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鎌田慧の現代を斬る/政官業総腐敗の先にあるもの

■月刊「記録」1997年3月号掲載記事
 (表記は掲載当時のままです)

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■日本システム崩壊

 日本は、末期的な症状を呈してきた。
 ロシアのタンカーが座礁し、日本海沿岸が重油漬けになったのにもかかわらず、政府が無策だったのは、軍備しかアタマになかったからだ。漁民やボランティアなど個々人の努力によってどうにか後始末は進んでいるものの、船腹は依然として海底に眠り、問題はこれからである。
 タンカーの事故は外からの影響によるものだが、日本の内側でも混乱は続いている。たとえば日本的生産システムとして喧伝されていたトヨタ生産方式(かんばん方式)が破綻するという事件が発生した。かんばん方式とは、米国から入ってきたジャスト・イン・タイムを日本的に徹底させたもので、下請けを支配し、下請けに生産を依存するものだ。欲しいものを、欲しい時間に、欲しい量だけ親会社に納入させるシステムで、下請けに犠牲を押しつけていたこの方法は、2月上旬のアイシン精機刈谷工場の火災によって、親会社のトヨタの工場を3日間の生産停止に追い込んだ。行きすぎた管理主義のツケである。
 さらにクレジット業界の信用情報会社「シー・アイ・シー」の個人情報が流失していたという事件が最近発覚した。これは集中化した個人情報が外部に流出するというプライバシー保護上での大問題である。これまでにも小さい規模の事件はおなじ産業で頻発していたが、この事件は1億4千万件もの個人情報を握っている会社の不祥事であり、情報の集中管理の恐怖を新たにしめした事件であった。
 環境問題・生産システム・情報の集中管理などの破綻があいつぐなか、日本の経済基盤の弱さも円安の深化によって露呈した。
 いままで「日本は優秀だ」などという慢心の中心的存在だった日本式システムが、いっきょに瓦解している。さらに農村の疲弊と、食料の外部依存、空洞化と失業の増大いう状況を加えると、日本の混乱は極みにたっしたと思える。

■4億5千万でお釣り

 政治家および官庁への強い不信感もまた、傲慢な日本的方式の破局をあらわしている。たとえば新進党の友部達夫議員のスキャンダルは、日本の政治構造を極端にマンガ的に表現した。カネで議席を買うという傾向については、べつに友部に始まったことではない。ただし友部の場合は、選挙民から直接選ばれたのではなく比例区で当選している。これまでの政治家と違うところは、この点だ。この欄でも前に批判した歪んだ選挙制度が、友部のようなピエロを浮かび上がらせた。
 なぜ得体の知れない友部が、新進党の比例代表区の13番目になったのかは、まだ解明されていないが、カネによって議席を買ったことはほぼ間違いない。友部がオレンジ共済で集めた資金は93億円にものぼり、6億円を政治工作資金として使ったこともあきらかになっている。このカネによって比例代表区13位の地位を買ったのは否めない事実である。
 当時、日本新党枠の責任者であった細川護煕は、友部について「私達とは住む世界が違う人と思った」と記者団に語っている。さらには「政治家として務まるかと思っていた」とも語っているのだ。にもかかわらず昨年の9月下旬に、彼は友部の次男にあたる共済組合専務理事・友部百男と、ステーキハウスで食事し、1本数十万円のロマネコンティをガブガブ飲んでいたという。
 住む世界が違う人間であり、政治家として務まらないと細川が思った人間を、新進党の最高責任者である小沢一郎などが政治家にした。これほど無責任な話はない。新進党の候補決定のプロセスについては、これからの捜査を待つしかないが、細川の側近であった初村健一郎元代議士が、94年夏に友部と出会い、95年の参議院選挙前には新進党の選対の幹部に友部を引き合わせていたことは、あきらかになっている。そのときにオレンジ共済から、1億円が手渡されたともいわれている。そのうえ、初村は細川に3000万円を渡したと報じられている。 カネで買った議席で、友部がもとを取ろうとしないわけはない。彼が集めた93億円にものぼる巨大な金額のうち、63億円は当選後に集められている。つまり議員バッチが集金の道具になったのだ。4億5千万円の政界工作費を使ったにしても十分にお釣りがくる買収だったことがよくわかる。
 このように議員バッチによって集められたカネは、都内の高級マンション、フェラーリやベンツなどの10台もの高級外車、さらには小鳥を放し飼いにするためのマンションの改造費や高級熱帯魚の購入費、そして妻のリムジンの代金やアイルトン・セナが実際に乗ったF1カーの買収など、これでもかこれでもかというほど浪費された。これほどの浪費が許されたことも、いままで日本社会で議員バッチがどれほどの効力を発揮してきたかの証明にもなる。
 友部はこれまで何度も選挙に立候補し、泡沫候補として落選してきた人間であって、なんら政治的な見識もない人間だった。それがどうして当選間違いなしの比例代表13位になったかが解明されなければ、本当の政界の浄化はありえない。友部のケースは、あまりにもやり方がズサンで失敗したからこそ、いま批判対象となっている。しかし、巧妙なやり方で議席の買収に成功すれば、けっして詐欺師といわれることはない。詐欺師は失敗したからこそ詐欺師であって、成功すれば立派な実業家であり、立派な政治家になれるということを、友部のケースは逆説的に証明した。

■危険を知っていた政府

 友部への疑惑は、これだけにとどまらない。95年春ごろ、彼は「21世紀青少年育英事業団」の設立をもくろんでいた。この財団では、日本留学を希望する東南アジアの青少年に奨学金を与えるための事業が行われる計画だったという。その趣意書には、鳩山邦夫元文相、小沢辰男元厚相の名前が使われていた。もちろん問題の初村も名前を連ねている。鳩山や小沢は勝手に名前を使われていたといっているが、オレンジ共済幹部からは「了承は得たはず。勝手に名前を使ったわけではない」といったコメントが出されている。
 まだ無断で名前を使われた人達が告訴したというニュースに接していない。勝手に名前を使われたというかたちで、事件がうやむやになる危険性を含んでいる。はたして友部が勝手に使ったのかは、これからどうしても究明する必要がある。
 また、この事件に付随して、95年夏ごろ初村から小沢へ現金100万円が渡ったということも事実も報じられている。初村はこの現金について、「財団設立のさいにお世話になったから」と語っているが、このカネが初村個人のものと考えるのは難しい。しかも、この事業団の設立にからんで、95年4月に初村から政治団体関係者に3500万円の政界工作資金が渡ったと、いわれているのだ。21世紀青少年育英事業団は、岡光元厚生事務次官が老人をくいものにしたように、東南アジアの留学生をくいものしようとしたシステムそのものといえる。「老人」や「留学生」など、弱いものを喰いものにするのは、許せない。
 さらに問題なのは、財団法人の設立にさいして行われた「スーパー定期記念セール」について、文部省は出資法違反の疑いがあると判断し、申請手続きを凍結していた事実である。これは一昨年のことであったから、政府機関が当時からオレンジ共済組合に疑問をていしていたことの証明である。
 出資法違反の疑いのある人間が、新進党の候補に公認され、公認ばかりか自動的に当選する順位に上げられたというのだから、友部ばかりを詐欺師呼ばわりするわけにはいかない。小沢や細川など新進党の幹部も、国民を愚弄するのに一役買っていた。カネで議席を買うのは、保守党の常套手段だった。

■庶民の金が政治家に吸い上げられる

 おなじ詐欺師でも、山本一郎は経済革命倶楽部(KKC)などというふざけた名前でカネを集めていた。この団体の会長である山本は詐欺容疑ですでに逮捕されたが、これまた日本政府の怠惰を象徴する事件だ。
 この事件は会員1万2千人から352億円ものカネを集め、無駄に投資して破綻したというものだが、忘れられないのは一般市民が高配当につられたことだ。銀行や郵便貯金の利率は、銀行の救済のため低金利に抑制されいる。年金生活者や退職金で暮らしている人達が、老後の不安を取り去るために高金利に飛びついたのもうなずける。この事件は、こういう詐欺師を横行させた政治の貧困を物語っているのだ。現代の日本は、友部や山本や彩福祉グループの小山のような詐欺師が、政治家や官僚を利用して市民の金を吸い上げ、そのカネがまた政治家や官僚にバックされるというおぞましい構造になっている。結局泣くのは、庶民なのだ。
 オレンジ共済組合と同じように重要な問題を含んでいるのは、三井・三菱などの財閥を巻き込んだ泉井純一の所得税法違反事件である。泉井は、三菱石油などから手数料の名目で60億円以上もの裏金を集め、それを政界官界に配ったとされている。泉井は自民党副総裁や外相を務めた渡辺美智雄と親しかったうえに、三塚博、加藤紘一、小泉純一郎といった自民党幹部の名前が彼との関係を取り上げられている。
 最近収賄の疑いで逮捕された元運輸事務次官の服部経治(関西国際空港前社長)は、泉井から現金や高額商品を受け取っていた。もちろん官界の実力者・服部が、政界とかかわりがないはずはない。彼が運輸省の政務次官に就任するにあたって、同じ岡山県出身の橋本龍太郎が運輸大臣のときに強く後押ししたと伝えられている。橋本は厚生族であって岡光との関係も深かったが、空港を取り仕切る運輸大臣としても、しっかり利権を確保したのだ。今後、泉井の捜査が進むなかで橋本の問題もとうぜん解明すべきである。
 与党の自民党が泉井問題を抱え、新進党はオレンジ共済問題を抱え、所詮はおなじ穴のムジナだ。二大政党論とか保保連合などといっても、汚職連合、汚職二大政党には間違いなく、これらの腐敗した政治家が、日本の未来を語っているほどバカらしいものはない。

■忍び寄る危険

 このような混乱に、国民は呆れ、そして危機感を抱いている。しかし、その危機感をちゃっかり利用しようとする手合いもいるから要注意だ。最近、国家の強化や英雄主義、愛国心を訴えるグループのキャンペーンが強まっている。右翼の宣伝カーは「国に誇りを持て」と声高に叫び、国を批判する者は非国民あつかいにされかねない。権力者の混乱が浄化につながるのではなく、それを利用して国家主義を広めようとしていることに強い危機感をもたなければいけない。
 従軍慰安婦問題を突破口にして、右派および右翼の言論グループが従軍慰安婦の事実の否定ばかりか、かつての日本軍部を批判する者への攻撃を強めている。
 この混乱期を反動のほうに追いやるか、あるいは転形期ととらえて前に進むようにするのかは、ひとえに世論の形成のしかたにあり、世論の形成は個人の無関心からの脱却と行動にかかっている。(■談)

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