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妻の恋【結婚と恋愛は別物だから互いに恋をする 夫婦といえどもやむを得ない/見津濃弥生(41歳)・学生】

「最近の弥生、感じ方が深くなったみたいだ」
 先日、旦那のカズちゃんとセックスをしたときにこう言われてドキッとしました。じつは、その数日前にある人と浮気してしまって、その晩はカズちゃんに身体を預けながらも頭ではその人との夜のことを考えていた……。 もっとも事情を知らないカズちゃんは、私の感度に驚きつつも満足してくれたようですが。
 その人は60歳を超えた方で、年齢的には確かに「おじいさん」の部類に入るのだけれど、正直いってものすごく良かったんです。彼自身はもうダメなんですが、そのぶん女性を歓ばせること自体に喜びを見出しているのか、相手の身体をよく観察している。
 それに年の功もあるんでしょう。テクニックはもちろんのこと、自信もある。だから、ガツガツしたところが全然ないんです。結局、一晩で何度もという感じで甘やかされてしまいました。
「彼と寝て本当によかったなぁ」
 むしろ感謝したくなる想いでした。
 それにその人、私の先生なんですよ。
「先生と生徒というタブーな関係がまたいいような」
 なんていったら不謹慎ですかね。よく看護師さんやセーラー服の女の子に男性があこがれるって話がありますけど、女だってあるんじゃないですか? 学校の先生とかお医者さんとか、そういうファンタジーみたいなもの……。

■女性の転職は「ステップダウン」

 一年前から私は、カウンセラーをめざしてある大学の心理学科に通っています。専門学校を卒業してからずっと旅行業界にいましたが、ここ数年の不況とテロや戦争の影響で業界全体が打撃を受けているだけでなく、自分としても先が見えてしまったんです。
 若いころは添乗員をやっていたので、それこそ世界を股にかけた仕事をしていました。当時はバブル期だったから、日本人旅行客も羽振りがよかったし、仕事はとても楽しかった。でも子どもが生まれたのをきっかけに、長期の出張は無理と早々に陸に揚がって、地上勤務に引っ込んでいました。
 それでも、長くこの業界にいるうちにある程度ビジネスのノウハウは身に付きました。ただ納得できる仕事をしてきたかといわれると、首をかしげてしまいます。
 旅行業界といえば、女性に門戸が開かれているイメージがありますが、大手ならばまだしも、小さな旅行会社では大切な仕事はすべて男性社員の手に渡ってしまい、女性はいつまで経っても裏方ばかりなんです。
 何度か転職もしましたが、ふつう女性の場合、転職はステップアップでなくて「ステップダウン」になっちゃいますね。勤務時間や通勤距離を優先するために、仕事の内容やお給料で妥協せざるを得ないわけだから。
 それでもいままでは我慢をしてきました。
「子どもが小さいから仕方ない」
 と思って。でも一人息子の茂和が大きくなるにつれて、次第にこのままでいいのかという想いが大きくなってきました。
 それに女が40歳を超えたら、よっぽど実力がなければ会社でチャンスに恵まれるわけではない。
「いつまでもオヤジたちの下でちまちま働いていくのか」
 そう思うと、それだけでげんなりです。下手をすれば「肩たたき」なんてこともあるかもしれないし、こんな不景気では再就職だって難しいでしょう。

■パートタイムに切り替えて心理学の世界へ

「旦那に食わせてもらってるんだから主婦は気楽だろう」
 と無神経なことを言うオヤジたちが世の中にはたくさんいます。
「冗談やめてっ」
 って感じですよね。いまの時代、旦那だけのお給料で豊かな暮らしができる家庭なんてそうそうあるもんじゃないでしょう? そう考えると、今後は独立するとか、安いけれどもアルバイト感覚で長く続けられる仕事とか、なんとか道を切り開いていかなくては……。
 添乗員仲間には、子どもが生まれても仕事を続けている女性もいます。子どもも大きくなってきたし、復帰しようと思えばできないわけではありません。
 でも、だんだん個人旅行の時代になってきていて、添乗員付きのパッケージ・ツアーも少なくなっています。楽しい仕事ではあるけれど、将来性があるわけではない。学校に通いはじめたのも、こういう焦りがあったからなんです。
 心理学には前から興味があったし、それに私自身は大学を出ていないという引け目もあり、いつかは卒業証書がほしいと思っていたんです。もちろん卒業したからといって、すぐに職があるかどうかは分かりません。
 だから、最初は放送大学の講座から始めたんですよ。ただ実習をこなすなら本格的にやりたいと、途中から別の大学に編入することにしました。
 仕事のほうはパートタイム契約に切り替えて、勤務時間はかなり減らしたとはいえ、週二回の授業と山積みの課題の提出で身体はきつい。これまで何とか乗り切ってこられたのは、カズちゃんと実家の母の協力があるからです。
「いまはものすごく充実している」
 昨日もカズちゃんにそう話していたところです。

■先生の包容力あふれた目で見つめられたら

 その先生は名の知れた大学でも教えている学者ですし、臨床経験もあるので実例に基づいた話がとても面白い。そもそも、こんな有名な先生に教えてもらえるだけでも夢みたいな話なのに、こんなことになるなんてね。
 最初は、もちろん警戒していました。だって、その先生とても女の子にモテるんですよ。そういう素質というか、魅力があるんです。モテる男っていくつになってもモテるでしょう。それは年齢とは関係ないですよね。
 彼の場合も芸術的な魅力とか、人間味とか、懐の深さというか、そういうもろもろの資質を総合した引力みたいなものがすごい。フェロモンのようなものがにじみ出ているんです。
 それに、先生の講義にはそれを裏付ける宇宙哲学があって、私にはそれが堪えられませんでした。でも何といっても一番の魅力は、人の心をのぞき込むような視線です。決して目をそらさずじっと相手と目を合わせて話すくせに、ズカズカと人の心に踏み込むようなところはまるでないんです。包容力あふれたその目に見つめられたら、だれもがイチコロになってしまいますよ。
 私も当初は大勢の取り巻きの一人でしかありませんでした。
 先生の研究室は、男女を問わずいつも学生たちでいっぱいでした。40歳にもなって学校に通いはじめた私のほかは、ほとんどが20代の若者たちです。私もはじめはそんな学生たちに交じって、授業の合間に研究室に出入りしていました。そのうち、先生の目に留めてもらうようになったんです。

■なんとなく結ばれてしまうセッティング

 忘年会とか暑気払いとか、研究室ではときどき宴会みたいなことが行なわれていて(学校には一応秘密ですが)、バッグにお酒を隠しもってやってくる女子学生も多いんです。気持ちは学生と同じぐらい若い先生のこと、そんなときはみんなと一緒に豪快に飲みます。心理学だけでなく、社会・歴史あるいは哲学について夜通し熱い議論を交わします。
 ほぼ徹夜で飲み明かしたあと、研究室に備え付けの簡易ベッドで仮眠して、そこから別の大学に出勤するという日もあるようです。エネルギッシュですよね。
 先生との距離はかなり近くなっていたとはいえ、私のほうから二人きりになるような状況はつくらず、研究室に行くときはいつも別の女性といっしょでした(その女性も先生のファンでした)。
 それに、正直なところ私には仕事に対する野心もあります。ここで先生と仲良くしておけば後に仕事を紹介してもらえるかもしれないという打算だって、もちろんあるわけです。
 一方、ふんふんと若い人の話を聞いてあげたり、社会経験を踏まえたうえで他の学生とは一味違う意見をずばりと言う私を、先生もじつは高く評価してくれていたようでした。
 でも社会的地位があるから、決して自分のほうから声をかけるとか、思わせぶりな態度をとることはありません。じつにうまいものです。私とそういう関係になったのも、いかにも自然の成り行きという感じでした。
 その日は別の人も来るからと研究室に呼ばれていたのですが、行ってみたらその人は急用で来られなくなっていたというようなセッティング……。で、2人でちまちま飲んでいるうちに、なんとなく結ばれてしまったわけです。
 私は結婚しているし、子どももいるわけだから、いまさらセクハラだの離婚してくれだの、そういう面倒を言い出す心配がないのを知っているんでしょうね。
 それでも、最初からクギを刺されましたよ。
「旦那さんとはどうなの? まずいことにはならないよね?」
 もちろんこちらも、こう答えておきました。
「大丈夫ですよ、うちは円満ですから」
 当然、先生のほうも妻子持ちです。子どもといってもみんな成人して独立してしまい、いまは奥さんと2人ですけれど、先生は自他ともに認める愛妻家なんですよ。

■三度目はないとピリオドを打った

 ただ、そういう関係って一度目は自然の成り行きでも、二度目以降はいわば「確信犯」ですから、気まずいですよね。次に会う約束をする場合、当然身体の関係を前提としているわけだし、お互いそれを知っていて密会するのだから、とっても淫靡な感じ。まぁ、それが刺激になっていいという人もいるのかもしれませんが……。
「2人の間には三度目はない」
 私はそう勝手に決めて、自分からピリオドを打ってしまいました。といっても、取り立ててそのことについて先生と話し合ったわけではありません。3回目に誘われたとき忙しいからと断り、それからも何度か誘われるたびに、
「2人きりにならないように気をつける」
 というだけのことでした。
 そのうち、そういう誘いはなくなり、うまく自然消滅にもっていけました。お互い家族もあることですし、2回も楽しんだのだから十分でしょう。先生のほうもうまいもので、追ってくることはありませんでした。まぁ慣れているんでしょうね。
 先生とはいまでもいい関係を保っています。ときどきメールで情報交換をしたり、自分の論文にアドバイスしてもらったりしています。深入りする前に体の関係を断ったことで、かえって人間的なきずなが深まったように思えますし、これなら今後仕事の面でも協力してもらえそうです。
 もちろん、このことをまわりに話すことは絶対にないでしょう。先生や自分自身の保身のこともあるけれど、それ以上に、
「えっ、じつは私も先生と寝てたんだ!」
 という人が出てくる気がしちゃって。きっとそういうこともあるのでしょうけれど、聞いてしまうとすごく幻滅するんじゃないかと思う。
「私だけに特別優しくしてくれた」
 と思っていたほうがいいでしょう? どうせ夢のような話なのですから。
 罪悪感ですか? 全然ないといえばウソですが、そもそも15年も夫婦をやっていれば、男であれ女であれ、だれでも欲望が色あせてくるのは当たり前でしょう?

※つづきは「妻の恋」(アストラ)をお読み下さい。

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