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妻の恋【もう夫から愛されることはない 私の中の積み木は音を立てて崩れた/東山悦子(35歳)・通訳】

 ビデオのなかの自分は大胆だったという。
 恋人のペニスを自らのGスポットに当てようと、下から懸命に腰を振っている。夫以外の快感を知ったばかりの悦子さんの動きはつたなかった。リズムを外し、攻められるポイントを逃してしまう。
 それでも夢中だった。快感を得ることにすべての神経を集中させ、叫び声をあげる。つま先が伸び、脚が宙をさまよう。次の瞬間、太ももの筋肉がふるえ、細く白い脚全体に力が込められた。彼女の顔は苦しそうにゆがんでいた。
 悦子さんは、自分と恋人が映っているビデオを見ながらほおを濡らした。自宅のリビングの床にペタンと座り込み、声すらあげず静かに涙をこぼしつづけたという。
「あぁ、セックスって本当に愛情に満ちあふれた行為だなぁと思ったんです。こんなに愛にあふれているんだと、男女が求め、愛し合う姿はなんて清らかで美しいんだろうって」 6年にもおよぶ夫とのセックスレスが落とした涙でもあった。
「女として体ごと愛されたかった……」
 そう真剣な顔で言ってから、照れたのだろう、彼女は視線を外してほほ笑んだ。

      *  *

■半年ぶりの再会に「今日は疲れているよね」

 セックスレスは、夫の赴任先だったニューヨークに着いた最初の夜から始まりました。半年ぶりの再会。すごく久しぶりのセックスです。
 二人ともまだ20代半ばでしたから、性欲もあるはずでした。ベッドに入って、キスはしてくれました。胸も揉まれたし、吸われもしました。 でもそこで、すべて止まってしまった。
「今日は君疲れているよね」
 まさかこの時には、それから6年間以上も夫とセックスレスが続くなんて思ってもいませんでした。
「やさしい人だなぁ」
 むしろ、そう思っていたくらい。疲れている私に気を配ってくれているんだなと。五ヶ月の乳飲み子を連れて、ニューヨークまで飛行機で移動してきた直後ですからね。
 でも次の日も、その次の日も何もありませんでした。さすがに一週間なにもないときには、どうもおかしいぞとは思っていました。
 ただ当時の夫は、朝の九時から夜中の1時・2時まで働く多忙な生活だったので、
「無理もないかな」
 とも思っていました。
 でも、仕事が忙しいだけじゃなかったんですよね。私の胸を口に含んで、夫はやめました。出産間もない私の胸は、Fカップぐらいの大きさがあったし、乳首も大きかった。子どもを育てるための体だったのです。もしかしたら女の体じゃなかったのかも。
「子どもが生まれて、自分が家庭を支えていくのかという思いがプレッシャーになった」
 以前、夫はそう話してもいました。そんな夫にとって、
「当時の私の体はどう映っていたのだろう」
 そんなことも、ついつい考えてしまうんですよ。

■初恋の純愛から理想的な結婚へ

 夫と出会ったのは学生時代です。同じ大学のスカッシュ・サークルで知り合いました。出会ってすぐに、私は夢中になりました。180センチに届きそうなほど背の高い人で、やせていて、ほんとカッコよかった。なんてすてきな人なんだろうって。まず容姿に夢中になって、それから人柄にも惹かれていって……。
 気がつけば付き合いはじめていました。夫は、私にとって初恋の人です。
 大学の4年間ずっといっしょにいました。授業もいっしょ、そのあとも私のアパートに彼が来ていっしょ。すぐに夫が自宅に帰らなくなりましたから、もうベッタリ。
 出会ったときは、処女と童貞でね。互いに初めての人でした。
 大学時代は、ほぼ毎日セックスしていたと思います。浮気なんてとんでもない。だって、ずっと一緒にいたんですから。それに彼は根がまじめな人ですから、いい加減な気持ちで女性と付き合うことはできないんです。
 社会に出る前の4年間、2人ですごした経験はとても大きなものでした。大学ではじめて触れた知的な刺激、さまざまな意見をもつ友人との付きあい、そうした中でいろいろな価値観を二人で構築していきました。 この年齢になると、もう絶対にできない経験ですよね。おかげで、まるで双子のように相手の考えていることが分かるんです。いまだに夫と意見が対立することはありません。子育てにしても、人生設計についても。
 ただ、セックスを除いてね……。 この14年間、夫が私に声を荒らげたことは一度もありません。もちろん、我慢しているわけではなく。
 それに自己評価の低かった私を、夫はいつも褒めてくれました。それがうれしかったし、自分への自信にもつながりました。
 いま、私には恋人がいますが、それでも夫のことは大好きですよ。
 若いころと比べてもちろん容姿は多少衰えたけど、それでもやっぱり好き。

■夫ほどの男性は二度とあらわれない

 総合商社で、夫は同期のトップを走って出世しています。東大卒どころか国立大でもないのに。上司からも部下からも、男女を問わずに愛されているし、努力を惜しまない人です。
 だれに対しても礼儀正しくて、言葉遣いも丁寧。正義感にあふれ、何を相談しても私が納得できる答えを返してくれる。夫は私の誇りです。いや、「誇りだった」かな(笑)。 ずっと夫のことを「パーフェクトな人」と思っていました。いまはさすがにそこまで思っていないから。でも、人生のパートナーは、やはり夫以外にはありえません。

   *  *

 旦那さんがリストラされたら、離婚を考えますか? なにげなくそう尋ねると、彼女は真顔で僕に聞き返した。
「えぇ? なんで」
 一瞬の空白のあと、彼女は笑顔で答えてくれた。
「たぶん別れないでしょう。たしかに夫が高収入で助かっています。でも私も働いているし、お金では満たされないことは知ってますから。それより働きすぎで体が心配です」
 フランス語と英語の通訳や翻訳を生業としている彼女にとって、生活のために結婚を続ける必要はない。「翻訳の事務所を辞めて夫とニューヨークで暮らしたときは、そのストレスから衝動買いもしましたよ。ミンクのコートとかブランドの貴金属とか。100万円近い商品をポンって買っちゃう。そういう品を身につけると、ホテルやレストランでの対応が変わるの。それもうれしかったのかも知れませんね。でも、気分は晴れませんでしたけれど」
 日本人にしては背も高く手足も長い彼女なら、海外ブランドのコートや貴金属もよく似合うだろう。ノースリーブからのぞく真っ白な二の腕は、すっきりと細い。網のストッキングに包まれた脚にもムダな肉はない。
 自分が太るのを許せない彼女は、運動と食事で体重をしっかりコントロールしているという。中高時代にオール五をとった生まじめさで、きちんとシェイプアップしているに違いない。

※続きは「妻の恋」(アストラ)をお読み下さい。

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