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元信者が視るオウム的社会論 第13回/岡崎被告・判決傍聴

■月刊『記録』98年12月号掲載記事

 坂本弁護士一家殺害事件の実行犯である岡崎一明被告の判決公判に行ってきました。
 実は岡崎被告は僕がオウムに出家する時の担当であり、彼が教団にいる頃はさまざまな場所でかかわりがあった人物なのです。
 読者の方々は、岡崎被告がどういう人物だとイメージするでしょうか? おそらく「オウムを抜け出して、田舎でビクビクしながら身を隠していた小心者で、しかも麻原から金をせびり取った狡猾なヤツ」とでもなるのでしょう。
 しかし、別に岡崎被告を擁護するわけではありませんが、昔の彼は多くの信者の憧れの的だったのです。
 岡崎は石井久子に続き、オウムで二番目に解脱したことになっています。それは、あの上祐や村井よりも早く、教団内では麻原に続くカリスマでした。岡崎を崇める信者は非常に多く、彼のホーリーネームを取って「アングリマーラ教(一派)」をオウム内で形成していたような時期もありましたね。彼の意志力は並大抵のものではなく、真っ暗闇での独房を百日間も耐え、罰として断水断食で五日間独房に放り込まれた時も平然としていました。過激な言葉と堂々とした態度で人を引っ張っていくリーダーシップがあり、他人の心をズバッと見抜く特殊な才能(これをオウムでは「他心通」と呼び、超能力としていた)をもっていましたね。
 麻原彰晃が衆議院選に出馬した選挙活動中に、僕はストレスに耐えかねてラーメンを食べてしまったことがあります。朝の九時から夜の十時まで選挙区内の家を一軒一軒訪問する「宅訪」というワークのときでした。教団の戒律では外食してはいけないことになっているのです。
 僕はその日、ちょっとしたうしろめたさを抱えながら、選対事務所に帰りました。そして、深夜のミーティングの時、僕が結果報告を済ませると、その場に居合わせた岡崎がズバッと、「外食をしないように」と指摘してきたのです。
 ラーメンを食べることは、破戒になるのですから、当然僕は細心の注意を払ってラーメン屋に入りました。誰にもわかるはずがないと高をくくっていたのです。しかし、それを見抜かれてしまったのですから、腰が抜けるほど驚いてしまいましたよ。
 さて、その「偉大な解説者」であった岡崎一明氏に八年半ぶりに会ってきました。しかし、彼は決して越えることのできない柵の向こう側にいます。
 入廷する時から、彼は今にも泣きそうな顔をしていました。昔の凛々しい面影はありません。椅子に座ってからもずっとうつむいたままです。
 裁判長が判決文を一時間ほど読み上げ、最後に「被告人に死刑を宣告する」と言った時も、岡崎はその表情のままでした。
 判決は当然のこととはいえ、なんともやりきれない気分になりました。(■つづく)

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