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サイテイ車掌のJR日記・斎藤典雄/『解放』を読む斎藤だ

■月刊「記録」1995年9月号掲載記事

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■今さらすり寄るな

 動労主導のJR総連・東日本旅客鉄道労働組合(東鉄労)と国労の二者は互いに実に激しく対立している。
「ふざけんな。お前らなあ、国労のことをしょっちゅう批判ばかりしやがって。なに? ケッ、国労が19年間も争ってきたスト権ストの202億損害賠償裁判で和解を勝ち取り、運輸省も動き出したことから、残る諸闘争も全面解決間近と察して、自分らの組織が危うくなってきたもんだから、国労と手を組んで1047人問題に自分らも尽力したように見せかける魂胆かよ、往生際の悪いヤツらだよな、無節操なんだよ、お前らはよお」。
 思わず吠えしまったが、国労のトップは真摯な方ばかりで、このようなヤクザまがいの暴言を口走る人は誰一人としていないということを理解していただきたい。
 これはつい先日、国労のトップ三役にJR東日本内最大を誇るJR総連・東鉄労が「仲良くしませんか」と話し合いの呼びかけ文を郵送してきたというものだ。今日まで、事あるごとに「国労解体」を叫び続けてきたJR総連・東鉄労がだ。解体できそうもないから、今度は自分たちの組合に国労を抱き込もうということか。国労は「一切相手にしない、応じない」という声明を出した。当然だ。人間としてのモラルのカケラもないあなた方とは今更手を組めない。

■よくわかるJR労組勢力分布

 JRの労働組合の構図は大変ややこしい。組織が大きいせいもあろうが、一般組合員の中でも正確に把握している人は少ない。また自分が所属している組合の正式名称すら知らない人も多い。そこで私も「あやしいものではありません」と前置きして、国労本部に電話を入れ、確認してみた。
 全国的には、JR総連約7万5千人・JR連合約7万6千人・国労3万人の3つに大別される。圧倒的多数だったJR総連が、2年ほど前に結成されたJR連合に逆転されている。国労も実は3万を割り、2万8千人が正当である。JR東日本でいえば、JR総連傘下の東鉄労約5万6千人・JR連合の鉄産労4千6百人・そしてキラリと輝く国労1万8千人となっている。
 各組合の特徴を簡単に述べよう。JR総連・東鉄労とは、国鉄分割・民営化攻撃の嵐の中、その過激さから鬼とまでいわれた動労が180度方針転換し、国労をやむなく抜けて行った仲間や民社党系の鉄労などを1つにまとめ、労使協調を掲げて国鉄改革に積極的に取り組み、今日のJRを築き上げたといっても過言ではない、大変ご立派な組合である。
 片やJR連合・鉄産労は、国労内主流派の社会党系右派が「国労運動を正しく継承、発展させていく」と唱えて分裂し、これまた労使協調の利口な立ち回りをする素晴らしい組合といえよう。
 そしてご存知わが国労は、国鉄分割・民営化反対を貫き、「闘う駄々っ子」、あるいは「反対ばかりのならず者」と嫌われているどころか、会社側からほとんど無視されている組合とでも申しましょうか。うむ、辛いのだなオレは。
 とまあ大雑把な説明だが、ここで注目すべきは分割民営化当時には10万人以上もの大組織だったJR総連が激減したという点だ。東日本以外のJR各社では、総連はいまや少数組合に転落してしまったのだ。労使一体となって「国労潰し」と自分達の利益だけを目指した、あまりにも急仕立の組織だった弊害が吹き出したのだ。鉄労系や良心的な活動家を排除して、動労中心の独裁体制を強めた結果でもある。10万人とはいっても、しょせん水と油の烏合の衆であり、JR連合ができたのは必然といえるのだ。

■実在する「JRの妖怪」

 しかし、JR東日本だけはJR総連・東鉄労は圧倒的大多数と健在なのである。それはなぜか。国鉄時代からのJR社員であれば、誰もが「妖怪がいるからですよ」と答える。あの『週刊文春』をもにぎわした松崎明委員長(現会長)の存在だ。この人は絶大な力を持った人で、JR関係者のみならず総理大臣から『記録』編集長まで知っている。鬼の動労委員長を歴任し、分割民営化を貫徹し、総連を作り、組合員の生活と地位向上に死力を尽くす。一方では「憲法9条を守る」という会を組織し、反戦・平和を力説するスゴイ人だから「妖怪」などといわれるのか・・・・。
 国労への敵対心も並大抵ではない。「1047人の1人も採用させてはならない。国鉄改革に苦労してきた我々の成果を奪うようなことは許されない」「国労は存在それ自身が犯罪であるといわねばならない。国労の無責任・無節操な振る舞いを許さず、国労の犯罪性を暴露し、国労の最終的解体のために職場から論争を挑んでいく」と吠えまくっている。
 また95年5月3日付朝日新聞の広告文に対しても、「国労ガンバレなどという無責任で安直な評論家を歴史は黙殺するだろう」「虚偽と国労幹部の責任放棄を人権の大義に仕立て上げたものであり、事実を知らない人や団体を、解雇→可哀想=人権問題という単純論理で組織化したものにすぎない」とかみつくなど、妖怪ぶりは枚挙にいとまがない。こうまで罵られ矢ジリを向けられると、私はもう反論する気も失せてしまう。ただ「ごくろうさん、いつも国労を思ってくれてありがとう」なのだ。

■戦後最大の解雇問題

 6月26日、ルポライターの鎌田慧氏や評論家の佐高信氏たちが呼びかけた「JRに人権を、1047人の復職を求める」日比谷公会堂の集会に出掛けた。会場周辺には団結の赤い腕章やハチマキをした青年が「頑張って下さい」と声を掛けながらビラや機関紙を配っていた。私も何気なく受け取って「国労の支援団体だろう」と見てみると、それは何と、妖しげな集団革マル派の機関紙『解放』だった。そこには「国労本部ダラ幹を弾劾せよ」とか、国労をコテンパンに誹謗・中傷した記事で占められていた。
 不思議なことに『解放』の文体は、JR総連・東鉄労がいつも用いる表現と酷似していた。旧動労幹部は革マルだというのは、国鉄時代から今日まで誰もが口にする大方の見解だ。だが真相はわからない。「そんなことどうでもいいさ」と誰もが思う。誰が革マルだろうが日の丸だろうが、電車が毎日正常に動きさえすれば国民には関係ないかもしれない。しかし、もしそれが真実であるならば、JR上層部の資質を疑わざるを得ない。日本を代表する大企業の、大変重要なポストに就かせているということが大問題ではないのか。帰りの地下鉄車内で、詳しく読んでみようと『解放』を広げると、同僚が耳元でそっと囁いた。「やめろよ典さん、こんなとこでそんなもん読むなよ、サリンより恐いんだから」。
 国労は時代に乗れず不器用なのかもしれない。しかし国労は労働組合として、また人間として堂々と本道を歩んでいるとつくづく思う。分割民営化の大洪水のような攻撃に対応し切れずに押し流されもしたが、どっこい踏ん張ったお陰で仲間同士の信頼関係も深まった。また皮肉なことに、攻撃される度に私達労働者は鍛えられて強くなった。国労は1つ1つ地道に解決し、コツコツ着実に運動を重ねて今も闘っている。
 私は今までに幾度となく愚痴をこぼし、活動家を非難してきたが、国労はいつも温かく受け入れてくれた。国労の魂から遊離しないことが勝利への道だと思う。会社に無視されても、世間に相手にされなくても、人間的で優しい仲間と毎日笑い合っていこう。
 国の政策で断行した分割・民営化だ。国家は国民をこれ以上弄ぶことは許されない。1047人の闘争団の家族にせめて普通の当たり前の暮らしをさせてあげるべきではないか。当時の中曽根内閣は国会で答弁した。「1人も路頭に迷わせない。組合差別はしない」と。村山総理しっかりしろ。新潟のトキは絶滅寸前でワシみたいじゃのうとかいっとらんで、自民党の洗脳を解き、指導力を発揮し、この戦後最大の解雇問題をキチンと解決してほしい。 (■つづく)

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