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元信者が視るオウム的社会論 第21回/元信者の選択

■月刊『記録』99年10月号掲載記事

 相変わらず、オウムにまつわる諸問題がマスメディアを騒がせています。刑期を終えた信者や一度脱会した元信者が自分から教団に復帰したり、あるいは引き戻されたりする例などが頻繁に取り上げられていますが、ここではそれとは逆の、脱会してオウムから離れていく例を二つ取り上げてみます。どちらも僕の身近で起きたものです。

■冷静な目をもつAさん

 まず三十台前半のAさんの例です。
 Aさんは平成二年、麻原彰晃が衆議院選に落選し、石垣島セミナーを開催した直後に出家。真面目で営業の才のある彼は、出版部の営業などで頭角を現し、ホーリーネームも与えられ、中堅幹部として活躍しました。サリン事件後、上位の幹部が軒並み逮捕されたあと、非合法活動に加わっていなかった彼を教団は重宝し、教祖の娘の一人のボディガード兼秘書の重要な立場を与えていました。
 しかし、冷静な目をもった彼は教団の行方に見切りをつけ、年に何度か所用で上京するたびに、親友である僕と密会をして外部の情報を集めていたのです。僕は早く教団をやめるよう勧めていましたが、ついに昨年の春、教団に置き手紙を残して脱出してきました。
 引き戻し工作を怖れた彼は、教団に住所を知られている実家に帰ることができないので、僕が約三週間ほどかくまいました。案の定、脱出してもう二日後には、彼の実家に同僚だった信者が訪ねてきたそうです。
 その後、都内某所に住み始めた彼は、教団の人間に待ち伏せされたり、街で偶然会った在家信者に謀られて、夜を撤して説得されたそうですが、教団の矛盾点を指摘しこの現実世界で生きていく意志を強く示すと、「変わっちゃったね」と言われ、パタッと引き戻し工作はなくなったそうです。今は営業マンとして正式に就職し、チベット仏教の勉強をしています。

■引きこもりがちなBさん

 Bさんは二十台半ばの元信者。彼はついこの前、「再脱会」したばかりです。
 実は彼は、僕がオウムに入信させてしまった一人でした。彼が大学生の時、学生班で学生の勧誘をしていた僕が説得して入れてしまったのです。しかし、僕が学生班を離れ上一色村のサティアンでの独房修行に入ると、道場にもあまり来なくなり、自然退会のような形でやめました。
 僕がオウムを脱会後、刑事さんの紹介で再会し、内気で引きこもりがちな彼を食事やカラオケなどに連れ出していました。ところが、しばらくして彼の電話がつながらなくなり、音信が途絶えてしまったのです。彼がどうしてるか気にかかっていましたが、仕事の忙しかった僕はしばらくうっちゃっておいたのです。
 昨年末、抜き打ちに彼のアパートを訪問してみると、なんと壁には麻原彰晃の息子である新教祖の写真が貼ってありました。問いつめると、精神世界の会合で偶然再会した現役信者から巧妙な誘いがあり、再入信してしまったそうです。
 その後、秋葉原のパソコンショップで働かされるなど、いろいろあったそうですが、今年の八月にやっと「再脱会」できたようでした。
 最近、もともと面識のあったAさんとBさんを再会させました。Aさんは、しっかりと信念をもって新しい人生を邁進しているので、フラフラしがちなBさあんをきちんと導いてくれることと思います。(■つづく)

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