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鎌田慧の現代を斬る/好戦体質が肥大する小泉内閣

■月刊「記録」2003年2月号掲載記事(表記は掲載当時のままです)

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 1月14日、小泉純一郎首相はまた性懲りもなく靖国神社に参拝した。
 一昨年は8月15日に参拝すると大見得を切って8月13日に参拝。昨年も敗戦記念日にいくようなそぶりを見せながらも、4月の春の例大祭に突如として参拝。そしてことしは脱兎のごとく、福田官房長官さえあざむく(参拝前日の記者団の質問に福田は「「それはあなた方がつくった話」と否定していた)卑劣なやり方だった。過去2回の参拝でも、国際的にも国内的にも大きな批判が巻き起こっている。にもかかわらず、彼がまたぞろ参拝をした無神経さには驚かされる。自分本位のだだっ子だ。 今回また、アジアでも広く報じられ、日本の未来に与える悪影響は計り知れない。韓国では、金大中大統領が川口順子外相との会談をキャンセルする事態にまで発展した。
 不況はさらに深刻化し、中国や韓国などとの関係の緊密化が要請されている時期でもあり、マスコミの批判も強まっている。
 「お正月ですしね。新たな気持ちで平和のありがたさをかみしめ、二度と戦争を起こしてはいけないという気持ちで参拝した」(『毎日新聞』1月15日)などと、小泉はウソぶいている。アジアから見れば自国を侵略した戦犯と、それに従った将兵が祀られている靖国神社への参拝は、日本の首相がかつての侵略戦争を容認していると受け取られるのは当然である。無恥、無謀、政治的パフォーマンスだけの計算ちがい。このような単細胞の男に政治を任せている責任はわれわれにある。こんなケーソツな男と無理心中するのはまっぴらだ。
 小泉“突出”内閣のなかでの跳ね上がり大臣は、石破茂防衛庁長官だ。アタマが戦争もので一杯のこの長官は、とにかくイージス艦派遣にこだわっていたが、それを達成すると、こんどは“ミサイル防衛ごっこ”である。 ミサイル防衛(MD)は、強いアメリカをめざし、自らもマッチョなガンマンに憧れつづけたロナルド・レーガン大統領の趣味を反映した「スターウォーズ計画」が源流にある。当時、レーザー衛星で敵の大陸間弾道ミサイルを破壊するという社会を唖然とさせた妄想が、潰れることなく生き残っていたのである。とはいえ発射されたミサイルを迎撃するという夢物語は、膨大な開発費と防衛産業育成の思惑によって少しずつ形をなしつつある。
 1月5日イスラエルでは、弾道弾迎撃ミサイル「アロー」が、4発ミサイルを打ち落とすという実験に成功した。このミサイルには約20億ドルの開発費がかけられたらしいが、アメリカ全土を迎撃ミサイルで覆う「MD構想」が、この程度の金額ではすむはずもない。半永久的に軍需関連産業が巨万の利益を得ることになる。
 現在、イラク攻撃の推進と停止との世論が激しくせめぎあっている。すでにイスラエルでは、大量破壊兵器の飛来に供えて、防毒マスクを購入する市民が増えていると報じられた。米軍の派兵の補強もつづいており、イラン政府も防戦体制にある。市民に戦争への恐怖が、時間とともに浸透しているようだ。このままでは、また無辜の民が大量に殺される。
 このように恐怖を世界中に撒き散らしながら、自国だけは安全圏にはいろうとする防衛システム構想を世界中に宣伝するのだから、ブッシュは小泉より始末に悪い。 MDについては、『毎日新聞』(12月18日付)が次のように報じている。
「アラスカ州フォートグリーリーに建設中の基地に04年までに、10基の迎撃ミサイルを配備。さらに05~06年に10基を追加配備する。米国はこれまでも04年までの配備を目指すとしてきた。大統領は声明で『すべての危険から米市民を守るため』と述べたが、北朝鮮のミサイル開発を抑止する狙いなどから、公式発表に踏み切ったものとみられる」
 MDが外交カードとして有効だと、ブッシュ政権は考えているらしい。しかし、どんなに軍事力を強化しようが、防衛力を整えようが、それは正面きっての戦争でしか機能しない。すでに9.11 のテロによって、内側からの攻撃にあらゆる軍事力が無力だと証明されている。その意味でMDは防衛力の「矛盾」を、そのまま体現する存在となっている。各国の和平にもとづかない防衛力など、スターウォーズ計画以上の夢物語である。
 ところが、このバカバカしい計画に、大乗り気の男がいる。“イージス艦男”の石破防衛庁長官である。
 12月中旬、アメリカを訪問した石破長官は、国防総省でラムズフェルド国防長官と日米防衛首脳会談をおこなった。その席上、日米共同で技術研究に取り組んでいるMDについて、「開発・配備を視野に検討を進めたい」(『毎日新聞』12月18日)といい放った。「研究」段階から「開発・配備」にするなど、国内で誰が承認したというのか。そもそも、その膨大な資金的裏付けをどうするのか。また技術的に可能性があるのかについても、かなり疑問だ。
 ましていまブッシュは、イラクを攻撃するため虎視眈々と機会を狙っている。この段階で日本がアメリカのミサイル攻撃に協力するという発言は、アメリカへの軍事的に荷担をより一層強めていく、と宣言しているようなものだ。朝鮮民主主義人民共和国(※「朝鮮」)のやり方の拙さに、日本のマスコミは大騒ぎして、あたかも開戦間際のように敵意を煽っている。イラク、「朝鮮」とアメリカの緊張関係を日本が緩和させるのではなく、加速させているのは独立国としての愚策である。
 だいたい国内法をどう解釈すれば、ミサイル防衛が合法になるというのだろう。たとえば第三国に発射されたミサイルを、日本のミサイルが打ち落とした場合、それはまさしく戦争行為である。憲法で禁止されている「集団的自衛権」そのものだ。
 石破長官は、これらの論理さえ踏みにじって、とにかくアメリカにおべっかを遣いたいのである。このような“超ウルトラ”な人物を防衛大臣に指名した小泉の責任は厳しくとわれるべきだ。自身の靖国神社参拝といい、防衛庁長官のミサイル防衛への踏みだしといい、小泉内閣の好戦的な体質は歯止めもなく増幅している。国会では継続審議となった有事法制も待っている。
 またイラク攻撃が始まった場合、現行の法律では米軍の後方支援ができないため、「イラク新法」を成立させようという動きさえある。アフガン攻撃にはテロ対策支援法を成立させ、その法律が使えないなら、こんどは数にモノをいわせて新法成立をもくろむなど、ファッショ以外のなにものでもない。憲法をまったく意識しない、アメリカ従属の戦争政策は続行されている。
 こうした危険な内閣をもちながら、マスコミの批判も弱く、市民の運動もまだまだ弱い。MDの「開発・配備」が戦争坊やのアメリカへのリップサービスに終わるのかどうか、これからの市民の批判の強さによる。彼らの危険な言動を笑っているうちに、なし崩し的に戦争へ突入する危険性が高まっている。

■「電力不足」と脅して、原発推進

 東京電力は、12月19日『朝日新聞』『毎日新聞』『読売新聞』『日本経済新聞』などの新聞各紙に、「節電をお願い申しあげます。」と書いた一面広告を掲載した。これは原発のトラブル隠しにともなう停止命令や点検という自業自得のピンチを逆手にとって、原発稼働のチャンス利用しようとする宣戦布告である。
  「なにぶんにも首都圏の電力約4割は福島県、新潟県の原子力発電に依存しており、原子力発電所の点検停止により、非常に厳しい寒さも場合などには、首都圏の電力需要をまかなえなくなる可能性もでてきます」
 新聞広告に書かれたこの文章など、ほとんど脅しである。そもそもわれわれは、電力会社に原発依存を求めてきたわけではない。政府の援護と引きかえに政府の方針にただ従うことで、各電力各社が勝手に原発への依存度を進めてきたのだ。このように意識的につくりだされた原発依存体制が、「原発が休止したら電力不足になる」などという脅し文句につながっている。むやみに原発依存を強めず、もっと早くから脱原発の方向にシフトしていれば、このような大広告をうつ必要もなかったはずだ。「盗人猛々しい」とは、このことだ。
 これまでも述べてきたとおり、電力会社の体質は、九電力の地域独占体制に依存したものである。カネは使い放題、採算は度外視、経営・設備の失敗は利用者にまわす。およそ民間会社では信じられない経営方針で、火力・水力発電から原発へとシフトしてきた。
 時代の要請に耳を傾けるならば、太陽熱や燃料電池、風力、バイオマス発電など、さまざまな方法を組み合わせてソフトエネルギーをつくりだすべできであった。そうした努力を一切拒否し、戦争でも突入するがごとく“原発異常体制”を作り上げてきた。この政府と電力会社の姿勢は許されるものではない。
 電力会社は電力不足だと宣伝しているが、この冬は火力発電の稼働で乗り切れる見通しが立っている。膨大な量の原発をムリヤリ稼働させなくても、電力需要と電力供給量は合っている。これまで火力発電の設備がありながら、それを停止して原発に稼働させてきた経営方針は批判されるべきである。
 原発推進策の行き詰まりは、使用済み核燃料の問題でもあらわになってきている。各原発施設に置かれている使用済み燃料用のプールは、日々増える危険な廃棄物でいっぱいとなり、青森県六ヶ所村にはこばれる順番待ちとなっている。
 しかし六ヶ所村では、使用済み核燃料貯蔵プールに穴があき、漏水するという事態となった。いまや膨大な被爆労働者を生みだしながら、欠陥プール補修に明け暮れている。このようなフン詰まり状態の原発にたいして、なんら反省もなく、まだ糊塗するだけ。原発依存体制を維持しようとしている政策こそ批判すべきである。
 ところが政府は、原発依存政策という失政から生まれた「電力不足」を利用して、定期点検の時間を縮めたり、あるいは休止状態の原発をやみくもに動かそうとしている。これこそまさしく命取りである。電力を人質にとり、すこしでも早く原発の再稼働に認めさせようという電力会社の世論操作など許されることではない。
 原発立地県の福島では、佐藤栄佐久知事が原発批判を強めている。原発推進自治体であった福島県富岡町の遠藤勝也町長は、「県と連携し、国に政策変更させたい」(『朝日新聞』2002年9月25日)と反発している。
 原発行政は身動きのとれない状態になっているにもかからず、原発の危険から市民を守るためにあるはずの保安員や原子力安全委員会は、あいかわらず「原発推進委員会」となって暗躍している。脱原発の一里塚を築くためにも、とにかく欠陥原発の休止は必要だ。

■“不道徳”な死刑を廃止
 
 気の滅入るような話ばかりがつづくなか、最近の朗報といえば、アメリカ・イリノイ州の死刑囚問題である。1月13日、ライアン州知事は、同州の死刑囚167人すべてを、一括して終身刑に減刑するという大英断をくだした。
 「(知事は)3人を40年以上の禁固刑とし、残る全員を仮釈放なしの終身刑とした。これとは別に知事は10日、『拷問によって強要された自白を根拠に有罪判決を受けた』として、4人の死刑囚の特赦の措置を取っていた」『朝日新聞』(1月13日)
 ライアン知事は共和党知事であるが、民主党知事でも発言しようとしない死刑囚の減刑に一気に踏み込んだのだから勇気がある。もともと死刑賛成論者だった彼は、州内の死刑囚に冤罪が多かったという反省から一括減刑を決めたという。『読売新聞』(1月13日)によれば、死刑囚の無実が刑執行の48時間前に判明した経験も、知事が明らかにしたそうだ。
 彼は「死刑制度は不道徳」だという結論にたっしたというが、先進国で日本と並ぶ死刑大国のアメリカにとって、彼の英断は衝撃的な出来事だったはずだ。
 アメリカでは、72年にいったんは死刑禁止の方向に傾いたが、76年には死刑が復活。現在、国内半数以上の38州で死刑がおこわれている。77年から00年までの間に、死刑執行されたのは683人。日本は年間4~5人の死刑が執行されているから、およそ6~7倍の処刑人数である。
 しかもアメリカにおける死刑囚の問題は、経済問題や人種問題をふくんでいる。金持ちは優秀な弁護士を雇って有利に弁論を展開できるが、貧乏人は有能な弁護士を雇える力がなくエン罪が多い。人種差別による誤った判断も、エン罪の温床になってきた。
 死刑大国アメリカでも、ようやく死刑廃止の本格的な議論がはじまろうとしている。これはアメリカ国内だけでなく、日本国内の死刑存続派にも死刑の残忍性を考えるきっかけになると思う。
 イリノイ州では、これから死刑賛成派からの強い反対がしめされることだろう。しかしフランスの例をみてもわかるとおり、死刑廃止は世論がそのまま反映されるものではない。どのような国をつくるのかというきわめて政治な問題である。犯罪への憎しみを犯罪者にむける論理によって、死刑を存続すべきではない。人を殺さない国家。いまそれが強く求められている。(■談)
※韓国を「南朝鮮」と呼ばないので、ここでは「朝鮮」とする。

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