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「JRに巣くう妖怪とは?」 国労vs革マル派/本誌編集部

■月刊『記録』95年10月号掲載記事

■整備新幹線問題に絡む

* 「妖怪」が「人知では解明できない奇怪な現象」(広辞苑)という意味ならば、千人以上の解雇問題だけでも「巣くっている」と十分言い得る。94年6月に「JR東日本に巣くう妖怪」という見出しで、松崎明JR東日本旅客鉄道労働組合(東労組)会長が革マル派に属しているとの疑惑を『週刊文春』が報道した。そして現在、今度は革マル派の機関誌『解放』が、「国労が運輸大臣に秘密献金」とスッパ抜いた。この問題は、文春がJR東日本管内の販売店(キヨスク)での販売中止に合うなどJR側の過剰とも思える対応のせいか、どのメディアも及び腰だ。だが、志操高き読者に支えられ、キヨスクにも広告にも頼らない本誌に恐いものなどない!

『週刊文春』の記事は、松崎氏は革マル派のナンバー2まで登りつめた人物であり、86年に転向宣言を行ったが、この「転向宣言」が怪しいとにらんだのである。
 この報道に対しJR東日本側は、事実無根の記事としてJR東日本管内の販売店(キヨスク)で販売しない方針を取った。仮処分決定を受けての発売再開後も、同誌の取り扱い部数は半分に落ち込んだ。結局、文春側が11月に「お詫び」を掲載して和解した。
 そして最近、JRの周りは再び慌ただしい。革マル派(日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)は機関紙『解放』において、国鉄労働組合(国労)から亀井静香元運輸相に秘密献金をしていたと報じ、逆に国労は松崎会長と革マル派が深い関係を暗示するかのようなテープを入手したと発表した。それを受けて革命的共産主義者同盟(中核派)までが、革マル派の報道は捏造だと断じたビラを、JRアパートのポストに投げ込んでいる。
 ことの起こりは、94年12月27日に「202億円損害賠償請求訴訟」が、国労と国鉄精算事業団との間で19年ぶりに和解が成立したことにある。この訴訟は、75年に国労や旧動労が起こした「スト権スト」に伴う損害賠償を旧国鉄が求めたものだ。国労は和解のために「分割・民営化されたことを認める」との新方針を表明し、国労会館を明け渡すことにも合意した。国労の樫村潔書記長は本誌に、「会館は精神的な中心地だった。お城を明け渡すような心境だ」と苦しい胸の内を語っている。
 しかし、判決は、そもそも国労敗訴の可能性が高いといわれていた。それが会館明け渡しの代償とはいえ、国労に20億円前後の立ち退き料を支払うなど、勝利をほぼ手中にしていた国鉄精算事業団が、国労に有利な形で告訴を取り上げたのはなぜか。
 一般的には、「この訴訟は当時の中曽根康弘自民党幹事長が、渋る国鉄当局のしりをたたいて訴訟に持ち込んだといわれる。中曽根元首相が後に行政改革の目玉として、分割・民営化を実現させたことからも、その障害となる国鉄の労組に圧力をかけるのが狙いだったと思われる。国鉄の分割・民営化が実現し、闘争力を誇った国労も10分の1以下に組合員が減って、JR内の少数組合に転落した。訴訟の狙いはすでに達成され、『歴史的役割』は終わっていた」(毎日新聞)との解説が支配的であったが、ひとり革マル派だけが、独自の見解を『解放』95年4月24日発売号で示した。
 同紙は、「運輸大臣・亀井が、大蔵省との予算折衝において、「採算性」を理由に整備新幹線に消極的姿勢をしめしているJR東日本会社の経営姿勢の転換をはかる、この転換を強引に実現するために国労を利用する、という担保をさしだしたからである」と書き立てたのだ。

■国労がキャスティングボード?

 JR東日本内の国労組合員はわずか1万8千人。それに対してJR総連傘下の東鉄労は5万6千人もいる。国労がどう動こうと経営姿勢が転換するとは思えない。ただし全国的にみれば、JR連合(東日本では4千人)がJR総連を6千人ほど上回っており、全国の国労組合員3万1千人がどちらにつくかは重要な問題となるだろう。事実、国労が「分割・民営化された事実を認めた」ことを受けて、JR連合は組織統一を、JR総連は「あらゆる形での話し合い」を呼びかけた。今まで強烈な逆風にさらされていた国労がキャスティングボードを握る可能性が出てきた。
 もっとも、少々フォローの風が吹いたからといって、それに乗じて整備新幹線をネタに運輸相とランデブーなどというウルトラCを国労が演じられるとは常識では考えられない。そもそもスト権ストをめぐる訴訟は、分割民営化や余剰人員対策などに協力した動労に対しては86年段階で取り下げられており、訴訟自体が、民営化される国鉄内での労組の力を削ぐための道具であり、94年末段階で役割を終えたというのが真相だろう。
 では革マル派はどうして突飛ともいえる「真相」を報道したのだろうか。前出記事を含む「JR再編をめぐる新たな動向」と名付けたシリーズを『解放』が始めた時期が95年4月である点にヒントがあるかもしれない。同じ頃、国鉄の民間化に伴う国労組合員1047人解雇問題で、運輸省が解決案を模索していたのだ。
 すかさず6月5日刊『解放』の同シリーズは「国労中央が運輸相・亀井静香らに1憶9000万円の秘密献金!」とスッパ抜いた。事実とすれば大変なニュースである。
 同紙が秘密献金の証拠としているのは、小島忠夫国労特別中執から永田稔光国労委員長に宛てたメモだ。3枚のレポート用紙には、国労が1047人問題を運輸相と亀井運輸相との関係を軸に解決していこうとしていることや、亀井氏に9000万円、野坂浩賢建設相と佐藤孝行元自民党総務会長に5000万円を渡したことが書き記されているというのだ。
 このメモについて樫村書記長は、「報じられた当時は混乱していたこともあり、きちんとした調査結果を出せなかった。しかし、現在は調査も終わり、3枚のうち2枚は小島氏が書いたが、もう1枚は偽造とわかっている」という。そこで『解放』に問い合わせたところ、国労内部から入手したとの説明をうけた。一方、国労側は「盗んだとしか思えない」とコメントしており、真相はヤブの中だ。樫村書記長はまた、同時期に永田国労委員長が自宅に保管していた小島メモとは別のワープロのメモが何者かに無断で持ち出され、改ざんされて『解放』に載ったことがあると証言しているため、『解放』の記事をう呑みにするのは危険である。

■秘密献金疑惑の疑問点

 そもそも、秘密献金報道には大きな疑問点が2点ある。
 まず第一に、亀井氏らに送ったとされる1憶9000万円もの大金をいかなる方法で調達したのだろう。『解放』によれば、国労会館と全国の国労の預金を担保に東京労金から緊急融資を受けたものだという。このような融資方法にしたのは、時間がないことと、資金調達方法がわかりにくいこと、国労がすでに10億円もの融資を受けており、「国労中央本部の資産を担保にして追加融資を受けることは現実的に不可能である」ためとある。
 しかし、国労が東京都渋谷区代々木に持っている1483平方メートルの土地には全く抵当権が設定されていない。この土地だけでも、国労は単純に計算しても7億円以上の融資を受けることができるとみるべきだろう。樫村氏も東京労金からの融資額は、『解放』が書いた額とは全く違うと語っている。
 第二は、国鉄民営化を運輸大臣として強力に押し進めた三塚博氏と同派閥の亀井氏が、国労を擁護するのかという点だ。『解放』側が、だからこそ亀井氏に献金が必要であったとの見解を述べるわけだが、少々うがっているのではないか。
 94年1月に、JR北海道とJR貨物は「採用差別」事件で中央労働委員会が国労組合員の救済命令を出した時に、社会党の伊藤茂運輸相は和解案を示して事態を収拾しようとしたが、経営よりの運輸省幹部を動かすことができなかった。結局JR側は行政訴訟に踏み切ってしまう。しかい、朝日新聞によればJR各社の幹部は、運輸相らによる早期解決要請や中労委命令を無視し続けることへの世論の批判も踏まえ、、「提訴後、話し合うことを拒否しない」と含みのある発言をしている。
 同じように中労委で争っている事件が、JR全体で25件もあることを考えれば、JR各社としても国労の譲歩を早く引き出し、運輸相と運輸大臣との関係を微妙にする問題から手を引きたいのが本音だろう。このような状況を受けて、亀井氏が運輸大臣に就任した。三塚派の影響が強いとされる運輸省である。国鉄民営化の中で、三塚氏が動いたように、国労問題を解決する流れの中で社会党出身の細谷治通政務次官を通して亀井氏がJR各社と話し合いをしたとみてもおかしくはない。
 亀井氏への献金問題をスッパ抜いた『解放』は、夜中に国労組合員の自宅に配られていた。樫村氏はもちろん、一般組合員からも同様の証言を得ている。なぜ、革マル派はここまで、国労の問題に力を入れるのだろうか。革マル派のインタビューでは、「労働運動の視点から国労は許せない」との声が出ていた。是非は別にして、その思い自体にウソはなかろう。しかし、それだけの理由なのだろうか。やはり、国労の組合員数がJR総連とJR連合の力の均衡を破る要素になり得る点を看過できない。
 なぜならば文頭に示したように、JR総連の中核である東鉄労の松崎明会長が革マル派に属し、JR東日本の経営陣と組んで国労を追い落としたといううわさがいまだに絶えないからだ。単なるうわさではなく、現に国労組合員の大半は信じて疑わない。「JR総連のチラシが革マルの文章と同じ文体で書かれている」「松崎氏が革マル派なのかと記者会見で質問され、同派は事実を否定しなかった」といった点が根拠になっている。
 本誌も「松崎会長=革マル派」説を『解放』編集部に質問した。答えは「(松崎氏は革マル派に)所属していない」だった。今までの記者会見などでは、「ノーコメント」と否定も肯定もしない態度を繰り返しており、霧は晴れない。

■革マル派の援護射撃か

 国労が分割・民営化を認める路線変更を発表した結果、3団体とも基本的な考えは近づいたとみていい。しかし、これまでの経緯を考えれば国労がJR総連と組むことはあり得ない。逆にJR連合と手を組まれれば、JR総連が少数労組として取り残される危機に陥る。そこで国労に打撃を与えるべく革マル派が援護射撃を送ったとみる向きは多いのである。
 だが、一方で国労=悪という構図と同じ意味で、国労=正義という言い方もまた、素直にうなずけない。国労側は95年7月、「花崎(JR東日本取締役部長)が潰れたら革マルだって潰れるの。松崎だって」と、JR東日本幹部の声が録音されているテープを公開した。しかい、このテープもネタ元がはっきりしない。しかも、発表は『解放』の「JR再編をめぐる新たな動向」シリーズに合わせたようなタイミングだった。正直、かなり怪しい情報だとしかいいようがない。
 また、樫村氏が小島メモの一文と認めた、「亀井と会い1047名の話しをする。もちろん礼もする」という部分について、樫村氏は「礼」は会食のことで、精算事業団・国労・運輸省3団体の総勢8人が1月中旬に赤坂の料亭で食事したものを指し、1人1万5千円程度だったと説明しているが、会食だけというのは説得力に欠ける。ただ一つだけ確かなことは、国労組合員が不当に差別されていることである。労働運動の視点以前に、人権問題の視点が必要であることだけは間違いない。
 JR内の奇々怪々については、取材するほど灰色の部分が広がってくる。「なぜ、俺たちの労働運動に革マルだの中革だといったセクトが密接に関わっているのか。本当に嫌になっちゃう」との国労組合員のつぶやきが、取材の中で一番印象に残った。

■■「解放」編集部に聞く

------『解放』で報じた国労の亀井運輸大臣への秘密献金についての説明を。
 国労組合員など1047人が精算事業団から解雇された問題で、解雇者のJRへの復帰要求を部分的に受け入れた内容の解決案を運輸省が示した。この解決案を出させるために、国労本部は運輸大臣・亀井などに1憶9千万円の秘密献金をしたのだ。国労中央本部特別中執・小島忠夫が国労委員長・永田稔光に宛てた3枚のメモにはっきり書かれている。
「202憶損賠訴訟」取り下げと引きかえに、分割・民営化反対の幕を下ろした国労本部は、このことによって切り捨てることになる1047人の解雇問題を解決するためには亀井にすがるしか方法はなかった。しかし、もちろんすがるだけでは不十分。国労よりの解決案を出させるためには、運輸族へ献金を行わなければならなかった。
------国労よりの運輸省案が出されたのは、亀井運輸大臣の売名行為とも感じたが。
 そういう見方は皮相だ。まず国労からいえば、なによりも「202憶損賠訴訟」を取り下げてもらうことと引きかえに分割・民営化反対の路線を転換したのだ。このことへの『記録』の認識が甘すぎる。国労が全面的に敗訴することは確定的だった。もし202憶もの支払いが国労に課せられれば、組合費の差し押さえを招き、組合として成り立たなくなってしまうからだ。
「202憶損賠訴訟」で路線を転換しながら、組合員にそれを隠している国労本部には、1047人問題で有利な解決案を運輸省に出させないと闘争団は納得しないとの危機感もあったはずだ。
-国鉄精算事業団に「202憶損賠訴訟」を取り下げるように、亀井運輸大臣が精力的に動いた理由をどう考えるか。
 亀井としては、採算性を理由に整備新幹線に消極的姿勢を示しているJR日本の経営姿勢の転換をはかるために、国労を利用することを計画した。それは自分の意向を貫徹するためにJR各社を運輸省の指揮・監督の下に置こうとする構想とも絡んでいる。
 この亀井の意向をうけて国労本部は分割・民営化されたことを認めるなど政治路線を変更したのだ。この経緯は、国労委員長・永田稔光の極秘メモによっても確認できる。
 そもそも、国労本部は運輸大臣・亀井や国鉄精算事業団との秘密交渉を、国労組合員に明らかにしていない。それは、明らかに出来ない内容の交渉だったからだ。政府。運輸省の意向に沿うように秘密裡に運動方針を転換したことは、労働運動として許されることではない。しかも、国労本部は組合員に対して、闘うポーズだけは取り繕っているが202億円で魂を売ったのだ。
------国労は献金の原資となった1憶9千万円を含む東京労金からの融資はデタラメだといっているが、どこからの情報なのか。
 融資額がデタラメなどという反論を国労本部はどこでもしていない。ほの記者には融資があったことは事実だが別なことに使ったと弁明している。それぐらい本部の対応はデタラメなのだ。
------小島メモのうち2枚は本物と認めているが。
 3枚とも本物。彼らは公式にはメモについては何もいっていない。デマだとしか反論しないことに疑問を持たないのか。
------メモはどこで手にいれたのか。
 国労内部から入手した。
------国労は永田稔光委員長宅からメモが盗まれ、改ざんされて『解放』に掲載されたと主張しているが。
 そんな話は聞いていない。改ざんされたというのなら、元のメモを出せばいい。
------国労は革マル派と松崎明東鉄労会長との関係を示すといってテープを公表しているが。 献金問題で追いつめられた国労幹部が、大会直前の記者会見で、出所不明のテープを流して、物笑いになり、相手にされていないそうですね。「関係を示す」などといっても、そもそも関係がないのだから、そんなもの示しようがない。
 我々は国労本部の裏切りを問題にしている。国労をめぐる一連の問題は、人権問題ではなく、労働運動の問題だ。日教組本部の「日の丸・君が代問題」の大裏切りと同様に、われわれ日本労働運動の腐敗の極致を問題にしているのだ。
------松崎氏は革マル派に所属しているのか。
 所属していない。

■再反論/樫村潔国鉄労働組合書記長

------東鉄労の松崎氏は革マル派に所属していないと、解放社が言い切った点についてどう思うか。
 状況が変わってきたから、対応を変えてきたのではないか。革マルと松崎氏との関係を示すテープも出てきており、会社にとっては困った事態だろう。
 革マル派の本拠地は、エーザイ(注:エーザイ側は完全否定)とJR東日本だとも噂されている。本拠地を残し、生き延びるためにはいろいろなことをしてくるだろう。
------小島メモは国労内部で入手したと解放社が言っているが。
 絶対にあり得ない。国労内部にシンパがいるかのような発言は、革マル派の常套手段だ。裁判も控えているので、いずれ明らかになるだろう。小島氏が実際に書いたメモについては、盗んだとしか思えない。
------革マル派はさらなる証拠を持っているとも言われているが。
 新しい証拠があるなら、サッサと『解放』に掲載すればいい。革マル派が何をしてくるのかはさっぱりわからない。

※なお、亀井静香前運輸大臣は当然のことながら「事実無根」と否定している。毎日新聞によれば、亀井氏は「背後関係を含めた徹底的な捜査を期待している」と語っており、本誌の取材に対しても、亀井氏の事務所より「名誉毀損で訴えていることもあり、コメントのしようがない」との回答を得ている。
(インタビュー中の表現をそのまま掲載したため、一部の方が呼び捨てになっている点をご了承下さい)(■つづく)

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