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妻の恋/【父の面影が見えてから始まった夫の暴力・車とメールがもたらした大好きな今の自分・片桐杏子(31歳・主婦)】

 それは取材日から五ヶ月ぶりの杏子さんとの電話だった。
――彼氏できた?
「うん、新しい人と週一回ぐらいで会ってるよ」
――子どもにも会ってくれる人?
「子どもとも遊んでくれる。でも連れていくと、子どもが暴れちゃって大変。遊んでって。三人で公園に行ったりするの。アスレチックとかも近くにあるからさ」
――へー、どんな人なの? 
「特徴? 体格はいいよ。目とか口とか鼻とか、パーツは小さい。へへへ、5つ年下の26歳サラリーマン」

■11歳年上の夫とはノリが違って楽しい

――ネットで知り合ったの?
「ネットに合コン相手を募集する掲示板があって、9月に3対3で飲み会をしたの。そのときに名刺をもらって、一週間ぐらいして電話してみたんだ。それで意気投合しちゃった。四時間半ぐらいしゃべってたもん。2人で飲みに行って、私が車だったから彼の自宅まで送ってあげたのね。そうしたら部屋に上がるじゃない? で、彼の部屋に朝までいたんだ」
――あれ、子どもは?
「実家に預けてきたの。私も実家に泊まる予定になっていたんだ。最近、一週間に一度は実家に帰るようにしている。遠くもないし」
――じゃ、そのときエッチしたんだ。
「いやいや、その日は何もしてない。朝まで話して、それで終わり。本当だって。ちょうどその日は台風が来ていて、部屋を出づらい状況だったんだもん(笑)。風も雨もすごいしさ。それから付きあうようになったの。
 今年の正月休みはディズニーシーに行ってきた。ほら、いちばん人気のジェットコースターのセンター・オブ・ジ・アースに乗って、二人でギャーギャーはしゃいじゃった。
 旦那は11歳も年上じゃない。だから結婚前のデートも落ち着いちゃってたんだ。やっぱり若いいまの彼とはノリが違う。いっしょにいて楽しいもん」
――相性がいいんだね。
「彼の血液型はABで、私はB型なの。変わっているところが互いに合うんじゃないかな。彼は、頭の回転が速くて話も面白いんだ。それに2人とも毒舌なんで、笑いのツボもいっしょだし」
――どんな性格の人?
「うーん、潔癖性かな。いつ部屋に行っても、きちんと片づいているから。私、汚い人が苦手なんで、部屋がゴチャゴチャなのは嫌なの。でも、いままで付きあってきた人はみんなゴチャゴチャ。旦那も部屋を片づけない。
 彼とはファッションの趣味もいっしょなんだ。同じブランドをオソロで買ったりしている。ふふふ、携帯のストラップはね、二人でバーバリーブラックレーベルなの。生活そのものは変わっていないけれど、好きな人がいるから幸せ。これまでとは全然違う」

■ひたすら掲示板の「人妻」にメール連絡

 はじめて彼女に取材したのは2003年8月だった。 当時、私はこの取材に行き詰まりを感じていた。浮気経験のある妻たちから苦労して話を聞けても、記事の掲載許可をもらえない日々が続いていた。
 また、知人・友人たちから紹介される妻たちのタイプが似ているのも気になっていた。ある程度の成功を収めている夫、そして有り余るほどある彼女たちの時間……。 一般的に見れば、その境遇はかなり恵まれている。正直いって、夫から離れ裏切る積極的な理由もない。「ない」というのが言い過ぎならば、少なくとも部外者の私にはどうにも見えてこなかった。
 だからこそ問題の根が深いともいえるが、
「それだけに収まるような安直なまとめ方でいいのか」 という漠然とした疑問が、心の片隅でうずまいていた。 状況を打開するには、知人による紹介以外の方法で取材対象者を探すしかない。手っ取り早い方法は自分でナンパすることだった。
 ひたすら出会い系掲示板の「人妻」たちにメールを出し、取材に応じてくれるよう説得する日々が続いた。
「まぁ取材といっても、写真も撮らないので、レストランで雑談するって感じです。だいたいガンガン食べて笑って、少しだけ真剣に考えてもらって終了ですね」
 こんな誘い文句を含んだメールを私は一日に何通か送っていた。そのとき返事をくれた一人が、杏子さんである。

■5つは若く見える杏子の照れたような笑顔

「メールありがとうございます。杏子です。取材してるんですね! なんかそういうのって初めてなのでびっくりです。なんか面白そうだなって、好奇心くすぐられちゃいました~。
 いいですよ~取材! 私でよければお役に立ちたいです。特技は、笑わせること? ですか。いいですね~ どうやって笑わせるのか期待してま~す」
 返事すらもらえない日々が続いていただけに、彼女のメールは本当にうれしかった。メールの柔らかな文体にも何やらホッとさせられた。
 それから二週間後、彼女の最寄り駅である埼玉県のJR西川口駅改札付近で待ち合わせた。
 時間どおり携帯が鳴り、照れたように笑う彼女がそこにいた。少し明るめの茶髪と大きな目が印象的で、とても27歳には見えない。せいぜい25歳ぐらいだろうか。 僕は来てくれたお礼を述べ、メールで2歳ほど年をごまかしたことを謝罪した。少しでも返答率を上げようという苦肉の策だったが、若く見える彼女に申しわけなく思ったからだ。
「ははは、いいですよ。私もサバ読んでますから。本当は30ですもん」
「えっ」
 と声をあげて、私はことばを飲み込んでしまった。その数分後には、彼女に子どもがいることを知らされて、もっと驚くのだが。

        *           *

■はじめはラブラブだったのに

 旦那と知り合ったのは26歳のとき。25歳のときから私キャバクラで働いていたから、そこで。旦那は11歳年上だから、当時は37歳か。
 ちょっと唐沢寿明に似ていて、見た目が私のタイプだった。やさしいし雰囲気もあって、話していても気が合ったんだ。会って10分ぐらいで好きになってた。すぐに付きあって結婚して、そして子どもできて、すごくラブラブだったんだよ。
 だから、それからの私は旦那しか見えなくなっちゃった。
「ちょっと飲み会に行ってくる」
 と旦那に言われても、
「行ってらっしゃい」
 とは言えなかったんだもん。
「早く帰ってきて」とか「電話して」とかさ、旦那は面倒くさそうに聞いているだけなの。それがまた、私をいら立たせるんだよね。
 当時は、もう本当に旦那だけ。39歳のときに旦那が会社を辞めたの。12年勤めてた食品メーカー。
「いまの会社では、自分の将来性がなくなった」
 なんて言って。私には1歳の子どもがいるでしょ。だから、すぐにでも働いてほしかったの。せめてバイトぐらいはして欲しかった。でも当時の旦那はずっと遊んでばかりいた。
「退職金も出たから、カネもあるし」
 ってさ。仕事を見つけるどころか、アルバイトを探そうともしないで、毎日ゴロゴロして。暇さえあればパチンコに行くんだ。
 私には、その態度が絶対許せなかった。忘れていたはずの自分の父親の姿がすぐに頭に浮かんできたから。

■髪を引っぱられて引きずり倒されて

 父親はいわゆる土地成金だったのよ。いきなり土地が売れて小金をもったら働かなくなっちゃって。田舎で外車を乗り回して、海外に足しげく旅行したりして。あげくの果てには、飲み屋の女にそそのかされて、財産すべて持ち逃げして、女との家を遠くに買っちゃって。私が高校生のときかな。
 それからは、お母さんが働きに出て家計を支えてくれたんだ。だから、いい加減な男は許せない。
 でも当時の旦那も、会社を辞めてイライラしていたんだと思う。私はその態度に腹が立ったし、旦那を束縛しようとしつづけていたの。おかげで、ちょっとしたことで大ゲンカになっちゃう。
 きっかけは、デパートのエスカレーター。駐車場に向かおうとして、ベビーカーを載せようとしたら手間取っちゃったんだ。でも、旦那は手を貸そうともしてくれない。降りてから、
「なんで手伝わないの」
 って私がガンガン文句を言ったの、もともと私イライラしてたから。そうしたら駐車場で旦那がキレまくった。
 私の髪の毛を引っぱって、引きずり倒して、寝っ転がっているところを蹴られたの。必死だったから、よく覚えてないなぁ。でも、おなかとか頭とかボコボコにけられたと思う。そんなに殴られたのは生まれてはじめて。
 でも、殴られたのはその時だけじゃないよ。それから一年後ぐらいに、もっと激しいケンカをしてるから。
 そのときも旦那は、仕事がうまくいかなくてイライラしてたの。当時、知り合いから誘われて、健康食品の営業をしていたんだけどね。ほかの社員の年齢が高くて、人間関係で悩んでいたみたい。
殴られて向かっていってまた殴られ
 そのケンカのきっかけ? もう思い出せないなぁ。きっと些細なことだったと思うよ。
 最初、私が怒ったの。その口調に旦那が怒ったんだよね。
「なんだ、その口のきき方は!」
 って、旦那またキレちゃった。
 突き飛ばされて、寝っ転がっているところを上からボコボコに。私も気が強いから、殴られても向かっていくじゃない。そうすると、また殴られる。平気で頭とかさ。それでも怒りが収まらなかったらしくて、こぶしで部屋の壁を殴って、大きな穴を開けちゃった。
 私のほうは全身アザだらけ。どうしてか分からないけれど、気がついたら薬指がはれて、右のほうに曲がってた。治るのに数ヶ月かかったよ。
「いったん怒り出すと、頭が真っ白になる」
 冷静になると旦那はそんなことを言う。きっと、旦那は私の口調にキレるんだよね。一一歳年上でしょ。だから私に何か言われると、
「俺を見下してるのか」
 なんて思うんじゃないかなぁ。柔らかい女らしい口調で、いつも甘やかして欲しいみたい。
 さすがにこのケンカでは私も離婚を考えたよ。だから義母を訪ねた。そうしたら息子のほうをかばい立てするんだ。
「私は、暴力よりも浮気のほうが許せないけどねぇ」
 夫の暴力ぐらい我慢しろっていうくらいの口ぶりだった。
 同じ女として、義母ならばかばってくれるかもと思って彼の実家を訪ねたのに……。義母は息子オンリーなの。これではもうダメだなって。

※つづきは『妻の恋』(アストラ)をお読み下さい。

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