« 行動派宣言!/ヒマラヤ保全協会 | トップページ | サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/斎藤さん お礼 三文字 »

サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/大決起集会 ナメク字 資本金2千億円

■月刊「記録」0999年8月号掲載記事

○月×日
「5・28不当判決」から丸1年。JR採用差別問題などの早期全面解決を求める大決起集会が日比谷野外音楽堂で開催された。
 3月18日に行われた臨時全国大会で、国鉄の分割民営化を定めた改革法を承認してから、すでに二ヵ月が経過しており、「情報がさっぱりだが、政府との交渉は進展しているのか」といった本部に対する不安やいら立ちを抱いていた組合員も多かったに違いない。
 先日の新聞報道でも明らかになったが、政府は国労の立場に理解を示し、一日も早い政治決着を目指す意向を表明したという。つまり、政府・JR各社・国労の三者による話し合いで和解を目指すということである。
 国労の高橋義則委員長は解決への三条件として、①JRへの採用 ②和解金支払い ③健全な労使関係構築 を挙げ、解決の具体的見通しがつかなければ訴訟の取り下げはあり得ないということを強調した。
 集会では1047名闘争団家族を代表して、音威子の藤保さんが「夫は何一つ悪いことをしていないのにクビにされ、働かない、怠け者というレッテルを貼られ、言葉では言い尽くせないほどの悔しい思いをしてきた。この12年間は戻ってこない。国は自らが行った不当労働行為の責任を人道上の問題だなどとすり代えている。絶対に許すことは出来ない」と、溢れる涙を堪えて訴えていた姿が印象的だった。
 一方現場では、この5月から6月にかけて営業職場(駅関係)の異動が突如として行われた。八王子支社管内では40名ほどだったが、国労では分会長や活動の配転が目立っている。会社が国労に対して揺さぶりをかけ、様子をうかがっているようにもみえる。「改革法を認めたのだから、強制配転反対とか苦情処理申請などは受けつけませんよ」と。今後、このような攻撃が再びジワジワと襲ってくるような気がしてならないのだが、私の考えすぎだろうか。
 いずれにせよ、JR各社は政府の呼びかけに対して真摯に応じることを強く願うものである。

○月×日
 釣りに行った。職場のサークル「国労釣り部」の仲間10人で、茅ヶ崎から船に揺られること1時間。三浦半島の先端、城ヶ島沖で大アジを狙った。
 天候にも恵まれ、海はベタ凪ぎ。日常から解放されて何もかも忘れることができ、たまらなく嬉しい。広大な海をぼんやりと眺めていると、「ここなら大丈夫、ダレからも監視されることはない」などと、ワケのわからないことを呟いたりしてしまう……。
 船頭さんの指示により、仕掛けを海底100メートルまで一気にブチ込む。リールの動きが止まり、糸がフニュッとふけると海底まで落ちた証拠である。素速く3メートルほど巻き上げ、釣り竿を2~3回タテに激しく振る。そうすることで、コマセ(撒き餌)がぱらぱらと散り、そこに集まった魚が釣り針にパクリと喰いつく仕組みなのである。
 クイックイッという小気味よいアタリならアジ、クゥィーンという奇妙なアタリだったらサバである。アタリが来ると、私は100メートル下の仕掛けを必死で巻き上げるのだが、魚の引きもかなり力強く、思ったよりも力が必要だ。だから、他の皆はほとんどがボタン一つで巻き上がる電動リールを使っている。カラカラという私の手動リールの隣で、「ヂーヂー」という電気的な音がなんとも恨めしい。でもやはり邪道ではないだろうか。電気の力を借りるのは電車だけで十分である。
 隣り同士で糸やハリが絡まる「オマツリ」も多かったが、皆そこそこ釣れ、クーラーはほぼ満杯。アジは35センチ級の立派なものも数匹まじり、外道にサバ、メバル、イワシという釣果であった。釣りたて新鮮、味は格別(のハズ)。早く帰ってコイツでイッパイだ。

○月×日
 私の本が東労組の若い車掌たちにずいぶん読まれているようだ。
「斎藤さんて誰なの?」「面白くて一気に読んだ」「友だちにも読ませたい」「おれはこういう仕事をしていると田舎の親に送るから、もう一冊買う」などという話が伝わってくる。やはり本職である車掌が読んでこそいちばん共感が得られ、苦楽を実感できるものと思う。「書いて本当によかった」とうれしさがこみ上げてくる。
 しかし、ちょっと困ったことが起きている。実はサインを頼まれるのだ。
「サインだなんて、そんなんじゃないから」と一応お断りするのだが、結局はシブシブ引き受けざるを得なくなる。かれこれ40人くらいに書いたが、もうイヤ。私はとんでもないほど字がヘタなのである。ヘタでヘタで、せっかくの本が台無しになってしまったという気がしてならない。「頼む、1年待ってほしい、書道教室に通うから」と言いたくらいなのだが、いったい私の字はなんといえばいいのだろう。これこそまさに「ナメク字」という以外ないのではないか。それくらい奇妙でヘタなのだ。
 さて、若い車掌たちは「組合に知られるとマズイから」と、コッソリ頼みにくる。よその車掌区の人などは、国労の知り合いを通じて本を持ってくる。これはいったい何を意味するのか。それはまぎれもなく役員から「国労の人とは話をするな、つき合うな」と言われているからに他ならない。異常というしかないが、東労組の組合員がかわいそうに思えてくる。
 いずれにせよ、できるだけ大勢の人に読まれて、真実を理解してもらえればと切に願う次第である。

○月×日
 今日の朝日新聞の夕刊には笑ってしまった。「麻布にサル」という見出しである。「サルを見た」という複数の情報が寄せられ、警察が60人を動員してサルを探したという。前日までに八王子、国立、世田谷などでも同様の情報があり、同一のニホンザルが都心に向かって移動している可能性もある。と書いてあった。
 私はこうした記事に弱いというか、乏しい想像力が限りなく駆り立てられ、いてもたってもいられないほど血が騒ぐ性格なのだ。このサルは、いったい何をしに都心に向かっているのか。どんどん東上している姿が目に浮かび応援したくなる。
 国会では、ガイドライン法案には反対であるというタイドを表明するのか。さらには皇居へ赴き、私のお尻は赤くとも、日の丸、君が代の法制化は認められないというポーズを取るのか。それから先の運命はどうなるのか……、とアレコレ考えてしまう。
 この記事の隣には、天皇家の秩父宮さまが40年前にスキーをしている写真が載っていたのだが、なんとネクタイをしている。やはり一流の人はどこかが違う。

○月×日
「そろそろ昇進試験だなあ」と思いつつドタバタ過ごしていたら、「もう明日」という切迫した状況を迎えてしまった。少しは勉強しようかと構えてみるものの、資本金は2千億円、社員数は7万9千人……といったチェック程度のことばかりであり、さっぱりヤル気が起こらない。
 このところ、本の出版に加えて、本を読んだ田舎の母が具合が悪くなって寝込んでしまったりと、それどころではないくらい目まぐるしい日々が続いていたのだ。
 いまさらジタバタしても始まらないわけだが、二ヵ月ほど前に渡された区側作成の参考資料「その一」「その二」(各60ページほど)と問題集(20ページほど)も、もらった日にパラパラ目を通しただけで、職場のロッカーに入れたままであった。持ち帰ることすらすっかり忘れていた。
 それにしても、子どものころはなんでも一生懸命頑張る「よい子」だったはずなのに、ここまで堕落してしまった原因はなんだったろうとふと考える。自分の弱さを棚に上げ、他人のせいにばかりしている卑怯なもう一人の自分に、吐き気すら催してしまう。
「どうせ受けてもムダだよね」。乗務を終えた帰りがけ、私は同僚に言った。「そうだけど、典ちゃんはいいよ、だって日記を書く材料になるんだから……」。なんだかヘンに納得している自分に、またも吐き気がしたのであった。

|

« 行動派宣言!/ヒマラヤ保全協会 | トップページ | サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/斎藤さん お礼 三文字 »

サイテイ車掌のJR日記/斎藤典雄」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/389724/7929062

この記事へのトラックバック一覧です: サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/大決起集会 ナメク字 資本金2千億円:

« 行動派宣言!/ヒマラヤ保全協会 | トップページ | サイテイ車掌のJR日記・斉藤典雄/斎藤さん お礼 三文字 »