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元信者が視るオウム的社会論 第10回/林郁夫の手記

■月刊『記録』98年8月号掲載記事

 最近、大手出版社の雑誌でなぜか頻繁にオウム特集が組まれています。週刊誌にしろ、月刊誌にしろそうです。電車の吊り広告を見て、気になる僕は一応立ち読みをしてチェックするのですが、大した内容のものはありません。
 『記録』のライバル誌(?)『文芸春秋』に掲載された、地下鉄サリン事件の実行犯・林郁夫の手記「オウムと私」は、二五〇枚にも及ぶものでしたので、さすがに立ち読みははばかられ、買って読んでみました。どこの本屋でもいつもより多く平積みされていましたが、あまり売れている様子はありませんでしたけどね。
 読んだ方はどう思われたでしょうか?
 漫画を描いてもらっている瀧坂女史にも読んでもらいましたが、彼女の感想は上をご覧になってください。
 僕は林郁夫とは少なからぬ縁がありました。林は僕の半年後に出家しており、その直後からいろんな関わりがあったものです。
 出家直後の林は、それはそれは謙虚なものでした。彼が主家してまだ間もない頃、一緒に勧誘活動に行ったりしましたし、僕がバイクに乗って転倒して、足首をパックリと切ってしまった時には、ていねいに縫ってもらったりしたこともありました。親しみが持てるタイプではりませんでしたが、オウムの人間らしからぬ礼儀正しさと清潔さを備えており、「なかなかの紳士だなあ」と思ったものです。
 その後、僕が長期の修業に入り、林が東京にあるオウムの付属病院にいた関係上、しばらく接する機会がありませんでした。再会したとき、林は「治療省大臣」という立場になっていました。

■豹変した治療省大臣

 治療省は第六サティアンの三階にあり、僕はその玄関で警備をしていたので、毎日のように顔を合わせることになりました。彼を観察するようになった僕は、「林大臣」の豹変ぶりにすぐ気づきました。
 紳士的な態度は影を潜めて、「大臣」としての傲慢な態度が目につくようになっていました。彼の運転手をしていた看護婦のMさんを顎で使うようになっていましたし、法廷で証言した奥さんによると、この頃から部下となった奥さんに対し、手を上げるようになったそうです。人体実験で気が触れてしまった患者がサティアンを逃げ出そうとすると、物凄い形相で追いかけてきて、首根っこを捕まえて引きずっていった姿を見たこともあります。林の手記によると、「慢性的な睡眠不足のため」と何度も言い訳をしていますが、明らかに彼自身が異常な精神状態にあり、さながらホラー映画に登場するような「マッド・サイエンティスト」のようでしたね。
 僕が今でもつきあっている元信者の一人に、林に記憶を消されて、今でもその後遺症に苦しんでいる人がいます。林のことを相当恨んでいるようです。記憶をなくさせる技術も含めて、オウムに多くの人体実験の方法を取り入れたのは林なのです。その元信者などは氷山の一角であり、おそらく数えきれないほどの元信者が今でも苦しんでいることでしょう。
 無の民を殺傷し、その上、医師の権限を悪用して、多くの信者の人生をも狂わせた林郁夫。いくら彼が法廷で号泣しようが、何千枚もの手記を書こうが、単なる言い訳にしか聞こえないのは僕だけでしょうか?(■つづく)

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