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元信者が視るオウム的社会論 第2回/一服で心が変わる!? プロザック

信徒が視るオウム的社会論
■月刊『記録』97年12月号掲載記事

■第2回 一服で心が変わる!? プロザック

 物事には何でも二面性があります。そして、それを最も象徴しているのが「薬物」じゃないでしょうか。
 脳内物質が心の状態を変えることがわかってから、心を変容させる薬物がたくさん開発されました。最近は「暗い世界」でも明るく振る舞えるという「プロザック」という抗うつ剤が流行ったりしているようです。
 不況で会社の倒産も相次ぎ、それどころか国家自体が破産寸前に追い詰められている日本にとって、飲むだけで世界がガラリと変わり、生きる意欲が湧く抗うつ剤はこれからますますもてはやされるでしょう。特にきたるべき金融ビックバンでは、多くの銀行・證券会社などが間違いなく破綻するでしょうから、そのときビルから飛び降りるよりもたった数錠の薬でそれを止めることができるならば、本人にとっても周りの人間にとっても有益かもしれません。
 ところで、ご存じかと思いますが、オウムでもたくさんの薬物が「イニシエーション」(秘儀伝授)と称し、信者に投与されました。オウム特製の滋養強壮剤から自白剤(チオペンタール)、そして覚醒剤から究極の薬物ともいうべきLSDまでのフルコース。僕自身もイヤというほど堪能させていただきましたね(笑)。
 世間では、オウムでこれらの薬物を使ったことは非合法なのだから、すべて「悪」だったというレッテルが貼られていますが、僕自身としては経験してよかったと思うものもなかにはあります。その一つが自白剤です。
 ベットの上に横になり、点滴を打つようにして自白剤を体の中に注入されると、意識が朦朧としてきました。すると医師が枕元に来て、僕に呼びかけてきました。「あなたはどういう破戒をしましたか」「あなたは心に引っ掛かっていることがありますか」と。そのときの僕はもうどうでもいいやっていう気持ちになっていて、聞かれたことは何でも話してしまいましたね。
 その後、完全に意識がなくなって、気がつくと四時間ほど経っていました。そして、心の屈折がなくなったせいか驚くほど身が軽くなっていました。自分が何をされたのか全部憶えているわけではないのに、いつのまにか心身が軽やかになるという体験ははじめてでしたので、ビックリしましたね。やり方に問題があることは間違いないのですが、神経症になる前にこうして心身の転換を図れるのならば、テクニックとしては一考の余地があるのではないでしょうか?
 しかし、薬物を使ったイニシエーションでは、記憶を消されたり、あるいは本人の知らないうちにある思考パターンを植え付けるという「洗脳」が行われたことも間違いありません(どこまで効果があったのかわかりませんが)。もしそのオウムのテクニックよりはるかに優れた洗脳技術を、人々を支配してやろうと考える独裁者が握ったらとんでもないことになりますね。人々の心を一定方向へと操ろうとするでしょうから。
 薬物をつねに善用できる方法ってないのでしょうかねぇ。(■つづく)

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