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内部告発・豊島区は税金泥棒/第19回

■月刊「記録」99年5月号掲載記事

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 平成九年四月から出勤することになった新しい職場は、総合体育場といい、区の外郭団体である「コミュニティ振興公社」に統合されている一部署であり、体育施設の維持管理が主な業務である。先月紹介した通り、「コミュニティ振興公社」の上層部には私の仇敵ともいえる人々が勢揃いしていた。そんな職場が働きやすいはずはない。小さないじめが、日常の業務のところどころに顔を出した。

■レッテルを貼って送り出す

 私だけに業務連絡が届かない。担当の仕事を任されることもなく、脈絡のない仕事ばかりをさせられる。チクリチクリと針で刺されるかのように、私の神経を逆なでする出来事が続いた。
 なかでもショックだったのは、「どーうしようもない職員が来る」という噂が、配属前から職場中に広められていたことだった。噂の出所はまもなくわかった。それは所長であった。配属後のある時、私は当時の所長に「なぜ私には、行き当たりばったりの仕事を与えるのか、なぜ、まとまった仕事を与えようとはしないのか」と質問したことがある。すると所長は即座に「貴方は余分な職員だからだ」と正面から答えた。私はどちらかといえば鈍感な性格である。しかし、そこまで正面から言われたのでは「はぁ、そうですか」と終わりにするわけにはいかなかった。
 カチンときたので「なぜ、私は余分な職員なのか説明してほしい」と突っ込んだ。以下所長の返答である。
  「貴方の当体育場への異動は、こちらで望んで来てもらったわけではない。職員課の人事担当から『五十嵐という、箸にも棒にもかからない、どうしようもない職員がいる。彼を異動させたいのだが、どの部署でも願い下げだと言って彼を受け入れるところがない。何とか面倒を見てやってくれないか』ということだからやむを得ず受け入れたまでだ」ということであった。
 私は、これを聞いて、またまた望月治夫職員課長の辣腕に感服せざるを得なかった。停職中に私の戻るべき専従宿直業務を廃止に追い込み、復職後は、有無をいわさず自転車対策係に異動させ、二ヵ月にもならないうちに、さらに職務命令をもって一方的に外郭団体に派遣する。派遣先には、「どうしようもない職員」というレッテルを貼って送り出す。
 総合体育場は外郭団体であるから、出先機関の出先にあたる。当然、私と役所間の長い確執など知るよしもない職場である。役所の眼には、おそらく総合体育場が、私を厄介者として押し込めておくには、最適の場所として映ったのだろう。まさに職員課長は(それが誰に対してかは言わないが)、忠犬ハチ公そこのけの忠臣ぶりを発揮したわけである。 
 こうして、私はただの厄介者として、新しい職場で働き続けることになった。

■第二月曜日に出頭命令

  「どうしようもない職員」とのレッテルが貼られているのであれば、なおさら私は、細心の注意を払って働かなければならないはずであった。しかし異動してきてすぐ、私は同僚にひどい迷惑をかけてしまったのだ。
 毎月、職場が猛烈な忙しさに見舞われる日がある。それは第二月曜日だ。この日は、野球場・テニスコート利用日の抽選日となっている。この日に、私は二回続けて休むことになってしまった。同僚から「この日だけは休まないでくれ」と言われていた日であった。
 実は役所側の弁護士が、その第二月曜日を裁判日に指定してきたのである。弁護士を頼まず、本人訴訟で行っていたため、裁判には私が出席しないわけにはいかなかった。それでも、続けて二度までは愛嬌で我慢もしよう。しかし三度続いた時には、さすがに腹が立った。
 三回目に指定された時、私はさすがに頭にきて、第二月曜日だけは指定しないようにと裁判長に願い出た。そのかいあってか、以降、第二月曜日は指定されてはいない。しかし裁判を抱えていることなど知らなかった同僚達は、私の二回の有給休暇に、かなり怒っていたという。
 ほぼ月一回のペースで、裁判は開かれている。その一日を、三回連続で第二月曜日に指定してきたのだから呆れてしまう。事情をよく知る役所側が狙ってやったことだろう。私の職場での立場が悪くなればなるほど、役所側にとっては好都合なのだ。セコイといえばセコすぎる嫌がらせだが、こうした小さな積み重ねが職場の人間関係には大きく影響してくる。そしてこの二年間も、私には細かい攻撃が繰り返され続けた。

■カラ領収書のオンパレード

 しかし遂に、私と役所との形勢が逆転する日がやってきた。役所にとっては残念なことに違いないが、先日、裁判は、ついに私に身方した。
 私の提訴から逃れるために、九七八万八五二七円もの食糧費支出を、加藤一敏区長が豊島区に返還したのだ。 今から二年ほど前に起こしたこの裁判は、情報公開制度を利用して、豊島区職員が支払った食糧費の明細を引き出すことから始まった。予想された通りだったというべきか、公開された領収書は偽造のオンパレードだった。
 まず領主書に記されている通し番号が日付通りに並ばない。店からカラの領主書をもらい、適当に日にちを記入したものだから、通し番号まで合わせることができなかったのだ。
 また、店が作ったはずの領収書に、なぜか豊島区の公文書で使用されるゴム印が使われたりもする。領収書を作った区の職員が、何の気なしに押したのだろう。このゴム印など、領主書を偽造している決定的な証拠だと思うのだが、役所側は例によって認めようともしない。区役所で使っているゴム印を、店の店員がどこから手に入れ押したというのだろう。偶然で済まされるはずはないのである。
 さらによく利用する店の場合には、区役所は口座振替で代金を支払うのが通常であるのに、怪しい領収書に示された金額は必ず現金払いにされている。なぜ口座振替にならなかったのかは説明するまでもないだろう。金融機関に証拠を残すことなく、お金を動かしたかったからだ。
 もっと決定的な証拠もある。
 平成九年五月七日、フジテレビの報道番組で豊島区の食糧費疑惑が報じられた際、領収書を切ったはずの店の主人が、「白紙領収書に役所の職員が記入したものだ。うちの店はこんなに高くない」と発言しているのである。
 これだけ証拠が出そろっていても、区役所側は「支出は適切」などと裁判で主張し続けていたのだから救いはない。だが、ここでカラ領収書の存在を認めれば、私が指摘し続けてきたカラ超勤も説得力を持ってくる。役所には、それが怖かったのだ。
 最初、私はこの裁判に勝てるかどうか不安だった。
 いくら証拠がそろってはいても、裁判所が認めてくれなければ勝つことはできない。それまでの裁判経験から公的機関を追い込むのがどれほど難しいかわかっていただけに、私が入手した証拠がどれほど意味を持つものなのか、今ひとつ自信が持ずにいたのだ。
 しかもこの裁判は、弁護士を雇わない本人訴訟である。
 いくらこれまで裁判を何度か経験しているとはいえ、弁護士が行っていた仕事を自分で行うのは並大抵のことではなかった。まず裁判に必要な手続きの詳細がよくわからない。さらにどのように裁判を方向づけていけばいいのか、審理の進め方がわからない。そんなところでマゴマゴしている私をうまく導いてくれたのは、いつでも裁判官だった。役所と私の争点をしっかり見据えて、公平に裁判指揮をしてくれたのだ。

■様相を変えつつある私の闘い

 裁判所からは、まず領主書を発行した飲食店に送付嘱託命令が出される。つまり店側に、本来保管してあるべき領主書の原本を提出するように、裁判所からお願いをするのだ。この命令には強制力がないため、「どこにあるのかわからない」などという理由で、店側は証拠の提出を拒んできた。しかし、この時の店側のショックは、想像以上に大きかったはずだ。
 カラの領収書をくれとお得意さんに言われ、何の気なしに領収書を渡したがために、ある日、裁判所から命令書が届くのだ。もとよりカラの領主書なのだから、原本を店が保管しているはずもない。きっと区の担当職員には、店から苦情が入ったことだろう。
 そして次に、強制力を持つ命令書、証拠提出命令が裁判所より発行された。原本などもとから持っていない店側と、証拠などないとは言わせられない役所側は、さぞやあわてたことだろう。さらに四月から、区長が変わることも決定し、自分の悪事を新区長に引き継ぐわけにもいかないお役所事情にも迫られたことだろう。
 こうしたにっちもさっちもいかない状況を前に、加藤氏が選択したのが、請求された食糧費の全額返還だった。返還すれば、私には訴えの利益がなくなり裁判が終わる。そうすれば店への提出命令も撤回される。そう思ったのだろう。
  「相手側の主張を認めたのではないが、区長を退くにあたって跡を濁したままにしたくない」(『東京新聞』三月二三日付)。これが全額を返還した加藤氏のコメントだ。人を喰った言い分には、ほとほと恐れ入る。
 だが彼の予測は外れた。裁判は結審とならなかった。なぜ全額を返還したのか、その理由をハッキリしろと、裁判所は役所側に言い渡したのである。
 私の言い分を認めていないのに、言われた通り金は払う。この矛盾した言いぐさを、どうやって論理的に説明するのかは、今後の注目点になるだろう。
 食糧費返還のニュースは、朝日・読売・東京各紙の社会面で報じられた。それなりの大きさで扱われ、私自身が驚いたほどだ。ただただ孤独だった私と役所の闘いも、少しずつ様相を変えつつある。少なくとも、武器もなく、展望もないゲリラ戦からは脱却しつつある。
 この食糧費の裁判の行方は、私の停職処分に対する裁判にも少なからず影響を与えるだろう。二七年間にも及ぶ役所との闘いは、何らかの幕引きに向けて動き出している。 (■つづく)

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