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阪神大震災現地ルポ 第13回/誰もが心労を重ねる

■月刊『記録』96年6月号掲載記事

■4月25日

  2ヶ月ぶりに神戸を訪ねた。1~2月と比べて、自宅を再建し入居を始めた人達の姿が目についた。今回は会えなかったが、東灘区に住む田中尚次・比早子さん、朝倉有子さん達も、家の建て替えが終わり、再入居を済ませていた。 

  長田区でまちづくり活動に携わっている、三谷真さんを訪ねてみると、高熱を出して寝込んでいた。「今までの疲れが一度に出たようだ」と夫人が語った。震災から1年あまり、三谷さんはさまざまな活動に精力的に関わってきた。本業との「二足のわらじ」でもあったから、相当に疲労が蓄積されていたようだ。 

  そういうわけで今回は詳しい話を聞くことはできなかったが、最近の三谷さんは「長田アジアタウン」構想に加わっている。以前から話を聞いているが、長期的には長田区を「多国籍アジア化」しようという試みで、さしあたっては新長田駅北区地区の土地区画整理事業区域内の一角に「アジア自由市場」を開設する。当初は4月27日にオープンすると聞いていたが、その後7月20日に延期されたという。 

  住民レベルの発案による復興プランであり、地域の特性に根ざした内容だといえよう。ただ1点、神戸市から区画整理事業区域内に用地の提供を受けるのが気になるところだ。べつに無闇やたらに行政と対決すべきだとも思わないが、この地域は、一方では区画整理の是非を巡って住民の反対運動も起きている(この問題については次回以降詳しく報告する)。住民の思惑が様々に交錯している状況下では、行政とのそうした連携は安易にすぎないだろうか。今後さらに取材していこうと思う。

■4月26日 

  兵庫区の本町公園テント村に、兵庫県被災者連絡会の河村宗治郎会長を訪ねた。「住民の再起の手だては住宅と仕事だが、この両方とも対策がなおざりにされてきた」と、行政の無策を批判する。河村さんは神戸市内で12万戸の被災者向け住宅が必要という。だが市の供給する災害復興住宅は8万2千戸。公営住宅は全体の6割で、残り4割は民間住宅をあてにいている安直な計画だ。 

  民間の賃貸住宅再建には、公的機関の融資制度や「阪神・淡路大震災復興基金」からの建設費補助と利子補給、家賃減額補助などがあるが、いずれも一定規模を有するものが優遇される。河村さんは「家賃補助は家賃の高騰を行政が追認する欠陥政策だ」として、融資枠や利子補給の充実・拡大を提唱している。いちがいに欠陥政策とばかりはいえないと思うが、量的には最も多いはずの中小規模賃貸住宅の再建に、大規模住宅ほどの支援措置がとられていないから、結局これらの補助に、家賃高騰を抑える実効性はほとんどない。 

  しかし、家賃高騰はここでは文字通りの「死活問題」だ。取材を続けるうちにわかってきたことだが、神戸での住宅・生活環境を首都圏と単純に比較しては実態を見誤る。河村さんが「本町公園周辺でいえば、家賃1万5~6千円のアパートはほとんど潰れた。月収が15~16万円しかなくても、これぐらいなら何とか払って暮らしていけた。そういう人達が大勢いるのが現実だった」と話すように、家賃の高騰は、「住めなくなる」以前の問題として「生活できなくなる」ことを意味している。 

  河村さん達はまた、災害救助法23条7項に定められている「生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は賞与」が全く実施されないまま同法の適用が打ち切られたとして、これらの実施と「緊急生活援護金」の支給・貸与を、神戸市に対して要求している。そのうえで、被災者への公的支援を制度化する新規立法措置をと、被災地外の支援者達とともに訴えている。 

  不思議なことに、河村さん達を「ならず者」扱いし、一切の交渉を拒否してきた神戸市が、震災1周年の頃から話し合いに応じるようになっていた。執拗に避難所解消・住民追い出しを画策していたが、「どこに住むかは本人が決めること」といった表現で、事実上断念したらしい。この姿勢の変化は、被災住民の窮状をようやく認識したからだろうか。それとも単なるポーズにすぎないのだろうか。

■4月27日 

  今回の取材で会った人達には、健康を害している人が多かった。三谷さんは前述の通りだし、河村さんも会うたびに痩せていくのがわかる。ともに心労を重ねているからだろう。久しぶりに訪ねて行ったら、心労のあまり亡くなっている人もいた。 

  中央区の仮設住宅に住む中村いさ子さんも、耳に悪性の腫瘍ができ、2週間前に手術したばかりだった。近くをトラックやトレーラーが通ると、安普請の仮設住宅がドスンと縦に揺れる。「また地震かとそのたびに驚く。住民はだいたいこれで神経が参っている」と語った。ここにも心労を重ねる人達がいる。 

  誰もが心労を重ねている。力尽きて斃れる人達もいる。再建後に家賃が数倍に高騰した賃貸住宅には、とても戻って住むことはできない。持ち家を再建した人達も、10~20年後、多重ローンに耐えかねて家を手放していないとの保証はない。 

  こんな状況がつくられていくなかで、道路や建物ばかりが再整備されていく。そんなものが復興といえるのか。(つづく)

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