« だいじょうぶよ・神山眞/第46回 商談成立 | トップページ | だいじょうぶよ・神山眞/第48回 サロンオープンの前日 »

だいじょうぶよ・神山眞/第47回 吹き荒れるトラブルの嵐

■月刊「記録」2003年8月号掲載記事

*           *           *

 ガタイのいい兄ちゃんたちがやってきた。ぼくが購入した日焼けマシンを搬入するためにである。
 当然、搬入日までに下準備らしきことくらいはしているものと思っていたが、甘かった。何もやっていないのである。ついさっきまで稼働していた、まだ触ると熱いマシンをドライバーなんかを使って外し始めている。
 うへぇ~。こんなところからつき合わされるのかと思うと気が遠くなりそうであった。なんとかマシンをバラし、2トントラックに積んだところで0時をまわった。今日は徹夜か。そう思った。
 搬入代金を人件費分も含めて支払っているのに、なぜぼくまで手伝わされ、しかも徹夜までしなければいけないのかと思うと、少々腹も立った。
 それでもなんとかトラックでぼくの店まで運び、300キロもあるCPSを組み立て上げると、かなりハイテクで立派なものに見えた。
 あーっ、ついにここまで来たのだな、と思えば感慨深さもひとしおであった。さっそく焼いてみたい。即座にそう思った。しかし電気がまだ通っていないので焼くことはできなかった。
 電気はトランスという電圧を上げる機械を通さなければいけないらしく、それは専門の業者にやってもらわなければならない。翌朝、つまり数時間後にその業者、というかその人は現れるらしい。マシン屋のオーナーが近所の工事屋の人に頼んでくれたのだ。なにせすぐ近所に住んでいるのだから、これから先、機械に異常があってもじつに安心ということだ。メンテナンスをやらせたら右に出る者はいない、とも言われた。そしてほとんど寝る暇もなく、ぼくは朝を迎えた。

■考えられないことの連続

 明け方近くだったが、いったんアパートに帰り、朝に出直した。ぼろいアパートから店にたどり着くと、ハイテクなCPSがある。嬉しくてたまらなかった。
 10時に来るはずのメンテナンスの人を待ったが、彼はまた現れなかった。時間になっても来ないどころか、携帯電話も届かない。またか……。どうしてこう時間通りに仕事が進まないのだろうと不思議に思った。今までの常識からは考えられないことの連続だった。
 結局メンテナンスの人は、2時間後にふらりと現れた。ぼさぼさの髪。ジーンズを膝でちょんぎったその出で立ちを見たときは本当に不安を感じた。なんでも病院に行ったら、混んでいたから遅れたと悪びれずに言う。
 しかし結局マシンに電気が通ったことで、それらのすべてを許せる気分になった。だが、ここで許してしまったぼくは甘かった。その後も、縦型マシンの搬入に予想をはるかに越えた時間を要するなど、いろいろなことがあった。そして、どうにかこうにかこぎつけたオープン前日のほっとしたさなか、ふたたび事件が起きたのだ。 親方からぼくの携帯電話に連絡が入ったのだ。
  「先生、もうどうにかしてくれよ。正利のやつ、うちから出てったよ」
 いつも緊急事態のときにかけてくるので、口調は早く、少々苛立っているのだが、今日はそれに加えて、もう諦めている感じも含まれていた。
  「どうしたんですか?」
 オープン前日だということもあり、ぼくは今回のトラブルにはあまり巻き込まれたくなかった。しかし親方は今度はまくし立てるように話し始めた。
  「警察から連絡が来たんだよ。あいつ健康センターで無賃宿泊と食い逃げしやがった」
 ああ……。十分巻き込まれうる内容の電話に、ぼくは絶望的な気持ちになった。
  「今は、正利はどこ…」
 ぼくの声を遮って親方は怒りを込めて言った。
  「どこにもいないよ。そのまま逃げてるよ。もう1人の連れ残して、1人でどっか行っちまったよ」
  「じ、じゃあ、連絡があったら、親方のところへ連絡させます」
 あたりさわりない受け答えをしたつもりだったが、
  「いい、いい! 連絡いりません。どうせあいつは先生のところへ行くよ。もういい。あいつを引き取ってくれ先生。じゃあ、頼みます」
 電話は切れてしまった。
 それにしてもどこへ行ったのだろう。あいつはどこへ向かっているのだろう。本来ならばあちこち手を尽くして探すのだが、なんせ明日がオープンとなるとそれも無理だった。思案に暮れているぼくの携帯電話がちょうどそのとき鳴った。
 ボソボソとした声が、しかし反対することを許さぬ強い意志を秘め、受話器の向こうでこう言った。
  「せんせい、おれ、いまからそっち、いくから」
 もう、どうにでもなれである。
  「わかった。電車あるのか?」
  「うん」
  「じゃあ、待ってるから」
 おかしい。オープンの日など教えてはいないのに…。 これはやはり運命か!? (■つづく)

|

« だいじょうぶよ・神山眞/第46回 商談成立 | トップページ | だいじょうぶよ・神山眞/第48回 サロンオープンの前日 »

だいじょうぶよ-パートナーは知的障害者!?-/神山 眞」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/389724/7272072

この記事へのトラックバック一覧です: だいじょうぶよ・神山眞/第47回 吹き荒れるトラブルの嵐:

« だいじょうぶよ・神山眞/第46回 商談成立 | トップページ | だいじょうぶよ・神山眞/第48回 サロンオープンの前日 »