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内部告発・豊島区は税金泥棒/第5回 訴訟の裏側

■月刊『記録』98年1月掲載記事

          ※        ※        ※

■弱気の原告

 訴訟を取り下げるにあたっての最大の問題は、私が出した三つの条件だった。
・宿直勤務の同僚が得た不当利得の全面返還
・私に対する訓告処分の取り消し
・宿直勤務の形式を、一九八四年四月以前の状態に戻すこと
 裁判で争っていたのは、不当利益の全面返還だけだったが、私への嫌がらせとしか思えない勤務体系や不当な処分の実態は、裁判の進行とともに明らかにされつつあった。判決によって事態は改善されるだろうと、弁護士も折りに触れ話していた。勝てる裁判を取り下げるのだから、最低限、この状況を改善してもらいたい。私は切実にそう願っていた。極度の寝不足と闘いながら働く毎日に疲れ果てていたのだ。
 ところが私の代わりとして原告となった江畑騎十郎氏は、助役と交渉を終えるたびに弱きな発言を繰り返したのだ。曰く、「三つは無理だ。一つにしてくれ」。「勤務形式だけを役所にのませるのはどうだ」。突然の取り下げの提案と弱腰の態度に、私は彼に対して日々不信感を募らせていった。最初の出会いで頼もしいと感ただけに、かえって裏切られた気持ちが強まっていったのである。
 訴訟取り下げ騒動からさかのぼること一一年、私は怒りに身を震わせながら江畑氏が警備する学校に押しかけたことがある。それが彼との最初の出会いだった。
 当時、宿直の職員が一人辞め、その補充をめぐり私は上司と対立を深めていた。職員採用の代わりに用意されたのは、右も左も分からない日替わりのアルバイト。定期的に来てくれるならいざ知らず、次いつ来るのかも分からないアルバイトに、込み入った仕事を頼むわけにもいかない。しかも職員の補充ができない理由はまったく見当たらなかった。新たないじめだった。
 黙っていても、不当な処遇が変わるはずもない。総務課長と組合の委員長に、職員を採用しない理由を問いただした。
「学校警備員分会が反対しているからだ」
 それが二人の答えだった。宿直業務に関わりのない、豊島区役所の労働組合の一支部が何をほざいているのか。私は怒りとともに、学校警備員分会への直談判を決意したのである。数日後、私は休日の学校を訪ねていた。平日の喧噪が嘘のように静まり返った校内が、よけいに私の緊張感を高めた。
 そこで出会った、当時学校警備員分会の責任者である江畑氏は、勢い込む私をばかにするでもなく、猜疑心に満ちあふれた眼を向けるでもなく、極めて熱心に応対してくれた。じっくりと話に耳を傾け、的確に質問をする。そして私の話を聞き終わると、「職員の補充に反対したことなどない」という言葉とともに、その場で学校警備員分会の仲間に電話をかけ始めたのである。そして事実確認を終えた彼は、事態の収拾さえ約束した。私が説明を始めてからわずか一時間。江畑氏の手によって、事態は一気に収束に向かって動いた。
 東大卒で社会党中央執行部に在籍したいたとの噂もあった江畑氏は、噂通り、いやそれ以上の切れ者(切れ者に傍点)であった。筋道だった話し方には無駄がなく、説得力に溢れていた。意思の強さを感じさせる目、即座に問題を解決しようとする行動力。すべてが私を圧倒した。もちろん江畑氏は約束を守ってくれた。私が訪ねた数日後には、総務部長に直接掛け合い、職員補充の約束を取り付けたのである。

■祝勝会は知らない人だらけ

 私は三つの要求を主張し続けた。ここで妥協すれば、裁判した意味がない。粘り強い交渉が数週間も続き、ついに「先方(助役)が了解した」と江畑氏から報告を受けるにいたったのである。
 一九八七年四月三日、訴訟はすべて取り下げられた。
 取り下げから数日後、巣鴨にある居酒屋・神戸屋別館で祝勝会が開かれた。会場は実質勝利の結果に沸き返っていたが、私は祝勝会場で一人、不安に苛まれていた。弁護士二人、区議会議員二人を含めた二〇人ほどの参加者のうち、私が話したことがあるのはわずか五~六人。会場を埋めていたのは、私の知らない人ばかりであったのだ。
 さらに驚くべき事実も耳もした。
 「五十嵐君、心配ないよ。助役とは覚え書きを交わしたから。君の要求もいくつか書いた中に入れておいたよ」
 私の隣に座った区議は今まで会ったことさえないのに、赤ら顔をほころばせながら、そう語った。
 担がれたのではないか。そんな疑念が頭をかすめた。私が役所に要求した条件はわずか三点だ。ところが区議の言葉は、それ以外にもいくつかの密約が交わされたことを意味していた。
 「学校警備の連中は自分達の延命処置のために、五十嵐さんを利用したんですよ」
 数ヶ月前に軽く聞き流していた防災課職員の言葉が、胸を重苦しくしていた。同僚の突然の欠勤で、急遽仕事を手伝いに来てくれた彼は、仕事の合間に私の裁判に関する噂を口にしていたのだ。
 裁判が始まったころ、豊島区では学校警備員の異常な高給が問題となっていた。なにせ当時、年収一千万円もの高額所得者がゴロゴロいたのである。そこで区長をはじめとする区役所の中枢では、警備の機械化を推し進めようとしていた。もちろん失業を意味する機械化には、学校警備員は大反対。学校警備員分会を中心に、既得権を守ろうと懸命な運動が続いていたのである。もちろんその中心人物は、あの江崎氏だった。
 まず警備員分会が考え出した既得権確保の手段は、災害時の避難場所として学校を指定させ、非難した市民の学校内誘導を警備員の仕事として区に認めさせることだった。警備員が災害時に必要と認められれば、災害に備えて平時も学校に人を置いておく必要がでてくる。
 警備員分会は、この計画に沿って防災課に兼務辞令を認めさせようと圧力をかけていた。だが、傍流の組織と関わりあおうとする役人など、どこを探してもいようはずもない。やっかい事を押しつけようとする学校警備員分会は、防災課から敵対視すらされていたのだ。

■そして事態は変わらない

 学校警備員に利用された……。話を聞いたときには、警備員嫌いの防災課職員のたわごとだと、笑って否定していた。だが現実は彼の「たわごと」を証明しつつあった。祝勝会で交わされている会話から察するに、私の知らない参加者のほとんどが学校警備員なのだ。
 さらに祝勝会から数日後、もっと大きな衝撃が私を襲った。内部告発した直後に私に電話をかけてきてくれ、弁護士を紹介し、裁判の道筋をつけてくれた区議が、警備員分会の顧問だったというのである。もちろん祝勝会に現れたもう一人の議員も顧問だった。前にお話しした通り、弁護士も分会の顧問。原告は分会の責任者だ。私を除いて、裁判に関わったすべての人が、警備員の既得権に目の色を変えている連中だったのである。
 それでも問題が解決してくれされすれば、誰に利用されても仕方がないとも考えていた。弁護士も江畑氏も、確かによく動いてくれている。今更何を言っても始まらないではないか。そんな気持ちに支配されていたのだ。
 ところが警備の機械化は見送られたにも関わらず、私の要求は一年を経ても、なに一つ実行されることはなかった。なぜ実行されないのかという問いに対して、弁護士は「江畑氏に任せてある」と責任転嫁し、江畑氏は「助役に聞いてくれ」とつれない。助役は「関係者との話は済んでいる。その件は終わりました」と取り付く島がない。また一人取り残されてしまった。
 取り下げから一年、もう担がれたことを認めざるを得なかった。江畑氏が祝勝会の後、警備員への転職を勧めた訳が分かるような気がした。
 だが、この裁判にまつわる陰謀はこれだけではなかった。後にこの裁判により、知らぬ間に最大の敵に塩を送っていたことまで判明することになる。 (■つづく)

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