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靖国を歩く/第37回 緊急現地ルポ緊迫!? 小泉参拝後の香港(奥津裕美)

■月刊「記録」05年12月号掲載記事

        *        *         *

 10月17日小泉首相が靖国に参拝した。8月15日に「いつでも来い!小泉」と鼻息荒く待っていた私の思いは届かず(届くわけないか)、彼は行ってしまった。
 しかも、そのニュースを知ったのは日本時間午後2時(香港では午後1時)くらい、NHKワールドプレミアムのニュースでだ。
 しかもそのニュースでは、香港の日本総領事館に向かって靖国参拝に関する抗議も行われたとも伝えていた。なんで領事館に向かってなのだろう、と不思議に思ったが、どうやら香港総領事館があるのは中環(セントラル)の交易廣場の46階らしい。
 そこには領事館以外の施設もあるので、靖国に抗議するのもいいが、同じ民族にも迷惑をかけているのは本末転倒ではないのか。
 靖国という単語が出ると必ずついて回るのが、中国や韓国から言われる「国民感情が傷ついた」である。傷つくのかもしれないが、それらを理由に会談などをドタキャンするのもどうかと思う。
 靖国は戦没者を祀っていて、慰霊・顕彰しているので戦争の象徴と見なされても仕方がないし、参拝されることで本当に感情が傷つけられている人もいるだろう。そこに弁明の余地はない。
 しかし、いつまでも靖国に参拝したから許せないといったり、抗議されるから行くのを止めたほうがいいという論議はなんの進歩にも解決にも繋がらないと思うのは私だけだろうか。
 それはさておき、本題であるこの約1ヶ月の香港の様子はというと、結論からいえば何もなかったの一言だ。
 靖国参拝の抗議には必ず、「国民感情を傷つけられた」という一文が入るが、傷つけられているとは到底思えない日々。
 ビックリするくらい何もない。中国といえば、4月17日に起こった大規模な反日デモを思い出すが、香港でも行われてはいた。香港から近いシンセンでは、日系スーパーのジャスコが襲撃されたり、上海では日本料理屋が攻撃されていたのは記憶に新しい。
 とはいえ、4月当時でもそういった激しい反日デモを直接見たわけではなく、テレビを通じて目にしただけ。私が実際に目にしたのは、いつもと変わらない香港での生活の中で、街中を練り歩く平和的なデモ行進だけだ。
 なぜ平和的かというと、近所でデモ行進が行われていたので見に行ったのだが、大人数でただ練り歩いているだけ、という雰囲気だったからだ。
 さらに言うならば、歩いている香港人の中には、日系スーパーの袋を持って歩いているという適当な人も何人かいたし、コース内にあるそごうや三越も襲撃されることはなく、シンセンでは襲撃されていたジャスコも無事で、ついでに満員御礼。買い物カートが一台もなくなる状況だったからだ。
 中国本土では日本人だというだけで襲われたと聞いたので、「お前は日本人か」と絡まれたときは、タイ人だのシンガポーリアンだのと答えておけばいいか、と考えていたが、そんな必要もなかった。
 靖国参拝後の香港の様子に戻そう。
 香港には日本のもの、店などがあふれているので、靖国参拝以降の日本に関連するところをウォッチしてみた。参拝直後の10月22、23日にビクトリアパーク(香港で一番大きい公園)で、「日本の祭」というイベントが開催されていたので行ってみた。
 会場は日本の観光地案内、イベント(エイサーの公演やアイドルグループのミニライブなど)、屋台で構成されていて、入場料に20ドル(約300円くらい)かかったが結構な人出だった。2日間とも行ったが、日本人以外に香港人も多かった。日本の食べ物屋台の行列に香港人も並ぶ。
 さらに会場内にはアニメのコスプレをした人や、白いフリルやレースのついた黒いスカートが特徴のゴスロリと呼ばれる格好をしている香港人などもいて、そういうのも海を越えて愛好者がいるんだな……と感心したりもした。
 祭の和やかな雰囲気が会場内には流れ、反日感情どこへやらという感じだった。
 さて、在住日本人にとって心休まる味と言えばもちろん日本食だが、香港にも回転寿司やラーメン店、居酒屋などなじみのものから、日本式(日式)のレストラン(日本風創作料理という趣)などいろいろある。
 日本人のみならず香港人にも人気のようで、特に回転寿司店の前には毎晩人だかりができている。
 私もよく行くが、週末は入るのに1時間くらいかかったりして人気ぶりが伺える。
 私の普段の食生活が露呈してしまうのでお恥ずかしいが、ほぼ毎日行っている某牛丼チェーン店も、ティーセットの時間帯に行くと、牛丼(並)と飲み物がついて約300円と安いせいかそこも香港人が多い。
 茶餐店というファミレスと喫茶店をミックスしたような店には「出前一丁」という即席麺がメニューに並んでいたりと、香港人の食生活の中に日本の食が入り込んでいることがうかがえる。食での日中友好はうまくいってるようだ。
 その他に、街中には雑誌や新聞を売っているスタンドがいくつもある。よく見ると新聞、雑誌、風水、アダルト雑誌に紛れて日本の女性向けファッション雑誌の日本語版や中国語版が置かれていたり、日本の人気漫画(『NANA』『電車男』など)の中国語版が売られていたりする。
 日本語の雑誌なんて読めるのか? と思うが、写真をみて楽しんだり真似したりするらしい。さらに、香港にも漫画喫茶があり、そこには中国語で書かれた漫画が多数置かれていたり、アイドルグッズやフィギュア、食玩(ミニチュア付きのお菓子)、キャラクターグッズなどを売っているビルがあったり、地元人が多い市場では、日本のアニメキャラクターのおもちゃなども売られている。
 映画は、邦画がコンスタントに公開されていて、今は女性の間で大人気の『NANA』が公開されている。
 ちょっと前は、純愛ブーム?を巻き起こした『いま、会いにいきます』『世界の中心で愛をさけぶ』『電車男』(「キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!」とか画面に出るかわからないけど、香港人は意味わかるのか?などと考えてしまった……)なども公開されていた。
 日本の漫画『イニシャルD』など合作映画が作られたりと、エンターテインメントでの日中友好関係もうまくいっているようだ。
 経済や娯楽、一般生活の中では、なんら影響があるとはとうてい考えられない状況だ。
 上海や北京に暮らす日本人の間では、反日感情が高まった時、なるべく日本語をしゃべらない、企業の看板に布をかけるなどの防衛策をとっていたが、香港ではほとんど必要がないという感じだった。
 日系の塾に勤める友人からは、「バスに貼ってある紙の日本人という文字を隠す処置はした」ということを聞いたが、「特に敏感に反応する必要はなかった」とも言っていた。
 香港でよく見かけるのは、反日よりも中国の反共(反共産党)の文字を見かけることのが多い。さらに香港はデモが多いようで、12月も2回行われるらしい。どちらも日本には関係ないデモであるが。
 反日デモ以降、日本に住んでいる人から、「香港は大丈夫なのか」ということを言われることが増えた。
 デモが行われた時の日本のニュースには、連日日本料理屋を襲撃しているところや、領事館へ向かってペットボトルを投げているところばかり流れていた。
 そこだけ毎日流れていれば不安になるのは当然だが、同時にテレビの映像は偏りすぎているのではないかという印象を感じた。
 マスコミは反中国の思想を植え付けたいのだろうか、と思わせる構成が多い。マスコミは良くも悪くも視聴者に対して大きな影響を与える。最近は、その姿勢が顕著に表れているように感じるが、それでは中国の共産党体制と同じである。
 香港ではあるが同じ中国国内にいる私も、ここ以外の様子がよくわからないため、大丈夫なのかと心配になったりもした。私自身がそんなだから、日本にいる人が余計に不安になってしまうのは仕方がない。
 テレビから流れる映像と、実際の様子のギャップを肌で感じた今回の取材だった。
 100%安全・安心というわけではないが、香港だけに限って言えば、形だけの反日感情というように感じられた。活動家などは本気なのかもしれないが、一般市民に関していえば果たして本気なのだろうか、と疑問に思ったからだ。
 デモはお祭り。デモという名のパレード(日本でもたまにやっているが)といったところ。
 これは私の主観なので、本音はどうかは分からないが、仮に反日感情を本当に持っているのであれば、反日デモ以前、以後に限らず、寿司屋の前に人だかりはできないだろうし、日系スーパーやデパートへ来る客も少ないはずだ。
 しかし、現実は、今日も寿司屋の前に人だかりができ、日系デパートやスーパーへ足を運んでいるのだ。 (■つづく)

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