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もう一度バブルに踊ろう/第2回 海辺に巨大プールを造り、テーマパークで別荘を売る

■月刊「記録」04年2月号掲載記事

        *         *          *

 バブルといえば、そう、リゾートである。
 今や「リゾート」なんて言葉自体とんと見かけなくなったが、バブル真っ盛りのころは、猫も杓子もリゾートに踊っていたものだ。
 1988年5月28日号の『週刊東洋経済』は、「ニューサービス――明日の生長産業」という特集で「リゾート、レジャーランド」を取りあげている。「千億円単位の大計画が続出」というタイトルが、今読むとちょっと悲しい。
  「一億総余暇時代」なんてノーテンキな言葉まであった。誰もが暇と金を持て余すようになると、なぜか多くの人が思い込んでいたのだ。だからリゾートが必要とも。
 あー、素晴らしき楽観主義!
 サービス残業当たり前で、起きてから寝るまで働くしかない。余暇があるのはリストラされたとき。そんな近未来を想像することさえできなかったのだ。
 “バブルマジック”恐るべし。
 もちろんお気軽ムードを盛り上げる政策を、きちんと政府も用意した。総合保養地域整備法、通称「リゾート法」である。「ゆとりある国民生活の実現と地域の振興を図ること」を目的として作られたリゾート法は、都道府県が構想を練り、国が承認するシステムを取る。見事、国から計画が認められれば、課税は優遇されるし、融資の支援だって受けられる。
 経済基盤が弱く、地域活性化の核を探していた地域ほど、このリゾート法に飛びついてしまった。ドカーンとリゾート施設を造って、ドカッと観光客を呼び集めよう。そういう思いとバブルの楽観主義が、採算を無視した巨大施設を作りあげたのである。
 まあ、気分はわからないでもない。
 さて、そうしたバブリーなリゾート施設のなかでも、もっともお気楽さを感じさせるのが、宮崎県のシーガイアである。88年にリゾート法の指定第1号を受けたが、その規模がすごい。
 総事業費が、なんと2000億円。高層ホテルやコンベンションセンター、ゴルフ場など、バブルリゾート「三種の神器」ともいえるハコモノを配し、さらに世界最大の室内プールまで作ってしまったのである。その名もオーシャンドーム。
 全長300メートル、幅100メートルのドームは、屋根が開閉式。夏ともなれば、屋根が開かれ野外プールに早変わり。熱い陽ざし浴びながら、波の出るプールでゆっくりくつろぎ、夜は隣接する豪華ホテルに宿泊できるという算段だった。
 ただし立地は、海の隣なんですけどね。
 海水浴は夏しかできない。しかもベストシーズンが台風の到来と重なりがちとなる。そんな事情を一気に解決するっていっても、海に隣接した波のプールに数千円を支払うのは、どこか納得のいかないもんでしょう。やっぱり。
 自慢ではないが、このバブルリゾートに私は行ったことがある。
 シーガイアを運営する第三セクターが、計3261億円の負債を抱えて会社更生法適用した01年2月の直前だったためか、とんでもなく宿泊費が安かったのだ。オーシャンビューの部屋は、セミスイートかと思うほど広く、朝には人生で一番とも思える朝食をいただき、1人1万数千円。
 シーズンオフの冬だったが、常夏のオーシャンドームは快適そのものだった。ただプールで滑り台を滑ったり、子ども騙しのアトラクションに乗ったり、波に揺られたりする以外、何にもすることがなかったのだが……。 会社更生法の申請手続きに踏み切ったとき、佐藤棟良前会長は「長期滞在型施設は、日本人の生活になじまなかった。リゾートの意味が分からずに、遊ぶ施設を造れば人が来るという安易な考えがあった」(『AERA』2001年10月29日号)と涙ながらに語ったようだが、確かに典型的な日本の私には、長期滞在どころか半日でも時間を持て余してしまった。じっとしていることの苦手な貧乏ライターなど、施設のターゲットにもなっていなかったのだろうが……。

■テーマパークでの定住を提案

 リゾートを取りあげるなら、長崎県のハウステンボスに触れないわけにもいくまい。92年3月開業以来、経常赤字のまま03年2月に会社更生法を適用。すっかり勢いを無くしてしまったテーマパークだが、その志はなかなかのものである。
 「エコロジー(生態系や環境の保全)とエコノミー(経済)の共存」をコンセプトに作られ、2200億円初期投資のうち600億円を環境対策に使ったという。法律に定められた基準より4倍厳しい廃水処理するなど、その徹底ぶりは驚くばかりだ。
 しかしオランダ人が見ても納得するほど精巧なオランダの街を作りあげ、定住できるアミューズメント・パークとして運営するのは、やはり無理があったのだろう。 定住型リゾート実現のため、1戸平均1億5000万円の別荘や平均6300万円もするコンドミニアムも発売されてもいた。バブル期は予約が殺到したと伝えられたが、バブル終焉とともにキャンセルが続出。大幅値下げをしたものの、現在でもほとんどが売れ残っているという。
 よくよく考えてみれば、金を持っているなら「日本のオランダ」に別荘を持つ必要などない。オランダでホテルに泊まればいいわけだし。どんなに建物を似せても、外は日本。しょせんテーマパークでしかないのだから。 私事になるが、まだ若かりし頃「東京ディズニーランドみたーい」と誉められながら(?)、女性に振られたことがある。当時はよく意味がわからなかったが、今なら理解できる。一緒に数時間いるのは楽しいが、浮世離れして落ちつかない人とは付き合えない。そんな意味だったのだろう。
 つまりテーマパークなんかに定住するヤツはいないってことだ!
 高級志向のホテルも、経営の足を引っぱった。
 ハウステンボスを作りあげた人々の活躍を描いた『ハウステンボス物語』(プレジデント社)で、ホテル群の経営責任を担っていた窪山哲雄・NHVホテルズインターナショナル社長の次のような言葉を紹介している。
「集客戦略面からはHanako族も修学旅行の生徒も大切です。しかし、全体の雰囲気をリードし、社会を動かしていくのはデシジョンメーカーの人たちです。(中略)だからぼくは、ハウステンボスのホテル群はホテルヨーロッパを中心にデシジョンメーカーの人たちを対象としたものである、という明確なコンセプトを作り、ハード、ソフト、ヒューマンウエアにわたって、そういう層のお客を想定したホテルづくり、運営計画を進めている」
 まず初めに言葉がわからないので、調べさせていただきました。「デシジョンメーカー」とは、意思決定者のことらしい。つまり企業などの要職にあり、ホテルにいろんなお客さんを引っぱってこれる人という意味ですね。
 平たく言えば、金持ち用に施設である、と。Hanako族の口コミより、デシジョンメーカーが決定するコンベンションや会議、研修のほうが客を連れてくると踏んだのだろう。
 しかしデシジョンメーカーでさえ無駄な金を使えない時代は、このとき目前に迫っていたのである。
  『ハウステンボス物語』では、ハウステンボス宮殿の復元において、レンガとレンガの間が本物より2ミリ広いことが発覚し、4000万円かけて200平方メートルのレンガを張り直したエピソードが紹介されている。この措置によってオランダ政府から強い信頼を得たというある種の成功秘話だが、現在では更正法適用を暗示させる話にもとれる。
  「当初総事業費千億円余りで開始したが、工事費が膨張、最終的に約2200億円に拡大。初めから過大な有利子負債を抱える一方で、入場者数は景気の失速で計画を下回った」(『読売新聞』03年2月28日)という更正法の申し立て理由を知ればなおさらである。
 しかしシーガイアとハウステンボスは、テーマパークとしてはまだまだ優良な部類に入る。帝国データバンクの調べによれば、少なくとも99年度の売上高ランキングでは、396億円のハウステンボスが2位、186億円のシーガイアが3位だったのだから。

■「協調と平和の惑星構想」のテーマパーク

 2000年8月に解散した熊本県荒尾市の三セク「アジアパーク」ともなると、もう何がコンセプトかすらわからない。
 発端となったのは、九州を一大観光地域にする87年の「九州アジアランド構想」だったらしい。このプロジェクトに乗り、荒尾市が「コンコルディア・プラネット(協調と平和の惑星)構想」をぶちあげ、93年7月にアジアパークが開園したという。
 すでに競走馬みたいな構想名からして理解できない。協調と平和はまだしも、惑星? それがアジア??
 このテーマパークの売りは、アジアの遺跡や建築物のミニチュアをボートで見学するアトラクション(?)だった。ところが水路の長さは、わずか460メートル。
 人の背丈ほどのタージ・マハールをボートから見て、何が楽しいというのだろう。『週刊朝日』の取材が訪れた際、このアジアパークの元社長は、「荒れた姿を見せるのは、アジアの人たちに申し訳ない」と撮影を拒んだとのことだが、テーマパークの存在自体が申し訳なかったといえなくもない。
 隣にある三井グリーンランドというアトラクション中心のテーマパークから流れる客をあてにしていたという報道もあり、開園当初から先は見えていたのだろう。
 そもそもテーマパークは、リピーターを獲得していかなければ立ちゆかない。そのため客寄せとなる新規のアトラクションが、毎年必要になってくるのだ。テーマパークの筆頭勝ち組といわれる東京ディズニーランドでさえ、新規のアトラクションを作り続けているのだから。 それにしてもバブル期の事業は規模がでかい。そんな心意気を見習いたいと思いつつ、カレーチェーン店の特売日をメモってしまった。反省……。 (■つづく)

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