« 内部告発・豊島区は税金泥棒/第10回 そして裁判が始まった | トップページ | 内部告発・豊島区は税金泥棒/第12回 当局側と合意書を作成 »

内部告発・豊島区は税金泥棒/第11回 敗訴、そして更なる処分へ

■月刊『記録』98年9月号掲載記事

     ※        ※        ※

■二時間半の睡眠時間も合法

「一五日間の停職処分」の取り消しを求める訴訟を、私が起こしたのは、一九九三年四月三〇日だった。
 役所の体質が根本的な問題であるだけに、勝つ見込みは薄い。唯一の突破口があるとすれば、東京都総務局長からの通達だけであった。
「睡眠時間付与にあたっては(中略)四時間を下がらず七時間を超えない範囲で(後略)」と書かれたその通達は、わずかながら勝機を運んできているように思えたのだ。何といっても、私の与えられいる睡眠時間は、二時間半でしかない。東京都からの通達に違反しているのは明らかだった。さすがの豊島区役所も、これではやすやすと言い逃れはできないはずだ。
 しかし、そんな期待はあっさりと裏切られることとなる。これほど短い睡眠時間は違法ではないのかと、私たちが裁判で質問したのに対し、役所側は「それは豊島区の特質だ。豊島区の独自性として許されるはずだ」と答えたのである
 特質とか独自性とか、一体何を言いたいのだろうか。勤務するのはあくまで人間である。しかも一定以上の睡眠は、人間にとって欠くべからざるものだ。生きるのに必要な環境を奪っておいて、区の独自性も何もあったものではない。二時間半の睡眠で働き続けることがきないのは、誰が考えてもわかる。わかっていながら曖昧な言葉で逃れようとしているだけなのだ。ここにも役所側のどうしようもない嫌らしさが表れていた。
 しかも私は、この短い睡眠時間にさえ熟睡が許されていたわけではない。役所を訪ねる人が来れば、どんなに眠くても笑顔で対応しなければならない。
 たとえ来庁者の対応に五分しかかからなかったとしても、睡眠中に一度起きるのだから、そうそうすぐに眠れるものではない。実際、指定された睡眠時間に人が訪れれば、寝るための時間はほとんど残っていなかった。
 一九九四年一〇月三日、一審の判決が下った。弁護士はすでに負けを確信していたのだろう。
「五十嵐さん、わざわざ行かなくてもいいよ。辛い思いをするだけだよ」と言った。
 しかし負けた悔しさをバネにして控訴するためにも、判決を聞きたかった。覚悟を決めると同時に一縷の望みを託して、私は裁判所の門をくぐった。

■裁判所の長い判決文

 大番狂わせはなかった。敗訴。弁護士の予想は当たった。ただ判決理由は、私の予想を良い方に裏切ってくれた。
 行政相手によくある門前払いでもない。そのうえかなり分厚い判決書を、裁判長は用意していたのだ。現在のように、行政に対する情報公開が盛んだったわけではない。行政と裁判で争えば、確実に負ける時代だった。
 そんな状況で書かれた長い判決文だからこそ、それなりの意味があったはずだ。役所を勝たせるために必要な言い訳が、それこそたっぷりと裁判所に必要だったのではあるまいか。裁判官も内心では役所側の言い分を、無茶苦茶だと思ったのではないか。ただ役所が負けた時、社会に与える影響が怖かったのではないか。
 裁判長が読み上げる厚い判決文を見たとき、私の二審でも徹底的に闘う意志をさらに固めたのである。
 一度負けるのも、二度負けるのも一緒だ。このまま二審で闘ってやる。そんな思いが体を巡り、決意を新たにしながら裁判所を出ようとした。
 そのとき私の背中に向けて、勝ち誇った哄笑が浴びさせられた。
「ザマーみろ。ふざけたことをしやがって。ワッハハ」
 区政会館の職員である指定代理人及び豊島区総務課の法規係の複数名の職員が、私の後ろに立っていた。指定代理人となっている区政会館の職員は、二十三区内で起きた行政相手の裁判で、弁護士の代行をするのが仕事である。負けない行政裁判が仕事。しかも税金で喰っているのだ。「コノヤロー」と腹が立った。だが彼の一言が、二審で闘う私の決意をさらに強くさせた。
「五十嵐さん、もうやめた方がいいよ。ケンカするなら、別のケンカの仕方を教えてやるよ」
 一審でお世話になった弁護士は、そう言って控訴をとめた。常識的には、彼が正しいのかもしれない。でも逃げたくなかった。
「じゃあ、そのときはお願いしますよ」
 お世話になった弁護士に頭を下げ、私は事務所を後にした。
 控訴するためには、どうしても弁護士が必要となる。一審では忙しい過ぎて引き受けてもらえなかった知り合いの弁護士に、もう一度頼んでみることにした。
 これまでの経過を話した私に、彼は言ってくれた。
「しょうがねえなあ。骨は拾ってやるよ」
 負け戦をわかって引き受けてくれたのが、無性に嬉しかった。
 第二組合ににも控訴する旨を連絡した。「二審はやめた方がいい」。 「金と時間の無駄だ」。それが彼らの反応だった。まあ、無理もない。勝ち目が薄く、職場での圧力も続くのだ。私の身を心配して、かれらも言ってくれたのだろう。

■返金も処分の理由

 一審の判決が出てから約二週間後の一〇月一八日、私は控訴した。
 資料集めなどに走り回る一方で、職場での抵抗も続けた。以前同様、自分で決めた時間帯で仕事を続けたのである。そうこうしているうちに、まももや事件が起こる。
 一九九五年二月の二八日の朝、昨夜からの勤務を終えて帰り支度をしていた私は、突然現れた鈴木総務部長や職員課の職員に一枚の紙を渡された。そこには「停職三〇日」の文字が書かれていた。割り振りを超える睡眠をとり、夜間勤務の一部を約一〇ヶ月に渡って従事しなかったのが停職を言い渡す理由だという。
「いらないよ。こんなもの」
 私は通知の紙切れを、即座に突き返して言った。
「とにかく今日は帰る。また明日、来る」
 もちろん二審の判決はまだ出ていない。「一五日間の停職処分」の取り消し求めて裁判闘争が続いている最中に、「三〇日間の停職処分」とは。
 役所は、とことんまで私を追い詰めるつもりなのだ。突き返した処分の通知は、自宅に郵送で送りつけられた。
 もちろん前回同様、私は次の日も通常通り出勤した。あくまで処分を認めないと、意志表示をするためだ。案の上、代わりの職員が配置されていたが、めげる訳にもいかない。出勤簿に自分の名前を書き、宿直室で一、二時間、電話番をして帰って来た。
 ちなみに後から確認してみると、停職の期間中、出勤簿に付けた私の名前は全て消してあった。
 裁判だけが闘う術ではない。一方的な処分に納得のいかない私は抗議を行い、数日後には職員課の別室で役所側と話し合いをすることになった。鈴木敏万総務部長、中島総務課長、それに職員課の人事係長が、冷たい視線を携えて会議に出席した。
「余分に取っている睡眠時間の給料は、ちゃんと返しているし、睡眠時間中に生じた業務にも、きちんと対応していた。それなのに、なぜ処分をしたのか」
 そう厳しく私は問い詰めた。
「お金を返還することも、処分の理由の一つだ」
 鈴木総務部長は、私の眼を直視して平然と言い放った。一瞬、私は耳を疑い、そして唖然とした。区政中枢の中心に位置する人物がこれである。豊島区政は、間違いなく区民無視の末期的症状となり、もはや手のつけられない体質だと確信した。
 役所の職員からは、そんな開き直った発言しか聞き取れなかった。受け取るいわれのない金を受け取らないのも、処分理由とは。こんなバカなことがあっていいのか。
 納得できない理屈が、平然とまかり通っている。
 ついに私は、「自分が受けた処分について話し合いたい」と区長に面談を申し込むことにした。 (■つづく)

|

« 内部告発・豊島区は税金泥棒/第10回 そして裁判が始まった | トップページ | 内部告発・豊島区は税金泥棒/第12回 当局側と合意書を作成 »

内部告発・豊島区は税金泥棒/五十嵐稔(現豊島区議)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/389724/6772914

この記事へのトラックバック一覧です: 内部告発・豊島区は税金泥棒/第11回 敗訴、そして更なる処分へ:

» 複数名/その他の痴女 [無修正動画ラヴ3]
男と女の性の協奏曲..性欲のままに女に襲い掛かり腰を振る男に女達は悦楽の表情で喘ぎ声をあげ.. [続きを読む]

受信: 2007年6月13日 (水) 23時13分

« 内部告発・豊島区は税金泥棒/第10回 そして裁判が始まった | トップページ | 内部告発・豊島区は税金泥棒/第12回 当局側と合意書を作成 »