« 阪神大震災現地ルポ 第11回/部落差別問題は避けられない | トップページ | 内部告発・豊島区は税金泥棒/第18回 異動に次ぐ異動 »

内部告発・豊島区は税金泥棒・第17回 逆襲

■月刊「記録」99年3月号掲載記事

        *         *          *

■54万円の請求書

 役所の攻撃は、一通の手紙から始まった。差出人は望月治男職員課長。先月も触れた通り、上層部の指示に忠実に従い私を追いつめるために、あらゆる努力をした人物である。彼の名前が書かれた封筒が、ろくな話を運んでくるわけがない。案の定、中から現れたのは月々の天引き分として、9万円を毎月支払えという、合計額54万円もの請求書だった。
 決まった月給をもらい続けていると気にしないものだが、共済掛金が2種類、福利関係が6種類、会費が2種類の計10点が給料から天引きされている。
 この天引きに役所は目をつけたのである。
 停職処分によって給料が支払われていなければ、当然、天引き分もなくなり、直接私に請求することができるからである。
 手紙が届いたのは、停職処分が始まって14日後の8月22日である。貯金を切り崩す不安な生活に、なんとか算段を付けた頃を見計らっての攻撃。こうなると怒るというより呆れてしまう。もちろん私には、54万円もの現金を一括して払うことはきわめて難しいうえに、9万円を毎月支払う余裕もなかった。困ったときの頼みの綱と考えていた共済組合は、停職中の職員は借用資格者の規定から除外されている。
 しかし9万円を払わなければ、今までの天引き分の効果は中断してしまう。そのなかで気になったのは1年掛け捨ての両用給付保険、団体傷害保険、グループ保険である。これらは事故・病気・障害にあって入院あるいは通院した場合に、一定額の支払保証を受けられるシステムである。もし事故に遭ったら、病気になったらどうしようとも考えたが、ないものは仕方がない。なにか起きたらその時はその時だと腹を括った。幸い停職期間中に病気はしなかったものの、一歩間違えればかなり悲惨な状況になっていただろう。
 前述の保険などは、支払わなければ私に不利益が降りかかって終わりだが、なかには請求を無視するだけでは済まないものもある。税金だ。住民税などは、前年度の収入によって支払う料金が決まる。もちろん現在の収入が減っても、支払は変わらない代物だ。

■差し押さえ予告は赤文字で

 望月職員課長から追い打ちをかけるように、住民税の支払い要請書が送りつけられたのは8月23日だった。つまり前述の一通目の手紙を受け取った翌日である。どうせ出すならまとめて発信すればよいのに、あえて発信日を1日ずらして送付してくるというやり方、気のつき方にはホトホト感心した。このような考え方のできる職員こそが職員課長に最適な人物と、加藤区長は判断しているのかもしれないなと、ふと思ったりもした。
 以下参考としてその全文を掲載しよう。
「平成8年度分住民税の納付について
 無給期間中は特別徴収(毎月の給料から差し引いて納める方法)ができません。このため平成8年9月分からは普通徴収となり、ご本人が直接納めていただくことになりますのでご了承下さい。なお納税方法については、普通徴収として改めて住所地の税務課より通知書が送付されますのでよろしくおねがいします」
 カラ出張カラ転勤の存在は全職員が知っている。当然職員課長も知っているはずだ。同課長も一職員であった時には受領しているはずである。ところが彼は、カラは過去にも現在にも存在していないと組合交渉の席上で断言し、私の処分に同意し、涼しい態度で停職中の私にこのような文書を送りつけてくる。私としては彼を見事な処世術の達人として讃えるしか言葉がない。
 その後も、総務部税務課から停職中に白色の普通の納付請求書(11万3000円)が二度送られてきた。一回目は普通の請求書、二回目は督促状。そして復職後に三回目と四回目の請求を受けている。
 最後となる四回目の請求は、10年12月7日だった。黄色の用紙に赤文字で、差押事前通告書と書かれていた。金額は22万5000円、延滞金が6万4400円、催告期限は12月17日。警告文が赤文字で「もし期限までに納付がない場合は、法の定めにより財産の差押処分をすることになりますので、差押の実施に先立ち予告いたします」とある。
 11年2月現在、私は上記の住民税を支払っていないし、差押の執行は未だ行われていない。
 納税は住民の義務であり同時に権利であるから住民税は支払う。しかし今は支払うつもりはない。なぜならこれらの送付書は、区政中枢の圧力手段以外のなにものでもないと、私は判断しているからである。常識で考えれば、こんなことが公然と許されてよいわけがない。私が住民税を払うのは、停職処分取り消し訴訟の帰趨が最終的に確定したときだ。その際、延滞金については加藤区長にきっちり支払っていただくつもりでいる。
 次に私の所属する労働組合の組合長と副組合長の奇妙な動きにも触れよう。6ヶ月間の停職処分への提訴直前、この裁判を担当する近藤勝弁護士の事務所を、この二人が訪ねたのだ。6ヶ月の停職処分に対する訴訟を起こさないほうがいい。また組合は訴訟を支援できないと言ってきた。その理由は、カラ出張カラ転勤の証拠を示さないからと、訴訟を起こせば、私がひどい目に遭うからだという。ひどい目に遭うとは区長による停職6ヶ月より進んだ処分、つまり免職処分を意味するのだろう。アポイントを取って近藤弁護士を訪ねることに異論はない。しかし当事者の私も連れていかず、訴訟支援拒否を担当弁護士に言いに行くとは何事だろう。しかも私が所属している労組のトップがである。本来なら私を役所側から守る立場にある組合が、役所側の利益にしかならない訴訟支援拒否をするなど信じ難い。むしろ断固応援するから五十嵐のために提訴してやってくれというのは組合の取るべき筋道のはずである。だが、これが私を取り巻く現実なのである。

■復帰の職場がなくなった

 穏やかな攻撃のあとには、必ず激しい攻撃が待っているものだ。もちろん豊島区役所も例外ではなかった。
 停職が5ヶ月ほど経過した12月末、またも望月氏から電話連絡が入ったのである。嫌な予感は外れない。宿直の廃止が決定したという。停職によって私が職場にいないのをいいことに、密かに進められていた、懸案の専従宿直職員制度の廃止を役所は脱兎のごとくに決定したのである。
 95年の9月末、15日間の停職処分に対する裁判を終結させる際に取り交わした合意書(宿直勤務において私が不利益を被らないようにすると役所側が約束した文書)を、彼らは捨て去ったのだ。彼らにとって都合のよい判決は尊重するが、不都合な判決は一顧だにせず無視をする。残念だが、これが今日の豊島区役所中枢の偽らざる真の姿なのである。
 今までの宿直職員の仕事は、今後昼間の職員がシフトを組んで代行するという。だが宿直業務の始まりは、昼間の職員による事務代行が、サービスの質を低下させるという理由だった。それをいきなり元の制度に戻すなど、納得できるはずがない。
「宿直の廃止は、組合と合意を得たのか」
 真っ先に望月氏に私が確認したのは、この点だった。望月氏は「同意を得た」と即答した。一体どうなってるんだと思い、この点を組合長に確認した。彼は「そんなことは言っていない。彼らは組合の反対を無視して一方的に専従宿直職員制度を廃止したんだ」と言う。どちらの意見が正しいのかは、結局わからない。しかし決定してしまえば、組合が騒いでも覆される可能性は低い。決まってしまえば、職員は従うほかないのである。
 またあとからわかったことであるが、役所は、かつて10余年にわたり宿直の架空勤務を繰り返していた同僚には、宿直業務廃止に伴う異動先の希望を聞いていたという。もちろん私にそんな話は一切なかった。
 結局、この年の暮れ、私は役所によって合意書を簡単に反故にされ、復帰するはずであった職場を一方的に廃止されたことになる。(■つづく)

|

« 阪神大震災現地ルポ 第11回/部落差別問題は避けられない | トップページ | 内部告発・豊島区は税金泥棒/第18回 異動に次ぐ異動 »

内部告発・豊島区は税金泥棒/五十嵐稔(現豊島区議)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/389724/6840232

この記事へのトラックバック一覧です: 内部告発・豊島区は税金泥棒・第17回 逆襲:

» 住民税について [住民税の増税★値上げ 高い 税率 免除 控除 減免 計算 方法]
住民税の増税、住民税の値上げ、住民税が高い、住民税の計算方法が知りたい、など住民税の各種情報をお探しの方へ。まずはじめに住民税の概要をご紹介します。(wikipediaより)住民税(じゅうみんぜい)は、日本の税金のうち、個人に対する道府県民税と市町村民税を合わせていう語。個人に対する道府県民税と市町村民税は、地方税法に基づき市町村(または特別区)が一括して賦課徴収するものであるため、納税者側から見る場合は住民税として一括して扱われることが普通である。賦課方法その年の1月1日現...... [続きを読む]

受信: 2007年6月19日 (火) 21時40分

« 阪神大震災現地ルポ 第11回/部落差別問題は避けられない | トップページ | 内部告発・豊島区は税金泥棒/第18回 異動に次ぐ異動 »