« サイテイ車掌のJR日記・斎藤典雄/二次試験合格 アジ いぶき | トップページ | 行動派宣言!/風の学校 »

サイテイ車掌のJR日記・斎藤典雄/日本のオトーサン リーダー研修 団結まつり

■月刊「記録」1999年1月号掲載記事

○月×日
 遅ればせながら携帯CDプレーヤーを買った。子ども達は持っていたのだが、私はヘンに我慢して持っていなかったのである。
 これってイイ。イッツ・グレイト! ワンダフル。何年もの間、車内でも街中でもヘッドホンを耳にしたその姿を見かけてはいたが、まさに、いつでもどこでも自分の世界が持てるという気がする。通勤時間も新聞や雑誌に目を通すだけでなく、充実している。暇を持て余すことがまったくなくなった。魅惑のリズム「タンゴ」、大人のムード「ルンバ」、異国の香り「シャンソン」と何から何まで聴けるのだ。
 こうやって通勤時間にゆっくり音楽を聴きながら眺めていると、日本のオトーサンはつくづく忙しそうである。家のローンに追われ、子どもの教育費に追われ、駅の立ち食いソバだって味わって食べている暇はなさそうである。
 みな一心不乱に突き進む。階段は足早に駆け上がる。エスカレーターだって歩いちゃう。ジッとしていることがない。動いていないと気が済まない。サメやマグロのように止まったら最期と考えているのかもしれない。動きたくとも動けない超満員の通勤電車は苦痛でしかないだろう。お気の毒さまである。

○月×日
 「第三回リーダー研修」が、東労組の緊急申し入れにより中止となった。
 「リーダー研修」とは、「職場のリーダーとして必要な知識を身につけ、視野を広げることを目的とし」「応募資格は勤続四年以上で30歳未満の指導職等社員」「研修期間は約二ヶ月間」とJR東日本が作成したパンフレットに書いてある。
 私には無縁なものだが、なにやら昨年から、リーダー研修を終了した一部の東労組組合員が、職場で公然と「反JR東労組」の言動をあげたり、小林峻一著の『JRの妖怪』や『週刊文春』の記事を回し読みしていたことが発覚したらしい。東労組は「これは会社幹部が仕かけたと思われることから、組織破壊行為であり、研修の全行程を即刻中止すること」と申し入れ、この9月から数回にわたって団交を行っていたのだった。
 私の手元に、東労組が発信した四一ページにもおよぶ「JR東労組連絡」なる団交3回分の議事録が掲載されている文章が回ってきた。膨大でウンザリしてしまうが、パラパラと目を通してみると、東労組は「中止」を求めて頑として引かず、同じようなことを延々とやり合っている。従って、会社の回答は「再三再四申し上げているように……」という具合だ。
 「11年間パートナーとしてやってきた労使関係者が壊れたら誰が責任をとるのか」「会社がとる」「会社という人間はいない」と、笑えるようなやり取りもあるが、笑っている場合ではない。「目的に合わないリーダーが育った事実がある」「事実を認めたのなら中止だ」「冗談じゃない」「バカにしてないまでもナメている」と、まるでつるし上げのようである。
 一方会社側は、「『JRの妖怪』や『文春』については、JR東日本を壊そうとする悪意に満ちた本だと考え、貴側の認識と一致している」「これらの東労組破壊の攻撃には断固闘って潰していく」「今回の事態は偶然であり必然性はない」「系統的、組織的なものでもなく、研修とはつながっていない」「中止という申し入れに対しては、中止するのではなく、さらに議論を深めて一緒に続けていきたい」というようなことを述べている。
 まともなようだが実にオカシイ。まさに異常で看過できない。会社自らが労働組合法の趣味を踏みにじり、特定の労組と癒着し、不当労働行為に加担していることを吐露しているのだ。結果、この後の団交で会社は腰砕けとなり「リーダー研修の中止」を行なう旨の回答をしたのである。東労組にはなお絶大なる力があるのだ。なんまいだぶ、なんまいだぶ。あぁ、なんて立派な会社なんだろう。

○月×日
 昨日までの雨模様ですっきりしない天気が嘘のような、実に爽やかな秋晴れとなった。今日は国鉄闘争支援中央共闘会議が主催する「団結まつり」のため、亀戸中央公園(江東区)まで出かけた。
 北海道・九州の闘争団をはじめ、国労を支援する労組や団体が130軒以上もの模擬店を連ね、メインステージではさまざまな組織から職場での差別やいじめの実体が報告された。国労に向けられた攻撃は、労働者すべてに向けられたことであり、根っこはひとつ、共に闘おうという連帯の決意が次々と述べられた。
 こういう場に来ると決まって何人もの懐かしい人と出会うことになる。若いころ勤務していた駅時代の先輩など、「久しぶりですねぇ」とポンと肩を叩いたらヨロけてしまいそうである。ま、チト大袈裟だが、皆すっかり年を取ったんだとつくづく思う。
 年がら年中、不平不満もいわず、ただ黙々とこのような「運動」を積み重ねているうちに、10年もの長い歳月が過ぎてしまったのだ。まさに人生を賭けた闘いであるといっても過言ではないだろう。
 いわれなき差別、理不尽な攻撃にも屈することなく、苦しく悔しさ一杯の日々を乗り越えてこれたのは、志を同じにする大勢の仲間がいたからだ。人間は一人では、やっぱり生きていけないのだろうか。私はそうだが。
 それにしても、社会人となってそのほとんどを闘争に費やさねばならなかった仲間も大勢いるのだ。憤りの念を禁じえない。少なくとも闘争団の仲間は国の施策により人生を振り回され狂わされたのだ。何度でもいうが政府とJRは早急に解決を図るべきではないか。
 国労本部の宮坂書記長を見かけたので挨拶に行った。随分前の件だが「その後どうだい?」と心配してくれた。「小山によく言ってあるから」とも言う。小山氏とは、うちの職場の同僚だが国労八王子地区本部書記長という要職にあり、近い将来は中央で活躍する器だと私が見込んでいる人だ。私は逆に「小山をかわいがってやって下さい」と言って、以前も差し上げたことのある『記録』を手渡した。
 帰りがけ、偶然にも国労本部の高橋委員長と隣り合わせになり、「組合員です」と声をかけた。「ごくろうさん」ねぎらいの言葉が返ってきたのだが、そのとき私は「補強案で是非まとめて下さい」と思わず正直な気持ちを口走ってしまった。委員長はムッとした様子となり、無言で連れの人と一緒に向こうへ離れて行かれた。
 本部もタイヘンなのだろう。委員長と書記長の考えが違い、揉めているという噂はやっぱり本当のようである。
○月×日
 いつの間にか木枯しの吹く季節となった。「補強案」は全国的にも「認められない」という反対意見が多いようで、「お蔵入りするのでは」といった情けない噂もある。「補強案」を金庫にしまった国労幹部が鍵を紛失したとかで、二度と取り出せないという「冗談はよせ」と言いたくなるようなデマまで乱れ飛んでいる。
 国労はいったい何処へ行こうとしているのか。迷走してはいけない。誤らないでほしい。これまでの闘いをキチンと総括し、最善のレールに乗ってほしい。前途は多難だが、真摯な討論で議論を深め、臨時全国大会開催にこぎつけることを願いつつ、冬仕度に忙しい日々である。
○月×日
 第48回国労八王子支部大会に代議員として参加した。 夏の全国大会で決定された運動方針を、東日本・西日本などの各エリア本部大会を皮切りに、地本、支部、分会と順次開催して、議論を深め、意志統一が計られる。 ここに八王子支部は、全国大会で物議をかもし継続討議となった「補強案」の提案者である国労本部宮坂書記長の出身地で、宮坂シンパが多いことからも何かと注目を集めていた。
 55名の出席代議員が「補強案」について意見を述べたわけだが、私の期待とは裏腹に反対意見が続出したのであった。
 「先が見えない」「不安をまねく」「解決できる保障がない」「12年間を否定するもの」「敵の思うツボ、丸裸にされるだけ」「闘う労組の解体につながる」……等である。
 一方、少数だが、職場から出た組合員のさまざまな意見だけを報告するに止まり、疑問を投げかけつつも反対はしないという、なんとも歯切れが悪い発言が目立った。賛成や支持と言明したものは皆無であった。
 私も一言だけ発言しようとチャンスを伺っていたのだが、このような雰囲気で突如として「支持する」とは言えなかった。ましてや新米執行委員の分際だ。限りなく情けないが付和雷同を決めこむしかなかったのである。結局、書記長集約では引き続き職場討議をするということになった。
 討論の途中だったが、北海道北見闘争団の鈴木さんという方が挨拶された。「5・28の判決は信じられなかった。あまりのショックで当日をどう過ごしたか思い出せない人もいたほどだ。しかし今では心機一転、新たに闘う体勢が整った。精一杯闘い抜く」と、決意を述べられた。会場からは「ヨシ」という檄が乱れ飛んだのはいうまでもない。いつのときでも「断固闘う」というのは威勢がいいものだ。
 しかし私はそのとき、「ほんとかなぁ、そうじゃないだろう……」と思っていたのだ。
 確かに改革法を承認するというのは首切りを認めることで、最後まで闘い抜くことがまさしく正論である。私も「補強業」については路線転換・全面屈服であるとしか受けとれないし、どれ一つ認め難い。ここまでしなければならないのかと思うと、無念極まりない。
 しかし、一日も一刻も早く解決したいと願う気持ちは皆一致しているのである。私は今この時期になんとしてでも解決しておかねばならないと強く思うのだ。
 つい先日、北海道音威子府闘争団(48名)の家族と子ども達の作文集を読んだ。5・28判決以後のそれぞれの思いを綴ったものだが、「たいへん」という一言がどんどん広がっていき、「これ以上のたいへんなことはない」というふうに感じられた。それも一月や一年なんかじゃない。10年間である。その間、私達国労本体には想像を絶するといっても過言ではない生活を余儀なくされてきたのである。10年で十分ではないか。もうこれ以上長期化させるべきではない。
 大問題となっている「補強案」は、本部としてもこれまでにない重大な決意と、組合員への責任をもって提案されたものと受け止めなければならない。国労の5年、10年先の展望も視野に入れることが重要である。現在の組織人員は2万8000人。毎年2000人もの退職者を送り出す現状では、会社がもくろむ国労自然消滅という事態も危惧される。正論や原則だけでは組織が保たないということも認識しなければならない。そして何よりも、財政的に闘争団を支え切れるかという難題もある。
 現状をふまえ、将来を見据え、JR総連(東労組)に代わって、私達がいかに軸になるかを模索し、国労組織を発展させて行かなければならないのではないか。
 解決には痛みも伴うだろう。しかし、この10年余の闘いで乗り越えてきた苦難の道程を振り返れば、私達国労には怖いものはなく、出来ないことも何一つとしてない。 いずれにせよ、闘争団は本部に本音をぶつけてほしい。一番大切なことは闘争団が納得できる内容であることが最低の条件だと思う。私は、こうまでしなければ動かない政府とJRに満身の怒りを込めて、「補強案」により、さらなる一致団結を願い、この難局を大胆に乗り切り前進していきたい。

|

« サイテイ車掌のJR日記・斎藤典雄/二次試験合格 アジ いぶき | トップページ | 行動派宣言!/風の学校 »

サイテイ車掌のJR日記/斎藤典雄」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/389724/7819908

この記事へのトラックバック一覧です: サイテイ車掌のJR日記・斎藤典雄/日本のオトーサン リーダー研修 団結まつり:

« サイテイ車掌のJR日記・斎藤典雄/二次試験合格 アジ いぶき | トップページ | 行動派宣言!/風の学校 »