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内部告発・豊島区は税金泥棒/第7回 サイは投げられた

■月刊『記録』98年3月号掲載記事

      ※       ※       ※

 数々の疑惑にまみれた行政訴訟を取り下げてから一年、一人に戻っての闘いは、近藤秀夫助役との話し合いから始まった。
 私の要求はただ一つ。取り下げと引き替えに約束した三条件を守らせること。宿直職員による不当利得の(役所への)返還、私の訓告処分取り消し、勤務形態の変更、どれも当然といえば、あまりに当然な要求である。だが役所は一つとして実行しようとしていなかった。役所が金の無駄使いを闇から闇へ葬り去ろうとする腹づもりなら、この実態だけでも区民に知らせなければならない。その前に区政トップの本心がどこにあるのかを直接確認する必要がある、と私は判断した。
 一九八八年四月・助役室。「何故、約束の三点が未だに実行されないのか」の私の質問に対し、近藤助役は緊張した面もちで「関係者とは、すでに協議済みだ」とだけ繰り返した。「役所が何もしないなら不正を区民に報告せざるを得ないですよ。これは事実上の訴訟当事者としての私の区民への義務だと思っている」との指摘にも、「区民に報告するのは、あなたであって私ではない。従って、私はその点について何ともコメントのしようがない」と、木で鼻をくくったような返答であった。
 一九八九年三月十二日の午後一時・区長室。私は助役に尋ねた同じ内容を加藤区長にも質問した。返答は「宿直問題は取り下げにより既に解決したと思っている」であった。こんな不誠実な態度では、原告団と取り交わした文章も到底守られるはずがない。訴訟が終わったのをいいことに、役所は徹底的に私を無視する作戦に出ていたのである。
 そこで私は「区民に不正を明らかにする」と明言し、区長にその場で抗議の上申書を直接、手渡した。これが当時、私のできる唯一の抵抗だったからだ。
 八九年六月一二日の早朝、勤務形態の異常さと、宿直問題の現状をA四版の用紙四枚にまとめ、庁舎全域に配布するとともに豊島区内の全町会長に郵送した。町会長には、区内の有力者があてられ実質的な町内の実務を行っている。全区でおよそ一三〇人にのぼる町会長は、役所と月一回、区の行政について話し合っており、一般市民とはいえ少なからず行政に参加する立場だ。
 もちろん役所とも近い関係にある町会長達が、簡単に私の状況を変えてくれるなどとは思っていなかった。ただ「この報告は公僕の区民への義務」と信じ、またこれを明言した以上、私はやらなくてはならなかったのだ。言葉を発し行動しなければ、私を騙し、潰そうとしている彼らと同じ土俵に立ってしまう。それは耐えられないことだった。変則勤務のおかで、ただでさえ少ない睡眠時間を削り、私は一三〇人分のビラを作り、宛名を書いてポストに投げ込んだ。
「あー、その人物は訓告処分を受けていますよ」
 だが、やはり無駄だった。のちになって、ビラを見た五人の町会長が総務課に電話をかけてきたと聞かされたが、そんな問合わせも中原総務部長の一言でもみ消されてしまっていた。
「それじゃあ、しょうがないね」と、町会長らは言ったという。処罰を受けた職員の戯言など、誰も聞こうとはしないのだ。この日のために訓告処分は発せられていたのだと、私は役所の、そんなところにだけは用意周到さを惜しげもなくみせる情熱に、改めて呆れ、舌を巻いた。だが、日々追いつめられているのは自分なのだ。舌を巻いている場合ではなかった。

■弱みに喰いつく役所

 年老いた両親のため、木更津から通う必要が私にはあった。そのために必要な時間は往復六時間。八四年四月から始まった変則勤務は、そんな私の弱点を突くように作られていた。三週間に二回、四時間の勤務が巡ってくる。しかもその四時間勤務の数時間後には、二時間半しか睡眠を許されない一四時間勤務や、二〇時間勤務が待っているのだ。
 二十時間勤務の場合などは、午前六時前に家を出て翌日の午後二時頃に帰宅することになる。さらに二時間半の睡眠時間さえ、常に確保されているわけではないのである。区民・関係機関からの緊急の照会や連絡、無言電話などにより事実上の徹夜状態になることも決して少なくない。これでは体が保つほうが不思議だ。
 そして、ここが役所の上手いところなのだが、こんな無茶な勤務態勢も、実は私一人に課せられているわけではなかったのである。他の宿直職員にも一応は平等に課せられていた。ただ、当たり前のことながら、当局は、私以外の宿直勤務者にこんなバカげた就業規則を守らせてはいなかった。皆、午前〇時から七時ぐらいまで、たっぷり睡眠をとっていた。肩書き・給料が同じ夜間警備員の場合は、午前〇時から五時までを睡眠時間として認められていた。さらに朝の七時まで寝ていても、事実上、誰からもお咎めがなかった。
 また宿直勤務には、業務が入るはずのない時間帯が組み込まれていた。隔週土曜日の午前九時半から午後十二時半と、泊まり勤務の翌朝の平日・午前八時四十五分から同十時がそれである。宿直職員は、昼間の職員がいないときに役所の業務が滞らないように配置されてるものであるにもかかわらず、この時間帯には昼間の職員が勤務しているのである。これは勤務の体裁をとった税金の無駄遣いに他ならない。
 それだけではない。私への確認も相談もまったくなく、勤務形式は少しずつ変えられていくのである。私の急所をめがけ、さらなる攻撃を加えるかのように変化していくのだ。
 例えば、私は上司や関係者に、機会あるごとに改善要求を申し入れていた。あるとき、私は事務担当者に駅から自宅までの最終バスに間に合うように、勤務形式を組み替えてほしいと要求したことがあった。
 彼は、そのときは何気ない様子で、私から最終バスの時間を聞き出しメモしていた。だが、次に行われた勤務形式の変更内容をみると、私が確実にタクシーを使わねばならぬように時間を組み替えてきたのである。ボクサーが傷口を見せれば狙われ、拳を打ち込まれるように、役所も弱点を見せれば飛びかかってくる。情けも容赦もなく、即座に喰いついてくる。
 その頃、私は当時の総務部長の中原氏(現、収入役)にも、無意味かつ無理な睡眠時間の是正を繰り返し申し入れてきた。しかし、同氏からの返答は「無駄もなければ無理もない、従わなければ職務命令を出す」という一方的で強圧的なものであった。このため、平成二年七月五日、同総務部長に対し、納得のいく返答を求めて内容証明による質問状を送付した。しかし、その返答は、やはり皆無であった。

■自分で自分を守るしかない

 肉体が限界に達しつつある。
 数日間ごとに昼型と夜型を入れ替える生活、通勤時間を含めた四二時間勤務。そんな無理を強いられた七年間で、私はストレスからブクブクに太ってしまった。体重は五三㎏から一挙に七〇㎏となり、体のあちこちが悲鳴をあげていた。いつ大病に犯されもおかしくないほど健康状態は悪化していた。これに加えて、顔面マヒの再発の余兆である。医者からは以前より、マヒが再発すれば社会復帰は不可能と断言されていたが、顔面のむくみ、頭芯の痛みは頻発している。もうこれ以上規則を守り続けることはできない。その思いが、一つの決断を下させた。
 九一年五月二二日、「あなた方区役所と組合は、私の健康と人間としての最低限度のプライドさえも踏みにじろうとしている。もはや私には、自分で自分を守るしか方法はない」という言葉とともに、一通の文書を当時の総務課長・堀田徳夫氏に手渡した。
 文書の内容は、三点の勤務時間帯の変更の申し入れである。これらの勤務時間帯は、宿直業務としてはあまりにも無意味な拘束であって、明らかな税金の無駄遣いである。同時に、遠距離通勤の私にとって著しい健康管理の障害だと判断したからである。
 一、開庁している土曜日の出勤時間を、午前九時半から一二時に変える。二、泊まり明けの退庁時間を、午前一〇時から午前九時に変更する。三、睡眠時間を二時間半から五時間にする。
 役所が勤務時間を変えないなら自分で変えると宣言したのである。もちろん時間短縮と睡眠時間の拡大によって生じる余分な給料分は、すべて役所に返すことも明らかにした。また、当然のことであるが掘田課長には、この文書を手渡す際、たとえ睡眠時間帯であっても業務が発生すれば、直ちに対応する旨を伝えている。
 こうして就業規定を任意に変更すると宣言したことで、私と当局との軋轢は一挙に高まった。サイは投げられたのである。 (■つづく)

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