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もう1度バブルに踊ろう/第1回 500階のビルが建ち、50メートル地下に飛行機が飛ぶ

■月刊「記録」04年1月号掲載記事

■大畑太郎(おおはたたろう)…1969年東京都生まれ。大学卒業後、サラリーマンをへて、アストラに入社。共著に『ホームレス自らを語る』(アストラ刊)などがある。

         *        *         *

 暗い! 恐ろしく暗い話ばかりである。
 まず景気のいい話を聞かない。雑誌やマンガまで売れない出版業界はもちろんのこと、業績の悪くない一部のメーカーの社員からも、浮いた話は聞こえてこない。
 給料が下がったの、大リストラが行われているの、仕事がきつくなったの、もうグチのオンパレード。
 多くの人が自信を失っているようだ。その落ち込んだ気持ちを支えるためなのか、景気が悪くなるにつれて偏狭なナショナリズムも活発になってきている。
 これは、イカン!
 思い出してもらいたい。わずか15年ほど前、日本はバブル期のまっただ中にあった。誰もが明るい未来を信じていた。株価は軽く4万円を超え、地価は青天井で上がっていくと確信していた。1989年12月29日に記録した3万8915円の株価最高値以後しばらくも、多くの人が株価が再上昇すると思っていたのだ。今考えれば酔狂な話だが、経済の専門家から素人まで、なぜか本気で信じていたのである。
 しかし「信じる者は救われる」との言葉もある。あの熱狂が実体経済を反映してなかったとしても、当時のむやみな自信と異常なほどのファイティングスピリットは、今こそ必要なのではないか!
 さあ、あのバブルの熱狂をもう一度感じるべく、当時の仰天世相を一気に紹介しよう。気分だけでもバブルに踊っていただきたい。
 ただ、現実離れした話が多くて、ついて行けないかもしれないけど……。
千代田区に匹敵する床面積
  『昭和63年(1988年)版国土土地利用白書』は、東京近郊の地価上昇の原因の1つとして、「東京への機能集中による商業地の受給逼迫」をあげていた。つまり東京への一極集中にともなって、オフィスなどの商業地が足りなくなったと言いたいわけだ。
 このどんどん高まる土地重要を見込んで、今や壊滅状態のゼネコンも大規模な建設計画を発表した。
 例えば、1989年に発表された大林組の「エアロポリス2001」。まず東京湾の浦安沖10キロに、直径740メートルの人工島を建造し、そこに高さ2001メートル、500階建てのビルを建設するというものだ。
 もう、テンションが違う。
 高いビル建てるために、人工島を造っちゃおうというんだから。まあ、仕方ない。東京の商業地は、今後どんどん足りなくなる「予定」だったのだ。
 延べ床面積もすごいぞ。1100万平方メートル、なんと千代田区に匹敵するほどの大きさだという。このビルには30万人が就業し、14万人が居住する計画になっていた。総工費予算は、なんと46兆6300万円。もはや国家予算なみである。
 そして超高層ビルにつきものの免震対策には、かつてないほどのユニークな方式を採用している。ビルの傾きと反対方向に向かって、ジャンボジェット機以上のパワーを持つ水が噴射されるんだと……。素人考えなんですが、ビルは折れないでしょうか?
 もちろん未来への提案という形でまとめられた構想であり、実現には多くの壁があったと思う。しかし少なくとも完成予想のパースを描き、大枠の見積もりまで計算している。その程度の手間をかけるぐらいは、本気だったということだ。今なら「こんな計画で?」と思うかもしれないが、それこそ“バブル・マジック”である。
 この計画を作った大林組も現在のゼネコン勝ち組に入っているわけで、夢を持つのはいいことだってことにしておきたい。
穴の中を飛行機が飛んでいく!
 しかし、こんな計画ごときで驚いてはいけない。ゼネコンの提案力(というか空想力かもしれん……)を、まざまざと見せつけてくれるのが、91年にフジタが発表した「ジオプレイン構想」である。
 一言で言えば、地中で飛行機を飛ばす計画だ。札幌・東京・大阪・福岡などの大都市の50メートル以上深い地下―大深度地下―に、直径50~56メートルほどのトンネルを掘り、その中で時速600キロの飛行機を24時間飛ばすという。80年代、多くの少年が夢中になった松本零時のアニメに登場する乗り物、空中にあるパイプの中を飛ぶ飛行機の地中版といったところか。リニアモーターカーに次ぐ、次世代の交通として提案したらしい。
 いや、このように書くと、あまりにバカらしく感じるかもしれないが、それなりの利点はあるらしいのだ。
 何より外を飛ばないから天候に左右されることがない。飛行機が欠航しても、ジオプレインは止まらないってことだな。大深度地下を飛行場とするため、近隣住民の騒音被害を気にすることなく、24時間の運行が可能となる。横風を受けないため、燃料効率も極めてよい。東京・大阪間ならジャンボジェットの4分の1の燃料で済む計算になるらしい。
 地球に優しいと低燃費の車として話題のトヨタ・プリウスでも、従来の車の4倍も走るかは微妙なところ。そう考えるとジオプレインのすごさがわかるのではないか(?)
 一番の問題は29兆円もの建設費をどうするのかということかもしれないが……。
 しかし、この計画を発表したフジタは、2002年10月に会社を分割し、不採算部門を別会社とした。1999年に取引銀行から1200億円の債権放棄を受けていながら不良債権の処理が進まず、苦肉の策として会社分割を選択したらしい。
 1989年には「ジオプレート構想」なども発表し、バブル当時は地下土木のパイオニアという印象もあったが、まさか十数年後に自社の経営状態が「地下」に潜るとは予想だにしなかったであろう。
 とはいえ91年は、すでに景気後退期に突入していた。そのさなかに発表されたのが「ジオプレイン構想」だと考えると、不安な兆しは見えていたのかもしれない。
 湾岸地域の開発を進めるウォータフロントの次に、大きな建設ラッシュをもたらすのがジオフロントだとの予測から、地中工事の技術をアピールするゼネコンは、フジタのほかにもあった。
 円筒状の掘削機を地中に入れて前方に掘り進むシールド工法で高い評価を得ていた熊谷組である。山手線や環七道路の地下化などの事業が大まじめに論じられたのが懐かしい。ただし熊谷組も2003年10月に会社分割を行い、フジタと同じく会社が「地下」に潜ってしまった。これらの企業が「トンネル」に強いのかと思うと、不思議な納得の仕方をしてしまう。
 いや、いかん。ゼネコンの行く末まで書いたら、すっかり気分が暗くなった。やはり私自身、不景気が身にしているからだろうか……。
「社会還元しろ」の声に従い過ぎた?
 せっかくフジタの話題が出たので、ぜひバブル期に行ったフジタの社会貢献についても書いておきたい。
 皆さんは「フジタヴァンテ」を知っているだろうか?
 ヴァンテはフランスで風を意味するらしく、訳せば「フジタ風」ということになるだろう。この施設は、フジタ本社ビルに造られた遊園地である。コンセプトは、「頭で遊ぶ、体で遊ぶ」だったらしい。「そりゃ、遊びすぎでしょう、フジタさん」とついつい思ってしまうが、それはさておき、フジタヴァンテそのものは素晴らしい施設だった。
 バブル期には大手企業がこぞって体験型のショールームを造ったが、フジタヴァンテだけは、ショールームの概念を完全に超えていた。15個ある遊具は、自社商品と関わりがわからない。(おそらくないだろう)
 その中で最もみんなを夢中にさせたのが、4分間の宇宙体験をシミュレートできる「コンセプター」だった。画面に合わせて動くシミュレートは、迫力十分。これがフジタと何の関わりがあるんだーといった思いも、乗り込めば一気に吹っ飛んでしまう。この施設の利用が、すべて無料だというから太っ腹じゃないか!
 フジタヴァンテについて雑誌の取材を受けたフジタの広報担当は、「企業利益の社会還元です。一時期よくいわれた“企業は儲けすぎる。もっと社会に利益を還元せよ”という言葉に従ったわけです」(『DIME』91年9月19日)と語っている。
 この後、銀行がフジタの債権を放棄し、そうした銀行の不良債権処理に血税が使われているのかと思うと実に腹立だしい発言だが、社会に利益を還元しようという態度はそのものは素晴らしい。最高利益をあげても、賃下げしようという企業もある今の世だし……。
 ちなみに雨後のたけのこのように造られたショールームは、フジタヴァンテを別にして残っているケースが多い。池袋にあるトヨタのアムラックス東京、松下電工のナイスプラザ新宿やNAISショウルーム汐留などなど。バブル期の遊び場というイメージからは遠のいたが、商品展示施設としては充実している。企業で進む激しいリストラの陰で「バブルの生き残り」がいるというのが、社員には気に入らないかもしれないけれど。
 振り返れば、とんでもない企画のオンパレードである。あらぬ妄想で突っ走ったとしか思えない。しかし、だからこそ熱気があった。短足を強調するあのダブルのソフトスーツだけは2度と着たくないが、バブルの勢いだけは少し分けてもらたい。
 みなさんも、そう思いませんか?  (■つづく)

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