« 内部告発・豊島区は税金泥棒/第7回 サイは投げられた | トップページ | 内部告発・豊島区は税金泥棒/第9回 旧態依然の対応 »

内部告発・豊島区は税金泥棒/第8回 処分ラッシュ

■月刊『記録』98年4月号掲載記事

        ※        ※        ※

 一九九一年六月一五日、勤務時間の任意の変更を総務課長に文書で通知して、はじめての給料日であった。何かが起こる。そんな予感がした。
 働いていない時間帯の賃金を給料から差し引くよう、私は上司に強く要求していた。明らかな税金の無駄遣いと考えられる勤務時間や、健康管理に著しく無理の伴う勤務時間には従えないことを課長に通知し、これに相当する賃金を給与から差し引くよう求めていたのだ。そして私は、申し入れ通りの内容で勤務を行い、すでに一ヵ月が経過しようとしていた。
 しかし前例主義の役所が、私の要求を簡単にのむとは思えなかった。それに、要求を満たせば、役所自身が自らの不備を認めたことになる。彼らは、かねがね宿直業務を円滑に機能させるためには、私の指摘する無駄と無理は必然的に必要であると主張してきていたからだ。役所がそんな危険を冒すはずがなかった。そこで何らかの対抗手段を打ってくるだろうと思われたのだ。
 一五日の朝、私は事務担当者から、銀行振込額を記した給与明細を受け取った。急いで内容を確かめたが、まったく控除されてはいなかった。控除されていれば、前月分より約五~六万円のマイナスになっているはずだ。そして、それっきり呼び出しがあるわけでもなく、なんらかの書類を渡されるわけでなく、淡々と朝の時間は過ぎていった。
 私は、ただちに課長と事務担当者に抗議した。「私は課長に手渡した文書通りに勤務している。従って、それに応じた減額処置をとってもらわなければ困る」と。しかし課長と事務担当者は「現認していないから」と言って取り合おうとはしなかった。つまり、私が寝ていたり、帰ったりしたのを実際に見たわけではないので、控除するわけにはいかないというのである。
 正直、私にとっても給料の減額は苦しい。生活費・住んでいるアパート代・木更津に買った家のローンなどで、切りつめても二〇万円はかかってしまう。役所と闘い続けていることもあり、高い給料などもらってはいないにもかかわらず、そこからの減額である。しかし働いていない時間の金を受け取るわけにはいかない。そんなことをすれば、自分が糾弾している不正に荷担するだけではなく、私をクビにする口実をいっそう役所に与えてしまうからだ。何が何でも減額させる必要があった。
 仕方なく、その月は、課長、事務担当者に「来月は必ず今月の控除分をも含めて控除すること」を要求するにとどめた。そして、そのまま給与係に赴き、今までの銀行振込を給与袋の手渡しに変更してほしい旨の申し入れをした。給与袋なら、その場で減額の有無が確認でき、もし減額されていなければ全額の受け取りを拒否することもできるだろう。
 そして、翌月の給与も減額されてはいなかった。私は事務担当者と課長に、話が違うと抗議した。今、この給与袋から前月分と今月分の控除をしてほしいこと、そうすれば給与袋を受け取ることを伝えた。だが彼らは「現認していないから」を繰り返すばかりだった。
 ここから余分な給料の押しつけあいという前代未聞の闘いが本格的に始まることになる。

■同僚がローンの総額を質問

 給料日のたびに私と課長や事務担当者との言い争いは続けられた。しかし、事態は一向に好転しなかった。仕方がなく、私は強硬手段に出た。一二月二四日、一二月分の給料全額を豊島区長の加藤一敏氏に送りつけたのである。
 さすがにこの行動には役所も驚いたようだった。いくら減額処理をしてくれと頼んでも、まったく意に介さないといった態度を貫いてきた役所が、年が明けてすぐに私に呼び出しをかけてきた。場所は部長室。職員課長と総務課長が口をそろえて、「まあ、固いこと言わずに給料をもらいなさい」と言う。
 もちろん、この日も話し合いは平行線のまま終わったのだが。
 そして一月の給料日。またしても減額されていない給料袋が手渡された。ついに私は、その場で事務担当者につき返した。こうなれば我慢比べである。役所としても、給料を支給しない異常事態を長期間続けられるわけはない。結局、私の給与袋は、九一年の十二月分から九二年の三月分まで、総務課の金庫に保管されることになった。
 しかし、膠着状態に陥ったかにみえた、私と役所のつばぜり合いは、意外な結末を迎えた。九二年四月一〇日、なんと、一年分の控除精算がいきなり行われたのだ。合計六六万余円の差額分が、金庫に保管された四ヶ月分の給与袋から差し引かれ、残りが給与として私に支給された。こんな突然の決定を促したのは、明らかに私が三月二一日に起こした、前述の無駄と無理に対する監査請求であった。おそらく給料を払っていない事実が監査委員の間で問題になったのであろう。それが証拠に、四月二八日に出された監査結果には「四月一〇日に精算後の給与を既に本人が受領しているので、措置要求は解消している」と書かれている。監査請求が出されてからいきなり精算しておいて、「措置請求は解消している」もないものである。
 以前起こした監査請求でも区側に立った調査しか行われなかったが、その伝統は今回もしっかり生きていた。二時間半の睡眠時間に関しては「監査の対象外である」と退けながら、「個人的な要望や主張が通らないことをもって、勤務を一方的に変更し、勤務命令に違反することは、公務員として許されるべきものではなく、服務に関する法令を遵守するよう指導することが必要であると考える」と、監査結果を知らせた文書には、平然と記されていた。
 だが、自ら決めた勤務体系で働きはじめてから、わずか一ヶ月足らずで私の体調は好転していた。増え続けていた体重も一息に落ちていった。二四時間、私の体を離れなかった倦怠感も、いつの間にか消えていった。そして勤務時間変更直前に私を襲った、頭の奥から発する鋭い痛みも消えた。それは再発すれば治療不可能といわれた、あの顔面麻痺の初期症状そのものだった。そこまで体も追い詰められていたのだ。服務を遵守していれば、確実に再発していただろう。
 結局、監査請求によって改善されたのは、四ヵ月分の給与から控除されたこと。そして残額が手許に戻されたことぐらいだった。もちろん負の代償も付いてきた。この監査請求をい一つの契機として、「法令を遵守するよう指導す」べく、怒濤の攻撃を区が仕掛けてくることになったのだ。

■「必要な措置をとる」

 同年、五月一六日、職務命令。
 私と課長の名前、日付、そして「割り振られた勤務時間を勤務すること」とだけ書かれた紙が手渡された。
 約二ヶ月後の七月六日、勤務明けの朝に私に声がかかった。
「五十嵐さん、部長が呼んでますよ」。嫌な予感がした。「行きたくないな」とつぶやきながら部長室に目をやると、部長がニヤニヤ笑って立っている。「ちょっと来てくれ」という部長の呼びかけに、「そのちょっとが危ない」と私が答えると、職員から笑い声があがった。危険人物とされている私が部長から呼ばれるなどロクなことはないはず。職員もそのことを知っていた。
 案の上、部長室で着席した途端に改善勧告書が読み上げられた。途中から「その書類いりませんよ」。そう言い残して部長室を出た私の背中で、まだ笑い声が響いていた。
 改善勧告の内容は、次のようなものだった。
「あなたは、平成四年五月一六日に『割り振られた勤務時間を勤務すること』との職務命令が発せられたにもかかわらず、同日以降も遅参及び早退を重ねています。
 このような行為は、公務員としてあるまじき行為であって、誠に遺憾であります。直ちに改善するよう勧告します。
 なお、改善されない場合には、地方公務員方に基づき、必要な措置をとることを付け加えます」
 最後の一文など明らかに脅し。「辞めるか、いやなら顔面麻痺になれ」と言っているようなものではないか。 (■つづく)

|

« 内部告発・豊島区は税金泥棒/第7回 サイは投げられた | トップページ | 内部告発・豊島区は税金泥棒/第9回 旧態依然の対応 »

内部告発・豊島区は税金泥棒/五十嵐稔(現豊島区議)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/389724/6772758

この記事へのトラックバック一覧です: 内部告発・豊島区は税金泥棒/第8回 処分ラッシュ:

» ダイエット振動マシン [ダイエット振動マシン]
ダイエット振動マシンの家庭用が遂に発売!クレイジーフィットマシン限定100台を26800円(税込み・送料無料)にて発売実施中! [続きを読む]

受信: 2007年6月13日 (水) 20時29分

» ブルブルダイエット [ブルブルダイエット]
この夏に向けてダイエットしてみませんか?今話題の家庭用ダイエットマシン(スリムシェイカー)を特別価格34800円にて発売実施中! [続きを読む]

受信: 2007年6月14日 (木) 06時19分

« 内部告発・豊島区は税金泥棒/第7回 サイは投げられた | トップページ | 内部告発・豊島区は税金泥棒/第9回 旧態依然の対応 »