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妻の恋【離婚した夫はいい人だったけれども 8年間の結婚生活は「女」をやめていた/吉田裕美子(35歳)・主婦】

 吉田裕美子さんへの三度目の取材のため、新宿駅東口にある有名ブランドの前で待ち合わせた。夏を間近にひかえ、ショーウインドーには新作の水着を着たマネキンたちが並ぶ。
「ほら、水着に液体のパットが入っているでしょ。あれだと触られても分からないよ、まず」
 あるマネキンを指さしながら、彼女が説明をする。
「ほんと?」
 と僕が疑いのまなざしを向けると、「うん、絶対に間違いない。私も胸小さいから、ブラジャーにもガンガンにパット入ってるもん。入れてもAカップだけどね(笑)」
「あっ、触ってみる? ほらほら」
 彼女は白いシャツの胸を反らせてきた。その勢いに気おされたまま、指先で胸をつつくとたしかに柔らかい。
「ほら、わかんないでしょー」
 彼女はそう大笑いし、こう言いながら歩き出した。
「カラオケボックスはこっちにあるよー」
 以前に勤めていたアパレルメーカーでは受付嬢もしていたというが、裕美子さんにそういう気取りはない。
 きっとモテるだろうなと思いつつ、彼女のあとを追った。

■結婚して3年はすごく幸せだった

 旦那とは社内結婚だったの。仕事的にはあまり縁のない人だったんだけど、部全体の新年会のときに隣に座ったんだ。しかも帰る方向もいっしょだったから、電車でも話したりして。そのとき、ちょっと好きだなっと思ったの。 彼がほかの人より早く出社するのを知っていたから、次の日から私も早めに会社に行くようにしてね。それから食事に誘われて、恋人になって、九月に婚約をして、12月に結婚したの。私が23歳で、旦那が33歳のとき。
 結婚式は、それまでの人生でいちばん幸せだった。私のためにみんなが集まってくれて、お祝いしてくれて。すてきな夫が横にいて。
 旦那のことは、大好きだった。結婚してからの三年間は、いま思い出してもすごく幸せだったもん。スーパーに買い物に行って、何を作ってあげるのか考えるだけでうれしかったから。そういうことが、とても新鮮だったのね。 セックスもサルみたいにしてた(笑)。ラブラブだったんだもん。さすがに毎日ではなかったけれど、ほぼ毎日のようにしてたから。旦那とくっ付いてないと眠れなかったんだよ。もちろん浮気なんて、しようとも思わなかった。
 離婚したいまでも、旦那はいい人とは思ってるのよ。ほんと絶対に浮気しない。同僚に聞いても、彼はしないタイプだってみんな言う。逆に、それがつまらないといえば、つまらなかったんだけどね。

■育児をキッカケに離れていく夫婦の心

 旦那への気持ちが変わったのは、子どもを生んでからなの。
 結婚当初はまだいらないと思っていたけれど、2~3年ぐらいして、あっそろそろほしいなって。
 うんうん、違う。好きな人の分身とかじゃなくて、ただただ子どもがほしかったのよ。
 上の子どもが生まれたのが、26歳のとき。
 いきんで、いきんで、生まれた瞬間、その神秘に打ちのめされた。
 生涯でいちばん幸せだと感じていた結婚式なんて、全部吹っ飛んじゃったくらい。比べようもないほど、出産はすてきだった。結婚式なんて、みんないいことしか言わないじゃない。なんてくだらないことに感動してたんだろうって落胆したもん。
 ただ結婚式と違って、子どもは生まれてからが大変なのよね。数時間ごとに授乳がくるじゃない。眠りたい。それなのに、また泣き出す。なんだか自分がオッパイになった気分なのよ(笑)。
 そのときはじめて分かったんだ。
「旦那は役に立たない。なんて使えないんだろう」
 って。おむつを替えるのだって、お風呂に入れるのだって、全然できない。「俺が(世話を)やってやってるんだ」
 そう言われたのもショックだった。自分の子どもなのに、育児をやってやってるなんて。
 出産から数ヶ月後には、旦那が単身赴任になればいいと思っていた。出産前まではラブラブだったのに。
 上の子が生まれてから、セックスしたくなくなったんだ。もう、すごくしたくないの。旦那の性欲は全然変わらなかったけど。とにかく私は絶対に嫌だった。

■夫の前で「女」になれない寂しさ

 旦那とラブラブじゃなくなった理由なんて聞かれても、私にもわからない。ただ、感じていたのは、自分がもう女じゃないこと。すでに母親だったから。 私、「母」と「女」がはっきり分かれているみたい。セックスするなら男と女でいたいの。子どもを生んでから、旦那には男を感じなくなったんだ。私も旦那のまえでは女になれなかったし。 家族だからさ。年が離れていたこともあって、父親みたいだったかも。
 ほかの男だったらいいのよ。私も「母」や「妻」ではなく「女」でいられるし、たとえ既婚者が相手でも自分にとっては「男」だし。
 セックスには真剣に取り組みたい。だから、子どもが泣いて中断するのも許せなかった。子どもの横でセックスするなんてのも、絶対に嫌なのね。そういう環境をつくれないならしなくてもいいかなって。
 もちろん使えない旦那に幻滅していたこともあるんだけど。まぁ、あんまりセックスしないのも悪いからたまには付きあってあげてた。どうだろう? 月一とかでしていたんじゃないかな。誘いをはじめて断ったのは、子どもが生まれてから1年後ぐらいじゃないかな。それまで、ずっと我慢してたから。 といっても、子どもが生まれてから同じ部屋で寝てないんだ。旦那も仕事で忙しいでしょ。同じ部屋だと子どもが起きちゃうじゃん。だから子どもと私で寝てたの。離婚するまで、ずっとね。
 子どもと暮らして、バッチリ「母親」をする。それも悪くはなかった。でも、ときどき寂しくなっちゃった。たまには「女」にもなりたかったから。           *  *

■セックス不要の元カレとの奇妙な関係

 長男誕生から1年。「女」に戻りたくなった裕美子さんが連絡をとったのは元カレだった。同僚だった元カレの近況は、OL時代の友人や旦那からたびたび耳にしていたという。
 その情報を頼りに、大代表で彼の所属部署と名前を告げると、なつかしい声が電話口から響いてきた。結婚式以来じつに5年ぶりの会話だった。
「家族にじゃなくて、『男』に抱き締めてもらいたかったの。自分に『女』を感じたかったから。そうすると相手も『男』じゃなきゃダメでしょ」
 デートはドライブ。実家に戻っていた彼女は、母親に子どもを預けて、六時過ぎに自宅を出たという。
 ここ1年、ミルクだおしめだと、24時間「母親」になって子どもを世話してきた。せめて一時だけでも「女」に戻りたかった。
 高速道路を飛ばして着いた先はお台場だった。少し蒸し暑い6月、浜辺につくられたウッドデッキ沿いに二人は散歩し、アイスクリームを食べ、そして静かに抱きあった。
「もちろんうれしかった。結婚してから旦那以外の男と縁のない生活を続けていたから。
 ドキドキしたか? うーん、覚えてないな。でも、そんなに衝撃的じゃなかったと思う。新しい人ってわけじゃないし。前から知ってる男でしょ。何より『抱き締めて』って言えば、必ずそうしてくれる人だったから。やさしいし、気をつかってくれる人なのよ。 でもね、二人ともセックスをしたかったわけじゃなかったの。彼とは、そういう関係じゃないんだ。体の関係以上のものがあるというかな。
 なんかね、する気がしないのよ。『おまえとは、やりたくない』とかじゃなくて、お互いにセックスの対象じゃないの。旦那とは別の男女のあり方かな。すごくいい関係なんだよね。
 いま会っても絶対にやらない。キスぐらいはたぶんするけどさ。面白いでしょ。だからかな、たとえしばらく連絡がとれなくても、いつか絶対に会えるって思ってるの」
 その日、彼女は夜の11時に帰宅し、また24時間「母」になる生活へと戻っていった。
 この時期、彼女は四ヶ月連続で元カレに会っている。月一回のひそかな楽しみだった。

■新宿雑居ビルのとあるカップル喫茶
 しかし、元カレとは思わぬ形で寝ることになる。
「いや、本当に寝る気はなかったの。ただ、たまたま彼がカップル喫茶にはまっていたのよ。『いっしょに行ってくれ』って。私、断れない人間なんだ。場の雰囲気をこわしたくなくて、ここからはダメだと言えないのよね」
 カップル喫茶は、西武新宿駅の近くにある雑居ビルのなかにあった。ビルの一階を奥まで歩き、小さなエレベーターに乗った。
「店に入ったらカウンターが部屋に中央にあったの。縦に細長い部屋で、一応薄いカーテンでベンチごとに隔ててあるんだ。まずカウンターまで行って、そこから空いているベンチに案内してもらったんだよね。それで、まず飲み物を注文して。私はジントニックだったかな。
 ベンチに座ったら、もう横でやっているカップルが丸見え。すでに何組かいたカップルを見ながら、だれとしたいかとか話したの。そのうちキスとか始まって、それで私も彼もいろんなところに行って」

■相手が何人だったかも覚えていない
 カップル喫茶は、人によって使い方が違うという。他人の行為を見て刺激を受けたい二人もいれば、見せたいだけの男女もいる。もちろん、乱交を望む人も少なくない。
「だれが何をしたいかなんて分からないじゃない。だから、たいてい男同士で声をかけ合うの。『いい?』『交換しない?』とかね。勝手に乱入して来ない。それがマナーみたいね。
 でも、私のところは入り乱れた状態になっちゃった。もちろん最後までやったよ。女の子ともした。私がとなりの席に行って、そこの女性といっしょに男を責めたりさ。
 私が彼のをしゃぶっているところを、後ろから別の男性に入れられたり。もちろん何もしないで、そこで知り合った人と飲みながら話したりもしたよ。 彼? もちろんいつも一緒じゃないよ。彼が遠くの席でたばこ吸っているとき、私が何人かの男女に責められたりもしたから。二時間程いたかな。最後に私たちをふくめて四人残って、あんまり盛り上がっていたから、店の人が閉店時間を延長してくれたの。
 うーん、楽しかったのかというと、何とも言えないかなぁ。私は何でも断らないから、断る人が嫌なの。やるんなら、みんなでやろうよって感じ。『カップルでしてるけど、触らないで』なんて人がいると、こっちが気をつかっちゃって……。そういう意味では楽しめなかったかな。
 近くでやっているカップルがいて、女の子のお尻に触ったら、『イヤッ』とか言うのよ。見られたいけど、触られたくない女性だったみたい」
 結局はじめての浮気は、元カレをふくめ何人かの男性と女性が相手となった。相手が何人だったのかという質問には、
「もう覚えてないなぁ」
 と苦笑した。

※続きは「妻の恋」(アストラ)をお読み下さい。

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