« 靖国を歩く/第9回 絵馬から読み解く、靖国願掛けガイド決定版(奥津裕美) | トップページ | 靖国を歩く/第11回 究極の謎に挑戦靖国に「英霊」はいるのか(『記録』編集部) »

靖国を歩く/第10回 おみくじバトル2002年 冬~靖国vs明治vs大國魂vs湯島vs氷川~(奥津裕美)

■月刊『記録』02年12月号掲載記事
       *          *           *
  神社といえば、みくじだ! 誰がなんと言おうとも、おみくじである!!  
   使用されている紙だって粗末なものから豪華なものまで様々。値段も100円から、チャーム(オマケの魔除けグッズ)がついた200~300円のものまで千差万別。だが正直、そんなことは関係ない。みくじの醍醐味は、吉凶なのだ! そう、私にとって神社といえば、みくじ。みくじといえば、やっぱり吉凶!! 高いテンションで申し訳ありません。しかし初詣で凶を引こうものなら、最悪な一年になるのでは、とすっかり沈んでしまう私にとって、おみくじは重大問題なのだ。 
   というわけで今回は、靖国のみくじと他の神社のみくじを徹底比較する。 
   まずは、比較神社の紹介。 
   明治神宮は、明治天皇、明憲皇太后を祭神とし、靖国神社同様、極めて社格が高いとされる。大國魂神社は、大國魂大神を祭神とし、国を守る神を祀っている。湯島天神は、天之手力雄命と菅原道真公を祭神とし、学問の神として有名。氷川神社は、素盞鳴命、奇稲田姫命、大己貴命を祭神とし東京十社の1つでもある。東京十社とは、東京の鎮護と万民の平安を祈願するために明治天皇が定めたお社を指す。つまるところ東京の守り神の10代表なのだ。 
   さて今回、編集部の大盤振る舞いにより、1社10本、計50本ものみじくを引くこととなった。せっかくなので、各社のみくじを違いを、概略的につかんでいただこう。 
   まずは「願事」や「待人」など、占いの項目数を数えた。項目が多ければ、より細かく自分の未来を知ることができる。結果は、明治神宮→0、靖国神社→10、湯島天神→12、大國魂神社→13、氷川神社→17。明治神宮は吉凶そのものがないので論外であり、他の神社を圧倒した氷川神社の数が光る。 
   さらに1項目ごとの平均文字数も調べてみた。湯島天神→8.26、靖国神社→9.2、氷川神社→13.4、大國魂神社→16.5。なんと湯島と大國魂の文字数は2倍! 大國魂の顧客第一主義(?)には、頭の下がる思いだ。 
   さて調査をした5社のなかで、護国を担う靖国、明治、大國魂に着目した。この3社の特徴は、とにかく「お説教」が多いこと。 
   靖国神社は、吉凶が書かれた裏面に徒然草や五輪書などの古典から一文を引き、いかに生きるべきかを説く。大國魂神社のみくじは、裏面に「教え」と「天のみこえ」さらに表面にも「言」という枠があり、道徳満載となっている。きわめつけは明治神宮。なんと吉凶すらない。表面は「大御心」と呼ばれる明治天皇と明憲天皇が残した金言のみ。裏面は「この大御心を身につけて――明るく楽しく勤めましょう」という文章で括られた枠内に、金言の解説が書かれている。その欄外には、「今日の参拝の記念に大切に保存しましょう」という文言まで……。 
   国を守るためには、まず人民から。最近の情けない国民をビシッと叱りたい。その気持ちはわかります、はい。やっぱり偉い人は説教をしたくなるのだろう。この点、神も人間も同じということか。まあ、何となく全文を読んでしまうみくじで道徳心を説くのは、手法としては成功かもしれない。普段の「お説教」より抵抗なく入ってくるからだ。 
   実際「みくじ説教」の手法を、音楽に活用している人たちもいる。日本のラップミュージシャンだ。日々、リスペクトだ、突破だのと、御祭神が喜びそうなことを日本風のrhymeに乗せて歌っている。彼らに3社のみくじを歌わせてみたら、案外おもしろいかもしれない。流行るぞー! 
   それにしても、みくじに吉凶がないのはいかがなものか。一時の運不運を紙に託して批評するなど、神の仕事ではないかもしれない。しかしみくじを引く人は、未来の指針を知りたいのである。そこに神の力を借りたいのである。 
   引いたみくじに吉凶がないということは、例えるならモーニング娘のトレーディングカードを買って、プロレスラーの写真が出てくるようなものだ。凶が出るのとでは、絶望の度合いが違う。 
   明治神宮のホームページによれば、国家の管理に置かれていた戦前は神札しか出しておらず、おみくじの発行は戦後、宗教法人になってからだという。このとき明治神宮独自のみくじを出そうと知恵を絞り、祭神にゆかりの深い御製や御歌で、みくじを出すことに決まったという。 
   同じく高い社格を持つ明治と靖国。しかし、みくじの作りに、私は祭神の違いをみる。靖国神社の英霊は、もともと私たちと同じ庶民。だからたとえお説教が多くても、庶民のお目当て吉凶にも力を注ぐ。金言にしても、明治神宮が皇族の言葉だけなのに対し、靖国は国学者から狂言役者まで幅広い分野から人選している。格が高くても、敷居は低い。庶民派靖国、侮りがたしである。 
   まあ、考えてみれば、引く人物の民度に問題があったのかもしれんが……。高貴な方には、明治神宮のみくじがお気に召すことだろう。みくじには黄色と白があり、菊の御紋が光って浮き出る和紙を使っている。100円とは思えないほどの高級感だ。「しゃらくせい! こちとら運不運が知りてぇんだ」と叫んだ私には似合わなかった。それだけかも……。 
   靖国と同じく護国を担う大國魂神社のみくじは、先ほども触れた通り三部構成のお説教である。正直、しつこくないでしょうか? 社格が上の靖国でさえ、裏側だけなのに。大國魂神社の祭神・大國魂大神は、国土を開拓し、人民に衣食住の道を授けたといわれる神である。ほとんど類人猿のころから生活全般を指導してきたなら、余計な一言を言いたくなるのも人情(神情?)か。子どもがいくつになろうとも、親から見れば「子ども」なのだ。いやいや現代人なんて大國魂大神から見れば、やんちゃ坊主に過ぎないのかもしれない。「もう、おいたばかりして!」そんな気分で、みくじを渡しているかも。 
   一方英霊は、神とはいえ元人間。お説教にウンザリした人も多かろう。人間にしつこいお説教は逆効果だと、適度なところで切り上げたに違いない。
■必ず病気が「回復する」靖国 
   みくじの内容についても、個別にみていくとなかなか面白い。
   【進学】について、 靖国はとにかく努力を強調する。10本のうち半分が「努力」に触れている。「努力は報われる」、「努力の積み重ねにより開かれる」などなど。『少年ジャンプ』の合い言葉のようで参ってしまう。努力が大切なのはもちろんだが、さすがにちょっと多すぎやしないか! 努力だけでどうにもならないことは、英霊の皆様はわかっていると思うのだが……。 
   大國魂の決まり文句は「あぶないです」。なんと10本中5本も! 「怠るとあぶないです。努力してください」、「あぶないです。全力をつくしなさい」。これは参った。学生ではない私でも、ちょっとショックだ。神様から面と向かって「あぶない」と断定されると、本当に危なそうだ。 
   一方の氷川神社は、「祈り」がキーワードである。「祈りの心で励めば叶う」、「自己を克服し、神様を念じつつ励めばよい」、「御祈願を捧げ 努力専一に励めば必ず叶う」などなど。どこか神頼みとはいえ、祈ればどうにかなるよ、というのは簡単だなぁ。「現実的じゃないよ」などと毒づいていたら、「自惚れると失敗する、分に応じた処をえらべ」! 希望を下げろと? メチャクチャ現実的じゃない。無理を承知の神頼みなのに。項目数ナンバー1の氷川神社は、みくじの文章でも豊富なバリエーションをみせた。 
   ちなみに進学問題の権威・湯島は、意外なほど素っ気ななかった。受験を知り尽くしているがゆえの、口数の少なさだろうか? 
   【病気】に悩んでいる人にお勧めしたいのが、靖国神社である。とにかく多いのが「回復する」。10本中9本に、この文言が書かれている。残りの1本も「快復する」と書いてある。つまりどうやっても「回復する」わけだ。と、ここで心配になった。英霊が基準にしている健康体って……。 
   一方の氷川は、学問に続き神頼みである。「一応快くなる信心せよ」、「祈願をこめれば癒る」、「お祈りし快癒を待ちなさい」。神頼みすればどうにかなるというお告げだ。もっと切実感を出したいなら、「執刀医がうまくやることを祈れ」なんてのもどうだろう? それでは現実的すぎるかしら……。 
   ビジネス関連というと、靖国は【売買】という項目がある。その結果は「目上の人に相談すればよい」など。ビジネスでも、礼節をわきまえているのか、さすが英霊。まあ、実際には、相談しても失敗することが多いのだが。偏見かもしれないが、英霊にビジネスを聞く気がどうにもわいてこない……。 
   ビジネス関連で要チェックなのは、大國魂の【求人】である。この不景気にという感じもするが、採用サイドへのアドバイスである。「あとの人がよろしいでしょう」、「思うような人は来ないでしょう」、「その人でよろしいでしょう」などなど。しかし採用を神頼みする企業なんて御利益あるのだろうか? 占いの結果で落とされたら泣くに泣けない。でも、そんな会社なら行く必要はないか! 
   さて、書き残した情報が1つある。それは吉凶の数。発表しよう。靖国神社→大吉1、吉7、末吉2、大國魂神社→大吉3、中吉1、吉2、末吉3、凶1、湯島天神→大吉5、吉4、末吉→1、氷川神社→大吉4、中吉1、吉2、小吉2、凶1。 
   大國魂以外は私が引いたにも関わらず、けっこうなバラツキだ。となると気になるのが、大吉・凶などの確率である。 
   神社本庁に問い合わせたところ、「こちらでは(みくじの)確率は決めていません」とのこと。そりゃそうだ。吉凶すら書いてない神社があるのに、確率が決まっているはずもない。となると各神社任せとなり、大吉だらけなどという可能性も。 
   さっそく靖国神社に電話を掛けてみると、「(確率については)明らかにしておりません」とのこと。意外にガードが堅い。ただし、みくじの製作を業者に頼んでいると教えてくれた。ただし業者名は、「答えられません」とのこと。その後、湯島神社、明治神宮と電話をかけたが、どちらも業者にみくじを発注していることは教えてくれたものの、業者名や吉凶の確率には沈黙。神社の取引先って、そんなに秘密事項なのだろうか?  
   大國魂神社は担当者が不在で、最後の神頼みでドキドキしながら氷川神社に電話を掛けてみると、「はい。おみくじは大吉から凶まで5種類で、確率は均等に1/5です。女子道社に頼んでいます」と、快く教えてくるではないか。さすが東京の守り神。東京人には優しい! 
   この女子道社、なんと全国のみくじシェア6割を握っているという。経済における分業は、神の領域にまで及んでいた。勝手な話だが、何となく業者を秘密にしてもらったほうが、ありがたみがあったような気が……。 
   最後に、おもしろかったお告げを。「家が破れりゃその身が滅ぶ仲良くせよ」、「人の家庭を破らぬよう清く明るい愛に生きましょう」。なんてアダルトな氷川神社。もといアダルトな女子道社。 
   それでも来年の初詣は、お世話になった氷川神社に参らねば。でも、その前にきちんとたどり着けるのか? 赤坂で30分くらい迷子になったからな……。 (■つづく)

|

« 靖国を歩く/第9回 絵馬から読み解く、靖国願掛けガイド決定版(奥津裕美) | トップページ | 靖国を歩く/第11回 究極の謎に挑戦靖国に「英霊」はいるのか(『記録』編集部) »

靖国を歩く/奥津裕美・『記録』編集部」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/389724/6785096

この記事へのトラックバック一覧です: 靖国を歩く/第10回 おみくじバトル2002年 冬~靖国vs明治vs大國魂vs湯島vs氷川~(奥津裕美):

» ジョニー・デップ『ドラえもん』に出演【予告編動画】 [ジョニー・デップ『ドラえもん』に出演【予告編動画】]
ジョニー・デップ『ドラえもん』に出演【予告編動画】 映画史を塗り替える人気作『パイレーツ・オブ・カリビアン』に主演するジョニー・デップが、日本を代表する人気アニメ『ドラえもん』の長い歴史をも塗り替えることになった。ジョニー・デップは『パイレーツ・オブ・カリビアン』での役どころであるジャック・スパロウ船長の姿で、ハリウッドスターとして初めて『ドラえもん』に登場する。... [続きを読む]

受信: 2007年6月15日 (金) 18時46分

» ジョニー・デップ『ドラえもん』に出演【予告編動画】 [ジョニー・デップ『ドラえもん』に出演【予告編動画】]
ジョニー・デップ『ドラえもん』に出演【予告編動画】 映画史を塗り替える人気作『パイレーツ・オブ・カリビアン』に主演するジョニー・デップが、日本を代表する人気アニメ『ドラえもん』の長い歴史をも塗り替えることになった。ジョニー・デップは『パイレーツ・オブ・カリビアン』での役どころであるジャック・スパロウ船長の姿で、ハリウッドスターとして初めて『ドラえもん』に登場する。... [続きを読む]

受信: 2007年6月15日 (金) 18時49分

« 靖国を歩く/第9回 絵馬から読み解く、靖国願掛けガイド決定版(奥津裕美) | トップページ | 靖国を歩く/第11回 究極の謎に挑戦靖国に「英霊」はいるのか(『記録』編集部) »