« 行動派宣言!/チェルノブイリの子供達に・千葉の会 | トップページ | 行動派宣言!/21世紀協会 »

サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/警告書 肝機能 高校生

■月刊「記録」1999年11月号掲載記事

○月×日
 最近、出勤前に「今日は何が起きるのだろうか」と気になってしょうがない。
 ダイヤは乱れるのが当たり前といった感じで、首都圏のJRはこのところトラブル続き。なかでもなぜか中央線がダントツだから始末が悪い。私達はこれが本業なのだから、ウンザリながらもそれなりに対処して、日々の業務に従事するしかないのだが、目的を持ち、計画を立ててJRを利用しているお客様にしてみれば、いうまでもなくたまったものではない。
 すでに新聞報道でも明らかなように、運輸省もこうした事態を重視しており、9月3日には関東運輸局長名でJR東日本に対し「警告書」を出した。警告書は97年の中央線大月駅で起きた衝突・脱線事故以来ということである。
 このなかには「特に中央線については故障箇所の復旧に手間取り、運転再開までに長時間を要し、利用者に多大な影響を与えた」と、中央線のことがしっかり書かれており、「公共輸送機関としての社会的信頼を著しく失墜させていることは誠に遺憾である」「輸送管理に不十分な点があるものと考えられる」と、JR東日本を厳しく批判するとともに早急に改善策を講じるよう、強く求めている。
 警告を受けたJR東日本の松田昌士社長は10日、運輸省を訪れ、「心からの深いお詫びを申しあげます」と陳謝し、電車の運行をコンピュータで管理する「ATOS」(東京圏輸送管理システム)の改修などの対策と、ダイヤ回復を指示する中央司令室の体制を強化する旨を述べたという。
 10月ごろまでには改修を終える予定ということだが、もはや現場で働く私達社員の安全も脅かされているといっても過言ではなく、一刻の猶予も許されない非常事態だ。
 雨と台風の9月はもういいから、早く10月になってほしいものである。

○月×日
 私の本がいつの間にか二刷になり、以前にはなかった地元・八王子の書店にも並んでいる。メチャクチャ嬉しくってしょうがない。用もないのに連日立ち寄っては、「ガンバレよ」と声をかけたり、乱雑に置かれていると整えたり、お金があったらぜーんぶ買い占めたいという衝動に駆られてしまう。
 何もかも初めての経験なので、緊張すると同時に、こうしたワクワクした日々を送っているわけだが、本になるまでのさまざまな紆余曲折も、コッソリ一人ハラリと落とした涙も、いまとなってはどこかに吹っ飛んでしまった感じがする。本を手に取り、買って読んでくださった全国の方々に心からお礼を申しあげたい。本当にありがとうございます。
 さて、ここで正直に白状した方がいい。実は、わが家には悲しいことに売れ残りが山ほどあるのである。当初、分会の役員と話し合った結果、国労の団結強化と、部外の人にJRの実情を知ってもらうには、この本を読んでもらうのがいちばん手っ取り早いのではないかということになり、地方や地域の会議などがあるたびに宣伝して買っていただこうという結論に至ったのである。
 そこで、善は急げと、出版社にあらかじめ「1500冊は責任を持って売り切るから」と電話で伝え、Yさんと2人で出かけた。ところが出版社が近づくにつれ不安になり「1000冊にした方がいいな」と変更。出版社に着くや否や出た言葉は、1000冊はおろか、「500冊でお願いします」と自信なく心配そうに持ちかけたのであった。
 そうして早速、ウチに300冊、Yさんのウチに200冊がドーンと届けられ、営業開始と相成った次第。それでも出だしはなかなか好調だった。コンスタントに売れたのだが、約一ヵ月半が経過したいまでは、手ぐすね引いて待つだけとなってしまっている。
 それもそのはずだ。あちこちの会議といっても出る顔ぶれはいつも一緒なのである。酒なら「うまかったからもう一本買おう」なんてことにもなるだろうが、本はそうはいかない(一度読んだらおしまいなのである)。初めは50だろうが100冊だろうが、重さなどはちっとも苦にならずどこへでも出かけていったが、10冊持ち歩く重さが苦痛となった今日このごろである。
 読みが甘かった。チト軽率だったかもしれない。しかも、こんなに山ほど……。どうすりゃいいんだ。そう、なにより家庭に「秘密」を持ち込むこと自体が間違いだったのだ。

○月×日
 不肖の私が僭越だとは思うが、長野県の上山田温泉で行われた、国労東日本本部定期大会の傍聴に出かけた。
 全国大会を皮切りに各エリア本部大会、この後には地本・支部・分会大会と続き、国労全組合員の意思統一と団結が図られるわけだ。
 全国大会のミニチュア版とでもいおうか、顔ぶれはほとんど同じ感じである。ホテルの大会議室を会場に、代議員が約100名、全体で2~300名くらいが参加し、2日間にわたって「労使紛争の早期全面解決」(1047名の解雇撤回・JR復帰・不当労働行為根絶)をめざした真摯な討論が展開された。
 当初は、政府も「解決済み」だと相手にしなかった問題を、10余年の闘いにより、「解決しなければならない課題」とまで押し上げ、去る5月25日には、参議院の全政党七会派による早期解決に向けた申し入れを受け、政府および与党の幹事長から「解決に向け努力する」旨の公式の談話が示されたという現状を再確認し、政府談話を具現化させる取り組みを強化するということであった。
 全国大会での高橋委員長の特別発言にもあったように、解決の実現に向かっているこの流れを逃すことなく、時として進む勇気も、そして退く勇気も持ち合わせながら全力を挙げなければならない。
 闘いはまだまだ続く。自身と確信を持って一路邁進するのみである。

○月×日
 八月に受けた定期健康診断の結果がきていた。「すべて正常でした」というから戸惑っている。末永く健康でありたいと心から願ってはいるが、ここ数年は肝機能の数値がジワジワと上昇し、アルコールは控えめにという注意がいつも添えられていたのだ。従って、今年こそは数値と相談しつつ、飲み方を少し考えようと秘かに思っていた矢先の結果である。
 これっぽっちも自慢にはならぬが、大バカ者の私は、浴びるほどといっても大げさではないくらい飲んでいたのだ。以前なら、前後不覚ベロンベロン状態で、ヨロけて倒れたりしながらも必死で帰途についたものだが、最近ではそんなことはまったくなくなってしまった。
 なら立派じゃないかとほめられそうだが、そうではない。飲めない人には信じられないだろうが、よろけて倒れてしまえばそのままところかまわず寝てしまうのである。ねっ、これじゃ帰れないでしょ……。
 とにかく、このようになるまでの普段の努力の数々が並大抵でない!? ことは、やっぱり飲まない人にはわからないだろう。ならなぜそんなみっともなくなるまで飲むのかと呆れられそうだが、私自身もよくわからないので、飲まない人にはさらにわからないだろう。
 妻は厳しい目で言う。「肝硬変は苦しいなんてものじゃないわよ、あなたは突然バッタリといくのかもね……」。そう、その通り。バッタリ倒れて寝てしまうのである。
 それにしても、何とも釈然としない。白目だって寝不足で充血しているのではない。アルコールで黄痕がかっているのだ。どうして数値が正常範囲に戻ったのだろうか。

○月×日
 電車が事故でストップすると、車内や各駅のあちこちで携帯電話が一斉に使用されるのはすっかり当たり前の光景となったが、この光景は気が滅入るとしかいいようがない。
「もしもし、中央線が……」「中央線がですね……」「中央線なんざます」「中央線が……、はい」「そうなんです、中央線です」「中央線なんだけどさあ……」「いまぁ、中央線にぃ……」「中央線でござる」といった具合である。
 今日は知っていたから早めに家を出たものの、私も約束の時間に遅れてしまった。事故の原因がなんであれ、連日連夜困った事態であることは間違いない。
 このごろでは、テレビやラジオでも中央線の「中」と聞いただけで「ドキッ」とするから体にもよくない。
 それに比べて、中央競馬会、中日ドラゴンズ、中華料理、チューハイなどとなると、ホッと安堵すると同時に、それらの言葉がなんとも崇高で美しく響きわたり、すばらしいほど新鮮に感じられるから不思議である……わけはないか。
 それにしても事故が多すぎる。信用ガタ落ち、頼りないったらない。天下のJR、何か妙案はないのか!! 私達だって早急に何とかしてほしいのである。

○月×日
 さわやかな秋晴れとなり、ついこないだまで「暑い」だの「どしゃ降り」だのとぼやいていた天気が嘘のように気持ちがいい。時の流れは早く、9月がもう終わろうとしている。
 今日はカンダパンセで開催されている国労東京地本の大会に行った。
 前にも書いたが、この大会が終わると地区本部、支部、分会大会と続く。本部指令にもあるように、全国大会で決定した方針を、全職場、全組合員に徹底するため、大会開催により機関整備を行うというものだ。
 毎年のことだが、もっとスピーディにならないものかといつも思ってしまう。セレモニーなんだから仕方ないという人もいるが、国労が置かれている現状を考えれば、こんなに悠長に構えている場合ではないのではないか。
 どうも旧態依然のような気がしてならない。今や情報化社会である。いくら組織がデカイ? からといって、八月の全国大会から始まり、私たち現場の分会大会が終了するのは12月、季節は冬になっている。つまり、三ヵ月以上もの月日が大会に費やされているのだ。もちろん、この間には交渉やら集会やらのさまざまな活動があり、運動が滞るわけではない。しかし、誤解されては困るが(こういうと怒られるので、ここだけの話です)どの大会でも似たり寄ったりの議論が延々と繰り広げられているとしか思えないのだ。
 これでいいのだろうかという疑問を感じないわけにはいかない。でも、みな何もいわないから、いいのかなぁ、やっぱり……。

○月×日
 東京駅で発車の準備をしていると、乗務員室の目の前に、見るからに挙動不審な高校生が乗っていた。ソワソワと落ち着かない様子で、何度も私をチラチラとうかがっているのだ。「空いているんだから座ってくれよな……」とイヤな気分でいると、彼は突然乗務員室をノックするではないか。
「あ、あのぉ、三鷹車掌区の斎藤さんって、本書いた人ですか」。私はいきなりだったので対応に困りながらも、「そうだけど」などとそっけなくボソッと答えた。すると、彼は状態を反らしていまにも卒倒しそうに「読みましたあ」と興奮気味に言うやいなや、車内を飛び跳ねながら一目散に駆けだし、二両目、三両目へと消えていったのだった。
 一瞬の出来事に呆気に取られはしたものの、意外な嬉しさを乗せ、感謝の気持ちで発車させることができたのだ。
 しかし、マイクを持った途端に「おれのアナウンスが録音されているのでは……」という疑念が湧いた。「絶対イヤだぞ」いつもならホームを外れるとすぐに取りかかる放送を、タイミングをずらしたり、言葉数を少なくしたりと、意地悪のようだがアレコレ気を使って普段の倍も疲れた乗務になってしまったのであった。

|

« 行動派宣言!/チェルノブイリの子供達に・千葉の会 | トップページ | 行動派宣言!/21世紀協会 »

サイテイ車掌のJR日記/斎藤典雄」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/389724/7929155

この記事へのトラックバック一覧です: サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/警告書 肝機能 高校生:

« 行動派宣言!/チェルノブイリの子供達に・千葉の会 | トップページ | 行動派宣言!/21世紀協会 »