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就職氷河期、リストラ…… 職がない!

■月刊『記録』99年8月号

男性の完全失業者数は過去最悪の数字を記録した。有効求人倍率は前月より〇・〇二ポイント低い〇・四六倍となり、こちらも最悪録を更新した。社会不安と呼べるほど深刻なリストラの嵐と雇用不安。社会の「職なし状態」は依然として続く。

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「夫はメーカーに勤めているんですが、ビラ配りなんかをやらされているんですよ。ほとんどリストラための嫌がらせですね。家族のために夫も我慢しているけれど、そのうち強制的に首を切られると思うんです。だから私が働こうと思って。でも、ほとんど年齢ではねられてしまいます」(四九歳 女性)
 一家の大黒柱が、職を失う衝撃は想像を超えるほど大きい。六月二九日に総務庁が発表した五月の労働力調査によれば、男性の完全失業者数は二五~三四歳で四八万人、四五~五四歳で三三万人、また世帯主では九七万人とすべて過去最悪の数字を記録した。社会不安と呼べるほど事態は深刻の度合いを増してきている。

■パートが生む見せかけの就業率

 七月初旬のある日、私はハローワーク、かつての職安を訪れた。武蔵野・新宿・飯田橋と渡り歩き、玄関から出てくる人に手当たり次第に声をかけてみた。しかしとにかく口が重い。特に男性は声をかけても、ほとんど立ち止まりもしない。片手を拝むようにそっと上げ、視線を落としたまま足早に去っていく。
 失業に対する心理的プレッシャーが、それほど強いということか。
 わずかに取材に応じてくれた五三歳の男性は、あまりにひどい求人状況に、諦め顔でこう言った。
  「俺、タクシーやってたんだけどね、腰を悪くして今、辞めてるんだよ。だけどこの歳になると、なかなかいい仕事はないねえ。仕方ないからまたタクシーに戻るかねえ。あれは腰にくるんだよ。まいっちゃうねえ。妻も子もいるよ。夜、寝られる仕事がいいねえ」
 また、四八歳の主婦は、
  「夫の残業代がカットされてしまって大変です。まだ子どもはこれから大学受験なんですよ。パートして家計の足しにしようと思って仕事を探しにきました。できればね、無理なく長くやれる仕事につきたいんですけど、どうしても年齢がひっかかってパートしかないんです。以前にも大学の食堂でパートしてたけれど、職場は熱いし、油で髪なんかもべとべとになるし大変でした。あれは肉体労働でした。
 今日もいい仕事はなかったですね。フィルム工場のパートがありました。立ち仕事なので不安ですが、工場が家の近くなので、見学してから考えます」
 先の労働力調査によれば、失業者数は最悪を示したにもかかわらず、五月の完全失業率は四・六%を示し、調査以来最悪だった先月よりも〇・二ポイント減少している。こんなギャップが生じた理由は、四八歳・主婦が言うように、女性の臨時雇用の増加にある。
 パートなど、臨時雇用として雇われた女性は、賃金をはじめとする正社員との処遇の格差にさらされる。夫は残業代カットにリストラの不安にもさらされ、妻は低待遇のパートで口糊を凌ぐ日々だ。事態の深刻さは、かなり大きいといえるだろう。

■四〇社受けても内定なし

 次に、「就職氷河期」といわれる大学生の就職状況をつかむべく、首都圏大学の就職課を訪ねてみた。労働力調査では、五月としては過去最多の二四万人が就職浪人という結果が出たばかりだ。まずは、東京六大学の一つといわれる明治大学の就職課を訪れた。リクルートスーツを着ている学生をつかまえて話を聞く。
  「僕は現在、七〇社回りましたが、まだ内定が出ていません。かなり厳しいですね。また採用のための試験期間が長いんですよ。リクルーターに三~四回会って、ようやく本当の試験でしょ。その試験もまた、内定までには三~四回ありますから」(経営学部 男子)
 この学生は、食品メーカーと旅行関係の企業への就職を志望している。実学の代表といわれる経営学部の男子にあってもこの惨状だ。リクルートスーツを着ている他の学生の一人は、すでに四〇社近くの試験を受けていたが、まだ内定をもらっていなかった。
 次に訪ねたのは大妻女子大学。いち早く社会問題化した女子学生の就職状況を見るためである。
  「企業の就職説明会に行ったら、受付でおじさんの社員に『来たよ~っ』って憎々しげに言われたんです。きっと女子が来たことが嫌だったんじゃないでしょうか。非常に頭にきました。私は、アパレル関係を中心に回ってますが、まだ内定は出ていません。周りの子もまだ、ほとんど内定は取れていないみたいです」(文学部)
 また、こんな話も出た。
  「説明会のハガキを申し込んでも、企業からは案内の通知が全然、来ないんですよ。だから仕方なく、大学の就職課から紹介された企業だけを回っています。それしか方法がないので……。
 大学の友達も、やっぱりまだ内定は決まっていないみたいですね。もしこのまま決まらなければ、アルバイターになるしかないね、って話し合ってます。しょうがないですから」(文学部)
 予想通の惨状である。

■不況は首切りのチャンス

 さて、最後に訪れたのは早稲田大学の就職課だ。ところがキャンパスに足を踏み入れて、他大学と何か印象が違うことに気づいた。まず、リクルートスーツでキャンパスを歩く学生が目立って少ない。就職課のドアの前で学生を片端から捕まえてみたが、ここでもほとんどの学生が就職先をすでに決めていた。まだ就職活動中という学生も、これから試験が始まる公務員や教員志望者ばかりであった。
 第一文学部哲学科に在籍し、コンピュータ・ソフトメーカーの採用に内定した女子学生は次のように語る。
  「第一志望の企業に受かってしまいましたので、もう就職活動はしていません。企業への資料請求ハガキがついているリクルート誌は、三年生の十月頃から集め始めました。ハガキを出し始めたのは四年生の三月頃からです。企業に面接などに行き始めたのは四月の終わりからですが、三~四社受けたところで第一志望が受かってしまいましたので活動はやめました。トータルで就職活動は二ヵ月くらいしかしていませんね。今日は、就職課の前をたまたま通りかかっただけです」
 さすが私学の雄、早稲田大学ということか。丸一日取材したが、ここでは不況の嵐はあまり感じることができなかった。
 大学からの帰り道、再び飯田橋のハローワークに立ち寄った。そして、たまたま訪れていた、ある警備会社の求人担当者に話を聞くことができた。
  「完全失業率っていってもね、本人がやる気がない人もかなりいるでしょ。働かない人や長く続かない人とかね。そういう人は自業自得だと思うんですよ。
 今日は(ハローワークに)、求人で来ました。うちはガードマンの会社です。今まではうぞうむぞうの人が集まってきていましたがね、すべて首を切って、しっかりした人を雇いたいと思っているんですよ。私のような業界にとっては、この不況がはャンスですからね」(五三歳 ガードマン会社社長)
 年齢・性別・肩書き・仕事の能力。あらゆるふるいにかけられ、弱者は職を失う。このような事態を、実力主義という言葉だけで片づけてはならないだろう。
(編集部)

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T・T 国士舘大学工学部土木工学科 男子
■理系神話は崩れている

 私は大学四年になり、自分のやりたい仕事をするために就職活動をしている。
 世間でも大学でも「就職氷河期」と、洗脳でもするかのように口をそろえていうが、実際に就職活動を始めるまでは「大変なのは文系の女子大生で、自分は男でしかも理系だから関係ない」と思っていた。「就職氷河期」はまさに「他人事」としか考えていなかったのだ。しかし、実際に就職活動をしてみると「就職氷河期」どころではなく「超就職氷河期」であり、自分の希望する職に就けるかどうか不安になっていった。
 自分は工学部土木工学科に在籍し、将来は土木技術者になるために土木科を希望したこともあり、就職先も建設会社か道路会社で、設計者か技術者を希望していた。七〇社以上に資料請求のハガキを出し、インターネットメールも使って資料請求をした。さらに、合同企業説明会にも積極的に参加し、そこでも二〇社以上に資料請求ハガキを出したが、時代は「超就職氷河期」、帰って来た会社案内の資料はたったの三〇数社。資料請求した会社の半分以下だった。
 就職情報紙や合同企業説明会に参加していない会社にも、直接電話で資料請求をしてみたが、ほとんどが「今年の採用はありません」と言われた。なかには「今年の採用は指定の大学以外では行っていません」などと、ふざけたことを言っている会社もあり「そんな会社には頼まれても行かない」と強がりを言ったりしたこともある。このように、実際に会社訪問を始めてみて「超就職氷河期」を実感した、というかさせられた。
 どこの会社の説明会を訪れても、採用人数をはるかに超える就職志望者がいた。そこには企業の業種とは、ぜんぜん関係ない学部や学科の学生も大勢いた。しかし、そのあたりは会社のほうもはっきりとしたもので「業種と関係のない学部または学科の人は就職試験を受けられません」と言い切っていた。会社の言い分もよくわかるが、本気でその会社を志望している学生にチャンスくらいは与えてほしい。
 自分が感じたことだが、会社訪問とは就職活動をしている学生が会社をよりよく知るためにあるのではなく、会社が足切りをするために設けられているものだった。会社訪問をしても就職試験を受けられるわけではなく、かと思えば面接をしたわけでもないのに提出書類で就職試験を受けられるかどうかが決まるところもある。
 なかには「近いうちに試験日程を送付します」と言われ、日程が送られてくるのを一ヵ月近く待っていたが、あまりにも遅いので電話で確認したところ「就職試験はもう終了しました」と言われた。要するに足切りをされていたのだ。これには、さすがに怒りが湧いてきた。
 建設業界はまさに冬の時代であり、学生の就職率も落ちている。どんなに学生が就職したくても受け入れる場所がない。
 まさに「超就職氷河期」まっただなかである。

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K・K 國學院大学文学部文学科 女子
■就職活動は中小企業に限定

 私の就職活動は、三年生の十一月から始まった。大学での就職ガイダンスをかわきりに、いくつかの就職情報誌への登録を行った。このようなガイダンスを行っていない大学もあるので、私の大学は学生に対し、良心的といえるかもしれない。
 また、運良く今年から大学に、パソコンによるネットワークシステムが整備されたので利用することもできた。校内アカウントが発行され、パソコンを持っていない学生にもインターネットを活用する場が提供されたのだ。これは就職活動をする上で大きなプラスとなった。
 その後、自宅に三キロはあろうかというハガキ付きの会社案内資料冊子が送られてきた。今年は、企業からの資料の送付は、性別や大学に関係なく行われたようだが、去年の先輩の話では、女子学生と女子大学の学生には遅配がみられたとのことである。
 早速、資料の冊子を使って希望に合う会社を絞り込んだ。私には大手指向が全くなかったので、中小企業に最初から目を向けた。女子学生だけにとどまらない慢性的な就職難という近年の状況を考えると、早くから中小企業に絞ったほうが内定が出やすいと思ったからである。
 大手はエントリーシートを使って、応募者の絞り込みを事前に行うので、募集期間が比較的長い。それに比べて中小企業はかなり早い段階で内定を出し、優良学生を確保しようとするので、私には青田買いとしか思えないような、五月上旬に内定を出した学習塾もあった。
 また、大手企業は、会社案内資料冊子に企業案内を載せないことが多い。掲載されていたとしても、中小企業と違い、料金後納ハガキを添付してくれたりはしないので、自分でハガキを買って出さなくてはいけない。まあ、ここまでは当然だとも思うが、ほとんどの大手企業は、その後資料を送付してはくれなかった。これには多少なりとも差別を感じてしまう。私が文系女子学生だからなのだろうか。だから会社訪問や説明会への参加という時期になっても、常に中小企業を中心に置いてきた。
 また、私が教職課程を履修していたことも、内定を早期に出す中小企業を選んだ理由の一つであった。私は教育実習の行われる六月までには内定が欲しかった。実習中に第一志望の会社の採用試験が行われることも稀ではない。泣く泣く試験を断った友人もいるので、教職を履修するならそれなりの覚悟をしなければならない。教職を取っていることで、面接の時に嫌がらせ的な質問をされる人の例も聞いたが、教員は募集も少なくリスクが大きいため仕方がない。
 内定を得てはいるが、私は就職活動をまだ続けるつもりでいる。今後は通年採用を行っている企業や難関といわれる大手の企業にも手を広げ、将来の可能性をさらに伸ばそうと考えている。しかし企業の反応はまだわからない。多くの就職が決まっていない学生と同じく、夏が正念場となりそうだ。

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T・O 休職中(三三歳 女性)
■アルバイトでさえ年齢がネックに

 十数年ぶりに職安へ行き、まず人の多さに驚いた。その後は行くたびに増えていった。あたり前だが、皆の顔も一様に暗い。年代はさまざまであるが、五〇歳過ぎとみえる男性が目立つ。その年代用の窓口まである。
 聞くともなしに聞こえてくる、ため息と弱々しい声。ふと見ると六〇歳前後の男性が背中を丸めている。若くはないということがそんなに負い目になるのかと腹が立ってくる。私はといえば、自分の見たい求職ファイルが一つもない。すべて誰かが閲覧中なのだ。
 やっとファイルが空いたので手に取ってみた。年齢、資格と条件が重なり狭き門。特に私は、無資格で勤められる福祉関係を探していたので余計に厳しかったのかもしれない。これでは正社員になることなど夢のまた夢である。早々にアルバイトへと目標を変更した。だが、それにさえも並々ならぬ苦労が待っていたのである。
 職安からの紹介ではないが、数日後に、知的障害者の作業所のアルバイト採用面接を受けた。資格は問われなかったが、たった一名のみの募集であった。作業所に慣れるため、面接をするまでに何回か施設を訪れた。例年ならば一人募集の枠にせいぜい二~三人の応募者がある程度らしいのだが、不況、そして福祉ブームの影響を受けて、私が受験した面接には一〇人の応募者があった。さらに面接は一日がかりだった。一〇倍の競争率に緊張感は高まり、一日でどっと疲れが出た。それでも不合格。「バイトであればすぐ決まるだろう」とタカをくくっていた思いは、見事に打ち砕かれた。
 不景気だからだろう。雇う側の対応は本当に冷たい。某カード会社のアルバイト募集面接を受けた時のことだ。面接の時間通りに行くと、まず守衛所で呼び止められ、確認のためしばらく待たされた。ビルの中に通されると、ホテルのような広いロビーに案内された。「この辺で待っていてください」とだけ言い残し、守衛は去ってしまった。応募者が他にいるのかも、担当らしき人が誰かもわからない。
 やっと面接の段になっても、待たせたことを詫びるでもなく、事務的にバイトの内容を説明し、私に自己PRをさせ、それが終わるや否や質問はないかと尋ねられた。その時点で私の履歴書は横に押しやられ、代わりに交通費の入った袋を差し出された。
  「ご苦労様でした」と機械的に言われて終わりである。この間五分程度。面接の日にちまでも随分と待たされたのにである。
 某ホテルの予約受付のアルバイト募集面接を受けた時にも、似たような体験をした。年齢のことを根ほり葉ほり聞かれ、ただただ不愉快な思いをした。もちろん両社とも不合格であった。
 アルバイトでさえ、三三歳という年齢が致命傷になる。職安で見た背中を丸めた、ため息混じりの男性を思い出した。求職への思いの辛さを実感した。

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