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疑念を拭えない「自立支援法」

■月刊『記録』02年8月号掲載記事

■疑念を拭えない「自立支援法」/文・本誌編集部

 今年7月17日、「ホームレス自立支援法案」が、衆議院厚生労働委員会で可決された。議員提案の法案であるため、今国会で成立する見通しとなった。
 この法律の評価は、揺れている。「行政の責務」を明示したことに対する評価が高い一方で、「野宿者の起居の場として適正な利用が妨げられた時」には、「必要措置も取る」と書かれた部分には、各所で強い疑念の声が挙がっている。
 支援の法律ができれば、状況が変わるのではないかと誰もが考えたくなる。ホームレスの方々はもちろん、彼らの生命を支え続けている支援グループでも例外ではなかろう。しかし、このホームレスの支援に関する限り、どうにも信じられないというのが、私の偽らざる気持ちだ。
 ホームレスのための自立支援センターが開設された当初、私は随分と期待したものだった。原則として2ヶ月以内の利用とはいえ、就職支援や健康相談、生活訓練なども実施するという。取材で知り合ったホームレスの人々の中にも、期待に胸を膨らませ路上から自立支援センターに移った人がいた。
 しかし数ヶ月もすると、その男性が段ボールハウスを作ることもできず、ビルの谷間でアオカンしているという噂を耳することになる。
  「公園なんて場所を空けたら、もうテントを張る場所なんかなくなっちゃうよ。だから支援センターなんか行かないで、ここでテント張ってた方がいいんだ。どうせひどい仕事しか紹介しないんだから。大見得切った手前、奴だって恥ずかしくて、ここには顔を出せられないよ」
 自立支援センターに行った男性の隣の住民は、そう言って顔をしかめた。
 支援センターに行った彼が、どうしてホームレス生活に戻ったのかはわからない。しかしきちんと退職金の支払われる大企業で働き続けた人でもあった。女性に騙されて、すべての金を失ったものの歳は30代と若い。住所がないと職に就けない現実を理解しているだけに、就職のチャンスをみすみす棒にふるとも思えなかった。
 もう1つ気になったのは、自立支援センターの噂が決して良くなかったことだ。食事の情報などは、口コミで一気に広がるホームレス社会なのに。
 木で鼻をくくったような役所の対応。体裁だけ整えられた公的支援。そんな行政の対応に、ホームレス人々は何度となく裏切られ続けてきた。もちろん親身になってくれる人もいるし、窓口だってある。しかし状況は、ほとんど改善してない。それもまた事実だ。
 今回の法律にしても、支援する気のない自治体が「適正利用」という文言を利用してホームレス排除に出れば、状況はさらに悪化してしまう。結局、ホームレス救済の成否は、行政がどれだけ本気で動くかにかかってくる。法律は、具体的な行動までは決めない。本当にホームレスを救う法律なのか、長いスパン取材し報告していきたいと考えている。(■了)

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