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首都高速道路500円通行の正義 第2回/公団とのデスマッチが始まった

(月刊『記録』94年8月号掲載記事)

■料金改定、今日から600円

 だいぶ後になってわかったのですが、500円通行で首都高速道路公団が慟哭した度合いは、想像をはるかに越えたようです。
 当初は無視していた公団も、マスコミが私をたびたび取り上げるようになると 「何をバカな事をやっちょっるのだ」という感じで和合対策に腰を上げたのですが、やがてそんな単純な問題ではないとわかったからです。私の反乱は、ひょっとすると公団がなくなっちゃうかもしれない、重大な蟻の一穴でした。
 私の方は気楽なものです。「2年半で50%もの値上げなんて、ふざけちゃいけないよっとくりゃ、ホイ500円」と500円玉を貼り付けた旧料金通行宣言書で首都高速道路と毎日お付き合いをして続け、今もそうしているわけです。それだけです。

 今回は、運動の原点となった、87年9月11日以来の私と公団とのやり取りを、活劇風にまとめてみました。
 まだまだ汗ばむ陽気でした。抜けるような青い空に、落書きをしたような透けた白い雲が点在しています。いつものように私の経営する会社近くの首都高高島平入口から志村料金所へ向かいました。
 やれやれ料金所のはるか手前でもう渋滞です。当時の私は、「首都高は渋滞するのが当たり前」と無意識に納得していたのか、何の感情もわき起こらず、ただ車の流れに身を任せていました。大きく右へカーブし、視界が開けて直線コースへ入ると、忙しそうに働いているゲートのおじさんたちが見えてきました。そこまではいつもと同じ、ありふれた風景でした。
 が、その日は不思議な立看板が目に飛び込んできたのです。「料金改定、今日から六百円」という・・・・。
「何じゃい、こりゃあ」。この時、脳の奥深いどこかでプチンと何かが弾けました。どこからか、小さな信号音が確かに聞こえたのです。立看板の文字を理解しようと、目まぐるしく脳細胞が活動しましたが、「値上げ」以外の意味を見出せないまま、ゲートに着いてしまいました。
「ハイッ、今日から600円」と、料金所のおじさんが発した事務的な言葉にハッと我に返りました。プチンとはじけた小さな穴から「玉ヤーッ」のかけ声が掛かったかのように、ドカーンと火山が爆発します。
「ふざけるなッ、この野郎ッ!」と言えた方が、怒りの程度は小さかったのでしょう。危険すぎるマグマの吹出口を必死になって覆っていた私は、引きつった頬をピクピクさせながらギコチなく、しかし厳かに告げました。「これはとても納得出来るものではない、とりあえず今日のところは500円をお支払する」。はた目にはむしろ冷静にみえる態度で、名刺を差し出してゲートを通り過ぎました。

■公団に通行予告

 さあ、あとはお待ちかね500円通行の始まりです。私と首都高公団の血わき肉おどる活劇に、読者の皆さんも参加して下さい。
 車のナンバーを覆い隠し、無料で突っ走る暴走族はいくらでもいます。しかし住所氏名を明らかにし、白昼堂々と、しかも毎日、600円のところを500円で通るやつがいる。多い時には日に6回もある。「一体これは何者なのだろう?思想団体の嫌がらせか、はたまた、とんだ愚か者か」。年商2400億円、1400人の大組織である首都高速道路公団がびっくり仰天して、ジャジャジャ、ジャーンと開幕ベルが鳴った。
 正義は私にあるのだから、逃げも隠れもしない。公団には通行予定を前日にしておきました。「明日、志村料金所の1番左のゲートを通る。時間は6時半、料金は500円。昨日は職員が20人しかいなかったが、私に対して失礼である。倍の40人は用意しないと私を阻止できない。完璧を期すならば、自衛隊1個中隊を用意しておくことだ」と。
 だから、彼らは万全の用意で、今か今かと私の訪問を待ち望んでいるはずなので、期待を裏切るわけにはいきません。クソ忙しいところを約束の時間までに仕事を中断し、通行宣言書と500円玉を用意します。車内ミュージックはラベルのボレロを用意しました。さあ出発です。
 笹目橋を渡り、高島平入口に近づくと見張りがずらりと立っていました。目深にかぶったヘルメットにサングラス、菱形の黒いマスクと云う出で立ちで、カラステングみたい。濃紺のつなぎの服を来て、右手には懐中電灯を持っていました。それが料金所まで3キロあまりの道のりに点々と続くのです。
 私の姿を確認すると彼らの懐中電灯が大きく振られ、後方へ合図を送信、「まさにカラステングがのろしを上げているようなものだ」、などと大笑いしながら、愛車プレーリーはゲートへ向かう。
「和合来襲ッ!」(本当にこう叫んだ)。のろしで届いた情報に料金所は右往左往で大騒ぎ。とにかくスクラムを組んで今や遅しと獲物を待ち構えています。

■100円ッ、100円ッ、100円ッ!

 クスリが効いたのか、500円通行を重ねるたびに、私を迎える公団職員の数が増加、この日も雲霞のごとく湧いてきました。阻止し、差額の大枚100円を腕ずくで取ろうというわけでしょう。
 私も負けてはいません。潮が満ちてくるように単調なボレロのメロディーが、大きく押し寄せてきまました。双方ともに準備完了。
 外では、ラベルとは比較にならない怒声が飛んでいるようです。「ふざけるな、この野郎!ここは600円と決まっているんだ」などとわめいているのでしょうが、残念ながら窓は完全に閉め切ってあり、ただ職員諸君の全く品のない形相だけが窓外に迫ります。
 大歓声の中、やっと料金所に到着。とにかく通行宣言書と500円を渡さなければ、と500円玉の厚み分だけ窓を開けました。
「100円ッ100ッ100円ッ」。
ワンワンと大合唱が飛び込んで来ると同時に、その小さなすき間から指を入れようとしてきました。何んともはや、たいした執念ではないですか。通行宣言書と500円玉をゲート落とした後、窓ガラスを閉めて指を挟んでやると、ビックリした顔をして手を引っ込めました。ハイ、これでまたラベルの世界に戻りました。
 職員はガラスの向こうでまだなにやら喚いています。その形相から推察すると、「何をしゃがんでー、この野郎」てなことをいっているに相違ありません。
 再び発車。ほんの少し速めてソロソロと、10メートルほど進むと愛車に鈴なりにぶら下っていた職員がまず脱落しました。体力の相違ですから仕方がありません。わが車と一緒に走っているのは5人ほどの若者だけになってしまいました。
 そこで窓を開けて、やおら若者に、「大丈夫か?、と話しかけると、若者は、「ハァハァハァ」と答えるのみ。「少しスピードを上げるぞ」「ハァハァハァ」「よおし、もう少し大丈夫なようだな」。この段階では一番屈強な若者が1人しかいない。車と一緒に懸命に走っている意味が急速にぼやけてしまいました。頃あいを見はからって料金所近くの緊急非難場所に車を止めたて、やおらドアを開き下車するとその若者は、何か所在なさそうにキョロキョロしています。「危ないから、とにかく気をつけて行けよ」と声をかけ、悪びれた様子もなくコックリとうなずく若者を後にして再び発車しました。
 今から考えて見ると、一体これは何んだったのだろうかと思いますが、500円通行開始当時は私も公団も大真面目でした。
 こんな騒ぎが半年も続けば、双方ともだんだんエスカレートするのは人情で、さまざまな事件が起きました。次号では私の車の阻止のために命をかけた公団職員の話をします。この事件にはビックリすると同時に、公団の実態が、我々がイメージしている公団とは似ても似つかない世界であることが除々に判明してきたのです。

 その当時、首都高速道路公団の営業部長だった関氏が、後にシミジミと語ってくれました。
「弁護士費用も含め、公団の和合対策は極めて深刻なものでした。『500円通行を認めた形になるから、お金は受け取らない方がいい』との意見もたくさんありました。『決定されたことを守らないのだから、警察のお出ましを願うしかないのではないか』という意見もありました。
 しかし後者は我々の間違いであるとすぐわかりました。警察には民事不介入という基本的な大原則があるからです。そしてこのことが民事であることが改めて確認されたりもしました。
 法律的な解釈も含めて、とにかく相当時間をかけてミーテングをやった結果、「現場で阻止するしかない」と決まったのです。500円通行は全く法の落とし穴でした。公団はこれを許して伝染病のごとく不払い広まるのでは、と恐怖のどん底に陥ったのです」と。
 そんな事とはつゆ知らずフリーウエイクラブの会長は、今日も快調に首都高を疾駆します。
「ふざけちゃいけないよっとくりゃ、ホイ500円」。(■つづく)

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