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妻の恋【恩師でもあった高校教師との別れ 職場のオーナー経営者と再婚するまで/西沢久美(35歳)・デザイナー】

 あまり大きな声で言えませんが、前の旦那の浩ちゃんは私の高校時代の美術部の先生だったんです。話が面白いと生徒の間で人気もあったし、最初は部活が終わってからみんなでわいわいやっている輪のなかに浩ちゃんがいたという仲でした。
 それが卒業する少し前ごろから一対一で付きあうようになり、あれよあれよという間に私が20歳のときにゴールイン。浩ちゃんは33歳でした。
「恋は盲目」といいますが、私はいったん好きになると視野が狭くなり、のめり込んでしまうタイプで、そのときもきっと「浩ちゃん一筋」モードに入っていたのでしょう。いまから思えば自分でも、
「考えられない」
 と思います。でも若かったこともありますが、当時は「ええい!」って感じで彼のところに飛び込んでいってしまいました。
 じつは私、近眼なんです。でも、結婚するまで我慢してメガネをかけていませんでした。結婚後、浩ちゃんのお父さんが買ってくれたコンタクトをしてはじめて浩ちゃんの顔を見たんですが、そのときちょっと驚いちゃって……。
「えっ、この人こんな顔してたんだ!」
 私、この人のどこを見ていたんだろう。それぐらい、まわりが見えていなかったんですね。

■高校美術部の先生に惹かれて

 よく人から言われるんです。
「あんた、ファザコン(ファザー・コンプレックス)なんじゃない?」
 自分でも、
「そうかもしれない」
 と思う節もないわけではありません。というのも、私の両親は私が4歳のときに離婚していて、それから父親には一度も会っていないんです。私自身は父親の顔さえも記憶していません。
 そのせいかどうかは分かりませんが、昔から恋愛相手は自分よりも高いところにいてくれる人でなければつまらないし、同世代の男性は友達としか見られないところがありました。
 それでも高校1・2年のころには、同い年の友達のように高校の先輩やらOBと付きあっていた時期もありました。でもやっぱりどこか物足りないんですね。
「○○先輩、すてき!」
 なんてふつうの女子高生のようにキャーキャー言うのは私のガラじゃなかったんですよ。
 それに引き換え、浩ちゃんは先生をやっているぐらいだから、大人でまじめで包容力があって、そして面白い人でした。それに、だれとでも分け隔てなく付きあっていける柔軟性もある。
 私は油絵が好きだったので、丁寧に指導してくれる浩ちゃんは私の世界の中心でもありました。美大に行くほどの実力はありませんでしたが、漠然と絵とは将来ずっと付きあっていくだろうと思っていたので、その部分で刺激になる人に惹かれたところもあるかも知れません。「何でも知っている頼りになる人」
 高校生の私にとって、浩ちゃんはまさにヒーローだったんです。

■窮屈な家を出たくて歳で結婚

「なぜ20歳で結婚したんですか?」
 当時を振り返ってこう聞かれたら、それはその場の成り行きと、家が厳しかったせいと答えるしかありませんね。
 いまでこそ離婚はそれほど珍しいことではなくなりましたが、母の時代にはまだまだ「肩身が狭い」という認識があったのでしょう。母はいつも仕事で忙しく、祖母が母代わりとなって育ててくれました。
「世間に片親だからといって、後ろ指を差されるようなことのないように」
 祖母にしてみればこんな思いがあったのか、しつけはとても厳しくて家は常に窮屈でした。専門学校に行くころになると家族に反発する気持ちがさらに強くなりました。
「早く家を出たい」
 と言う私に浩ちゃんは、
「じゃあ一緒になるか」
 と応えてくれて、一気に話が進んでしまいました。
 結婚は専門学校を卒業するころだったから、私は新婚生活と社会人生活のスタートを同時に切ることになりました。
 家にいたころは食事の支度などしたこともなかったから、コロッケをつくるだけで3時間もかかってしまい、一日が終わるとヘトヘト……。でも、浩ちゃんは頼りになるし、最初の2年はそれなりに幸せだったと思います。 ただ、ひとつだけ将来の不協和音を予測させる出来事がありました。それは私の妊娠です。しかもハネムーン・ベビーでした。
 20歳で結婚したばかりで母親になるのは、だれの目からみても無理でしたし、食事の支度さえまともにできないぐらいですから、さすがに自分でも無理かなと思いました。
「そりゃ無理でしょ」 
 でも、浩ちゃんからあっさりそう言われると、
「意外に冷たいじゃん。もっと話し合いはないわけ?」 と、ちょっぴりがっかりしたのを覚えています。

■期待どおりの転職で刺激的な日々

 私、そもそも専門はイラストレーターなんですが、最初の職場は小さな広告製作のプロダクションだったので、パンフレットなどを作成していました。
 残業もなくお気楽な仕事でしたが、イラストを描くチャンスはほとんどありませんでした。デザインもすでに決められたフォーマットで定期的に入稿すればいいといういい加減な仕事が大半でした。うんざりしていたところ、2年目にチャンスが巡ってきました。ある大手のプロダクションがデザイナー兼イラストレーターを募集していたんです。挑戦が実って転職に成功しました。
 そこはデザイナーを10人も抱えていて、広告のプロダクションとしては大きな事務所でした。デザイナーも名の知れた人が多く、すべてが刺激になりました。やっとやりたかった仕事ができるようになって、毎日がとても楽しかった……。
 忙しい職場だったので、前のように定時に帰宅はできなくなりましたが、浩ちゃんは文句も言わず、
「やりたい仕事が見つかってよかったね」
 と言ってくれました。

■20歳近く年上のオーナーと恋に

 後に恋人となる西沢はその事務所のオーナーで、私より20歳近くも年上でした。美大卒でニューヨークに留学していたこともあり、センスは抜群。長身にイタリア製のスーツがバシッと決まる大人の男性という感じです。「なんて素敵なんだろう」
 転職するときの面接でもそう思ったぐらいでした。
 仕事上も適切なアドバイスをさりげなくしてくれる優しいお父さんという感じの西沢をすぐに尊敬するようになりました。実際、仕事ができてなんでも教えてくれる彼は、私にとっては「あこがれの人」だったんです。だから仕事を任されると、何としてでもいいものに仕上げて認められたいと精いっぱいでした。
 一方、西沢のほうも一所懸命に仕事をする私をかわいがってくれましたし、実力を伸ばしてあげようと思ったのか時間を割いて面倒をみてくれました。
 だんだん任される仕事が多くなると、必然的にいっしょにいる時間が長くなります。残業を終えて食事をしたり飲みに行ったりしているうちに、だんだんとお互いに惹かれていったのだと思います。
 ある日、飲んだ帰りにタクシーが拾えなくて、西沢と私は一度歩いて事務所に戻ったんです。そのときいきなり抱き寄せられてキスされちゃって……。いつかそうなるかもしれないという予感はありましたが、私は足がガクガク、心臓はドキドキで、完全に溶けてしまいそうでした。
「以前から好きだったんだ」
 そう言ってくれましたが、私のほうはうれしいのと同時に混乱してしまいました。
「えっ、どうしよう?」
 ただ、彼の胸に顔を押し付けているだけでした。

■ただただ一緒にいたかっただけ

 西沢と出会ったころ、私自身は仕事と彼との恋に精いっぱいで、まわりを見わたす余裕などありませんでした。 考えてみれば、その時期どちらも家庭の話はしなかったように思います。西沢も妻子ある身でしたから、当然家庭について考えなかったはずはないでしょうが、私は先のことなど目に入らないぐらい夢中でした。
 実際、西沢の存在は仕事の面でとてもいい刺激になりましたし、将来のことまで考える余裕もなかったのだと思います。彼のほうも、とくに奥さんとの仲が悪いなどといった話はしていませんでしたね。実際離婚して私と一緒になろうとまでは考えていなかったのかも知れません。
 不倫をしているからという後ろめたさや、夫や周囲に迷惑をかけているという意識は正直いってほとんどありませんでした。「恋は盲目」といいますが、恋をすればだれもが自己中心的になるでしょう? それが不倫かどうかはあまり関係ないような気がします。
 ただ、いっしょにいるのが楽しかったし、いっしょにいたかった。そんな純粋な気持ちだけで結ばれていたのだと思います。私が若かったこともあるかも知れませんが……。
「来週はどこに遊びに行こうか?」
 なんて、2人とも今から思えばかなり能天気な不倫でしたね。
 もちろん夫はとてもいい人ですけれど、だんだんと私自身の世界が広がっていくようになると、浩ちゃんとの2人の世界は狭いような気が……。
 私はどんどん西沢の世界にひっぱり込まれていきました。バリッとスーツを着こなして、バリバリ仕事をこなしていくその姿は私の誇りでもありました。

■ウソをつくことに疲れていたのか

 もちろん浩ちゃんにはウソをつきました。
 私がもともと突っ走ってしまう方なのに加えて、西沢とは「仕事を介した結びつき=芸術的な結びつき」だったこともあって、すっかりのめり込んでしまいました。出会って半年もすると、はずみで外泊をしてしまう夜がしばしばありました。
 広告デザインの仕事は締め切りがあるので、
「仕上げなければならない仕事があるから、今日は事務所で徹夜する」
 なんて言い逃れを続けていました。
 のんきな浩ちゃんもここまでくると疑うようになりました。
「ちょっとおかしいんじゃないか」
 もう少しうまいウソをつけばよかったのかも知れませんが、そこまで頭が回らなかったのか、それとも無意識のレベルでウソをつくことに疲れてしまったのか。
「観たい映画があるから、映画館で観てくる」
 その日も、映画館の名前まで言って出かけたんです。もちろん、西沢とデートに行くということは伏せておきましたが、さすがの浩ちゃんもピンときたのでしょう。 映画館から出て2人で歩いていると、後ろからいきなり西沢の頭に殴りかかってくる男がいました。振り返ると、浩ちゃんが真っ赤な顔をしてげんこつを振りあげていました。

※つづきは「妻の恋」(アストラ)をお読み下さい。

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