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阪神大震災現地ルポ 第3回/淡路島での区画整理

■(月刊『記録』95年6月号掲載記事)

■3月25日

「震源の町」淡路島・北淡町には、倒壊家屋がほとんどなくなっていた。内外の解体処理業者に加え、自衛隊も「超法規」的に瓦礫の撤去を行っていた。そのため町の中心部・富島地区は、空地ばかりの寂漠とした光景が広がっていた。港に佇んでいた老人が「家も店も皆めげてしまった。野っ原になってしまった」とつぶやいた。それらの風景は倒壊家屋が野ざらしになっている神戸とは異なる、震災の無残さを感じさせるものだった。 
 北淡町は人口1万1400人。震災による死者38人。最大で3600人が避難生活を送り、被災率は60%に上る。町の規模に比べて被害甚大だった。町民には高齢者が多く、避難所の町民センターにいる被災者も老人が多かった。彼らは自らも被災した上に、島を出て神戸などで暮らす肉親たちもまた被災していた。ある老人女性の場合、神戸に住む姪の夫が崩れてきた天井を支えながら失神、下敷になって子ども2人とともに絶命した。  

 富島の商店街だった道はほぼ壊滅状態で、地震の凄まじさを改めて思い知らされた。仮店舗で営業を再開した商店や入居の始まった仮設住宅などが所々で見られた。畳屋の仮店舗の土台とするコンクリートブロックを運んでいた男性Aさん(60)は、「薮から棒に区画整理の話が出てきて、30㎡以内の仮店舗以外は建築が認められない。徐々に住みにくくなっていく感じだ」と語る。 
 この区画整理事業計画が、震災後の最大の問題だ。最も被災の激しかった富島地区の県道を7mから15mに拡幅し、県道に通じる細い路地の数本を4mに広げるというのが骨子である。神戸では同様の計画が減歩率を緩和した上で浮上しているが、北淡町では緩和の動きさえなく、対象地区の住民は土地を取られる不安と怒りを隠さない。「行政の独走は困る。こんな小さな町に15mもの道路は要らない」とAさんが言うように、区画整理の必要性の議論など何もないまま、都市計画決定などの手続きだけが進んだ。「早く着手したいから倒壊家屋の撤去を急ぐ」が町の本心らしい。 
 町民センターで会った浜口磐夫さん(77)も対象地区の住民だ。「住民で話し合って『これでどうだろうか』と町に相談するのが筋。それを『こうなりました』と勝手に決めてしまう」と憤りを口にする。浜口さんたちは町に反対の意見書を提出したが、それとても「計画を作った役人が審査するのだから当てにならん。説明会でもわしらの質問によう答えん」と、行政を全く信用していない。 
 ある飲食店が30㎡を超える仮店舗を建てたところ、近くの住民に通報され、町に超過分を取り壊された。区画整理を契機に住民同士が疑心暗鬼に陥っている。地価上昇を当て込む人もいるが、区画整理で減歩が少なく済んだ住民は均等負担の建前上「清算金」を負担しなければならない。つまり、震災で家を失った後、区画整理で土地を奪われ、場合によっては財産まで奪われるのだが、事前には全く知らされていなかった。 

 小久保正雄町長(61)は、阪神大震災では淡路島が忘れられるとして「阪神・淡路大震災」と呼ぶよう国と県に働きかけ実現させたが、今度はその熱意を区画整理に向ける。「公共の福祉の前には私権は制限されるべき」と、多少の反対は押し切って実行すると明言した。神戸と同様、「公私」の差別がこの町でも起きている。 
 浜口さんら区画整理反対派は異口同音に、町長を「悪代官」と呼ぶ。「金持ちや偉い奴は時代が悪くてもうまくやるが、わしらはなお悪くなる。時代劇の頃と一緒や。時代が変わっても何も変わっていない」と語る浜口さんの絶望的な心情が強く心に残った。

■3月26日

 淡路島から船で明石に渡り、神戸市須磨区に住む西村栄泰さんを訪ねた。西から神戸に入るのは初めてだったが、須磨駅から商店街を歩くと、倒壊家屋の大半がそのまま放置されていた。神戸市の復興(旧)は東から西に行われていたから、長田・須磨区は必然的に遅くなる。震災前も都市化の恩恵から外されていたこれらの町は、震災後も後回しにされていた。ここに、神戸市の変わらぬ体質をみてとることができる。
(■つづく)

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