元信者が視るオウム的社会論 第19回/恐怖の大王
■月刊『記録』99年8月号掲載記事
ノストラダムスの大予言で有名な「一九九九年の七の月」がやってきました。「空から恐怖の魔王が降りてくる」という予言です。この文章をみなさんが読んでいる頃には、その「七の月」も終わろうとしていると思いますが、果たして人類は「恐怖の大王」によって滅亡しているのでしょうか? というよりも、滅亡していたらこの文章も読むことができませんが。
元々、この「ノストラダムスの大予言」というものは、日本でのみ過大に取り上げられているもののようです。本国フランスよりも日本でのほうが有名になっているとも聞きました。
日本が戦後を経て、高度経済成長が限界にさしかかる頃、作家の五島勉氏が『大予言』という本の中でこの予言を発表しました。その同時期に石油ショックや公害問題が発生し、それまでの日本の発展の裏面に気づかされることとなり、本は大ベストセラーとなりました。出版時期と世相がシンクロして、暴発してしまったのです。
僕も中学生のときにその本をかじって、戦慄してしまいました。僕は一九六九年生まれなので、せいぜい残り十五~六年、三十歳までしか生きられないのだと。
でも、逆にいうならば、ちょうど三十歳という、心身ともに充実したときに人類滅亡の危機を迎えるわけですから、「滅亡を防ぐために自分には何かをしなければならない使命があるのでは」とも思い込むようになりました。「宇宙戦艦ヤマト」などのアニメが、人類滅亡とそれを乗り越えるための戦いというテーマを取り上げるようになり、自分もできればその「戦士」として戦いたいと考えるようになったのです。
それからしばらくして、麻原彰晃の本に巡り合いました。彼は修行によって神通力を得た若者達が、汚れきった地球を浄化し、さまざまな難問を乗り越え、人類の滅亡を防ぐのだと唱えたのです。三万人の解脱者が誕生すればそれが可能だと。そして、それを達成させるのが世紀末の日本に現れた救世主・麻原彰晃とオウム真理教なのだと。
麻原氏のその文章を読んだとき、「これが僕の生きる道だ!」と歓喜しました。そして、どんどんオウムの活動にのめり込むようになり、とうとう二十歳の時に、家族の反対を押し切って出家するようにまでなってしまったのです。
さて、僕が青春をかけてまで滅亡を防ごうとした「一九九九年七の月」ももう終わりです。もしかすると、現オウムやノストラダムスの予言を教義に取り入れているカルト教団が、教義と現実との帳尻を合わせるために自作自演の事件を起こしているかもしれませんが……。 自らの寄って立つ信念が崩壊する時、人は自暴自棄になりがちですから。(■つづく)
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コメント
ノストラダムス本人による4行詩の解説紹介してます
今回終戦記念日にあたり
ノストラダムス本人が霊媒を通して4行詩を語る書籍で原爆投下部分を掲載しました。
ぜひご覧いただきたいと思いました
※アンゴルモワもずばりそのまま出てます
正しい解釈を知れば予言はむしろ当たっており彼の人類が地球で終わるまでの予言は現在も進行中です
http://ameblo.jp/gitarcla/
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投稿: gitarcla | 2007年8月18日 (土) 09時16分