« だいじょうぶよ・神山眞/第27回 頼りないお姉さんの自信 | トップページ | 北朝鮮と新潟 第4回/吹き荒れる憎悪の感情 »

鎌田慧の現代を斬る/小・小自・自連立による地獄への道

■月刊「記録」1999年2月号掲載記事(表記は掲載当時のままです)

*          *          *

■アメリカ帝国主義のお茶坊主

 世紀末九九年を迎え、日本の政治はますますキナ臭い様相を帯びてきた。小渕・自民党、小沢・自由党による「自自連立」は、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の関連法案の成立を足がかりに、自衛隊の国連軍への参加の道をひらこうとしている。このために憲法解釈の変更、さらには憲法改正をも現実の課題になってきた。
 昨年一二月中旬、クリントン大統領がおこなったイラクへのミサイル攻撃にたいして日本政府はいちはやく支持を表明した。国連主義を表明している日本政府は、国連安全保障理事会になんの相談もなくおこなわれたイラク攻撃を、国際社会に先駆けて支持しているのだからモノ笑いのタネである。国際法違反の米国の不法行為にたいして、「お茶坊主的」な態度で追従を表明した日本であるが、この行為はけっして日本政府の錯乱などではない。自自連立が推し進めようとしている、強い国家への転換を示す危険信号である。
 そもそもイラク攻撃開始からわずか二時間半後に、日本が空爆支持を表明したのは、一一月中頃より政府が支持を決断していたからという報道もされている。また一月一八日付の『毎日新聞』の朝刊には、「外務省筋も、日本政府の空爆支持表明について『北朝鮮への明確なメッセージになる』と強調している」と書かれている。
 つまり北朝鮮を仮想敵国として想定している日本は、イラク爆撃という事態を利用して、一ヵ月も前から日米安保をカサに着た軍事的な圧力を、北朝鮮にちらつかせたといえる。「メッセージ」といえば聞こえはいいが、虎の威を借りる外交圧力は、緊張を増大させる結果にしかならない。ここでも立ちあらわれてくるのは、平和外交と一線を画する、危ない政治決定である。
 さらに年明け早々、こうした強権国家にむかいたい意志を明らかにしたのは、小渕内閣の法務大臣・中村正三郎である。彼は法務省や検察庁の幹部が参加した賀詞交換会において、つぎのように発言している。
  「日本人は、連合軍からいただいた、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊ももてないような憲法を作られて、それが改正できないというなかでもがいている」
 いうまでもなく、国会議員および閣僚は憲法を守るのが最大の使命である。しかも法律を守るはずの法務省の最高責任者が、憲法を批判するというのは、前代未聞の事態である。法務大臣が憲法をないがしろにしているのなら、罷免を要求されて当然である。ところが彼はいま現在でも、なんの処分も受けることなく、ノウノウと法務大臣の席に座っているのだ。日本は法治国家なのか。 しかも中村法相の問題発言は、憲法批判だけではない。弁護士活動をも批判したのである。やり玉に挙げられたのは、和歌山の毒カレー事件や、オウム事件を担当している弁護士である。
 弁護士が被告の弁護をするのは、法治国家として当然のことであり、民主主義の根幹といえる。それをあろうことか、法の番人である法務省のトップが批判したのである。彼の頭には、民主主義のひとかけらもなかった、というにほかならない。
 それでも野党は、彼を罷免をするための行動すら取ろうとしなかった。通常の民主主義国家ならば、中村を指名した小渕恵三総理の責任問題まで発生するはずだが、彼にはなんのお咎めのなく、そのまま終わっている。それどころか自自連立の改造内閣でも、そのまま留任している。中村法相の発言が大きな問題にならなかった背景には、強い国家を作ろうとする政府内の意識の高まりがある。決して中村一人の暴走ではない。
 ついでにいえば、オウム真理教の松本智津夫の主任弁護人である安田好弘弁護士は、死刑廃止運動の論客でもあるが、デッチ上げの不当逮捕されている。これからは、小数派への弾圧がおこなわれそうだ。
 
■小沢亡霊の復活

 こうした政府内の空気が、自自連立をも生みだした。米国に従属した強権国家つくりこそ、小沢一郎が追求しつづけてきた国家ビジョンである。
 すでに小沢と小渕は、国連平和維持軍(PKF)への自衛隊参加や、多国籍軍への後方支援ににおいて合意に達している。国連安全保障理事会を無視した攻撃を即刻支持した小渕内閣にとっては、国連軍への参加は米軍に従軍するのとおなじ意味でしかないのであろう。日米安保体制とは、「日米心中体制」でしかないことは、自自連立を背景にした日本の軍国化が進めば進むほど明らかになるはずだ。
 小沢との関係について小渕は、「『対立するという話ではない。僕は軟投型でなんとなくコーナーを突いて打たせて取る法だが、むこうは上手から直球を投げ込む』(一一月一七日、記者団に)と語っている」(『毎日新聞』一九九八年一二月一九日付)つまり小沢は剛球、小渕は変化球と強弱を使い分けて国民をたぶらかそうとしいるのを、小渕自身認めているわけだ。
 そもそも小渕・小沢は、かつての自民党竹下派の七奉行といわれた政治家である。また田中角栄・竹下登とつづいてきた、金と数(議員)を最大の政治力とする国会議員でもある。彼ら二人が密室でなにを談合したのか明らかにされていないが、とにかく勢力を握るために対立から連立へと急転したのである。
 ただそれは古い自民党に戻るのでは決してない。小沢が自民党に要求しつづけているように、自衛隊の海外出動の道を切りひらくための政権である。小沢の強引さに自民党ばかりか、民主・公明などの政党も追随してついていくという形で、さらに右へと急速にそれていくかどうか、それが最大の問題である。
 両党が合意したPKF参加についても、もともとPKO法が成立した際に軍事的な色彩が強いとして、凍結されてきたものである。にもかかわらず、アメリカの後押で生き返りを狙ってきた小沢は、このPKFをこの際、復活させて政治基盤を強化しようとしているのである。 たとえばPKFのなかでも、停戦監視などは、反政府勢力から攻撃される危険をはらんでいると何度も指摘されてきた。また多国籍軍への後方支援は、医療任務ばかりか、さまざまな物資運搬の後方支援までを、自衛隊におこなわせようとしている。しかも活動の具体的な内容については、内閣が「ケース・バイ・ケース」で判断するという玉虫色の合意が両党の間で交わされている。
 昨年六月、PKOなどにおける銃の使用については、戦場で兵士に個々の判断によって正当防衛的に発射させるというこれまでの立場から、指揮官が命令をして銃器を使用する、とまで認められている。これらは明らかな戦闘行為である。自自連立で生まれた玉虫色の合意により、国連軍に連動して後方支援がおこなわれ、部隊単位の戦闘を誘発する危険性が高まっている。
 しかも国連平和活動などの集団的安全保障は、憲法九条の制約を受けないという立場を、自由党が明らかにしている以上、政権維持のためには自民党も従来の憲法解釈を変更していかざるをえないであろう。

■小沢と変わらない民主党議員たち

 こうした自自連立と軍事強化の方向にたいして、野党はなんら抵抗を示していない。たとえば民主党の鳩山由紀夫幹事長代理は、「停戦監視や紛争当事者の兵力引き離しは、日本の意思で行動するのではなく、国連の意に沿う形であれば、日本武力にはあたらない。党としての議論が必要だ」(九九年一月九日『朝日新聞』)と、PKF参加の凍結解除に前向きな方向を示している。まるで国連軍の奴隷である。
 また穏健派風の仮面を被っている菅直人民主党党首も、「監視衛星」に賛成し、朝鮮半島有事への対応では自衛隊の後方支援を認めている
 党のトップがこのありさまだから、寄り合い改革の同等には、クビを傾けさせる議員が多い。そのひとりが、松下政経塾出身の前原誠司である。朝日新聞の一月九日朝刊に、彼のインタビュー記事が掲載されているが、新党さきがけから移籍し、野党である民主党の結成からの議員でありながら、小沢とおなじ強い国家論を踏襲しているのだから驚かされる。
 たとえば、これまでの歴代の内閣が集団的自衛権は行使しないという明言してきたのにたいしても、「憲法解釈を変更し、『接続概念』の範囲を認定する作業が歯止めになる。次の通常国会で議論される、新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法案では、民主党は国会承認と事前協議をしっかりおこなうべきだと主張する。そこが歯止めになります」などと、発言しているのである。
 しかし、軍事同盟に結ばれた米国が突発的に攻撃された際、国会における事前協議などおこなわれようはずもない。これ幸いと、自衛隊の出動は、なし崩し的に決まっていくだろう。さらに彼は、次のようにも語っている。
 「平和の維持には一定の軍事力、防衛力が必要だし、非武装中立で日本の平和が守れるとは思いません」
 「(外交の)背景には経済力があり、軍事力がある。それが欠けている中で外交といってもお題目に過ぎません」
 こうした発言が、日本国憲法の根幹にかかわるのはもちろんのこと、「軍事力を背景にした外交の推進」などという寝言は、これまで日本が望んできた平和主義にたいする真っ向からの挑戦である。
 ところがこうした無知にして威勢がいいばかりの発言が、民主党でも問題にならない。それは現在の政治がオール与党の翼賛体制だからである。すでに自自・民主・公明、総ぐるみで憲法解釈の変更への道を歩みだしているのだ。

■「たそがれ政治」が軍事大国を築く

 現在、自民党・自由党・民主党・公明党の境界線は、非常にあいまいなものになっている。まさに「たそがれ政治」である。薄闇に紛れて強い国家にむけて、翼賛化した政党が、いままでの平和主義をあっさり捨てようとしている。「日米安保」は、安保タダ乗る論として、日本の軍備費をすくなくして経済発展させたといわれている。日本の政治がアメリカに従属してきたのは「エコノミックアニマル」として、アメリカの市場にはいっていたいためだった。軍事力の強化は「エコノミックアニマル」をやめて立派なサムライになろうというものだが、小沢流のカッコづけは国を誤るばかりである。
 この日本経済の危機的状況のなかで、彼らが軍事体制を強化しようとしているのは時代錯誤というしかない。経済再生の努力をさぼり、ひたすらの戦争の対応に腐心するだけの政治家たちをみていると、戦争の勃発による経済再建を考えているのではないかと勘ぐってしまう。 年明け以降、日本経済の状態はさらに悪化している。これから銀行や大手ゼネコンが倒産し、生命保険会社はさらに不良債権の増大にあえぐことになる。いよいよ、大企業でもリストラの風が吹き荒れる。
 このような経済危機を前にして、政府がおこなった経済政策をいえば、赤字銀行に血税を垂れ流して、国税を浪費することぐらいだ。これではなんの解決にもならない。そのうえ不安定な情勢を利用して、政府はいたずらに危機感を煽っている。
 現在の経済危機は、ナショナリズムを刺激するために利用され、防衛力強化へ国民を誘導していく危険性をはらんでいる。自民党と連立政権を画策した小沢自由党や、野党を自認する民主党内のウルトラ軍国主義論者たちが、どう動くのを注視する必要がある。
 防衛力増強をテコにして軍事国家を目指し、アメリカ軍国主義と心中しようとする悪魔の選択はまっぴらだ。軍事費を福祉に充分にふりわけることで、戦争と福祉を防ぐことができる。
 野党が壊滅させられてしまったいま、軍事大国にむかう道筋にたいして、明白にNOの声をあげと冷笑されてしまう時代がはじまっている。それでも、気がついたものは、孤立をおそれず、NOというしかない。 (談)

|

« だいじょうぶよ・神山眞/第27回 頼りないお姉さんの自信 | トップページ | 北朝鮮と新潟 第4回/吹き荒れる憎悪の感情 »

鎌田慧の現代を斬る/鎌田慧」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/389724/7181534

この記事へのトラックバック一覧です: 鎌田慧の現代を斬る/小・小自・自連立による地獄への道:

» がん保険の比較 [がん保険の比較]
がん保険の比較に関するサイトです。あなたさまのサイトがとてもすばらしいのでホームページを作る際に参考にさせていただきました。 [続きを読む]

受信: 2007年7月18日 (水) 18時55分

» プルデンシャル生命保険について [プルデンシャル生命保険]
プルデンシャル生命保険をご存知でしょうか。プルデンシャル生命という生命保険会社はアメリカ最大級の金融サービス機関プルデンシャルファイナンシャルグループの保険会社です。プルデンシャル生命保険の商品やサービス、口コミや評判について紹介しています。プルデンシャル生命保険に関心のある方は是非ご覧下さい。... [続きを読む]

受信: 2007年7月19日 (木) 21時41分

« だいじょうぶよ・神山眞/第27回 頼りないお姉さんの自信 | トップページ | 北朝鮮と新潟 第4回/吹き荒れる憎悪の感情 »