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サイテイ車掌のJR日記・斎藤典雄/点呼 臨時全国大会 トイレ

■月刊「記録」1999年5月号掲載記事

○月×日
 ひどく疲れていた。1日の乗務を無事に終えて、2階の更衣室で帰り支度を急いでいると、制服のポケットに乗務カードが入ったままになっていることに気がついた。乗務カードとは乗務する電車の種別(快速・特快など)や時刻等が記されているカードだが、ついうっかり所定の場所に返納せずに持ってきてしまったのだ。
 着替え終わってから返しにいっても差し障りはないのだからと、帰りの電車の時刻をカクニンしてコートを羽織り、毛糸の帽子、マフラー、手袋と完全装備して階段を下りていった。発車まで2分ちょっとあったので返納は余裕のはずだった。しかし、カードを返そうと思った瞬間、私は「もしや?」と思って点検簿をのぞいた。予感は的中。ナント乗務終了の点呼をしていなかったのだ。点呼もせずに「時間だ、終わった終わった」と2階に上がってしまったわけである。
「このとおり着替えちゃったからさ。乗務は異常なし、明日は○時×分出勤ね」とはいかない。点呼は厳正でなければならないのだ。
「あぁ、面倒くさいったらありゃしない」。再び2階でワイシャツにネクタイ、制服制帽に姿に変身して1階に下り、待ちに待った? 点呼をすませた。点呼一つにこれほどタイヘンな思いをしたことは未だかつてなかった。電車は行ってしまうし、みなからは笑われるしで、どっとツカレタ一日だった。

○月×日
 たまにはこういうこともある。
 先日、飲み屋で顔見知りになった物静かなおじいさんに頼まれたのだ。「うちの孫が大の電車好きで、車掌さんに抱っこしてもらっとるところを写真に撮らせてもらえないだろうか」と。「おやすいご用です。喜んで」と応じ、今日がその実行の日であった。
 あらかじめ教えておいた時刻通りに、下り高尾行の電車は八王子駅に到着した。三歳の男の子はおじいさんにしっかりと手を握られ、ホームの柱のところで待っていた。
 私はその子に挨拶代わりの敬礼をすると、いつもよりテキパキと、少し派手なポーズで「出発進行」等の基本動作を意識的に行なった。その子はジッと神妙な目つきで見つめている。幼い無垢でつぶらな瞳に、いったい私はどのように映ったのだろうか。
 終点の高尾駅に着くと車内もホームも閑散として、照れ臭さも和らぐ。折り返し乗務の間の短い時間で、厳粛なる儀式が開始された。まず初めに、その子をひょいと抱き上げ、電車をバックにパチリと一枚。そして次に、その子の頭に私の制帽を載せ、おじいさんと一緒に私がパチリ。これにて儀式は滞りなく終了した。
 私はその子の頭をなでながら、しゃがんで言った。「電車大好きなんだってねぇ、大きくなったらJRの人になるのかなぁ」。すると元気な声でキッパリ答えた。「うん、ボク電車の運転士さんになる」。ハイ、よくできました。ん? ちょっと待ってね、ボク。オジサンは車掌さんなんだけどな……。

○月×日
 公安調査庁(法務省外局)が公表した「内外情勢の回顧と展望」(99年1月付)によると、「JR東労組に過激派組織『革マル派』系労働者多数が組合執行部役員に就任するなど、同労組への浸透が一段と進んでいることを印象付けた」と記述されている。
 私達は「なにも今に始まったことではない」と認識しているから驚きはしないが、会社を健全に発展させたいと願っている社員にとってみれば、不安でないはずがないだろう。
 これについては、1月7日の運輸省の定例記者会見で黒野匡彦事務次官が「まさかと思っていたが、公安庁としてここまで踏み込んで書かれたのはそれなりの確証があった上でのことだろうし大変残念」との懸念を表明されたという。
 さらにまるで連動するかのように、13日付の日本経済新聞には、「川崎二郎運輸相は、政府保有のJR東日本株式の第二次売却について、九八年度内の実施を断念する方針を示した」と載っていた。「その背後には政府・自民党内で『完全民営化』への慎重論が見え隠れする」とあり、「旧国鉄以上に複雑な労使関係を解決しない限り、完全民営化には反対との声も強まっている」と、その関心の高さがうかがえる。
 神戸の少年殺人事件の検事調書が外部へ漏れるという事件をきっかけに、革マル派の悪事が次々と発覚しているのは周知の事実だ。
 東労組と意見対立する組合幹部宅に盗聴器を仕掛けた容疑で同派活動家が逮捕されたり、国労の現書記長宅への住居侵入容疑で同派非公然活動家が指名手配されるなど、JRの周辺では革マル派がらみの物騒な事件が相次いで起こっているわけである。
 なんとも由々しき事態なのだが、うちの職場では国労と鉄産労が公安庁関連の掲示をしたところ、東労組の分会役員が鉄産労に対して、「あれは公安と政府によるデッチ上げで、なんの根拠もないウソ記事だ。ウソを掲示しているのはオカシイ、外せ」との意見をつけたというようなことも発生している。
 デッチ上げでウソだって……。あなた方は本当にそう考えているのか。信じられない。

○月×日
 国労の臨時全国大会が目前に迫った。3月18日、14時開会、中野ゼロ・ホールで開催される。
 私はちょうど休みなので運良く行ける。しかし、八王子支部内で傍聴がわずか10人という人数制限が設けられ、私のような下っ端は会場に入れない。私は「案内でも警備係でも何でもするから入れてほしい」と申し出たが、「会場の外ならいいよ」という返事であった。運良くは取り消しか……。でもとにかく行くしかない。
 議題は、①不採用問題の解決に向けて、②その他、となっているが、「補強案」五項目については、一項目の改革法承認の確認を求めるだけということである。二項から五項については凍結の集約をするという。つまり一時保留ということのようだ。
 今後は解決水準をめぐる攻めぎ合いに移っていくのだろう。さまざまな妨害、介入、分断が予想されるが、ハードルは高く、次々と乗り越えていかなければならないのだろう。ようやくスタートラインに立てたということだが、どうなるかはわからない。「国労ついに分裂か」という雑音も聞こえている。
 いずれにせよ、これを機に闘ってよかったといえる解決を図らなければならない。本部一本に集中し、本部を信頼し、満場一致で大会が成功することだけを祈る。

○月×日
 私が毎月購入する雑誌は、『本の雑誌』『噂の真相』『レコード・コレクターズ』の三冊と決まっている。この組み合わせでもう10年以上たったのだろうか。他にも買いたいものは山ほどあるが、山ほど買うわけにもいかず、立ち読みや図書館で済ませているのだ。
『本の雑誌』はその名の通り、本にまつわる雑誌である。新刊の書評、本屋さんの事情、編集者のこと、エッセイ等、椎名誠編集長を筆頭にオトナのお遊び心的姿勢が溢れていてタイヘン面白い。「発売日まで待てないよ、オレ」という情況に陥り、もだえ苦しむ日々を送ることもしばしばである。
『噂の真相』はメディア批判を中心に、あらゆる情報を鋭くエグる。世の中の不正に怒りが湧き、自分自身を奮い起たせる。だが実際行動に移すわけではない。しかしHなページなどには下半身の一部が勝手に行動したりして困ることもある。
『レコード・コレクターズ』は私の一番好きな音楽雑誌である。意外とマニア志向で、私は心から感謝して読んでいる。そしてなんと、学習院大学でセンセイをしている私の従兄弟が、これまたロックン・ロール狂で、毎月音楽本の書評やレコード評論などを載せているのだ。手紙のやり取りだけで会うことはないが、月に一度のごあいさつと受けとめ拝読している。
 そうそう、あと一冊あった。いうまでもなく『記録』である。

○月×日
 国労の第六四回臨時全国大会が「なかのゼロ小ホール」で開催され、国鉄分割・民営化を定めた国鉄改革法が承認された。
 会場周辺では、100人を超すと思われる警察官が厳重警戒に当たるという異様さであた。しかしこの人混みの中心にあったのは、傍聴制限を設けたために会場に入れない、全国から駆けつけた組合員達なのであった。主人公は組合員一人ひとりのはずなのに……。
 代議員の発言は歯切れの悪いものが目立ったということであったが、総論では本部を支持し、満場一致の拍手で機関決定された。
 しかし、皆それぞれ断腸の思いであったに違いない。改革法により分割民営化され、解雇され、100人以上もの仲間が追いつめられ、自殺するまでにいたった事件である。
 長かった闘いを振り返ると、会社側、国労双方の主張は、それぞれの置かれた立場を考えればどちらもある程度までは正しかったといえるのではないか。ただ、主張に対しての講釈は永遠とついて回るものだが、事実は一つしかない。やってはいけない不当労働行為を続けているJRはキチンと謝罪すべきであり、かたくなな態度を改めて話し合いによる平和的な解決を目指すのは社会常識からしても当然のことである。
 今大会決定は、労働組合である以前に人間として尊い選択であったと思う。このチャンスを最大限に生かし、12年余にわたる闘いの思いを無駄にしないよう、誰もが闘ってきて本当によかったと納得のできる解決を勝ち取らなければならない。さらに体制を強化してガンバロウ!!

○月×日
 駅のトイレの話である。国鉄時代に比べ、駅のトイレは見違えるほどキレイになったところが多い。「汚い」という苦情が絶えず、改築・改良されてきた結果だが、これを維持するためにはお客さまのご協力が欠かせない。 なかでも落書きは跡を絶たず、手を焼いているものの一つだ。男子トイレの小便器に書かれた「一歩前へ……」という注意書きには、必ず決まってどこかに「チ○ポ前へ」と書かれている。笑う前に泣けてきますよね。
 私ごとな上に、尾籠な話を続けて恐縮だが、先日突然催した私は、とある駅の一見キレイな公衆トイレを借りたのだが、ヒジョーに腹が立ってしまった。とにかく個室の内部が汚いのである。どうしてキチンと便器の中に収めることができないのか。まったく不思議でしょうがない。
 いくら一刻を争っているとはいえ許せない。次に使用する人のことを考えろ。トイレ掃除のおばちゃんのことも考えろってんだ。それともナニカ? JRに怨みでもあるヤツの仕業だろうか。密室でコソコソやってるんじゃないよ、クソッタレ。ああそうか、元々くそったれだったのだ。

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