事態になったことは必然なのである。これまでの混乱が何故起こったのかを不問にしてきた本部は、ことの重大さを真摯に受け止め反省しなければならない。
「大会決定だから従え」という本部の態度は、国鉄からJRに至る、強権的で不当極まりなかった当局の姿とだぶってしようがないのだが……。国労を信じ、仲間を裏切れなかったから不採用になった、闘争団の今後の一生に関わる大問題が、「四党合意」の枠内で解決されようとしている。この最も重要な局面の中で、さらに混乱を招くようなことを望んでいる一般組合員は誰一人として存在しない。本部、しっかりしろ!!
○月×日
 いやはやなんとも……、新聞に出てしまった。
 毎日新聞、夕刊(6月7日付)である。「ホーム・電車内暴力事件多発」と題して、紙面半分にも及ぶ特集記事となっている。そして、なぜかJR中央線が取り上げられているのだ。
 実は私、3日前に取材を受けたのだった。「なにも私でなくたって……」、私などサイテイだし、高い見識をもった相応しい社員はいくらでもいるのに、やはり、本を出したりしているからしようがないのか。
 まず、「車掌さんというと?」から始まったわけだが、「はい、一番前にいるのが運転士で、車掌は一番後ろに乗っています。『安全正確な輸送はオレが引き受けた』とハンドルを握っている意欲満々な運転士に対して、車掌はといえば、一番後ろの隅っこで、ひっそり謙虚に『次は駅、出口はドアの開いた方』とかの、ほとんどのお客さまが分かり切ったアナウンスをしたり、ドアを開けたり閉めたりの仕事をしているのです。」とはもちろんいいませんでしたよ。でも、ほぼそのような感じで、1時間以上にわたり、時には的外れで、まるで小学生のように応じていたのでした。
 そんなのを電光石火の如くまとめて記事にして下さったものであり、読んでいただければ誠に幸甚に存じ上げる次第なのでございます。
 さて、こうして特集にまでなるくらい、首都圏では凶悪な事件が相次いでいることは事実なのだ。冒頭「なぜか」と書いたのは、中央線に限っては、今のところそれ程の事件はないからだが、毎日新聞によれば、駅や車内での暴力・不法行為の件数が、この4年間で2倍に増え、2000件近くに達しているのだそうだ。
 最近では4月29日に、東急田園都市線三軒茶屋駅のホームで、車内で足を踏んだ、踏まないといったことから口論となり、4人の少年グループに殴られた銀行員(43才)が死亡した事件。その1ヵ月後の5月26日には、西武線西武遊園地駅で「少し詰めて下さい」といったことから、若い男に暴行を受け、会社員(26才)が死亡するという事件があったばかりだ。
 いずれも、マナーをめぐるささいなトラブルが原因で、尊い生命までが奪われている。周囲の大勢の人の目を何とも思わず、すぐに逆上し(キレる)暴走してしまう今どきの若者の傍若無人ぶりは、様々な要因があるにせよ、豊かさの中で甘やかして育てた大人のツケなのだ。忍耐や辛抱などはもう死語なのだろう。
 私達乗務員には、安全の確保という義務があり、黙って見過ごすわけにはいかないが、相手が刃物でも持っていたら、とても太刀打できるものではない。
 このような事件が続くと、お客さまに注意するのもはばかられるが、当たり前のことをすることが通用しない現代社会はまともとはいえない。
 JR東日本は、八王子みなみ野駅員刺傷事件をきっかけに、ガードマンによる巡回を強化するなどの防犯体制の見直しを進めているという。
 また、警視庁では、警察官に駅構内を巡回させるなど、駅や電車の警戒を強化することを決めたという。
 こうしたやり方は、私個人としては好まぬが、どうしても駅員を配置しないというのであれば、やむを得ないことなのだろう。
 そんなこんなで、新聞を読んでほしくて、何人かの友人に電話をした。「そう、夕刊に載っているから。毎日だよ、毎日」ん? 今日1日だけなんだが……。

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