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靖国を歩く/第32回 靖国のひろみしゅらん(奥津裕美)

■月刊「記録」05年4月号掲載記事

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■独断と偏見で評価するのだ

 全国の記録『靖国神社』ファンの皆さまご無沙汰しております。久しぶりの靖国です。久しぶりなので、新米編集部員を連れて取材へ行って来ました。
 世間にはレストランに行って批評したり格をつけたりする本やテレビ番組が多く存在する。2003年にはフランスのミシュラン社が出している格付け本が原因で自殺した料理人がいるそうで、たかだか星くらいで死ぬなよ……といいたいところだが、料理人にしてみれば「客足が途絶える=店が潰れる」ってくらいの脅威なのだろうから仕方ないのか。
 といっても食べるのは人間だ。嗜好もさまざまあるわけだから、この人にはおいしくてもあの人にはまずいとなるはず。だから格付けする意味がどれだけあるのかと思うのは私だけだろうか。日本版もあるザガット・サーベイとか、OL(なぜか丸の内あたりが多い)の口コミももてはやされてもいるけれども、同じ理由で信頼できるとは限らない。
 それでも格付けしたくなるのは人間の性なのか、いろいろと格付けやランク付けしたものが、食べ物に関わらずいろいろあるのはたしか。ランキングを売りにした店まである。
 私はランクやら格といった権威傾向のあるものは好まないのでどうでもいいし、ついでに食べ物にも執着ないというか、どちらかというと食べること自体どうでもいい部類に入るので、今回の企画じたい自分のポリシーに反する。にもかかわらずやってしまった食べ物企画。それもうまいのかまずいのかは編集部の独断と偏見のみ!

■居酒屋チェーンが作る海軍カレー

 さて、新米編集部員を連れて行ったのは、遊就館内にある軽食屋と、参道の売店。取材前恒例の参拝を終わらせ、まず行ったのが、遊就館内にある「茶寮 結」。
 茶寮と名づけているだけあってデザート類、飲み物類は豊富だった。
 茶寮なんだから飯もうまいだろうな! と鼻息荒く店内に入ったところ清潔感漂う店内。ホワイト&ウッディーで統一され、ガラス張りの店内には陽の光が入っていて清潔度5割増! 
 冠に「茶寮」とついているが、見たところ博物館のレストランをもっとさわやかにした感じだけの店内。日本の博物館のレストランは暗いし、やってるのかやってないのかわからない感じのところが多いが、さすが遊就館! 喫茶店まできれいだよ。金をかけただけあるなと思いながら、カウンターへ行く。
 ちなみにここは、カウンターで料理を注文してから席に座って料理を待つシステム。そして驚くべきは、すべての商品がテイクアウトOKというありがたいのかありがたくないのかわからないサービスがある点だ(゜⊿゜)。
 せっかく靖国なんだからレトルトでもおなじみ海軍カレー(680円)を注文したいところだが、私は子どもが大好きなメニュートップ10に必ず食い込むラーメンとカレーが苦手なので連れにカレーを食べさせ、自分は稲庭うどん(500円)を頼み、飲み物は麦茶(250円)。それと前から気になっていた古代米のちまき(250円)と意味のわからない名前の横須賀ドッグ(300円)を持ち帰りにしてもらった。
 カレーは、昔風と現代風の2種類。昔風よりせっかくカレーなんだから海軍風とインド風くらいにしてくれないとインパクトに欠ける。現代風のカレーはカレーショップに行けばいくらでも、現代風どころか変わり種まで食べられる。
 日本海軍は日本海海戦快勝以外にも、実は料理でも有名なのだ。何せテーブルマナーまでもが海軍軍人としてのたしなみとして行われていたくらいなのだから。
 さて、そのカレーだが、レトルト温めただけだろう……と思ってしまうほどのしょぼさ。具は、人参、じゃがいも、玉ねぎ、牛肉、付け合わせにしば漬け。
 食べた本人談は、「見た目は学校の給食並みですね。味は、カレーというよりシチューっぽい」。
 それではカレーじゃないじゃん! という突っ込みをしつつ、カレーを売るのならば、遊就館の中にある食事処であることを考え合わせても、料理にもっと気合いを入れていただきたい。それくらいしないと海軍の英霊も、そして一緒に軍艦に乗っていた牛の霊も浮かばれない……と思っていたところ、カレーに説明書きの紙がついていた。
「海軍カレーについて 当店の海軍カレーは、明治四一年九月に発刊された海軍割烹術参考書のレセピーに基づいて、その時代の味を忠実に再現しております。思い出の味を、または心の歴史の旅をどうぞお楽しみくださいませ」と書いてある。
 なるほど、この説明書きと目の前のカレーを合わせて考えてみると、当時のカレーは今でいうスープカレー、ルーの量より水の量のが多いカレーだったということだろうかと、自分を無理やり納得させる。
 この店をプロデュースしているのは、居酒屋チェーンでおなじみの大庄グループというところである。うーむ、居酒屋グループがやっているのだから、メニューやレシピに基づいてカレーを作ったとしても居酒屋臭さが残ってしまうのは仕方ないと考えるべきか、靖国という場所柄にも関わらず、居酒屋グループに店を任せてレトルトを温めただけのようなカレーの提供を許可すること自体いかがなものなのか、と考えたほうがいいのか頭を悩ませつつ、外の売店へと向かった。
 なお稲庭うどんと麦茶は可も不可もないので割愛。

■店員の殺し文句で採点は激アマ

 参道の売店では、おでん(550円)、甘酒(250円)、ソフトクリーム(200円)を購入。
 おでんの具は、卵、こんにゃく、こんぶ、大根、ちくわ、ゴボウ巻きである。おでんを食した編集部員のコメントは、「おでんおいしい。大根、昆布、卵が特においしい」だった。
 ここのおでんは以前も食べたことがあるが、とにかくうまいのは確かだ。新橋のガード下でオヤジが熱かん片手に食べていてもおかしくないほど(この表現だとうまいのかどうかわからないが)のいかにも屋台然とした正統派のおでんの味とクオリティーである。 
 なぜここまで手放しにほめちぎるかというと、おいしいのは確かだが、「お姉ちゃんかわいいからおまけね」と言われたからである。かわいいの一言でここまでほめちぎるか! と料理評論をしている人から何か言われそうだが、いい食材を使って、最高の料理人が調理すれば美味しいのは当然。しかし、おでんはあり合わせのものを突っ込んで出汁で煮込んでしまえばできあがりのチープな、昔からある日本特有のジャンクフードでもある。
 だが、このおでんも出汁がまずければ、ただのまずい野菜のごったに煮になってしまうという諸刃の刃をもった食べ物でもあるのだ。食べ物は安いからまずいわけでも、高いからうまいというわけではない。食べ物のおいしさは、料理人の情熱、パッションが重要なのだ! と、ただ「かわいい」と言われただけなのにすごい熱弁をしてしまった。これでは、普段かわいいと言われていないと誤解されてしまう。それは困る。
 熱くなった私を冷やすのはソフトクリームしかないと、寒空の下の中、甘酒を片手に食べる。何ともおかしな食べ合わせだが、お構いなしに食べる。ソフトクリームというと、濃厚さを売りにしたものが多いが、靖国のソフトは意外にもあっさり淡泊。子どものころスーパーの売店で食べたことがあるような薄味が大好きな私は気に入った。
 売店の店員は全員おじさんだったが、ソフトを絞るオジサンは、いかにも慣れた手つきで器用に巻いていく。毎日やっていれば上手になる。何事も継続が大切なのだ。継続は力なりということで、この連載も続けていけばやがて本になるだろう……頑張っていこう! という力を売店のオヤジからもらった(だからどうした)。

■英霊もビックリの横須賀ドック

 もらったのはいいが、いい加減外は寒いということで編集部に帰り、テイクアウトした古代米のちまきと横須賀ドックを食べる。
 古代米のちまきだが、古代米って黒いのね。そして、もち米のようにモチモチしてるのね。知らなかった。白米よりもち米が好きな私は、この口触りが気に入ったが、編集部内で論議になったのが、味である。
 古参編集部員のコメント「独特な味付けは古代米だね。でもこれニンニクか何かはいってない?」
 デザイナーのコメント「古代米と豚肉のミスマッチが意外といける」。
 豚肉も入っていたせいもあるが、豚臭い。中華風といえばそこまでで、ちまき自体も中国が発祥の地(飲茶のメニューにもあります)なので納得はいくが、それにしても豚臭いし、脂っぽい。もう少しあっさりしていれば、また食べようと思うのだが。編集部内では意外と好評だった。
 さて、名称が意味不明な横須賀ドッグだが、正体はただのアメリカンドックだった。
 あまりにも普通すぎてコメントは特にないが、ソーセージが安っぽくないところはいい。ペッパーがきいていて、なかなか。
 だが、ここで問題が浮上。靖国で、アメリカンドックを売るのはどうなんだ?
 アメリカンドックじゃまずいから横須賀にしたのか? でも、横須賀とついても見た目はアメリカンドックだぞ。今は仲が良くても、昔は鬼畜米英といって敵対していた国の名称を使った食べ物を売るというのは、本末転倒というか、あまりにも適当すぎやしないか。
 英霊はどう思っているんだ。と思わず吠えてしまったが、戦後60年たち、戦争体験の語り部たちも減っていき、というか21世紀に入ってあまりたっていないというのに、世界各地で戦争が起き続けているという、「歴史は繰り返す」という言葉通りの世界情勢だが、結局は何事も新世紀になればすべてはご破算になり、ゼロからの再構築をはじめても問題は何もないということなのだろうか。
 歴史から何も学ばず繰り返される歴史。当時の日本と違うのは、鬼畜から友好、憧れの国アメリカとなっただけで、本質的な日本の体質はなにも変わっていないのだということを、この横須賀ドッグが証明したといってもおかしくはなし、敵国として対し、散っていった靖国に眠る英霊の誇りを一気に台無しにしてもいる。
 まぁ、そうはいっても筆者はアメリカンドックが好きなんですがね。あの甘い衣としょっぱいソーセージのハーモニーがたまらなく私の胃を刺激する。
 珍しく刺激されたせいか、その夜は原因不明の消化不良を起こし、深夜に吐いてしまいましたとさ(/o\)  (■つづく)

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