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鎌田慧の現代を斬る/政党談合政治を断ち切る

■月刊「記録」1996年12月号掲載記事(表記は掲載当時のままです)

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■ドジョウ鍋政治

 兵庫県の参院補欠選挙の投票率は21%だった。自由民主党、新進党、民主党、社会民主党、さきがけ、民主改革連合がタバになっておした前副知事が、共産党候補に2万7千票の小差でかろうじて当選した。これで県民の信任をえたというのは、でたらめでしかない。先月の衆院議員選挙の投票率の全国平均は、60%を割っていた。 最近は恥も外聞もないオール与党体制では、もはや選挙民に投票の自由はないといえる。政治家どもの頭の中を占めているのは、自分の議席の確保だけであって、もはや思想や主義はおろか、自分の主張さえもなくなっている。
 これを「ドジョウ鍋政治」という。断末魔のドジョウが苦しまぎれに、豆腐のなかに争うように頭をつっこむ。哀れである。彼らが煮て食われようと焼いて食われようと、そんなことどうでもいいのだが、よく考えてみれば国民もまた「全体主義」という怪物に食われてしまいそうだ。
 第2次橋本龍太郎内閣が発足し、また自由民主党単独政権にもどった。社民党や民主党は与党でありながら閣外協力ということだが、これまた妙なことである。与党になるなら、いままでどおり大臣の椅子を分けてもらえばいいのに、そこに世論の批判に対するためらいがあらわれている。
 社民党は選挙のときに、「市民との絆」と大きく打ち出していたが、与党でありながら市民とつながるなど、大政翼賛会の押しつけでしかない。土井たか子委員長も市民との絆を標榜するなら、村山富市や久保亘など「戦犯」とスッキリ手を切って、それこそゼロからの出発をすべきではないか。
 選挙制度の改悪と同時に、少数政党いじめのきわみである「政党助成金制度」が導入された。この制度は国会議員を5人以上有する政党か、選挙で2%以上の得票率を得た政党に、国民1人あたり250円の助成が行われる悪法だ。
 この悪法が、今度の選挙で大きく力を発揮していた。新聞などの政党宣伝は華々しく、テレビでは大政党の広告が連日にわたって流された。それぞれ広告代理店がつくったであろうコマーシャルフィルムであった。
 これには膨大な資金がかかっている。その資金は、国民からの税金だ。つまり国民の血税を使って、政党は大宣伝をおこない、広告代理店とテレビ各局と新聞社がもうかるという構造だ。
 この制度では議員を持たない政党が、きわめて不利な体勢になる。国会議員を5人以上もたない政党は、実質的には選挙公報も満足にできない。きわめて不平等な制度なのだ。
 共産党を除いた全政党は、社会党も含めて率先して政党助成金に賛成した。彼らはもはや市民の方はまったくむいておらず、ただ自分自身の保身だけを考えていることをあきらかにした。市民運動とか、少数の労働運動などを切り捨てて、自分だけが議席を獲得しようとしてるのは犯罪てきだ。もはや政権党と同じ体質だ。
 かつて私は「いまや社会党は自民党の看護婦になった」(『生きること、書くこと』―日本エディタースクール刊)と書いたことがあった。しかし現在の社民党は看護婦ですらない。使い捨てのホウタイだ。

■封建制度の復活

 比例ブロックに候補者をたてる場合、新制度では定数の2割以上を立候補させなければいけない。それだけの供託金は膨大であり、当選者がでなければ供託金は国庫に没収される。またテレビでの広告費も1回あたり3千万円かかるといわれ、これも政党助成金をもらっている大政党でなければできない。
 政党助成金制度は、国民からカネを吸い上げて、国民を縛るという制度であり、それに賛成した社会党の罪は万死にあたいする。
 いまや日本の政治は政党の独善にみちあふれ、談合政治になりはてた。与党政治家の多くは、ただ父親の地盤を受けついだだけであるから、彼らが住民運動、市民運動、労働運動の動きを気にすることない。
 親の七光りか、大政党のカネと組織票のバックアップがなければ当選は難しい。いまや市民運動などから国会議員を選出する道は完全に閉ざされてしまった。これは封建制度の復活ともいえる。これからは、みんな政権にスリ寄って推薦をもらうことに腐心するようになる。

■町内会レベルで国政

 小選挙区制は、選挙をきわめて矮小化した。小選挙区制で落選し、比例区で復活当選した山花貞夫議員自身が、「選挙区が狭くなって、運動がきめ細かくなった。200人の演説会より、10人、20人の座談会のほうが効果がある。どぶ板といえばどぶ板なんだが」といっているように、国会議員はきわめて狭い地域の利権を代表するというようになった。つまり国政を担当する政治家が、地域の利害で選出されるだけだ。
 国税と時間とのバックアップで生まれた国会議員が、町内会レベルの政治活動を余儀なくされるのが新選挙制度だ。選挙制度の改革とはいいながら、いっぽうでは企業献金はそのまま野放しにされている。大企業が政治家と政権党を支配する構造は変わっていない。まして小選挙区制は大政党に有利のため、そのすきまを狙う政党との談合で、ますます無党派の新人が国会にでる道は閉ざされる。
 このように大企業と官僚と七光り議員で国会が形成されて、かつて崩壊したはずの自民党の金権政治を復活させることにつながっていく。
 今回の衆院選挙の投票率が60%を切った背景には、いまや政治が政党同士の談合となれあいでしかなく、どこに投票しても同じ政党であるという翼賛体制に嫌気がさした選挙民が、投票を自主的に回避した絶望がある。

■ヒトラーばりのデマ政治

 いままで社会党を支持していたのは、自分でなんら運動を起こすことなく、社会党にだけ投票しておけば、日本の民主主義が守られるという幻想があったわけだが、いまはっきりと現実が露呈した。これから自分自身はどのように政治に参加していくのか、どういう市民運動をしていくのかが問われている。
 小選挙区制は、「政権交代を可能にする」というデマによって導入された消費税の導入もそうだが、日本の政治はヒトラーばりのデマ政治になってきた。
 比例区の導入は死票を復活させるという名目だったが、そのためならブロック制ではなく、全国区の比例代表制度で、小政党への票をすくう道をつくるべきだ。
 まして選挙制度の改革をするならば、たとえば日本で仕事をし、税金を払っている在日朝鮮・韓国人と外国人の選挙権をどうするかという問題が残っている。税金だけをとっておきながら、参政権をあたえないというのはおかしい。たとえば10年以上永住している者には選挙権や被選挙権をあたえるなど視野のひろい議論が必要だ。 とにかくこのまま大政党どうし談合が続けば、テロルかファシズムを呼びこむのはまちがいない。(■談)

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