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靖国を歩く/第24回 靖国「青空骨董市」紀行(奥津裕美)

■月刊「記録」04年02月号掲載記事

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 靖国では、毎月第二、三日曜日に「青空骨董市」という催しが行われている。骨董市というと、なぜかフリーマーケットやバザーを思い出してしまう。骨董という単語を国語辞典(三省堂)で調べてみると、『1.雑種雑多の(高価な)古道具や古美術品。2.古いだけで、値打ちのないもの』という意味なんだそうだ。
 フリーマーケットやバザーには、古道具や古美術品が並んでいるかもしれないが一般に売価は高くない。たしかに使ったものだから多少古いし、デザインも古いものが多いが、どちらかというといらなくなった服や食器、結婚式の引き出物のように使うあてのないものを売っているからだ。古くても値打ちがない=高価ではないので辞書の前者の意味での「骨董」には当てはまらない。
 とはいえ、「高価」かどうかは主観で決まるので買う側にとっては相当な価値がある可能性もある。売価が明らかに安くても実は掘り出し物という場合は言葉のイメージ通りの「骨董」といえ、非常に複雑な言葉といえよう。

■紫水晶が100万円!?

 先日、その「青空骨董市」に行ってみた。午後3時ころについたのだが、出店数は約20店舗ほどで、主に壺や掛け軸(桐箱つき)、置物といった古美術を売っているところが多かった。ある店舗では、金髪の若いお兄ちゃん2人が店を構えていた。
 置物といっても、素人目でも価値がありそうだと思われるものから、さすがにこれはうちにもあるよ、といった観光地の土産、例えば鮭をくわえた木彫りの熊やタヌキのようなものまで売られている。意外と多かったのが、皿などの食器類とボタン。シャネルのボタンが売っていたのだが、どうみてもスーツに付いていたものを外しただけにみえて、さらに価格がすごく高かった。このような驚きをリアルに感じられるのも、骨董市の面白さということにしておこう。
 食器類はかなり充実している。100円ショップで買えそうなものから、高級そうな食器や洋食器、漆器もあった。おそらく銀製と思われるナイフやフォークなどもあり、しかもだいたいの品が500円くらいとお手ごろ価格。古美術よりも買いやすく、本物だ偽物だという不安もない。私みたいに骨董市初心者には手をつけやすい分野であろう。
 他にも西洋アンティークと呼ばれている海外ものの骨董や着物、端切れなども売っていた。靖国の「青空骨董市」に限らず、骨董市には必ず端切れを売る店が存在する。たまにかわいい柄のものがあるのだが、購入には至らない。
 変わり種として、ビデオが売られていた。それもゆうに50本は超えている。すごい品揃えである。
 なぜかはわからないが、このようなところで売られているビデオというと、アダルトものを目にするのだが(下世話ですみません)、この店では洋画・邦画を問わず映画ばかりが売られていた。健全だ。
 その隣では、天然石がたくさん売られていて、足を止めて買おうかどうか悩んでいる客に「じゃーもう、1万円にしとくよ!」という声をかけていた。店先にはとても大きな紫水晶の原石(研磨される前の鍾乳洞みたいな状態のもの)が売られていた。ちなみに値段は100万円。紫水晶は恋愛に効くらしいので、これを部屋に飾っておけば運勢アップ間違いなしといった感じである。
 これにはこの値段だけの価値があるのだろうか?という疑問が、降って湧いてくるような品がたくさんあるのも骨董市の醍醐味なのだろう。
 靖国の骨董市は1998年から開催されているそうだ。参道脇で所狭しと出店している店には、冬だからなのか客が少なかった。開催時間も日の出から日没までととてもアバウトである。別の取材で午後4時頃に訪れた時は、ほとんどの店の片づけが終わっていた。ちょうど日が暮れそうな時間でもあったから、今の時期はだいたいその時間には終わるのだろう。
 店の構え方はおおかた2種類で、ビニールシートに雑多に並べているところと、きちんとテーブルの上に商品を置いているところがほとんどである。
 テーブルに置いてディスプレイされていると、きちんとした感じにみえるし、わざわざ座って見るという行為をしなくてもいいという点でよい。テーブルを使っている店のディスプレイは、手前から小物→大物と順々に並べてあって見やすくしている。ただ一つ気がかりなのは、テーブルの店だと商品が近すぎて、一度手に取ると待ってましたとばかりに店員が寄ってくるのでは…という恐怖感が湧いてくる。臆病者の私には怖い店構えでもある。
 逆にビニールシートは立ったまま上から見ることができるので、結構適当に並んでいたりする。とはいえ、手前から小物→大物というのは同じである。デメリットは風に飛ばされるところだ。中には四方に壷などを置き、飛ばされないようにと工夫している店もあった。並べ方一つで店主の個性がにじみ出るのもシート型店舗の特徴だろう。
 屋外での楽しみというのは、外ならではのディスプレイの仕方にあるのではないだろうか。天気に左右されない屋内でゆっくり見て回るのもいいが、外という点を生かした面白さを発見できるのも青空市ならではのものなのだろう。

■日本全国「骨董市の歩き方」

 さて、骨董市は日本全国のいたるところで行われているのだが、インターネットで関東だけを検索してみると出てくる出てくる。開催時間を見るとやはり朝は6時、7時くらいから夕方は15時から16時くらいまで、それこそ日の出から日没までというのが多い。フリーマーケットというより、ほとんど市場のようである。
 つい最近、東京有明のビッグサイトという展示場で「骨董ジャンボリー」という大規模な骨董市が行われたのだが、入場料が必要らしく、しかもちょっと高い。いつも見ているワイドショーに、お買い物クイーンを探す企画があるのだが、たまたまこの会場がその日の取材地となっていた。どうやらある芸能人も出店していたらしい。すごいね。買い物に行くのに入場料を払うのは納得がいかないが、雨天中止ということもなく、屋外独特の気候による問題などもないのだから仕方ないのだろうか。
 都内で靖国以外の神社で行われている骨董市は、新宿区にある花園神社、練馬区にある氷川神社、豊島区にある鬼子母神など他にもあるが、いろいろなところで行われている。どこも参道が長かったり、敷地が広いからできるのだろう。他はショッピングモールやビル、イベントホールなどである。規模に関わらず、スペースさえあれば骨董市は行われているのだ。
 市で売られているものに限らず、売られている大多数の骨董はどこから流れてくるのか。セリ市場のようなものがあるはずである。
 調べてみると業者専用の市(業者市)があった。日本全国津々浦々、いたるところで行われている。東京都内に限定すると、4ヶ所で行われている。関東のみでみると、埼玉県が多くて7ヶ所、次が群馬、栃木である。
 『骨董ファン』(集出版)という雑誌があるのだが、トピックをみると盗品についての記事があった。「この顔を見たら110番」みたいなものである。買ったら盗品だった、ということもあるはずだから、店主から客の手に渡る前にきちんと調べてほしいものである。高い値段で買って、偽物でした!なんてのは冗談ではすまない。骨董を売るのも大変である。
 改めて「青空骨董市」に話を戻そう。気に入ったものがあってもなかなか食指を動かさない私だが、今回珍しく気になるものがあった。カラフルなミニキューピー人形である。肌色が当たり前のなかで赤、茶など5色5種類がそろっていたからだ。
 最初に引いた辞書の意味では「古くて価値がない」という点では確かにキューピー人形は当てはまる。この骨董市がフリーマーケットのように感じてしまうのは、骨董というよりがらくたに近いものが古美術品などに紛れて売られているからなのだろう。だがカラフルキューピーは値は安くても欲しい人には堪らない品であるかもしれない。文字通り高価な骨董品、どうしたってがらくたというなかに、このような商品としてどう定義していいかわからない品や、前述のような掘り出し物が混じっている可能性がある幅広くて謎めいたマーケットだから人は足を運んでしまうのだろう。そんな客の気持ちが分かるような気がして、私もまた骨董市へと誘われるのである。  (■つづく)

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