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靖国を歩く/第35回 つのだ☆ひろで奉納だー!―みたままつり2005年―(奥津裕美)

■月刊「記録」05年10月号掲載記事

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 もう秋ですが、記録の靖国神社は夏まつりモードでお送りします。
 いつもは1人で「なんで1人なんだよ、クソッ!」などと思いながら取材していたが、今年は新人編集部員とバイトを引き連れみたままつりへ行ってきた。小泉効果で注目を浴びている最近の靖国はイベントがない日でも賑わっているが、特に混むのは、みたままつり(御霊が帰ってくる)、初詣(福引きもある)、8月15日(敗戦記念日――英霊の日?)だ。
 どれも暑さまっただ中か寒さまっただ中のイベントなので、本当は行きたくない。とくにみたままつりは最悪だ。祭はおもしろいし好きだけれど、暑い!  浴衣なんて着てしまうとさらに暑さ倍増。下り坂でさらにアクセルを踏み込むくらいの勢いで暑さが加速する。
 いつもは閑散としている参道に露店が並び、浴衣を着た若い子や、グループ、カップルが歩いている。夏の暑さと人の熱気、露店の鉄板などからわき上がる湯気が合わさってなんともいえない不快感。
 不快指数85(筆者が感じた指数)の参道を人を押しのけ進む。店から漂うおいしそうな匂いの誘惑にも負けず、私が向かったのは能楽堂。

■叩いて歌うつのだ☆ひろを発見

 靖国には様々な施設があるが、とりわけ能楽堂は影が薄い。私ですらその存在を忘れてしまう。能楽堂は、神門を入り遊就館へ向かう途中にある。テレビでしか能を見る機会がないが、当然テレビでよく見る舞台と同じ。
 みたままつり期間中の能楽堂では、朝から晩まで古武道、バレエ、マジック、日本舞踊、戦記漫談、津軽三味線など様々な奉納芸能が行われている。盆踊りや露店だけがまつりの見所ではない!  と訴えているようなスケジュール。しかもタダ。
 かつて私がよく足を運んだ神社の祭では、カラオケ大会が大きな目玉だったが、はっきりいって内輪受けでおもしろくなかった。
 以前、みたままつりは地元のお祭りだと書いたが、やはり社格の高い神社となると、やることもスケールが大きくなるのだろうか。相撲はともかくプロレスの奉納をしている神社なんてほとんどないし、歌手が歌を奉納するのも珍しい。
 ただの地元のお祭りではないという面と、他とはひと味違う神社だということをアピールしているのではないかと今回のテーマである、つのだ☆ひろのライブをみて感じた。
 7月14日夜7時から1時間も、つのだ☆ひろのジャズライブが堪能できるのだ。しかも無料。靖国が太っ腹なのか、つのだ☆ひろが太っ腹なのかよくわからないが、とにかくお得なのはたしか。
 つのだ☆ひろのプロフィールを簡単に書くと、中学時代からドラムを始め高校時代にプロデビュー、その後の活躍は書くまでもない。
 私は『夜もヒッパレ』という日本テレビの歌番組で『メリージェーン』を熱唱(出演者たちがチークダンスを踊っていた)している姿の印象深いが、実はすごい人だったんだね。食べ物の誘惑に負けずに会場へ着くとドラムの音やギターの音。そして英語でシャウトする声。そして会場を覆う人、人、人の山。その人数は、椅子席や立ち見客を合わせたらザッと200人はいただろう。
 若い人や中年客が目立つ。さらに舞台近にでは、ノリまくる30代くらいの女性や男性もいたりと、一瞬ここはどこなんだろうと頭を抱えてしまった。
 会場が能楽堂だというところが靖国だと気づかせてくれるが、それでもやはり靖国で行われているとは思えない雰囲気が会場を包む。
 お目当ての、つのだ☆ひろを探すが見つからない。歌声は聞こえるのだが、本人はいずこ……。
 目をこらして舞台をみると、いた!  ドラムを叩きながら熱唱するつのだ☆ひろが!
 ギターを弾きながら歌う歌手はいるが、ドラムを叩きながら歌うのは、石原裕次郎かカレン・カーペンターか、C-C-B(『Romanticが止まらない』)の人しか知らないが、ギターと違いドラムは叩くところが多い。一番疲れそうなポジションなのに、さらに歌う。頭の中が混乱しないのだろうか。
 そんなことを考えていたら違う曲になっていた。しかしジャズ中心で本当に神社の催しか?と思ってしまった。

■靖国神社の「裏の顔」に驚く

 靖国って一体なんなのだろうか?
 古い体質と威圧的なところもあるが、モダンなアプローチもする神社。
 首相が参拝すると中国から批判がわき起こり外交問題の原因のひとつになったり、戦争で国民の士気をあおることに使われたりと政治的な面ではあまりよくないイメージがある。
 その反面、競馬や相撲の会場になったりと、血なまぐささを感じさせない爽やかさを兼ね備えている。
 神社といえば、鳥居、賽銭箱、手水舎があって、お参りをしてお守りを買い、ついでにおみくじを引いて帰る、というのが一般的ではないだろうか。
 ジャズライブなんてないし、年に1回奉納相撲が行われるところだって滅多にない。こんなイベントが盛りだくさんなのはおもしろい。また祭神が英霊のため、戦争にでもなれば神様が無制限に増えていくことにも不思議さを感じる。一筋縄でいかないのが靖国神社だ。
 さて、ライブはというとジャズナンバーのメドレーを熱唱後、1度舞台を去り、アンコールのため舞台へ戻って来てオリジナル曲の『ありがとう』と童謡『ふるさと』を歌った。
 ジャズの激しいナンバーから一転、ゆったりとした曲調の『ありがとう』と、少しアレンジされた『ふるさと』で、火照った体を一気にクールダウン。
 バラードも聴かせるつのだ☆ひろ。芸の広さと引き出しの多さに感心。さすがはプロだ。
 感想を一緒に行ったアルバイトの女の子(19)に聞いたところ「靖国といえば国際問題で騒がれていて、厳格で近寄りがたく思っていました。しかしみたままつりはスポットライトに盆踊り、つのだ☆ひろが英国調の服でライブするといった場所だったことに驚きました」と言っていた。
 この数年間、靖国に何度も足を運び、書籍を読み、書き始めた頃よりも知識が身に付いてきた。しかし、イベント時に訪れる靖国は、私のいろんなイメージをいい意味で裏切ってくれる。
 イデオロギーとかけ離れたときの靖国は、ものすごく興味深い場所になる。なにか特定の思想や思惑が絡むと、靖国に限らずすべてのものは単調になり、退屈になる。イデオロギーで靖国を論じてしまうと、戦争のアイコンとしての靖国のイメージが底上げされるが、庶民のための靖国というイメージは薄くなる。
 ここ数ヶ月靖国がマスコミに何度も取り上げられたが、ほとんどがA級戦犯や参拝問題のことばかりだった。それは仕方ないのだが、もうすこし庶民のための靖国という面もクローズアップしてもよいのではないかと思う。正と負、光と陰、表と裏があるからこそ、個性も際立ち深みも増すのだ。
 つのだ☆ひろのライブだけでなく、みたままつりに行くだけで、これまで靖国に抱いていたイメージがある人は覆されるかもしれないし、知らなかった人やイメージが特になかった人には新鮮に映るかもしれない。盆踊りとつのだ☆ひろの歌でイデオロギーを学ぶとも思えない。
 たかがまつりではあるが、されどまつりでもある。
 はっちゃけた、そしてさばけた靖国を体感するのもそれはそれでオツなことなのではないだろうか。 (■つづく)

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