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サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/壇上占拠 パソコン 職場復帰

■月刊「記録」2000年9月号掲載記事

○月×日
 臨大は「壇上占拠」という反対派による実力行使の形で異例の休会となった。
 国労本部はその直後の7月3日、「臨大休会についての見解」なる声明を発表した。
 その内容は8項目からなり、「大会を成功させることが出来なかった責任を痛感している」「組織に責任を持って、態勢の立て直しのために全力を挙げる」「政党・政府関係者の皆さんに対し、衷心よりお詫びする」……という真摯なものだが、「壇上占拠」については、「大会破壊の暴力行為に対し、非難すると共に憤りをもって抗議する」とされている。
 この「壇上占拠」の事態を、本部がいう暴力と決めつけるのか、あるいは、抵抗権の行使と正当化するのかは微妙なところだが、私はむしろ、このような(暴力だとする)見解を発すること自体が、悲劇的に思えてしまうのだ。
 何やら、国労内部で取り返しのつかなくなるような対立が生まれてしまうのではないか、という危惧である。
 このような見解は本部を支持するものが正当で、反対するものは間違いだという誤解を与えかねない。つまり、闘争団は組織破壊の暴力分子として孤立化し、結局は切り捨てにつながるのではないかという心配だが、考えすぎだろうか。
 四党合意の解決案にはさまざまな異論があるものの、今、国労にいちばん求められているのは分裂や分断などでは決してない。一枚岩の統一と団結により、いかに解決に突き進むのかということだ。政治による早期解決は一致した思いなのである。本部の独断的な決定には確かに問題があるものの、ここまで漕ぎつけたからには闘争団の切実な声を十分に汲み取り、なんとしてでも事態打開に向けて動かねばならない。
 本部は死にもの狂いで解決水準を引き上げることに努力し、早急に闘争団に提示すべきである。

○月×日
 産業医と会ってきた。場所は新宿にある中央保健管理所。今後の勤務の相談やらアドバイスを受けた。
 ま、多くは期待していなかったが、やはりこのビョーキは何ともスッキリしないものだということを改めて痛感した。整形のドクターもおっしゃっていたように、あまりにもつらかったら休んで安静にするしかないという。ヘタすりゃあんた車いすだよ!! という話なのだ。
 立ちっぱなしの乗務はよくないに決まっているが、これしかない。デスクワークに転職を考えてみてはともいわれたが、現状ではほぼ無理。こんなことは先生にいわなかったが、国労を辞めて東労組に加入なんてことにもなりかねない。ならばどうすりゃいいの? 「ヘイ、メン、答えはナシさ」なんて気取っている場合ではないのだ。
 いずれにしても、もう4週間も休んでいるのだからいい加減仕事に出たい。アナウンスマイクを握って、「戻ってまいりました」と乗客のみなさまに報告したい。白い手袋で指差し確認を決め、「停止位置オーライ」と隣の駅にまで聞こえるような喚呼で、これまでのストレスを発散させたい。一刻も早く中央線の人になりたいのである。
 産業医は、「いきなり乗務するのではなく、はじめのうちは出勤するだけとか(いわんとすることはわかるが、そんな仕事はないよ)日勤にしてもらって慣らしていくようにと、私の方から区長にいっておく」ということであった。
 私は乗務するつもりでいるが、そうしてもらえれば実にありがたい。
 さて、区長はどうしてくださるだろうか。
 しかし、車掌は乗るだけなのだ。乗務以外の仕事などないわけだし……。
 職場復帰を前にアレコレ考えると、ちょっぴり憂鬱になってしまう今日このごろである。

○月×日
 ついにパソコンを購入した。
 実は私、同僚もあきれるほどのアナログ人間で、ケータイは持たず、ワープロすら打てない。しかしそれで何の不自由もないし、恥ずかしいとも思わない。逆に、「強引にマイウェイしてるもんね」などと楽しんでいたわけである。
 ところが今や新聞もテレビも、「インターネット時代」「IT革命」だのと四六時中騒ぎ立てる。私にはちんぷんかんぷんな言葉が、もはや解説不要が当たり前であるかのように使われていることに、少なからずショックを受け、焦ったのである。
 私は流行りというものに対して馬耳東風を決め込むことが多いのだが、これは一過性のものなどではなく、これからの日々の暮らしに必要不可欠に定着するものだと、遅ればせながら確信した。
 新しいことを覚えるのは確かに面倒で、「チャレンジ精神が希薄」といわれればそれまでだが、私だって「やれば出来るさ、何だって」といつも思っている。
 こんなことをつらつらと思っていたのだが、早急に買わねばならない要素がさらに増えた。というのは、「学校で使うからパソコン買ってよ」と、息子がいい出しそうだったのだ。
 家に2台もパソコンは置けない。もし息子に買ってやったら、当然息子のものとなり、私はいちいち「ちょっと借りるぞ」とお願いする立場となる。それではマズイ。困るのだ。
 わが家においては、正しい父子関係が確立されなければならない。これは大変重要な課題である。「お父さん、パソコンお借りします」と、息子が私の部屋に入ってくる。こうでなくちゃ。皆さんもそう思いますよね。
 まあ、私の方から「ここはこうすればいいのかなぁ」と、息子にお伺いを立てることになるような気もするのだが。

○月×日
 約1ヵ月ぶり、ついに職場復帰した。
 振り返れば1ヵ月なんてあっという間だったが、久しぶりに職場に顔を出したのに、会社も組合も当たり前のように動いていた。まあ当然といえば当然だが、私一人がいなくてもなんということはないのだ。そのうえ家庭でも、仕事にいかない私を粗大ゴミ扱いする。
「なら、おれの存在って何なのさ」と、悲しくなってしまうが、人間一人なんてちっぽけで弱くてもろいものだとつくづく思う。しかし私は、気落ちはしても命を落とすようなことはしたくない。
 いっそのこと、会社からも家庭からも逃げ出して、夢の中へ迷い込んでしまいたいという衝動に駆られたりする。一人ぼっちじゃ生きられないから、誰かステキな女性とでも……、なんてね。
 そんなこと、ヘルニアおやじは無理に決まっている。やっぱり現実に戻るしかないのだ。
 区長へ対する産業医からも伝言もむなしく、結局は初日から乗務となったが、こうするしかないわけだし、なによりも私が乗るといったのだから、これでいいのである。
 それにしても何度もいうようだが、立ちっぱなしで常に揺られている乗務は本当によくない。だったら座ればといわれそうだが、腰掛けたり立ち上がったりを繰り返すのもよくないそうだ。「ならいったいどうすりゃいいんだ」と、一人やけのやんぱち、思わず指差確認をする指先に力が入ってしまうが、私はふとひらめいた! ぶら下がればいいのである。
「ぶら下がりでブーラブラ」などと呟きながら、乗務員室を見回したら、小さな網棚があった。アレしかないと思い、いざ……、できなかった。なぜって、お客さまから丸見えだったのだ。私だって復帰早々モンダイを起こしたくないものね。
 なにはともあれ、一日を無事に終えることができてホッとした。やっぱり病欠後半のリハビリがよかったのかな。でも、どうにもハッキリしないこのビョーキは、優柔不断である私にピッタリ合っているように思えてきた。なにしろ、全治一生だものなぁ……。

○月×日
 続開大会の日程が決まった。
「四党合意撤回」「続開大会は中止」の声は相変わらずだが、反対派の意見ばかりが目立ち、本部からの情報が極端に少ないのが気になるところだ。
「JRに法的責任はなし」などと思っている人は、本部の役員にしろ誰一人といないのである。それでも、政治での解決を計るために「責任なし」とするのであり、私も当初は「仕方ないか……」などと軽く考えていたのだった。
 しかし今となっては、せめて「法的責任は問わない、追求しない」ぐらいに出来なかったものかと悔やまれてしょうがない。
 何度もいうようだが、「法的責任はなし」というのは、首切りは正当でした、私たちの闘いは間違っていましたという、14年間の全てを否定することなのである。
 それでも認めろってか、ベイビー、できねえよ。
 大会は本部支持の代議員が多いことから賛成多数で承認されるのは間違いない。成立するのである。
 しかしどうだろう。反対する多くの闘争団と、それを支持するグループが「私達は闘い続けます」という事態になれば、大会が成立したとしても形だけの承認に終わってしまうことになりはしないか。
 四党合意は実現されることなく無効となってしまうだろう。
 考えれば考えるほど自分自身の結論を出すことが出来ない。根底にあるのは、人間としての尊厳ではないのか。踏み誤ってはならない。
 従って、四党合意は認められない。続開大会は中止すべきである、となるのだが……。

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