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鎌田慧の現代を斬る/小泉首相の蛮行を排す

■月刊「記録」2001年9月号掲載記事(表記は掲載当時のままです)

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 小泉首相が靖国神社に参拝したニュースは、カナダからカムチャッカにむかう、ピースボート船上で聞いた。 それ以外のニュースは入っていないので、国内で反響がどうなっているのかわからないのだが、わたしは二塁に盗塁成功して、ベースのうえで、サルのようにキイキイ踊り上がっている姿を想像していた。
 13日を15日に代える奇襲作戦で、彼はしてやったりと思っているかもしれない。所詮サル知恵なんだ。
 そもそも靖国神社など、壮大なフィクションでしかない。中国で、東南アジアで、太平洋上の島々で、無惨に死亡した兵士たちが、どのようにして九段の坂までたどり着くのか、わたしにはそれが理解できない。
 靖国で会おう、といいかわす兵士たちがいた、というからそれぞれ伝書鳩のような感覚をもっていたのかもしれない。が、地方からまっすぐに引っ張られていったひとたちは、九段がどこにあるのか、しらなかったはずだ。
 たしかに、死亡が確認されると「祭神簿」に、氏名、等級などが記載されるとしても、それはかなりあとだから、霊魂はそれまで宙にさまよっていることになる。
 困るのは、「水浸く屍」や野ざらしになった兵士たちで、戦後、数十年たって遺骨が回収されても、このひとたちは、千鳥が淵墓苑のほうに祀られているから、それまでは「靖国」の上空をうろうろしていることになる。
 これは死んだら靖国神社に祀ってやる、というのと約束がちがって、不公平というものである。
 さらに問題なのは、靖国神社などにいきたくない、台湾、朝鮮出身の「皇軍兵士」たちやキリスト教徒たちで、おれはいやだよ、といっても、それがキマリだ、といわれるのは、人権侵害というものである。
 日本の首相が、いまごろになっても、まだ靖国にこだわるのは、侵略した事実についてなんの反省もないばかりか、つぎの戦争のために靖国を温存している、とかつて侵略されたひとたちが考えるのは、あたりまえのことだ。
 小泉首相のゴッドファーザーというか、風見鶏の中曽根先生でさえ、85年に「公式参拝」をして、中国、韓国の批判に屈して翌年、中止している。このとき、「近隣諸国の国民感情にも適切に配慮して、差し控え」たはずだ。
 とすれば、小泉は、「近隣諸国の国民感情」を足蹴にしたことになる。
 無知というか、蛮勇というか。むしろ哀れというべきだが、それをゆるしたのは、日本の国民感情の低下ということになる。
 靖国神社は、侵略と旧兵士を階級化した抑圧の象徴である。死者をいつまでも英霊にしている装置は、平和を願うなら解体し、日本軍が殺害したひとたちをも、ともに慰霊する場所をつくり、二度と戦争しない誓いをあらたにすべきだ。 (■談)

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